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【翻刻】江戸時代後期の無題随筆

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35
大御所、真田隠岐守を召さる。
「汝は真田丸に参り、申すべきは、心をひるがへし、将軍に随ふべし。
 信州にて拾万石賜はるべきなり。
 早々城を出で、戦を罷り申すべしと申し聞かせよ」
との上意なり。
即時に真田丸に向ひ、上意の趣、申し述べたり。
左衛門、これを聞き、
「誠に身にとつて冥加に叶ひ候ふ。
 併しながら、某、御敵を仕るによつて身の置き所なく、高野山に蟄居仕り候ふ所、秀頼卿の仰せによつて一方の大将の号を蒙り、武門の棟梁と呼ばるる。
 今、知行、禄にめでて異変仕りたりと、末代までも口惜く候へ。
 兎角、御請けはなりがたし」
とぞ申しける。
隠岐守、帰つてこの旨申し上げける。
「しからば年来真田が所望の信州一国給はるべし。
 又、拾万石は嫡子大助へ甲州都留郡にて下さるべし」
との事なり。
隠岐守、又真田丸に行き、この事を申し述ぶ。
左衛門申すは、
「武士の恥とするは二心なり。
 最初、籠城の節、最期を究めて入りたり。
 今、信州一ヶ国の大守と成り、出城の時は木村七組の面々、真田に別心あらじと頼れたる目違
□相違す。
 又、秀頼公御頼心召され、御盃賜はる。
 この節、御請けとかく一命すて、忠誠泉下に報ふべしと申したる詞、水になり、出城仕るも残念也。
 併しながら、忰大助、別しての上意なれば」
と大助を呼んで、右の段申し聞かす。
大助、
「互ひに拾万石賜はるは父を招かんと□□。
 我壱人参りたらんには関東のかつぎものなり。
 さはなくも、父は義士なるに、大助壱人、二心有りと笑はれん。
 又、秀頼卿御最期にさはやかに御供仕る人有るまじきなり。
 大助壱人は秀頼卿の御供なり」
といふ。
左衛門、
「最早、和睦の事は重ねて仰せ下さるまじく候ふ。
 是非国郡を賜はらば、関八州残らず申し請くべし。
 永く将軍家に御敵仕るべくにて候ふ。
 大御所にも御油断有るまじく」
とぞ申しける。

※大坂冬の陣(1614)直前の家康と真田丸籠城中の真田信繁との交渉を記しています。
仲介役の真田隠岐守とは信繁の叔父信尹でしょう。
家康が所領をエサに信繁の離反を期待していましたが、信繁は覚悟の上のこと。
心を翻すことはしませんでした。
さらに嫡子大助こと幸昌もまた父に従う旨を述べています。
これは一種の美談ですけれど、ただ、幸昌が参戦するのは夏の陣(1615)からじゃなかったかと思うんです。
徳川勢を散々蹴散らした真田丸は冬の陣後に取り壊されたので、たぶん虚構ではないかと思います。
何か近世の軍記からの抜書だろうと思いますが出典未詳…。

土井利勝と淀屋

ひさびさに所蔵する無題随筆の翻刻をします。
虫食いがひどくて、判読不能の箇所が多々あります。
虫損箇所は□で示しました。

34
土井大炊頭は水野下野守信光の子なり。
信光、佐久間の讒言を以て討ち果てたり。
妾の腹に二人の子あり。
妾抱きて淀屋与左衛門方へ忍び□、子、生ひ立てんとす。
与左衛門、是を養ひ、彼の妾を妻とす。
小児生長の後、土井甚五郎方へ養子に遣す。
与左衛門事、地頭を慕ひて幼年の子を養ふ事、奇特なりとて召し出だされ、段々御取り立て、三浦与左衛門といふ。
苅屋の城主也。
是は淀屋とて苅屋の酒屋なり。

※土井大炊頭(どい・おおいのかみ)は土井利勝(1573−1644)のこと。
本文中では水野信光とありますが、誤りです。
正しくは水野信元(1576没)で、徳川家康の伯父にあたります。
讒言をした佐久間とは佐久間信盛。
養父となった土井甚五郎とは土井利昌。
「苅屋の城主」というのがどこに掛っているのか、ちょっと分かりかねます。
苅屋とは今の愛知県刈谷市のこと。
ここに出てくる名では水野信元と佐久間信盛が刈谷城主でしたが、どちらかといえば、信元を指しているのでしょう。
淀屋については調べていないので不明ですが、刈谷にあった酒屋ということなので、信元時代から水野家と懇意にしていたのでしょう。
まだあるのでしょうか。

刈谷には古典籍の充実した刈谷図書館があって、去年も訪れましたが、また行く機会があれば郷土資料も少し読んでみようとおもいます。

32
明日、上杉・佐竹が陣所、御巡見有るべきの旨、仰せ出ださる。
将軍より、御老体勿体無し。誰になりとも仰せ付けられ然るべきの段、仰せ上げらる。
大御所家、
「若年より弓矢を取り、終に安住したる事なし。
 今、日本国中の諸大名、身命を投げ打つて、寒天に在陣す。
 是は只、将軍家への忠節なり。
 此の軍務の働き、見侭聞侭する上に、勝利の根元を極むるは大将たる人の職分也。
 将軍家は恩報の人也。
 我は度々□き目に逢し事、今更、珍しからず。
 只ゆるゆると陣中に休息し給へ」
との御返答故、
将軍、驚き給ひ、即時に茶臼山へ御出で、御巡見なり。
諸大名、陣所に出でて御礼申し上げ、行儀作法よくまろふだる人々は即時に御礼首尾よし。
早朝寝込み、油断の大将達は大いにうろたへる。
是、敵の巡見にあらず。
味方の油断なき様に制せられ候ふ御巡見なり。

*前の記事の続きのようですが、出典は何でしょうか。

33
木村を中国の旗所として備前・播磨を給ひ、後藤は北国の旗所として加賀・越中を給はる。
御朱印御認の□文、大野道犬拒みて、
「是等の働きには御太刀、感状とて然るべし」
とて、これのみ給はりけり。
郡主馬申しける。
「大野殿は我が物にして国々をおしまるる事か。
 とても関ヶ原退治は叶ふまじきなり。
 然れども弓矢の礼儀にして、敵国、皆、闕国として味方に当つる古法なり。
 既に矢野和泉は中村一学が跡に若狭国を給はり、御宿、越前を給はる約束ならずや。
 察する所、入道殿の胸中には修理主馬の分国にせんと思はる。
 何様にも心の侭にし給へ。
 とかく秀頼公の御微運」
と退去す。

*豊臣方のエピソードですが、出典は前の記事と同じかも知れません。

30
本卦がへりを華甲重逢といふ。
八十八歳を米年といふ。
一説、米年を八十歳の事とす。
米は八十の人と書く。

*米寿の説明ですね。
 「華甲」は六十一歳。
 華の字は十と6個の一から成るからといいます。
 甲は甲子の甲。
 つまり本卦に重ねて逢うから「華甲重逢」というようです。
 ちなみに「花甲之週」というのも、これと同じ。


31
鴫野の合戦に直江山城守が軍兵弐千五百人、足軽弐百人張出し、
速水・野々村と対陣する時に、はや暮れに及ぶ。
御目代小栗又市、直江が陣中に行き急ぎ、
「速水が軍兵、追払ひ候へ」
といふ。
直江、
「弓矢の事は貴辺等に御差図を請くる山城守にあらず」
といふ。
小栗また上杉が旗本にいたり、
「只今、軍を仕掛け候はば、敵ことごとく攻軍仕るべくにて候ふ」
といへり。
上杉ろうねぶりして居給ふ。
小栗、茶臼山に来り、今日の戦ひの物語し、
「残念々々」
と申しけり。
大御所、仰せらるるは、
「はや日も暮れ、城兵速水は軍のしまりのため出でて、上杉働かば防ぎ留めん。
 その後度のしまりなり。
 是、一段神妙なり。
 上杉は今日の働き武者、草臥れたる故に、直江を出だして只対陣するまでなり。
 汝しらずや。
 関ヶ原陣の時は□父子、譜代大名残らず、外様の大名三拾六人発向する程の大敵なり。
 今、汝が逆心するに於いては、雑人等百人ばかりにて成敗すべき様の分際にて、
 景勝に弓矢の指南、片腹いたき事なり」
と云々。

*けっこう面白い記事だと思いますが、1、2、虫損で読めなくなった箇所があります(□部分)。
 さて、これは慶長19年(1614)11月の大坂冬の陣における鴫野の戦いの一場面ですね。
 上杉勢に対陣する豊臣側の武将として、速水守久、野々村吉安が出てきます。
 小栗又市(又一)は家康の家臣。
 このエピソードの出典未勘。可尋。
 なお、速水守久については下記ブログに詳述されています。
 http://blogs.yahoo.co.jp/hidatugutoyotomi/15397105.html

27
平声は音韻の平なる故に平といひ、
上去入はいづれも声の平ならぬものなれば仄といふ。
仄は古側字なり。
側傾に平の謂なり。


28
漢和といへるものは連歌より出でて詩歌ならべてくさるなり。
策彦と紹巴との百韻漢和の中に、
  難奈読残書
といふ句に
  秋風に飛行ほう吹きえて
と脇し給ひけり。
又懐紙の中に策彦
  沙湿覆無声
といへる句に
  しのぶ夜の雨はなかなかたよりにて
としられける。

*「秋風に」の句は虫損のために「吹」の上部が不分明で、誤字の可能性大です。
 策彦は策彦周良(1501-1579)。
 五山僧で詩文の達人。
 紹巴は連歌師里村紹巴(1525-1602)。
 織豊期一流の連歌師です。
 本能寺の変の前に明智光秀らと連歌を張行したことで知られます。


29
軍勢甲乙人といふ事あり。
たとへば
  某国某郡軍団某隊
    先鋒甲乙某
    先鋒丙丁某
    先鋒戊己某
    先鋒庚辛某
    先鋒壬癸某
これにて甲乙人の事、明らかなり。

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