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擬人化作品(前近代)

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精進魚類の擬人名

戦前に宮武外骨という著述家がいました。
この人は非常にユニークな著作を数多く残し、今日でも根強い人気があります。
『明治奇聞』『明治密偵史』『筆禍史』『私刑類纂』『アリンス国辞彙』などなど。
タイトルだけ見ても、手にとってみたくなるものばかりです。
そうした宮武の著作の中でも個人的に愛着をもっているのが『日本擬人名辞書』という大正時代に出た薄い和装本です。
「土左衛門」とか「鴉の勘左衛門」とか、人の名のようで人の名でない名詞を集めて解説したものです。
よくもまあ集めたものです。
巷で使われる俗語から童謡に出てくる擬人名(上の鴉の名みたいな)までさまざまなところから見つけ出してきています。

これを見ながら思ったのは、古典作品の中にはそんなの山ほどあるわいなということでした。
宮武も知っていながら、あまりの量に黙殺したのかも知れません。
こないだから本ブログでたびたび取り上げている万物滑稽合戦記の類のことです。

ということで、『精進魚類問答』からちょっと抜き出してみました。
なお、本作品については以前の記事をご参照されたし
 →http://blogs.yahoo.co.jp/warszawa11045/19903468.html

【精進方】
大麦大納言いつたい卿
ひからしの助酢五郎(大麦子息)
小麦少納言饅頭公饂飩之助あつもり
五郎四郎ゆで餅
味噌醤油酢酒大臣
豆腐判官六条
納豆坊(豆腐判官子息)
昆若悪四郎
南京坊一官
夕顔の前(南京坊妻)
木瓜之助(南京坊子息)
真桑(南京坊息女)
唐草
軽業の瓢箪兵衛(夕顔の前兄)

【魚類方】
鯛将軍金高
鯨の大助
蛸の入道きこり坊
鱸の三郎酢て好
鰶六郎(鱸三郎弟)
平すの鰤助
鰐鱶の荒五郎
王余魚七郎横目役
鯖の十郎
伊那村六郎螺次郎臼餅
磯辺の鯵蔵
入鹿大臣
鮪の徳助
昆布太夫
荒布の前(昆布太夫の娘)
なごや(荒布の前の乳母)
搗布太夫
ひじきの前(搗布太夫)

【その他】
八木大王(日本国王)
早飛脚螽助
杓子の源太
鍬の柄金さき
坂の下ふく兵衛
血の道産五郎


こういう名前、作者は真面目に悩みながらひねり出したものなんでしょうか。
訊いてみたいものです。

名前についてコメントするのは、長くなるので今回はやめておきますが、一つだけつけるならば、国王の八木大王は〈米〉を分解して〈八木〉としたものです。
そのほかにローカル色のある名前とか有名な武士にちなむものとか命名法はいくつかあります。
お時間のある方は考えてみてください(^^)

イメージ 1

イメージ 2

前回、前々回と紹介した「万物滑稽合戦記」ですが、そこに収録されている短編作品の1つに『世帯平記雑具噺(せたいへいき・がらくたばなし)』というのがあります。
実はこの本は原本が手もとにありますので、ちょっと取り上げておきます。

タイトルの「世帯平記」というのは「世帯」と「太平記」を合せた洒落です。
「太平記」と名のつく物語は近世前期から多く作られました。
『魚太平記(うお・たいへいき)』『獣太平記(けだもの・たいへいき)』『陰徳太平記』『英雄太平記』『鬼神太平記』『北国太平記』『三日太平記』などなど。
近代にいたってもそれは変わりません。
大河ドラマになった『真田太平記』ばかりでなく、『明治太平記』『おてんば太平記』『財界太平記』など、いろいろ、さまざまという点では近世以上に幅広いかも知れません。
ともかく、合戦物の代名詞といったところでしょう。
南北朝の合戦を叙述した中世の大作『太平記』がいかに後世の人々に愛読されていたかが窺われます。

さて、当の『世帯平記』ですが、「太平記」といいながら、表紙をみると、ちょっとおかしい・・・。
世帯道具の複合体の擬人化キャラクターが描かれています。
それはそれでいいのですが、よくよく見ると、背中に色々と武具(に見立てた道具類)を背負ってます。
これはいわゆる七つ道具でしょう。
ということは、モデルとなった武人は『太平記』の登場人物ではなく、むしろ『平家物語』。
すなわち武蔵坊弁慶なわけです。
本文をざっと見ると、別段『太平記』らしい文章もプロットもないようなので、あんまし『太平記』の影響ということを考えてはダメなのかも知れません・・・。

中巻の表紙もあわせて掲げておきましたが、これはどこか芝居がかっている気がしますが、芝居か何かをパロってるのかも知れません。

『続帝国文庫』(明治34年刊)のシリーズの中でも出色の「万物滑稽合戦記」。
その内容は次の通りです。

1)精進魚類物語
2)鴉鷺合戦物語
3)鶏鼠物語
4)水鳥記
5)草木軍談賤爪木(くさき・ぐんだん・しづがつまぎ)
6)虫合戦物語(御伽夜話)
7)獣太平記(けだもの・たいへいき)
8)黴瘡軍談(ばいそう・ぐんだん)船越敬祐著
9)黴瘡雑話 船越敬祐著
10)竈将軍勘略巻(かまど・しょうぐん・かんりゃくき)時太郎可候(葛飾北斎)著
11)食類合戦和睦香之物 市場通笑著
12)忠臣瀬戸物蔵 十返舎一九著
13)茶漬原御膳合戦 萩原萩声著
14)金銀太平記 荒金土生著
15)大平気
16)三薬太平記 笑給著
17)虫看鑑野辺若草(むしめがね・のべのわかくさ)十返舎一九著
18) 花見虱盛衰記 曲亭馬琴著
19)衣食住世帯評判記 曲亭馬琴著
20) 菓物見立御世話 北尾政演著
21)桃太郎後日噺 朋誠堂喜三二著
22)猿蟹遠昔噺 恋川春町著
23)化物仲間別 伊庭可笑著
24)閣思獣境界(かちかちやま・けだもののきょうがい) 十返舎一九著
25)貧窮合戦記
26)大平記餅酒合戦
27)世帯平記雑具咄(せたいへいき・がらくたばなし)
28)世帯平記諫略巻
29)蚤蝨蚊狂言
30)魚貝英記餅酒合戦
31)麻疹太平記(はしか・たいへいき)
32)下界騒動乾坤三州志 東山図簶斎著
33)評判竜美野子 泉山坊梁鶴州著
34)五百崎虫の評判 市川白猿・談州楼焉馬著
35)珍術罌粟散国(ちんじゅつ・けしさんごく)
36)麻疹戯言 式亭三馬著
37)滑稽雌黄 桂井蒼八著
38)含糖紀事 熊坂台州著
39)猿蟹物語 六樹園(石川雅望)著

以上の諸編です。

お伽草子から仮名草子・浮世草子・黄表紙などなど多岐にわたります。
時代は室町時代から幕末まで。
素材もさまざま。
精進物・魚介類・動物・鳥類・虫類・植物・ばい菌・食べ物・世帯道具・化け物などが扱われています。
これらを擬人化して合戦をするわけです。
人間以外の物たちの合戦を描くことが、これだけの長きにわたってテーマになっているのですから、一つの文学伝統といっていいのではないかと思います。
編者の石井研堂が述べています。
「未だかつて血を流し、肉を飛ばすに到らず、たゞ、あゝ面白いと云ふ勝鬨(かちどき)の声をあげしめんことを期するのみ」
いろいろな物がそれぞれの属性をいかしながら戦います。
タコが墨を吐いて攻撃したり、豆腐が負けて油揚げになったり、趣向を楽しむのが魅力の一つ。

〈擬人化〉という言葉が用いられなかったころ、これらは〈見立て〉と呼ばれていました。
〈見立て〉の文化史の中でこれらの珠玉の小品を再評価していきたいものです。

明治時代に出版された古典作品のシーリズ物、帝国文庫。
それに続く続帝国文庫。
これらはいまだに有用なものが多い本です。
図書館で閲覧しようと思っても、所蔵していない館が多く、また国会図書館のように、古いものゆえ、マイクロフィッシュでの閲覧が求められるところもあります。
それならばと、神田神保町を歩いてみると、存外出回っていて、しかも廉価で入手できます。
試みに「日本の古本屋」サイトで「帝国文庫」で検索してみると、大概、2000円弱で買えるし、中には1000円以下のものも目につきます。
ところがその続編「続帝国文庫」になると、一気に値が上がります。
あんまり出回っていないんですね。
「日本の古本屋」で検索すると、5000円台のとか、平気であります。
けれども神保町を丹念にあるくと、1冊500円程度で、しかも冊数もかなり揃えている店もあることが知られます。
ネット購入もいいですが、昔ながらの地道な探索が必要なわけです。

しかし、それでも入手できない本があります。
「万物滑稽合戦記」という明治34年に出版された続帝国文庫の1冊です。
少なくとも3版までは出ているので、ちょっと探せば見つかるんじゃないかと軽くみていたのですが、さにあらず。
どうしたことか、巷に出回りません。
古書目録の類も毎月いくつも見てますが、ついぞお眼に掛ったことがない次第orz
仕方ないので、今は縁のある大学図書館で借り出しているところです。

さて、「万物滑稽合戦記」という本に収録されている作品は誠に珍本の数々なのです。
室町期から幕末の戯作までを収録し、その内容は動植物から植物・器物などなどまさに「万物」たちが擬人化されて合戦を繰り広げる作品ばかりです。
このネーミングはたぶん、編者の石井研堂によるものと思いますが、的確で素晴らしいものだと思います。
最近、このタームを広めたい衝動に駆られていますwww

ということで、ぜひ入手したい1冊なのですが、運が悪いのか、探し方が悪いのか、いまだに手に入れられません。
この記事をご覧になった方で、本書を売る店をご存じの方があれば、何卒ご一報下されたくお願いします。

精進料理×魚類

精進料理と魚介類との合戦物語が室町時代に作られました。
『精進魚類物語』といいます。
これは意外と読まれたもののようです。
江戸時代にくだって、『魚類青物合戦状』という物語が作られました。
これは『精進魚類物語』の改作といっていい作品です。
どちらも『平家物語』の影響を受けているので、軍記物語の一種としても見られます。

ところで『精進魚類問答』という作品があります。
これまた『精進魚類物語』の後続作品とみていいかと思います。
ただ、文章表現や物語の構成をみると、全然違います。
キャラクターも重なりません。
発想だけ『精進魚類物語』の系譜にあるものなんですな。
江戸の料理本には「精進魚類○○」というタイトルのものが目に付きます。
精進料理と魚料理の対決は格好の題材だったのでしょう。

さて、この物語の内容はこんな感じです。
八木大王の治める日本は繁栄していました。
精進方と魚類方が車の両輪のごとく国を支えていました。
ところが大王は寺々への参詣や在々所々には精進方ばかりを供にします。
これを遺恨に思った魚類方は精進方に攻め入る計画を立てます。
これを知った荒布(あらめ)の前が恋する豆腐の判官六条に内通します。
両者の対立を知った八木大王は魚類方大将鯛金高と豆腐判官とを召し寄せ、両者を問答させます。
結果、大王の執り成しで和睦に及びます。

なお、これには続編『唐草繁昌之巻』という作品も合冊されています。
唐土から渡来した唐草の物語でやはり八木大王の時代のことです。

なんとも不思議な作品です。
豆腐の判官六条は六条豆腐に基づくものです。
仲介をした大王の名前が八木というのはどうしてでしょう。
【八】+【木】=【米】
ということでしょうね。
米は精進料理にも合うし、魚料理にも合います。
酒と茶の問答で水が仲介になった作品もあります。
どちらも設定としては適切ですね。


小生、明日までにこの作品を全部活字化しないといけないのです。
後、半分くらい残ってます。
終わるかなあ・・・
http://irui.zoku-sei.com/

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