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新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。年始にあたり、今年度の景気情勢や株価・不動産市況を展望していきたいと思います。
■景気情勢
年末年始の経済報道等をみていると、本年の経済情勢については緩やかに回復するという声が多数を占めていました。夏の参議院選挙ならびに来年の消費税率引き上げに向けて、経済を失速させてはいけないという安倍政権の政策に期待していることが背景にあります。
一方で、日銀が進めている超金融緩和については、物価上昇率2%の達成が見えてこない状況下では、今年も継続されることは間違いなさそうです。長期金利も含めた金利が昨年のようにゼロ金利が継続されることで、不動産市況への影響はプラスに働きます。
ただ、気になる点もあります。米国の利上げペースがどうなるのか、また中国経済の情勢がどうなるのか、IS(イスラム国)によるテロが広がることによる世界経済の混乱は発生するのか、資源価格が落ち着きを見せ、再度上昇するのか、など世界経済の不透明な状態が予想されています。
■株価
個人的には日本の株価水準の引き上げには世界経済の成長が不可欠であり、とりわけ為替が円安に進行し(米国の利上げが継続されれば金利差による円安要因になります)、外国人投資家による日本株買いが継続されることが条件です。
日経平均株価2万円台に定着するための壁は厚く、1月1日付日経新聞の特集記事「経営者が占う2016年」では高値2万2000円以上という声が多いようです。期待感が込められている一方で、予想株価をみると、慎重な声が多いのも分かります。
一番高値を予想しているのは信越化学工業の金川会長の2万4000円という予想であり、意外なほど保守的な感じがします。
■不動産市況
金利上昇がないとすれば、現在の不動産市況に与える影響はプラスです。オフィス市況(賃料、空室率)も改善しており、また海外からの観光客も増加し続けていることから、オフィスやホテルREITを中心とした買いは継続して見込めるため、急落の可能性は小さいでしょう。
一方で、地方については引き続き厳しいと予想されますので、首都圏との格差拡大が今年も見受けられると思います。
東京周辺に関してみれば、東京オリンピックに向けた動きは相変わらずみられており、大手ゼネコンを中心に業績の拡大が続くものと思われます。
懸念事項としては、昨年発生した杭打ちデータ改ざんによる影響です。現段階では業界全体としての業績への影響は不明ではありますが、現場での立会い義務化や何らかの費用発生が伴う対応策が不可避となれば、過去に施工した物件への対応も含め、マイナス要因になりかねません。
年度後半には、消費税引き上げ前の駆け込み需要の話も出てくるかもしれませんが、消費者は過去数回の消費者引き上げの経験も踏まえ、大きな影響はないと予想しています。
■最後に
申年の株式相場は格言通り「騒ぐ年」となるのかどうか。12年前(平成16年)には株価は大きく変動し、24年前(平成4年)はバブル崩壊の最中でした。
IT化がどの業界でも進み、スピードが早まっています。どの企業も「スピード」
「変化」「対応」がキーワードになっていくと思います。企業や自身にとって、悪い事象が発生した時、どのように対処すべきか、その対応力とスピード力がその後の結果を左右する時代になってきていると思います。
箱根駅伝ではないですが、一度走り始めると、近くにゴールはありません。絶えず全力疾走をし続ける必要がありますが、一人一人の力だけではなく、全体のチーム力(企業力)がそのスピードを縮めるポイントにもなります。個人個人の力を思う存分発揮できる年になってほしいと願っています。
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時事通信の本日配信記事です。
【引用】
金融機関の不動産業向け融資が高水準で推移している。国内銀行の2014年度の新規貸し出しは10兆円を上回り、バブル絶頂期の1989年度やミニバブルと言われた07年度の水準にほぼ並んだ。金融庁は、融資の焦げ付きなどで各地の地方銀行や信用金庫の経営に影響を与える恐れがないか、監視を強めている。
日銀の統計によると、14年度の不動産業向けの設備資金の新規貸し出しは、銀行が10兆1549億円と7年ぶりに10兆円を超え、信用金庫も2兆1002億円と初めて2兆円を突破した。大手行では、都心の物件に投資する大手の再開発業者や不動産投資信託(REIT)向け融資がけん引。これに対し、地銀や信金は個人の資産管理会社など中小向け融資の伸びが高いのが特徴だ。
地銀・信金の不動産業向け融資の増加の背景には、今年から相続税が増税された影響もある。借入金で不動産を購入すれば資産家は相続税を抑えられるため、地方の県庁所在市を中心に「相続税対策で賃貸用のアパートやマンションを建設するニーズが増えている」(有力地銀)という。日銀の大規模金融緩和で超低金利が続く中、利ざやを稼げる有望な貸出先が少ないことも、地銀を不動産向け融資に走らせる要因になっている。
【所感】
不動産向け融資が増加しており、金融庁が地銀の監視を強化しているという記事を取り上げます。バブル期並みというのは相当インパクトのある見出しですが、不動産業向けの新規貸し出し額についての比較です。
記事では読み取れませんが、地価が上昇している場合には、それだけ融資額が大きくなる傾向にあります。バブルが発生しているという見方もできます。そのため、一つの指標としては、もはやピークに来ており、金融機関による引き締めが始める可能性があるとも読み取れます。
地銀・信金の不動産業向け融資の増加については、相続税増税の影響を上げています。賃貸用のアパートやマンションの建設により、相続税を抑えることができたとしても、その後の経営がうまくいかなければ、現金流出が進むだけです。安易な相続税対策が将来に禍根を残すという結果にならなければいいですが、バブル崩壊時には多くの人が痛みを感じたはずです。金融機関の姿勢一つで、同じ過ちを繰り返すおそれがあるのです。
金融機関にとっては、不動産業向け融資は担保も取得しやすく、融資額が稼げる業界の1つです。そのため、貸出先に困った時などにはついつい不動産業向け拡大に走りがちです。金融庁の監視がどこまで強化されるのか、金融引き締めが起こりそうにない今だからこそ、先取りした形で注視しておきたいです。
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今朝の日経新聞社会面の記事です。
国税庁が全国の国税局に対し、タワーマンションを使った相続税対策への監視を強化するよう、指示を出していたことが分かったという記事です。相続税評価額を抑える方法として人気があるタワーマンション購入ですが、行き過ぎた節税策となれば、相続税が追徴課税される可能性がある、としています。
相続税の引き上げが今年1月の改正で行われ、最高税率が50%から55%まで引き上げられ、非課税枠も縮小したことから、新たな相続税対策として、タワーマンション投資が行われてきています。
紙面でも説明されていますが、マンションの相続税評価額(土地)は、敷地全体の評価額に、その部屋の持ち分をかけて算出するため、高層マンションは戸数が多く、1戸あたりの持ち分が小さくなるという利点を生かし、評価額を抑える仕組みです。
つまり、同じ広さで高層階と低層階を比較した場合、相続税の評価額が同一であることから、高層階を購入した方が、売却した後に高く売却することで、現金での相続より有利とされているものです。
この手法は、マンションの相続税評価の盲点を突いたものといえますが、既に実施されていることから、どの程度の節税が問題になるのか、具体的な目安はありません。東京カンテイの井出氏も指摘していますが、「不適当とする基準を公表し、透明性を確保すべき」と指摘していますが、そもそも購入目的が「投資用(節税対策も含む)」なのか「居住用」なのかで、異なるかと思います。
マンションの評価額算出方法を変えるのか、また別の方法があるのか、私個人の考えは、数年程度の事例を国税庁が集めながら、具体的な規制強化を図っていくものと思います。また、国税庁も相続税だけに着目せず、不動産譲渡益課税などで、総合的な観点での判断をしてほしいと願っています。
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今朝の日経新聞「新興・中小企業面」の記事です。
中小企業のオーナー経営者が自分の子供に会社を譲らず、社員を後継ぎとして育て社長職や株式を託す例が増えているようです。そのための手法も多様化しており、国も1月から税制の優遇制度で後継者不足に悩む中小の事業承継を後押しするとしています。紙面では「持ち株会社化」、「投資ファンドの活用」、「時間をかけて株式を分散譲渡」の3つのケースで親族以外に会社をつなぐ試みの難しさと利点を探っています。
中小企業の事業承継は、私が銀行にいた10年以上前から、取引先企業が抱える経営課題テーマでした。実際には、創業者が引退を先送りすることで、事業承継が行われていないケースもありますが、創業経営者が、70代以上の会社も多く、今後の10年では大きなテーマになるかと思われます。
紙面で取り上げられている「持ち株会社化」、「投資ファンドの活用」、「時間をかけて株式を分散譲渡」については一長一短あります。なかでも、第三者に株式を譲渡する「投資ファンド活用」という選択肢は、さまざまな面でややハードルが高い気もしますが、株式を自身で買い取れることができたのは、ある意味では幸いであった事例かと思います。
持ち株会社化についても、大企業であればそのような選択肢もありますが、中小企業ではどこまで効果があるのか、見えにくい点もあります。自主性を促すための仕掛け、と説明されていますが、社員50名以上の規模の会社でないと、やや大がかりな組織体制になろうかと思います。
株式の分散譲渡については、期間次第ですが、紙面の例では20年。少しずつ時間をかけて譲渡を行うことで、資金負担が軽減される他、持ち株会なども活用し、買収リスクを軽減できるメリットはあります。しかし、ある程度早い時期に計画をし、実施していくことが必要です。
事業承継に係るビジネスも増えており、税理士法人や信託、監査法人、コンサル会社等の関連事業者も参入しておりますが、メリット、デメリットを総合的に判断し、早急な結論を出すことがないように、慎重に対応したいところです。
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昨今、報道を賑わせている横浜市都筑区の三井不動産レジデンシャルが販売した分譲マンションにおけるマンション傾斜問題について考えます。
今朝の日経新聞で、施工体制が掲載されています。実際に杭打ち作業を行った2次下請けの旭化成建材ばかりが注目を集めていますが、施工元請けは三井住友建設で、1次下請けは日立ハイテクノロジーズです。その下請け(2次)として旭化成建材が受注しています。
通常は、旭化成建材の業務を1次下請けである日立ハイテクノロジーズが監理・監督し、その日立ハイテクノロジーズの業務を三井住友建設が監理・監督するという流れになります。そのため、旭化成建材ばかりが叩かれている印象もありますが、本来は同社へ発注した日立ハイテクノロジーズがまず問題視され、さらに日立ハイテクノロジーズへ発注した三井住友建設の責任がより重くなるというのが建設業界の考え方だと思います。
杭打ち工事のデータ改ざんについては、現場レベルでないと見抜けないものです。マンション購入者や販売会社が見抜くことは、地中の事象であり、不可能に近いでしょう。そうなると、信頼関係で購入するしかないわけですが、それにしてもリスクが高すぎます。マンション購入時には施工する建設会社の名前は把握できても、その下請け企業までを把握するのは困難です(工事現場で施工体制図などを確認することで把握はできますが、青田売りのマンションの契約後であれば、事前の把握は不可能です)。
今回問題になっている購入者は、三井不動産レジデンシャルという大手企業のブランド名と三井住友建設という東証1部上場の建設業者を信頼して、購入しているわけですから、昨今の消費者保護が強化されている流れの中では、信頼を失ったといわざるをえない状況です。
次に、このような事態を防ぐ対策についてですが、難しいというか、費用がアップしてしまいますが、第三者による検証(コンストラクション・マネジメント=CM)業務を入れるという方法がまず考えられます。元請けである建設業者と直接関係のない第三者企業が監視する仕組みです。第三者企業もフィーを受領し、一定の責任を負うわけですから、不正を防ぐ監視役として、現場でしか見抜けない不正を防止する役割を期待できます。
その他の方法としては、不正時における行政処分をより厳格化し、不正を起こさせない企業風土を作るしかありません。モラルの問題になりますが、不正を行った場合、最悪会社が倒産してしまうくらいの厳罰を受けるということが事前に分かっていれば、絶対に行っていけないという認識を従業員が強く持つわけですので、一定の抑止力にはなります。
最後に、ベテラン社員や経験が豊富な社員だからといって、会社も任せることではなく、不正防止のチェック機能を作ることです。特に、中小企業の経理業務で多いと言われますが、経験者が一人で完結できてしまうという状態が継続してしまうと、不正を行うことができる方法までも把握できてしまいます。「コンプライアンス教育」のように法順守を明確に再教育していく必要があります。
現在は、他のマンションでも同様の問題が出てこないか、出てこないことを祈るばかりです。
マンション販売業界全体だけでなく、建設業界の大きな問題になりかねません。法規制というのは、このような問題が起きてから、規制強化していく流れですので、国交省も何らかの法規制を検討していくことになるかと思います。
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