穴あき日記〜奈良漬のブログ

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近代文化人

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僕は高校時代、岩波文庫の『宇治拾遺物語』を好んで読みました。
何の注釈もついていないし、当時の古典読解能力はひどいものだったので、ずいぶん苦労しましたが、それでも1話1話の面白さは伝わってきました。
それでもっと面白く読みたいと思って一生懸命読もうとしていたことを憶えています。

その岩波文庫版『宇治拾遺物語』を翻刻した人は渡辺綱也という国文学者でした。
僕は大学で国文学を先行していたのですが、この人の名はついぞ聞くことがありませんでした。

4年前、富山の方言研究家、故大田栄太郎氏の旧蔵書を調べに豪雪の富山に旅したことがあります。
その中の1冊に、毛筆でとても大きな文字の手紙が挿んであるものがありました。
ぱっと見て、まるで小学生が書いた見たいだなと思わず笑ってしまいました。
渡辺綱也という人はこんな字を書いていたのかと。
業績がほとんどないのに国立大学の教授で、しかもこんな下手クソな字を書いてたのかと。

でも手紙の中身を見て、ものすごい衝撃を受けました。
なにゆえかくも大きな子供じみた文字を書くのか分かったからです。

 * * *

 いつもいつも高価な
 くすり御恵送賜
 りまことに有難う
 存じております
 おむかいがいつ来る
 のかわかりませぬ
 が治る見込みの全然
 ないと云ふ全身病の
 この水俣病の苦痛に
 はすっかり耐えかねま
 しておむかえが来ぬ
 うちにこちらから出
 むいて参りたいと思ふ
 昨今でございます
 (中略)
 少しても
 お役に立てば幸いで
 す久しふりに自分
 の部屋に戻って筆を
 とりましたがどうに
 もうまく運びません
 (下略)

 * * *

これを読みながら、思わず涙が出てしまいました。
自筆の書を見ると、その壮絶さがさらに伝わってきます。

一昨日、鳩山首相が水俣病の犠牲者慰霊碑の前で謝罪をしました。
故渡辺綱也氏もこの病におかされなければ、いい仕事を残していたのかも知れません。
この手紙も貴重な公害病の記録として、後世に残してもらいたいものだと切に願うのでした。

幸田文のハガキ

イメージ 1

イメージ 2

幸田文は昔『黒い裾』を読んで、いい文章だなあと感心してから好きになりました。
それから、時々古本屋を覗いて初版本などがあったら買っていました。
気付いたら少しまとまった量になったので初版本、初出掲載誌、特集雑誌など別置することにしました。

さすがに自筆原稿は持ってません。
が、たまたまハガキを手に入れいましたので、ここで紹介しましょう。
日本橋丸善に宛てたハガキです。

 * * * * *

御手紙をありかとうこさいま
した せつかくおさそひ頂き
ましたがこのところ旅行ばかりして
いて落つきませんしそれに新
年会というとちょっと改まっ
た感じがあってしりごみ致します
相済まないことですが御辞退いた
します取りいそぎ御返事申上け
            ました

 * * * * *

これは昭和35年10月24日付で、丸善主催の新年会の出欠の返状です。
御覧の通り欠席したとあるものです。
ただの辞退の返事だけですが、事務的にならずに情が入った感じが好きです。

戦前の世代は手紙では句読点をつけないし、濁点もまちまちの古風な書き方をしている人が多いですね。
今でもそういう書簡をしたためる人がいますけど、ほとんど見かけなくなりました。

幸田文の書斎

イメージ 1

昨日の記事で、日夏耿之介(ひなつ・こうのすけ)の書斎を取り上げました。
そしてその蔵書が前近代の伝統的な和漢の書の整理の仕方を踏襲しているようだということを述べました。
こういう並べ方をするのは、少年期〜青年期の日夏君が和装本の類をたくさん読んですでに大したライブラリーを形成しており、長じて英文学を志して洋書が増えていっても、それまでの整理法を変えずにいった結果なのかも知れません。
これは想像にすぎないわけですが、本の並べ方一つをとってみても、その人の歴史が垣間見られるようで、面白いものです。

さて、伝統的な和書・漢籍の整理の具体例は幸田文(こうだ・あや)の書斎にみえます。
日夏老師の写真同様『書評』昭和24年5月号に載っています。

3段の箪笥に本が積まれています。
手にしているのは帙(ちつ)入りの9冊セットの本ですね。
表紙は傷みがないようなんで改装されているようです。
そこには外題(げだい=タイトル)が見えません。
何かわかりませんが、漢籍でしょう。

箪笥の下段右下の本は洋装本のように立てて並べてますが、これはおそらく平積みにする幅がないための措置と思われます。

箪笥の上に父露伴の遺影が置かれています。
当グラビア写真のキャプションには次のようにあります。
「父のゐたとき、本は無味。
 今は苦鹹辛甘。」
ここに見える書籍は露伴から受け継いだもののようですね。

日夏耿之介の書斎

イメージ 1

イメージ 2

数日前から必要あって蔵書整理をしています。
しかし一向にはかどらない!
どれもこれも自分が好きで手に入れたものだから、何かしら思い入れがあったり、興味をそそるものがあったりするわけです。
で、書棚から取り出したらとりあえず開いて見るということの繰り返しとなり、遅々として進まぬことに相成る次第なのですorz

今朝も作業をしなくてはという気持ちで早くから始めたのですが、とくに思い入れがあって特設した「幸田文コレクション」(仮)を前にしていきなり頓挫。
コレクションといっても大した分量でないし、初版とか初出掲載誌とかを別置扱いしてる程度のものです。

幸田文の文章が載っているということで入手した昭和20年代の雑誌群。
読みはじめたら当時の時事ネタや今は亡き偉大な文人の文章などが散りばめられていて実に面白いのです。
当時の雑誌は紙質が劣悪でとても残念ですが、それでも昭和21、2年は新刊ラッシュと相俟って、とくに新時代への希望に満ちた評論が多く掲載されており、それらは今読んでも新鮮です。

そうした雑誌の一つに『書評』というものがあります。
その名の通り、読書人のための雑誌です。
その昭和24年5月号には「書斎めぐり」という玄人好みのグラビアがあり、幸田文の書斎が載っています。
それと同時に日夏耿之介(ひなつ・こうのすけ)の書斎も載っています。
日夏氏は昭和の英文学者として著名な人です。

で、日夏氏のバックの書棚を見ると、みんな平積み。
洋書タイプの本を平積みにして、しかも背表紙も見えない…。
これではどこに何を置いてあるのか分からないのではないかと思います。
しかし本人が知っていればいいわけだから、それはそれでいいのかも知れませんね。

ところでこの並べ方は和書の伝統を踏襲しているみたいです。
漢籍もそうですが、近世以前のいわゆる和装本は背表紙がないからタイトルも書かれていません。
平積みにするから、本の下の部分しか見えなくなります。
そこで下の部分にタイトルを書きいれることがあります。
参考として『三国仏法伝通縁起』を挙げましたが、こんな感じです。
これを小口書(こぐちがき)といいます。

話はそれましたが、日夏氏の蔵書整理もこの伝統的な並べ方を洋装本にも採用しているわけです。
僕は奥行きがある場合、二重に使ってますが、こういう置き方もありかと、ちょっと驚きました。
しかし見たところ、小口書がありません。
どこにあるかを知るのは記憶頼み。
はたしてこれは能率的かどうか???
実際やってみてもいいのですが、やっぱりダメだということで並べ直す労力を思うと、真似できません…。

イメージ 1

来月引っ越そうとおもっているので、蔵書整理をしなくてはと思っています。
で、整理もせずに積んでいた資料にどんなものがあったか、しっかりリストを作成して失くさないようにしなくてはいけないわけです。

蔵書の中でなにが一番大事かというのは甲乙つけがたく、どれもこれもそれぞれ価値をもっているものです。
だから一見下らないものでも、捨てがたいし、売りがたいものです。

「ある本を贔屓し、ある本を軽蔑せよということですか?……」
愛書家は身震いした。
「そんなことはできません。どの本もみんな同じ不滅の魂を持っていて、私から見れば同じ権利を享受しているんです。(下略)」
     (A.H.レベルテ『呪のデュマ倶楽部』集英社)

と、大仰な前説になってしまいましたw
要はどこから整理していけばいいかというだけのことで、捨てることも売ることもしません!
とりあえずリングファイルに保存するためのクリヤーポケットを買ってきて一枚物の資料(古筆切・短冊・色紙・一枚摺の絵図・書簡・原稿等)を整理。

その1つが画像に挙げた原稿です。
河竹繁俊「餅つき芝居」という原稿。
右下に赤鉛筆で1955年(昭和30年)12月20日の日付が書かれています。
編集者の書入れでしょう。
たぶん、昭和31年新年号の雑誌に掲載されたエッセイだと思います。
(掲載誌がなにか確認してませんけど…)

河竹繁俊は幕末明治の戯曲家として著名な河竹黙阿弥の養子で、演劇学者です。
昭和42年に亡くなりました。

【翻字】
 今からは、もう百年も前のお話になります。
十二月にはいると、江戸の歌舞伎劇場には、
餅つき芝居ということがおこなわれました。
いかにも年の暮にふさわしい名前であり、行
事でありました。しかし、これは舞台で餅をつ
く芝居ではありません。俳優や劇場の関係者
に初春を楽に迎えることのできるように、ま
たお正月にはつきものの餅も、たっぷりつくこ

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