穴あき日記〜奈良漬のブログ

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和本・古本

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後年の常陸坊海尊

源義経の従者で、奥州衣川(ころもがわ)の合戦で主君の義経以下ことごとく討死するなか、生き残った人物。
常陸坊海尊(ひたちぼう・かいぞん)はその後どういう生涯を送ったのか。
伝承ではそのまま長命を得て、江戸時代までその生存が語られることになります。
これは、たとえば林羅山が江戸初期に編んだ『本朝神社考』などに見えることです。

どうしてこのような異常な長命を得たかと言うと、一説では人魚の肉を食べたからだといいます。
高橋留美子のマンガ『人魚の森』でも描かれるように、人魚の肉を食べると死なない体になるそうです。
若狭の八百比丘尼はその代表でしょう。

常陸坊海尊は生き残って何をしたのかというと、義経一行の死を伝えることです。
これは、平家の残党の一人、悪七兵衛景清(あくしちびょうえ・かげきよ)が主家たる平家の顛末を伝えるのと同じでしょう。

海尊の伝説を本格的に考察したのは柳田國男です。
海尊の長命伝説の伝承が奥州に伝えられる浄瑠璃(奥浄瑠璃・奥州浄瑠璃)の担い手によるところが大きいということを説いています。
海尊のことに言及する語り物に『清悦物語(せいえつものがたり)』というものがあります。
この物語は小野太左衛門という武士が平泉で奇妙な老人に出会い、その老人から聞いたことを書きとどめたものです。
これによると、衣川の合戦で生き残ったのは海尊と清悦の二人だそうです。
小野さんがあって話をきいた老人というのがその清悦だったから『清悦物語』というわけです。
で、それによると寛永7年(1630)の頃まで平泉で息災にいたと書かれているのです。

この物語は奥州の地ではずいぶん語られたり読まれたりしたようです。
僕の手もとにもそうした伝本の1つ『平泉高舘合戦清悦物語』という幕末頃の写本があります。
また機会があったらご紹介したいと思います。

古い漢詩作法書

イメージ 1明治期の辞書について、先日記事にしました。
http://blogs.yahoo.co.jp/warszawa11045/10758169.html
 
『万通字林玉編』や『新編広集字書大全』など、江戸期の辞書の系譜にあるものが相変わらず使われ続けていたのですが、辞書の代用になるものはそればかりでありませんでした。
たとえば漢詩の作法書の類が挙げられます。
『詩韻活法大成』(明治27年刊)はこんな感じです。
 
 万山(左訓…バンザン/脚注…オホクノヤマ)
 孤月(左訓…コゲツ/脚注…ヒトツノツキ)
 
 秋情(左訓…シウジヤウ/脚注…アキノココロ)
 雲影(左訓…ウンヱイ/脚注…クモノカゲ)
 
 切々(左訓…セツセツ/脚注…シキリニ)
 蕭々(左訓…セウセウ/脚注…サビシ)
 
このように熟語が対句で並んでいます。
並べ方は春夏秋冬や旅や送別、死別などテーマ別になっています。
振り仮名で読み方が示され、脚注に語義が簡単に記されています。
また詩文作成の参考にするものだから、これに加えて平仄もわかるようになっています。
 
下段には韻礎といって、3字の語句が並んでいます。
 
 深院菊(左訓…シンインノキク/脚注…フカキザシキノキク)
 半池蓮(左訓…ハンチノレン/脚注…イケハンブンノハス)
 
 江城暮(左訓…コウジヤウノクレ/脚注…カハバタノシロノクレ)
 海寺秋(左訓…カイジノアキ/脚注…ウミバタノテラノアキ)
 
まあ普通に漢和辞典として使うには不便ですけど、文章を書くにあたって、テーマに関わる部分を見当つけて使えそうな表現を見つけ出すならば、意外と便利なものだと思います。

江戸時代の下敷

和本を棲み処とする虫について、昨日の記事で取り上げました。
そこで今日は手もとの本から実例を探してみました。
 
虫の死骸探しで本を紐解くのは初めてかもしれない…。
しかし、いざとなると、なかなか見つからないものです。
幾度となく虫の死骸を目撃しているのに、こういうときに出てきてくれません。
 
とりあえず10冊チェックして力付きましたorz
というか、これまで気付かなかったものが出てきました。
それは下敷です。
 
下敷といえば今日はプラスチック製がメインですね。
書道で使う下敷はフェルト製が一般的。
だから大抵の人はそれらを想起すると思います。
しかし近世の下敷はこれら書きやすくするための道具というよりも、各ページの行数や各行の字数を均等に書くための道具という側面のほうが強いものでした。
市販されていたかどうかは知りませんが、時々みかけるのは、いずれも手製のものです。
つまり紙に縦横の線を墨で引いた単純たものなんですね。
イメージ 1
画像に挙げたのはその典型というべきものです。
でも典型といえないのは、行数が一致してないこと。
本文は22行。
下敷の罫線は14行。
おそらく罫線間に2行書きの見当をつけて書写していったんじゃないかと想像します。
しかし天地もちょっと合わないので、もしかしたら別の写本のためにこしらえた下敷なのかも知れません。
むしろそう考えたほうがいいかもです。
なお、下敷に墨がまだらについているのは、書写に使用した料紙が薄く、しばしば筆の墨がにじんで下敷に及んだ結果だと思われます。
 
ちなみに画像の本は『蓮如上人御一代聞書随聞記』という幕末の浄土真宗の談義の記録です。
『蓮如上人御一代聞書』という蓮如上人の伝記を取り上げた講義を香月院深励(1817年没)という著名なお坊さんがして、それを光照寺実言というお坊さんが書き留めたものです。
本書の最後に実言師が「ナクシテ虫ニクワス事ナカレ」と書いています。
御覧の通り、本文の上や下の余白に虫食いがあります。
部分的に文字に及んでいるものの、だいたい読むことができます。
ただし実言師の字は細かすぎて読みづらいです。

書物の害虫

古代の経典というのは、ガラスケース越しにしか見る機会がありません。
でもそういうのを専門にしている人もいるんですよね。
どのへんに面白さがあるのだろうと思わないこともないのですが、人それぞれなんでしょう。
と、随分距離をとってきたんですが、知人から古写経研究の最先端の機関のニュースレターをいただきました。
それを読んでみたところ、面白さの一端が知られるようになった…
気がしますw
 
『いとくら』(国際仏教学大学院大学・学術フロンティア「奈良平安古写経研究拠点の形成」ニュースレター)。
その創刊号に「古写経の死番虫」という報告が載っています。
古典籍の天敵である虫!
その虫は紙に穴をあけながらついに死ぬ時が来るわけです。
古写経の中に、そうした虫の死骸が散在します。
その虫や穴をカラー写真とともに取り上げています。
死番虫(シバンムシ)や紙魚(シミ)が代表的なものですが、ゴキブリも表紙を食べるそうです。
知りませんでした。
恐るべし、ゴキブリ。
死番虫にはフルホンシバンムシ、紙魚にはヤマトシミ、ほかに鰹節虫(カツオブシムシ)にはヒメマルカツオブシムシなどがよく見られるようです。
 
そういえば、旧居には西洋紙魚がいましたorz
新居では出ないで欲しいなあ…。
でも蔵書とともに連れてきてしまったんだろうなあ(-o-;)

古い辞書

イメージ 1

必要あって前近代の辞書を使うことがあります。
一番よく使うのは『節用集』で、中でも易林本と称される慶長2年(1597)の版を使っています。
もちろん原本ではなくて、影印版(写真版)です。
それから『下学集(かがくしゅう)』で、その中で元和3年(1617)に刊行されたもの。
こちらも原本ではなく、影印版。
これは戦時中に岩波文庫の1冊にもなっていて、これを昔から愛用しています。
もうボロボロで何度も補修しているものですが、いろいろ書き入れているので、今や手放せない蔵書。
易林本『節用集』のほうも戦後2度ほど影印版が出ていますが、戦前に文庫本サイズのものが出ており、これも携帯に便利なので愛用しています。

このほかに『日葡辞書』を使いますが、邦訳が手もとにないので、これを使うときにはポルトガル語の辞書も併用しないといけないという煩雑さがあります。
でも非常に優れた辞書なので泣く泣く使っています。
これも戦後2度ほど影印版が出ています。

ところで、以前調べ物の必要から江戸後期〜明治期の辞書類を買い集めていたことがあります。
といっても全体数(いまだに把握できないくらい沢山あります)に比べて集めた数は大したものではありません。
ともかく、今日通行の国語辞典や漢和辞典同様、大同小異で系統的に把握することが困難でした。

この分野を研究している人はあまりいないようだから、ともかく図書館を経巡って、見られるものは見て、その帰りに神保町を歩いて回って未見の辞書を立ち読みしたり、買ったりする時期がありました。
画像にあげたのはそうして手に入れたものの主要なものです。

こういう実用書はどういう人が持っていたのだろうと気になるところですが、判然としません。
まあ普通に考えて身分の隔てなく、読み書きを必要とする職業の人、武家やお寺や神社や商家などの人が持っていたんでしょう。
今も昔も辞書は実用書だからボロボロになったら捨てられることになることが多かったでしょう。
今日でも中学校で使ってた英和辞典を社会人になっても後生大事に持っている人は少ないはず。
使いこんだものは古本屋に持込むこともできないから捨てることが多いですね。
幕末明治のありふれた辞書類も屑屋に持っていかれるか、燃やされるか、襖の裏打ちに使われるか、ともかく反故にされてしまったものが数多くあることでしょう。

そうした中でかろうじて百有余年を生きながらえた本なわけですから、大切に扱いたいものです。


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