穴あき日記〜奈良漬のブログ

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絵巻・絵本

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一の谷の合戦の一コマ

昨日、一昨日と神戸の博物館で『源平合戦図屏風』2種と奈良絵本の『平家物語』を閲覧してきました。
神戸は初めての街でしたが、東京は銀座を思わせる洗練された感じの都市でした。
 
さて、今回、屏風絵をまじまじと見る機会を得たのは大変有意義でした。
古典籍と違って慣れていないからいろいろ戸惑うところはありましたが、収穫が多くありました。
その中で、他人にとって何ら益もないことでしょうが、ささやかな発見が一つありました。
 
昨年10月の記事「手妻使いと母衣武者の絵」(http://blogs.yahoo.co.jp/warszawa11045/19789238.html)で母衣武者(ほろむしゃ)の画像を挙げました。
それについて、「出典は定かではないですが、『平家物語』にありそうな感じです。」と書きました。
二人の武者が別々に描かれています。
これを繋げると、下の図のようになります。
イメージ 2イメージ 1
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
こう見ると、追う者と追われる者の関係が見えてきます。
これはすなわち平家の貴公子平敦盛とそれを追う熊谷直実です。
 
ということで、はなはだ稚拙な絵であり、おそらく単なるスケッチとして描いたものなのでしょうが、何を見て描いたものであるのか、およそ見当がついたわけです。
すなわちこれは『源平合戦図屏風』の一種か、あるいは、その中でも一の谷の合戦をとくに描いた『一の谷合戦図屏風』に拠ったのだろうと思います。
 
描かれたのは明治期だと思います。
『源平合戦図屏風』がまだまだ博物館やら美術館に入らず、旧家の座敷に置かれたり、蔵の中で死蔵されてたりした昔が思いやられます。

先月、国学院大学図書館に寄ったら、古典籍が1、2展示されていました。
文学部の徳江元正名誉教授の「一誠堂で出会った心に残る一冊」と題したエッセイが添えられています。
奈良絵本の『木幡狐(こわたぎつね)』についてです。
非常に有益な文章ですが、もう日の目を見ることのないもののようなので、ここで紹介しておきます。

 * * *

 奈良絵本『こわたきつね』2冊、この財宝には、なつかしい思い出がある。
 昭和三十七年四月、八年半勤めた私立高校の退職金に幾枚か足して、自祝の意もこめて、求めたものである。三十歳になるやならず、かがやかしき青春の一コマであった。階上で眼福を得た稀書、善本は、例せば、大型の『是害坊絵巻』一軸とか、みごとな蒔絵の函に収められた『酒呑童子』十五巻とか、蘭淑『酒茶論』一帖とか、文学史執筆の際に用いたという大先覚者旧蔵本『住吉物語』一冊とか、思い出しつつ列べ挙げるならば涯際果てを知らぬ、それらと較べるならばささやかなことではあったが、松本隆信氏のはからいで『室町時代物語大成』第五巻に入れてくだされた。
 時移って、岡見正雄先生ご所蔵の一本が息男岡見弘道氏により翻刻され、更に古絵巻がヴァチカン王宮から見いだされるに及んで、私の『こわたぎつね』はせんぐりに価値を減じて行ったが、その間、月刊誌の御伽草子特輯に、私の最初の作品研究として小論が載せていただける好機に恵まれた。老いて思いは三千里、書き直しにとりかからねばならない。

 * * *

神田神保町の一誠堂書店百周年の記念に寄せた文章です。
http://www.isseido-books.co.jp/about/index.html

徳江本『木幡狐』は岩波文庫にも翻刻された渋川版御伽草子収録本の前段階の奈良絵本として非常に意義深いものです。
随分、謙遜して書かれていますが、研究上の価値は相当のものです。
ただ他分野の名品の数々に較べたら、古典籍としての美的価値が低く、その点、卑下する気持ちがあるのでしょう。
またそうした本であることが、完全無欠の名品とは違い、かえって愛着を覚えさせるのかも知れません。

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江戸時代に広く知られた絵手本に『絵本宝鑑』というものがあります。
昨夜、ちょっとした集まりでそれに関する発表を聴いたこともあり、手もとに死蔵されていた端本を改めて取り出して読んでみました。
これが中々面白く、一気に読みとおしました。
内容は中国の故事を集めて、平易な和文に改めて載せたものです。
もとより絵の手本なので、豊富に挿絵が収められています。
つまり、人物伝の集成としても読めるし、絵も楽しめるし、二つの楽しみ方があるわけですね。
何度も版を重ねたわけです。

一つ、程よい分量の話を紹介しましょう。
(便宜、句読点、濁点、送り仮名を加え、常用漢字に改めました)

 * * *

第七 韓退之(かんたいし)孟東野(もうとうや)

韓退之と孟東野は莫逆(ばくげき)の友たり。
或る説に、孟東野、美少年なりしかば、韓退之、ふかく是を愛せり。
或る時、韓退之、私語(ささめ)にたはぶれしかば、
「われ死せば雲とならん。
 汝はなにとならん」
と問ふ。
孟東野答へて曰く、
「君、雲とならば、われ、かならず龍(りやう)とならん」
と契りしとかや。
韓雲孟龍の約といふ事の侍れば、これよりしていふなるべし。

 * * *

韓退之は韓愈のことで、日本でも中世以来たいへん好まれた唐代を代表する詩人です。
この人のエピソードとして読めます。
そして、それを画題にした絵も鑑賞できるわけです。
絵の嗜みのある人はこれを参考にして描いたことでしょう。

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平日の上野公園の雰囲気が好きです。
火曜日は半ドンなので、帰路、乗り換え駅の上野で下車することがよくあります。
休日と違って平日はほどほどの人が出ます。
いろいろな世代や服装の人が思い思いに歩き、またくつろいでいます。
そういう様子を見るだけでも楽しいし、ホッします。
大概、公園を通り過ぎて動物園に行くか、博物館に入るかしています。
昨日は東京国立博物館の脇にある国際子ども図書館に入りました。

ここでは今、「絵本の黄金時代」という企画展が開催されています。
1920年代から30年代にかけての米・ソ・独・日の子ども絵本が展示されています。
米国は移民大国だけあって、さまざまな作風の絵本が作られていたことがよく分かりました。
ハンガリー出身のモード・ピーターシャムの画風が目を惹きました。
先年、両親がハンガリーで土産に買ってきてくれた絵本の画風に似ていたからです。
やはり国ごとに特色があるんだなと思いました。
ソ連はお国柄のためか、リアリティ偏重で、ファンタジー色が薄く、正直、好みではありませんでした。
しかし、ソ連以前、帝政ロシア時代から活躍しているイワン・ビリービンの絵本が何冊か出ていて、目をみはりました。
アール・ヌーボー風の装飾も取り入れた美しい絵本です。
同じく、ゲオルギー・ナールブトの絵本は影絵の趣向を取り入れたユニークな作品でした。

楽しく癒される展示でした。

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元禄3年(1690)に出版された『人倫訓蒙図彙(じんりん・きんもう・ずい)』は今日でも需要の高い絵入の百科事典というべきものです。
百科事典といっても対象となるのは人間(さまざまな身分や職業)であり、また人間の文物であります。
必要あってよく使っていますが、一通り読んだことはありませんでした。
今これを読んでいて、随分と面白い発見がありました。
やはり通読することは大切なことだなとおもった次第です。

その一つ。
「経師(きょうじ)」の項を読んでいて、目から鱗でした。
経師は経典を表装する職人で、巻物を仕立てたりもします。
今の表具屋みたいは立場です。
図では後ろに巻物と、おそらく折本(おりほん)が置いてあります。
どちらも経典の書型としては代表的なものです。

解説では、もろもろの経巻、巻物、色紙、短冊、薄様、香包、そのほか、色絵の紙、贈経等をもって造る類はみな経師の仕事だと書かれています。
もともとは、その名の通り、経典を仕立てる職人でしたが、そのほかにも和歌色紙や短冊、色々な巻物の装丁まで手を伸ばしていったのでしょう。
そこまでは分かっていたので、読み流したのですが、最後の一文を読んで思わず唸ってしまいました。
曰く、
「泥絵、諸書の紙に下絵をなす。
 この者、経師の下細工也」

泥絵(でいえ)とは金銀の泥(でい=金箔をパウダー状にして膠汁などをまぜて絵の具としたもの)で描いた絵のことです。
江戸時代前期には紺紙金泥(こんし・こんでい)表紙が多く作られました。
薄様の紺色の紙に金泥で草木などの絵が描かれています。
また本文料紙にもさまざまな草花などの絵が筆で描かれます。
こういうのは誰が描いたのだろうと疑問に思っていました。

本の製作過程を考えると、本屋が表紙や料紙を仕入れる段階ですでに装飾が施されていたと考えられます。
だから経師が描いたのだろうと思っていました。
しかし、『人倫訓蒙図彙』の解説にしたがうならば、経師自身ではなく、その下細工、つまり下請けの職人の仕事であったということのようです。

元禄頃の絵入写本の製作について整理しておくと、だいたいこんな感じだったかと思われます。

1、装飾表紙と装飾料紙を経師から仕入れる(下絵装飾は下細工の職人担当)
2、筆功が本文を書写する
3、絵師が挿絵を描く
4、製本する

筆功や絵師が本屋に通って仕事をしたのか、自宅で内職をしたのか、そのへんが分かればいいのですが、まだ分かりません。

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