穴あき日記〜奈良漬のブログ

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妖怪・怪異

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灯台鬼のこと

イメージ 1

昔、天竺の西上国(さいじょうこく)と南海国とが戦をしました。
西上国が敗れ、大将恋子(れんし)が捕えられました。
南海国の王の前に引き出されたとき、恋子は恨みを込めてこう言いました。
「国を出た時、王の首を取って鉾先に差し上げて主君に参らせようと誓ったが、
 本意を遂げずにこんなありさまになったことが悔しくてならない。
 この上は怨霊となって首を取ってやろう」
その様子に一同恐れをなしましたが、王一人感服しました。
れんしの思いをあざ笑うかのように、王は言いました。
「今日からはそなたを召しつかおう」
と。

もちろん、恋子がそれに従うはずがありません。
王はどうしたかというと、次のようにしたのです。

顔の皮を剥ぎ、
額に灯台を打ち、
毒薬で口がきけなくする。

これを灯台鬼(とうだいき)といいます。

その後、阿弥陀の霊験によって、探し歩いていた息子によって救出され、もとの姿に戻ります。

この物語は江戸時代前期に浄瑠璃として上演されました。
遡ると鎌倉時代の仏教説話集にも載っています。

これも鬼の範疇に入れるのであれば、人工的に作り出された鬼ということになります。
かなり特殊な鬼ですね。
単に外見のおぞましい姿を形容して鬼と称したのであれば、妖怪としての鬼の一種と捉えることはできませんので、ちょっと悩ましいところではあります。

古浄瑠璃『とうだいき』は江戸初期に絵入本として出版されました。
しかし肝心の主人公の「灯台鬼」と化した姿は描かれていません。
人間のときの姿は描かれているんですけど…。

画像に挙げたのは諸国を経巡る息子の姿を描いたものです。
1面を9図に分割して描く趣向は他に例が無く、極めて珍しいものなので、ちょっと挙げておきます。
彩色が施されているのは、丹緑本(たんろくぼん)といって、江戸前期におこなわれたものです。
印刷したあとで簡単に刷毛など使って2〜4色の絵の具を塗ったものです。

ムジナ婆さん

人を化かす動物としては狐、狸、川獺(かわうそ)などがいます。
狢(むじな)もまた中世の昔から化かす動物として知られています。
とはいえムジナはタヌキとどう違うのか、これは随分昔から議論されていますし、見解を整理するだけでも大変なのでここでは省きます。
とりあえず、地域によってはムジナ=タヌキ説を取るところがあり、ここに紹介する話もまたそうした地域で聴いたものです。


福島県田村市(当時は田村郡常葉町)で、次のような話をあるお婆さんが話してくれました。

タヌキのこと、むかしムジナっていったんだねえ。
―ムジナ?
ムジナのこと、タヌキっていったんでねえだべか。
今もムジナ石っつうのがあんの。
―ムジナ石っていうとなにかムジナがいた、そのへんにいたとか…。
うんうんいたんだって。
随分昔の人はムジナと交際してたんだねえって聞いてっけど(笑)
―悪さしたりとか?
ううん、そういうことはしなかったんだって、そのムジナは。
したが、化けるのがうまかったんだっつったねえ。
ここの辺でも、ムジナ婆さん、ムジナ婆さんって呼んでたんだって。
婆さんのような、わたしらのような格好に化けたんだって。
明るいうちは来なかったんだってったな。
夕方になって、こお、見い人のかげがちょっちょっとよく分かんねえよおになっと、出てきたんだと。
「飯おぐれ」
って言ったんだ。
「飯おぐれ」
なんて来るのさ。
「あ、婆さんが来たから、おにぎりやれ」
やってたんだ。
だから、ここに世話になってると思うから、悪いことはしなかったっていう話だね。
昔は人がよかったんだねえ。
そういうものと交際してしたんだから(笑)
それがねえ、何年、明治の何年先のことのもんだか、元治、慶応のその先だべ。
来たんだっていう話を聞かせらっち。


とこんなお話でした。
いいですねえ、福島弁。
僕は大好きです。

それはそうと、ムジナ婆さんという化けムジナが明治以前に福島の山村に棲んでいたそうです。
そのムジナは人間に悪意を持たず、ただ物乞いにやってきたそうです。
迎えるほうも承知しているものだから、追い払わずに握り飯などをやりました。

これが果たして話の上でのことなのか、実際にいたものか、今となってはわかりません。
ただ、ムジナ婆さんが本当は人間であって、里の人々がムジナだと解釈していただけかも知れないと考えられますね。

前回の記事で取り上げた妖狐玉藻の前は遡ると古代インドの天羅国にあって、皇太子班足太子(はんぞく・たいし)をそそのかして1000人の王の首を斬らせようとした塚の神でした。
班足太子については諸書に載っている著名な人物です。
たとえば室町時代の仏教説話集『三国伝記』には異伝が記されています。

 * * *

班足王は獅子の産んだ子である。
それゆえに血肉を好んで食べる。
ある時、良い肉がなかったので、料理人が奔走した末に死んだばかりの子どもの肉を料理に出した。
すると王は
「今日の肉は殊のほか美味であった。
 今後必ずこれを用意せよ」
と命じた。
以来、料理人は日々家々を回っては子どもをさらって食肉としたから民の嘆きは甚だしい。
そこで天羅国をとりまく1000の小国の王が兵を向かわせ班足王を捕えてしまった。
そうして嗜闍崛山(ぎっしゃくせん)という深山に流刑に処したのだった。

小国の王たちの思惑としては班足王をそこに棲む鬼神の餌食にするつもりだったのだが、かえって助けて鬼王に祀り上げてしまった。
そして王は鬼神たちと相談して1000の小国の王たちを退治してしようと企んだ。
復讐心もあったが、加えて、昔、外道から
「1000人の王を殺して鬼神に供えれば、1000度王位に昇ることができる」
と言われたことがあったからだ。
かくして鬼神を従えた班足王は小国の王たちを捕えるために空を翔けていった。

班足王ら鬼たちが捕えた王は計999人に及んだ。
あと一人は遠く万里の外にいる普明王(ふみょうおう)だけである。
普明王もまた鬼たちに捕えられたが、しかし班足王に命の大切さを説いた。
すると班足王は改心して1000人の王を故郷に帰し、自らは仏道に帰依したのだった。

 * * *

『玉藻の草紙』にみられる班足太子のエピソードとはかなり異なる内容になってますね。
こっちでは生まれながらに邪悪な人間という設定ですし、そもそも人の子ではなかったのでした。
太子でなくて王になってますし。
でも変わらないところは直前の999人の王と捕えるて1000人目の王の説得によって悪心を翻すことでしょうか。

光り物の原因

狐火ばかりが光を放つのではなく、人魂や、より一般化して光り物とか火の玉とかいわれるものもありますね。
光り物は中世にも随分と文献に書きとどめられています。
室町時代の公家や僧侶の日記を読むと、葬儀の時に光り物が出たとか、山の上を光り物が飛んで行ったとか数多く記録されています。

『醍醐随筆』にはそのほかに次のような事例を挙がっています。

1)大蜘蛛
納涼がてら山を散策していると光り物が飛んできた。
田圃の株にとまって火を吹くように生き生きと光っているのを刀で切りつけると、真っ二つに割れて地に落ちたが、なお光り続けている。
松明をさし寄せてみると、大きな蜘蛛だった。
蜘蛛の背にある黄色い横線の紋様が光を放っていたのだった。

2)鯛
すべての鯛が光るわけではなく、そういう鯛もいるということだ。
ある人がその鯛を切って鉢にいれておいたら、夜になって凄まじく光った。
これを煮て食べてみたところ、害はなかったとのこと。

3)青鷺
夜、庭の木に光り物がたたずんでいたので、鉄砲で撃ち殺したら、正体は青鷺だった。

4)古木
朽ちた木や竹で、深林に久しくあって白く黴(かび)湿っていると、白い部分が闇夜に光る。
乾いていると光らない。

5)人魂
これは俗説。
人魂が飛ぶと、必ずその家の人が程なくして死ぬという。
人魂の形状は青くて赤い火の玉で、ゆらめきながら動く。
ただし人魂というのはありえることではない。

6)髪の毛
夜、髪の毛を櫛で梳(けず)るたびに毛の中に火焔がはらはらと落ちる。
これは常に油をつけた髪だと、湿熱にむされて火が出るのではないか。

以上は『醍醐随筆』で中山三柳で述べていることです。
4)古木の事例は以前の記事で画像も載せましたのでご参照ください。
http://blogs.yahoo.co.jp/warszawa11045/16875089.html
まさしくこれですね。

光る鯛や蜘蛛がなんというものか知りません。
なんでしょう…。
青鷺が光るというのも珍しい話ですね。
しかし鷺が妖怪として登場する話がいくつかあり、どうもそうしたイメージをもった鳥だったようです。

このように光り物の原因としては様々な対象が考えられてきました。
闇夜に光るモノというのは、それ自体恐ろしいものであり、したがって想像力を刺激する現象だったのでしょう。

狐火の話

狐の嫁取り(嫁入り)について先日取り上げましたが、その続きです。
http://blogs.yahoo.co.jp/warszawa11045/16875089.html

狐の嫁取りの正体はよく分かりませんが、新潟県三条市の現場では光る苔が原因なのではないかという解釈をする人もいました。
けれども沢山の火が山の麓から頂に向けて移動していくわけで、樹木の皮にへばりついた苔がそんな動くわけがありません。
もっともらしい意見のようで、どうもこれも眉唾な擬似科学的な解釈だと思うのです。

そのほかにも、なんやかやと解釈があるのですけれども、その一つで、これは珍しいなと思うのが大正時代の雑誌『郷土研究』第4巻第1号(大正5年4月)に載っています。
和歌山県の話なのですが、こんな内容です。

「狐の火は小雨の降る夜などによく見ることがある。
 火の色が青くて、はじめに1つ見えたかと思うとどんどん増えていって明滅する。
 火は上下に細長い火である。」

これはまあよくある狐火の話ですけれども、その原因を次のように述べています。

「狐の涎(よだれ)が光るのだとも云ふ」

つまり狐火の正体は狐の涎なのだといいます。
うーん、これはまた斬新なと思いますが、普通に言われるものなんでしょうか。
僕は初見でしたが…。

なお、左右の人差し指と中指を組み合わせて出来た指の間を「狐の窓」といったりします。
そこから狐火を覗いて、ふーっと息を吹くと、狐火が消えるといいます。

指の間から覗くという行為はなかなか呪的な働きがあるものです。


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