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民間伝承

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昭和19年に出された島津久基著『日本国民童話十二講』(日本書院)はよく知られた昔話・伝説類を平易に説いたものです。
児童文学や民間説話のみならず、古典文学に対する深い理解に基づいているので、いろいろ示唆に富むことが書かれています。
読者の対象としては子どもではなく、「児童の親切な保護者であり指導者である」親や大人ということらしいです。
 
とても良い本なのですけど、アマゾンでは検出できないのですね…。
ということで、ここで少し紹介しておきます。
 
まず目次は下記の通り。
 
序 講 1)民間伝承 2)説話・神話といふ語など 3)童話 4)童話を取扱ふ立場 5)国民童話
第1講 因幡の白兎
第2講 かぐや姫
第3講 桃太郎
第4講 一寸法師
第5講 猿蟹合戦
第6講 五条橋
第7講 舌切雀
第8講 花咲爺
第9講 かちかち山
第10講 猿の生肝
第11講 浦島太郎と俵藤太
第12講 金太郎
附録 桃太郎/猿蟹合戦/舌切雀/花咲爺/かちかち山
 
次に、それぞれの童話について参考に引いている文献を並べておきます。
 
1「因幡の白兎」
『古事記』、『因幡国風土記』逸文(『塵袋』『塵添壒嚢鈔(じんてん・あいのうしょう)』)、『古事記伝』
メモ:ワニについて詳しく説かれています。
 
2「かぐや姫」
『竹取物語』、『万葉集』巻16、『華陽国志』、『後漢書』「西南夷伝」、『広大宝楼閣善住秘密陀羅尼経』、『仏説月上女経』、『今昔物語集』巻31、『海道記』、『詞林采葉抄』
メモ:起源について深く探求しておらず、むしろ、種々の素材をもとにしていかに現在の物語のように成ったかに注目しています。
 
3「桃太郎」
赤本『むかしむかしの桃太郎』(表紙掲載)、『燕石襍志』巻4(巻末附録)、『後漢書』「西南夷伝」、国民学校国語教科書『ヨミカタ一』教師用、『古事記』、『雛廼宇計木』(巻末附録)、黒沢翁満「詠猿蟹長歌并短歌」(巻末附録)
メモ:「日本一」という語について詳しく考証しています。
 
4「一寸法師」
お伽草子『一寸法師』(挿絵掲載)、『グリム以後の独逸童話集』(世界童話大系巻12『スペイン童話集』附録)、
メモ:お伽草子『小男の草子』を『一寸法師』からの転生としています。
 
5「猿蟹合戦」
赤本『猿蟹大合戦』、同『さるかに合戦』(挿絵あり)、同『さるかに』、黒本『猿蟹夢物語』、『燕石襍志』巻4(巻末附録)、『尋常小学読本』、『雛廼宇計木』、黒沢翁満「詠猿蟹長歌并短歌」(巻末附録)、『骨董集』上編中巻、三輪環『伝説の朝鮮』
 
6「五条橋」
謡曲「橋弁慶」、『義経記』(挿絵あり)、
メモ:義経伝説です。
 
7「舌切雀」
『宇治拾遺物語』、高橋亨『朝鮮の物語集』、三輪環『伝説の朝鮮』、鳥居きみ子『土俗上より観たる蒙古』、赤本『したきり雀』、雛豆本『舌切雀』、浮世草子『猿源氏色芝居』、内田邦彦『津軽口碑集』、柳田国男・関敬吾共編『昔話採集手帖』、『燕石襍志』巻4(巻末附録)、『雛廼宇計木』(巻末附録)、黒沢翁満「詠猿蟹長歌并短歌」(巻末附録)
 
8「花咲爺」
お伽草子『福富草子』、『放屁軍』、『古今著聞集』巻16、平賀源内『放屁論』、赤本『枯木に花咲かせ親父』、志田義秀『日本の伝説と童話』、内田邦彦『津軽口碑集』、『燕石襍志』巻4(巻末附録)、『今昔物語集』巻26、柳田国男・関敬吾共編『昔話採集手帖』、お伽草子『かくれ里』、『酉陽雑俎』続集巻1、高橋亨『朝鮮の物語集』、三輪環『伝説の朝鮮』、嘉納緑村『琉球昔噺集』、『雛廼宇計木』(巻末附録)、黒沢翁満「詠猿蟹長歌并短歌」(巻末附録)
メモ:屁ひり爺、忠犬の話も併せて取り上げています。
 
9「かちかち山」
赤本『兎の手柄』、十返舎一九『閣々思(かちかちやま)獣世界』、黒沢翁満「詠猿蟹長歌并短歌」(巻末附録)、滝沢馬琴『燕石襍志』巻4(巻末附録)、同『烹雑(にまぜ)の記』下巻、佐々木喜善『聴耳草紙』、『十二類絵巻』、『雛廼宇計木』(巻末附録)
メモ:『十二類絵巻』について言及している点、貴重。
 
10「猿の生肝」
『今昔物語集』巻5、『仏本行経』(『法苑珠林』『祖庭事苑』所収)、『パンチャタントラ』、堀謙徳「文学上兎鰐噺の起原及び変遷」(『東亜の光』所収、ただし号数未確認)、『沙石集』巻5上、『三国史記』巻41、赤本『猿のいきぎも』、同『亀万歳』、黒沢翁満「詠猿蟹長歌并短歌」、嘉納緑村『琉球昔噺集』、三輪環『伝説の朝鮮』、『古事記』
メモ:龍宮に関していろいろ考察されています。
 
11「浦島太郎と俵藤太」
『日本書紀』「雄略天皇紀」、『丹後風土記』(『釈日本紀』所収)、『浦島子伝』、お伽草子『浦島太郎』、同『蛤(はまぐり)の草紙』、謡曲「浦島」、嘉納緑村『琉球昔噺集』、『今昔物語集』巻5、同巻16、『宇治拾遺物語』、近松門左衛門『浦島年代記』、黒本『金平龍宮物語』(挿絵あり)、滝沢馬琴『燕石襍志』巻4、『太平記』巻15、お伽草子『俵藤太物語』、謡曲「百足」、高木敏雄『日本伝説集』、『淵鑑類函』、『古事談』巻5
 
12「金太郎」
『信濃奇勝録』、荻生徂徠『南留別志』、『今昔物語集』巻28、『古今著聞集』巻9、『古事談』巻2、古浄瑠璃『金平誕生記』、同『清原右大将』、近松門左衛門『嫗(こもち)山姥』、『前太平記』巻16、常盤津「新山姥」、謡曲「山姥」、藤沢衛彦『日本伝説叢書』「信濃の巻」、お伽草子『花世の姫』、『宇津保物語』

上賀茂神社の樗

『徒然草』に5月5日の賀茂の競馬(くらべうま)のエピソードがあります。
 
兼好法師が競馬の見物に行きました。
沢山の人で混み合っていて競馬の様子が分かりません。
どこかにいい場所がないものかと探してみたところ、向かいの樗(おうち)の木に法師が一人登って木の股に座って見ています。
しかし、眠気におそわれたようで、次第に舟を漕ぎだしました。
落ちそうになると目が覚め、またウトウトしだすと元に戻るという始末。
はたから見る人たちの中には、ハラハラする人もいるし、バカだなあと思う人もいます。
「なんとたわけた者よ。あんな危ない枝の上で安心しきって眠っているわい」
そんな言葉を耳にして、兼好は反射的に思ったことを口にしました。
「自分たちに死が訪れるのが今この瞬間かも知れないのに、それを忘れて見物などにうつつを抜かす。そのほうがよっぽど愚かしいことじゃないか」
これを聴いた見物の人たちは、その通りと感心したようで、後に立っていた兼好を迎え入れたのでした。
 
さて、この法師が登っていた樗ですが、今、特定できるのでしょうか。
それはまあ、『徒然草』に正確に記録したわけではないから見付けようがありません。
しかし詮索好きの人はいつの時代にもいるもので、いつしか誰かが
「あれが競馬見物の法師が居眠りしていた樗だ」
などと言い出し、周囲も次第にそう思うようになり、結果、一本の樗に伝説の木となったようです。
 
これについて、伊勢の神宮文庫というところに、江戸時代の上賀茂神社の社家が著したと思われる写本が残っております。
それを読むと、次のようなエピソードが記されています(表記は読みやすく改めています)。
 
乳母木(うばき)と申すは二の鳥居の前、御所の屋の辺りにある大木をいへり。
榎なり。
その前に樗の木あり。
かの大木、この木をいだくに似たるゆへに乳母木と名付けたり。
かの榎の囲み二丈ばかり有りしが、樹の根朽ちて延宝年中に倒れけり。
今の木はその跡のしるしなり。
昔くらべ馬を見侍りしに、車の前に雑人立ちて見えざれば、むかひなる樗の木に法師のぼりて木の股につい居てねぶりて落ちぬべき時に、目を覚まし侍ると、『つれづれ』とやらんに書きたる木はこれなりとぞ。
 
上賀茂神社の二の鳥居の前に乳母木という大きな榎がありました(二の鳥居は下記境内図中央)。
それに寄り添うように立っていた樗こそ、『徒然』とやらに書いてある木なんだそうです。
江戸時代にはそういう伝承があったようですね。
しかし残念なことに延宝年中に枯れて倒れてしまったようです。
記事は恐らく榎が倒れたのだといいたいのでしょうけど、樗のその後について言及していないので、これもまた運命を共にしたのかも知れません。
 
昔ノートに書き留めておいたものを読み返して面白いと思ったので、時期外れの記事ですが紹介しておきます。

小栗判官一代記

今年の冬は寒いですね。
時期外れの話題なんですが、暑いさなかのお盆の時期の行事について取り上げたいと思います。
というのも、先月、年始で実家に行った時に、昔撮影した写真がいろいろ出てきたのですが、その中に面白いものが含まれていたからです。
 
今から18年も昔!
炎天下、神奈川県藤沢の遊行寺にお参りに行きました。
そしてさらに奥地に行くべくバスに乗って山を登っていくと、花応院というお寺があります。
あまり大きくなくお堂に地元の人が20人あまり集まっておりました。
そこで地元の方が額に入った大きな絵を示しながら物語を語りました。
イメージ 1
 
どんな物語かというと、小栗判官の伝記です。
小栗判官とその家来10人は照手姫の父横山大膳によって毒殺されてしまいます。
閻魔王の力で蘇ることができることになりました。
ところが家来衆はすでに火葬を済ませたあと。
ただひとり、小栗だけが火葬されておりませんでした。
そこで小栗ひとりがこの世に蘇生します。
復活したものの、業病を患った小栗は壮絶な時を経て完治。
かくして横山を退治します。
 
物語のなかば、小栗たちが地獄に落ちます。
そこで語り手はご住職とバトンタッチ。
閻魔十王図の掛け軸を示しながら地獄の在り様を説きます。
イメージ 2
一通り地獄の様子を語った後、小栗が蘇生してからの物語に移ります。
 
全体は1時間程度。
このあと、ジュースが出て、ちょっとした懇親会となりました。
僕は末席にいて、戦国時代の落ち武者の流れを汲むという方に絵解きのことや当地の盆行事のことなどうかがいました。
 
今でも小栗判官の一代記の絵解きは行われていることでしょう。
絵解きといえば、紀州道成寺の縁起がよく知られていますけど、こういうささやかな絵解きも民俗社会での物語文芸を考える上でとても重要だと思いました。
 
この時(平成6年8月16日)の印象が日記に書かれていたので、少し引用しておきます。
「藤沢は山に進むと全く違う土地になる。特に旧俣野町はそうだ。一軒々々は広く立派な農家が多い。大抵、二、三の旧家と其分家からなっており、ともすると、どこか遠くの山村に来ているような心持ちがする処だ。」
 
あれから18年。
また機会があれば行きたいものです。

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サル雑感

ブロ友リンメイさんが記事にされている猿神退治の話(http://blogs.yahoo.co.jp/therinmeis1979/20435428.html)を読みながら、サルって面白いなあと思いました。
 
サルが山の主のように人間を凌駕する強い力をもって、人間を脅かす場合があります。
そうなると、人間の娘を生贄として要求します。
 
これより力は弱いですけど、こんな場合もあります。
農夫が畑仕事の助っ人を求めるていると、サルが助けてくれました。
その代償に農夫の娘を嫁に要求します。
 
どちらも救出されますが、その際、猟師が直接、間接に関わってきます。
猿神はなかなか劇的な話ですけど、後者はコミカルな話に仕立てられています。
 
これらとは別に、猟師の出てくるものとして、おぞましい話もあります。
孕んだサルを撃ち殺しました。
サルは命乞いをするのに、それを無視して殺したのです。
その後、猟師の妻が子どもを出産するのですが、その子がサル、もしくはサルのような異形の子でした。
馬琴の作品で、殺したサルの遺児を自分の子どもと同じく育てるというのがありますが、それはこの民間説話をベースにしているのかも知れません。
殺した祟りで山女郎を産むなんて事例もあります。
 
サルはこのような祟りをすることもあれば、恩に報いることも多かったようです。
 
また特殊な能力としては、人間に化けるということもしばしばありました。
キツネやタヌキ、イタチ、カワウソが人間に化けることはよく知られていますが、サルも化けるんですね。
意識していなかったのですが、探してみると、意外にサルが化ける事例が出てきます。
 
ちなみに、カッパやザシキワラシもまた、地域によってはサルと近しい性格を持っております。
カッパをエンコウ(猿猴)と呼ぶのはその現れでしょう。
柿本人麻呂の代表的な歌に次の一首があります。
 
  ほのぼのと明石の浦の朝霧に 島隠れ行く 舟をしぞ思ふ
 
この歌は中世、神秘的な解釈が行われ、仏教の深奥に及ぶ教理が込められているものでした。
 
ところで人麻呂は中世以来、人丸と称されてきました。
それが近世、民間レベルで不思議な意味づけが加わりました。
すなわち、
 人丸=火止まる
です。
 
人丸の絵を飾っておくと、火の用心になるのでした。
 
イメージ 1
 
ここの紹介するものも、おそらく火の用心の目的を兼ねた絵だったのでしょう。
 
  我が宿の 柿本(かきのもと)まで やけきても
    あかしときへて こゝでひとまる
 
柿本は我が屋の垣のもとということですね。
文字絵というのも面白いと思います。
 
 
***メディアコンテンツ研究会―活動報告***
魔法少女は流れない、それは積み重なる
 

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