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ワンダーフォーゲルの山紀行
18才から50年山を歩いています。全国あちこちの名峰や関西の山を四季歩いています。スキーも大好きです。

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1月23日 帰国

 今日は帰国日。まだ薄ぐらい6時45分にホテルを出て、ツェルマット駅に向かう。暖かい朝だ。おそらく氷点下になっていないのではないか。標高1600メートルの高所で、しかもまだ1月だというのに。
 ガイドさんから切符を手渡された。改札口で読み取り機に切符のバーコードをかざして乗車。日本なら磁気切符を読み取り機に投入するのにたいして、こちらではバーコードの情報を光学的に読み取る。バーコードを印さなければならないので、切符のサイズが数倍大きく、バーコードの光学的読み取りは時間がちょっと時間がかかる。切符に関する限り磁気の方が早く小さくてすむと思うが、せかせかしない国民性か。ここにも文化の違いを感じる。

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日本の切符の3倍ぐらいの大きさ。これを読み取り機にかざす

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改札口。読み取り機は光学式で少々面倒

 先に記したチューリッヒ散策記事の中で、「チューリッヒ中央駅でもツェルマット駅でも改札口がない」と書いたのは間違いだった。ツェルマットで下車した際に改札口がなかったのでそう書いてしまったが、乗車側には改札口はあったからだ。しかしひと駅で下車したテーッシュでは降車側の改札口はなく、切符は回収されることもない。この駅でも乗車の改札口はあったが、降車側には改札口がないということは、日本でいうところの不正乗車の余地はいくらでもある。やはり人間の良識に信頼を置き、公共交通を市民で支えようという思想が働いているからではないか。ここでチャーターバスに乗り込む。チューリッヒまで約4時間の旅だ。

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この画像は下車したテーッシュで撮ったもの。だから行き先がツェルマットになっている

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降車したチーッシュ駅。まだ暗い

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大型バスに乗り込む。馬鹿でかい

 8時になってようやく夜が明け、明るくなってきた。スイスは緯度が高いため冬は夜明けが遅いのだ。車窓を眺めていると電柱や電線がないことに気づく。むろんツェルマットに電柱や電線はなかったが、それは国際的リゾート地だけではないのだ。景観を壊すものを徹底して排除する。見事なポリシーというしかない。
 ゴッペンシュタインでカートレインにバスごと乗り込む。大型バスなのでトレインに乗り込むには熟達した運転技術がいるとのこと。バスはミラーをたたんでそろそろトレインに進む。間もなく列車ごとバスは動き出した。むろん乗客は乗ったままだ。貴重な体験をした。ちょっと驚いたのは、トレインに乗り込んだ車に、フェリーなどでやっている車止めのわっぱをかませないことだ。サイドブレーキのかけ方が甘いと車が動いてしまう。日本なら考えられないことだが、ここでも利用者の良識に信頼を置いているようだ。ツェルマットに入るときもこのカートレインに乗り換えているのだが、闇夜だったので様子が分からなかったのだ。カートレインの乗車時間は15分ほどでさほど長くはない。

カートレインの様子を動画でどうぞ

 では何故今もカートレインなのだろうか?ガイドさんに聞いてみた。山岳道路を作らずトンネルにしたのは、敵の侵入を防止するための歴史的経過があるようだ。侵入の恐れがあればトンネルを爆破して侵入を防ぐ、軍事的要請があったためだという。しかし第2次世界大戦までの、他国を侵略し、植民地のぶんどり合戦をやっていた帝国主義時代ならともかく、現代はそんな時代ではない。とすれば今も山岳道路や自動車用道路のトンネルを通さずカートレインにこだわっているのは何故だろう。これ以上通行量を増やさない政策的判断があるという。ツェルマットに化石燃料車の乗り入れを規制し、環境保全を貫いている。建物物の高さを規正し、様式もシャーレという地元伝統のものに統一している。観光立国に生きるポリシーが見事に貫かれている。
 上高地も規制しているではないか、という声が聞こえそうである。確かに沢渡で車の乗り入れが規制されているが、上高地は人の居住が限られた観光地にすぎない。ツェルマットは鉄道が乗り入れ、数千人が住み、多くのホテルやブランド品を取り揃えている店舗が立ち並ぶ一大国際リゾート都市のことである。
 トンネルを抜けるとカンデルシュテーク。小雪が舞い一面雪である。川端康成の小説「トンネルを抜けると雪国だった」(雪国)を地で行く風景である。

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カンデルシュテーク駅

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駅から見える尖がりの山。この山にもリフトが架かっていた

 チューリッヒ空港に着き、登場手続き。Eチケットの読み取り機にチケット番号を打ち込み希望の座席を打ち込めば、チューリッヒーフランクフルトー羽田ー関空の座席まで希望通り確定してしまう。かつての搭乗手続きとはかつてが違ってしまう。ここで成田直行便で帰国する東京、関東組とはお別れ。構内でビュッフェ方式のラウンジを見つけ、搭乗までの待ち時間を利用してランチ。小皿に野菜中心にチョイス。ボトルの水と合わせ、日本円にして1800円余。やはり高い。物価が3倍というのは本当のことだ。
 現地時間時14時30分、チューリッヒを飛び立ちフランクフルトへ。ツェルマットでは好天続きだったが、眼下には雲がぎっしり埋め尽くされている。広大なフランクフルト空港での乗り継ぎも、旅慣れたF女さんのリードでトラブルなく成功。15時55分、羽田へ飛び立った。
 今日が今回のスキーツアーの最終日。高層に雲が少し出ているが、晴れ上がっている。今回のスキーツアーも終わってみれば、初日こそ低温とガスに悩まされたが、それ以外は好天に恵まれ続けた。
 横浜のAさんとゴルナグラード鉄道に乗り、車窓を楽しみ、ゴルナグラードとスネガエリアを滑走することになった。初日この鉄道に乗ったが、ガスで車窓を楽しめず、マイナス21度という、今冬最低の気温を記録した寒さでシャッターを押すのも萎え、画像の記録も残すことはなかった。彼は心残りだったのだ。その思いは同じだ。
 電車が動き出して間もなくツェルマットの街並みとその奥にツェルマットが望める。マッターホルンに息づく街、それがしっかり分かるシチュエーションだ。マッターホルンが「思春期の苦悩する少年」に例えられるのはこの辺りから眺める山容ではないのか。

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ゴルナグラード鉄道。登山電車として長い歴史がある。日本でいうアブト式電車

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マッターホルンに息づくツェルマットの街並み

 車内放送はドイツ語と日本語。マッターフィス川に架かる「日本人橋」といい、いかに日本人が訪れているか分かろうというものだ。マッターホルンの車窓が次々と変わる。立ち上がってガラス越しに写真を撮っていると、窓際の外人男性が窓を下げてくれた。幸い気温が高く窓を開けても冷たいというほどでもない。厚意に甘んじて撮り続ける。
 右手の車窓が左手に変われば、スイス国内最高峰のドムの山並みが望まれ、再び右手に車窓が変わればマッターホルンに続く鋭いピークを連ねる山並みに変わる。陽射しが届かず日陰の雪原が青白く、それがいっそう稜線の白さを引き立てている。しかし日本の厳冬期の北アルプスの山並みのようにまったく白無垢というのでない。所々茶色っぽい岩肌が露出している。それは雪が少ないためなのか、急峻すぎて雪が付かないのか。

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車窓の左手に、スイス国内最高峰のドム

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車窓の右手にマッターホルンに続く山並み。日本の北アルプスのように白無垢でない

 ずっと眺め続けていても飽きることがない。森林限界を超えると真っ青の空にまだ朝陽が射し込まないブルーの雪原が広がり、軌道沿いを滑走しているスキーヤーがちらほら見かけられる。多分今朝一番乗りしてきたスキーヤーだろう。今日は空気が実に澄みきっている。ゴルナグラードから延びている尾根を越えると、マッターホルンを奥に朝陽を受けた大雪原が広がる。マッターホルンを眺める位置が左に寄ったために、北壁がほぼ隠れて東壁が目立ち、「思春期の苦悩する少年」のマッターホルンが失われてきた。

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森林限界を越え、軌道はゴルドグラードから延びてくる尾根を巻いていく

 ブルーの雪原が真っ白に変わる。この雪原にいくつもの滑降ルートが開かれているようだ。ゴルナグラードエリアだ。マッターホルン側だけではなく、ドムを望む、反対側にも雪原が広がり、リフトが延びている。初日に滑降した際には、軌道沿いのせせこましいコースを滑降してあまりいい印象というものがない。しかしこれだけ広ければ、新たな印象を持つかもしれない。滑降が楽しみだ。

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ゴルナーグラードのゲレンデが広がる

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もう見慣れた山並みですが

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これもですが、ゲレンデがどのように伸びているか、よくわかる

車窓を動画でどうぞ

 30分で3000メートル超えのゴルナグラード駅に到着。電光掲示板はマイナス7度を表示している。初日マイナス21度を記録していたのに比べると格段に暖かい。昨日スネガエリアで滑降した際、十分堪能したこの3兄弟ーこの山域の最高峰・モンテローザ、その右にリスカム、ブライトホルンーをさらに近寄って眺める。丁度太陽を正面に見る位置。日陰の3兄弟は蒼く厳粛なたたずまいだ。

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ゴルナーグラード駅。マイナス7度。暖かい

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マッターホルン方面

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またまたドム方面。手前は氷河

 眼下にゴルナートグラード氷河を見下ろす。7、8年前の夏訪れた際には、氷河というものは雪が氷化したものだから白いか蒼いと信じてきたことがひっくり返されたものだ。土砂が堆積した氷河の表面はどす黒かった。むろん上部はそれなりに怪しいほどの白さが保たれていたが。しかし今見る氷河は冠雪していて真っ白。逆光にキラキラ光っている。クレバス群が縞模様をつくり、氷河であることを示している。 ドムを望む方面には一昨日滑降したスネガエリアが広がる。

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氷河がうねっている

 さあ滑降だ。マッターホルンを望みながらゴルナグラードエリアを数本滑降。意外と幅広のロングコースだ。初日の印象を変えざるを得ない。初日はガスと低温の中、ガイドさんが軌道沿いの狭いが緩斜面を滑降し、安全策を取ったのだと思われる。

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意外と幅広のロングコースが。ゴルドグラードエリアを見直した

 この後、スネガエリアへ移動。「思春期の苦悩する少年」が再び戻ってきた。一昨日堪能したスネガエリアの滑降を再び楽しんだ。昨日夕食時にツアー会社の若い社長さんが訪れた。「くれぐれも怪我のないように」と声をかけて回っていた。事故ってはいけない。あと一本の欲張りが事故の元とというのは、10年前に経験しているだけに身に染みている。「物事は初めと終わりに失敗が多い」というのは我が人生訓。10年前、スキーで骨折したのも午後遅く「あと一本」で起きた。午後も早めに切り上げて有終の美を飾った。

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スネガは一番スタイルのいいマッターホルンを望みながらの滑降

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先が見えない急斜面も結構ある

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ここでフィニッシュ

 下山してから土産物を買い求めるために、ツェルマットのコープ店を訪れた。なかなかの品揃えだ。新鮮な野菜もったぷり。長期滞在する場合、コンドミニアムを利用するのが安上がりだが、食材はコープ店で手に入れるがいい。IT関連のグッズも置いてある。ワインを買い求めようとするも、探せど置き場所が分からない。むろんどういうセンテンスで尋ねていいかわからない。従業員に「ワイン?」と思い切り尻上がりに発して一言問うと、「あっち」と日本語が飛んだのには驚いたが、センテンスなど分からなくても、質問していることがわかればたいがいのことは解決する。
 買い物を終えて清算時にレジ労働者の作業ぶりを注目した。それは前回イタリア・ドロミテスキー行に行った際、コルチナのコープ店で見聞したことだが、座ってレジ作業をやっている。それがスイスではどうかと興味があったからだ。やはりここでもどっかと椅子に座って作業をしている。コープでは国を超えて座ったまま作業をしていることが検証された。流通小売業全体でもこうした労働なのだろうか?レジ労働というのはルーチン作業だが正確を期す必要がある。日本のように立ち尽くしの作業というのは大変な重労働である。しかも一つひとつ商品をPOSセンサーに読み取らせて、かごに再び入れ直しする。「いらっしゃませ」「ありがとうございました。またのご利用を」と笑顔を絶やさずやり続けなければならない。しかしここでは座っての作業にくわえて、かごに入れるのは客の方である。日本の流通業界も見習うべきだろう。

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品揃えはいい

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レジ労働者は座ってポス読み取り作業(中央奥)。手前は買い物客

 6日間ツェルマットに滞在しての滑降は無事終えた。初日を除いて連日好天に恵まれ、存分に滑降を楽しんだ。足前もワンランク上がったように思える。今回の班メンバーでは僕が最高齢。メンバーから「古希を迎えても元気に滑っていることにあやかりたい」という言葉をかけられた。何、何、70代は青春でありますぞ。健康と体力を維持し、いつまでも登山とスキー文化に浸りたいものだ。
 マッターホルンの尖塔に朝陽が射し込んできた。今日も好天が予想される。

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 今日と明日はガイドさんなしの自由滑走日。東京、神奈川からの参加者5人と再びチェリビニアへ滑り込みに行くことになった。何故というにあの広々とした明るく広い谷間を絶えずマッターホルンを望みながらロングコースの滑走にもう一度酔いしれたくなったからだ。Fさんは熱が下がったものの、無理はできないので奥さんとスネガを滑ることに。
 2日目、3日目と同じゴンドラに乗り、マッターホルン・グレシャー・パラダイスへ。途中シュワルツゼーから見上げるマッターホルンは、まだ早い時間とあって青い空に東壁はより白く、北壁はより暗く、従えている岩峰は朝焼けに神々しい。ロープウェイに乗り継ぎするトロッケナー・シュテイクから眺めるマッターホルン・グレシャー・パラダイス側はまだ太陽が射し込まず雪の斜面は青白い。

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シュワルツゼーから見上げるマッターホルン

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クラインマッターホルン側はまだ陽が射し込まず青白い

 マッターホルン・グレシャー・パラダイスの展望台に登ろうということになり、トンネルの途中からエレベーターで展望台に立つ。クラインマッターホルンは3883メートル。富士山より高く僕がこれまで自分の足で立った最高所と先の記事で紹介したが、実はこの展望台に立ってこそ文字通り3883メートルなのだ。風なく探せど雲一つない快晴。何の障害物もなしに真っ白のアルプスの山並みが延々と広がる。先日も見えたモンブランが今日も西の山並みに頭一つ抜きん出ている。イタリア側(南側)にも真っ白の山並みの大展望が広がる。目を凝らすとひと際高く大きな山型に見覚えがある。前回訪れたドロミテ山群のマルモラーダに違いない。ドロミテの女王と呼ばれるこの山群の最高峰だ。ドロミテは高度こそ4000メートル級のアルプスには劣るが、ニョキニョキ奇岩が林立し、その間を縫って滑降した。広大なスキーエリアは6日間ではすべて滑降しきれなかった。その中にあってマルモラーダは、ヨーロッパアルプスでよく見かけられる山容だった。女王と呼ばれるだけにどこか気品に満ちていた。むろんこの山にもリフトが架かっている。

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アルプスの頂上には十字架が立てられている。マッターホルンにも

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ヨーロッパアルプスの最高峰・モンブランを遠望(中央奥右寄り)

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ドロミテの女王マルモラーダを遠望(中央奥)

 すっかり山容を変えたマッターホルンから続く稜線の直下をチェルビニアへの滑降ルートが延びている。こうして眺めると、マッターホルンが絶えず眺められるわけがよくわかる。むろんスイス側もどこまでも雲一つない。東京からきた立派な髭の持ち主のSさんが「ヨーロッパ大陸に超大型高気圧が覆っているのかもしれない」といったのはさもありなん。日本の山では好天でも午後になるとガスが立ち上がってくるものだが、今日は午後になっても雲一つ見つけることができなかった。
 マッターホルンの腰の雪原に、展望台側の山影が大きく落ち、両側の山並みはすっかり順光を受けてまぶしいぐらいになっているというのに、ツェルマットの谷にはまだ光が射し込まず静寂に包まれているかのようだ。先日少し滑り込んだところから雪帽子のように見えた山型を直下に見下ろす。雪帽子は雪原だったのだ。その雪原の風紋が逆光に浮かび上がっている。

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ツェルマットはまだ暗い

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スイス国内最高峰・ドム

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綿帽子の山は上から眺めると雪原

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滑降するときはゴーグルをかける

 さあ、チェルビニアへ滑降だ。今日はガイドなし。みなさん、ガイドに遠慮することなくガンガン飛ばす。見かけ以上に飛ばし屋だ。急斜面でも大回りでぶっ飛ばしていく。大枚はたいてヨーロッパまで滑りに来る人というのは、それなりに足前に自信を持った人たちだ。僕は急斜面になるとスピードが付きすぎ、小回りターンが増える。彼らの高速スピードに付いていけない。派手に転倒して怪我をしては元も子もない。スピードと転倒による怪我の大きさは比例に関係にある。慎重に小回りターンでスピードコントロール。それとスキーヤー同士の衝突事故が怖い。前後左右にスキーヤーがいないことの確認を怠らない。
 今日のルートガイドは逗子からやってきたMさんがやってくれることになった。彼は実に方向感覚が優れ、ゲレンデマップが頭に入っている。チェルビニアへの分岐を見落とさないことが今日のポイント。しっかり分岐を確認して滑り込む。展望台で見下ろしたように、マッターホルンとそれに続く山並みの裾野を滑走していく。だから絶えずマッターホルンが至近距離に臨みながらの滑走だ。

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チェルジニア側へ滑降。イタリア側のマッターホルンは凡児(右端)

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分岐をしっかり確認して滑降

 あっという間にチェルジニアの街並みが見えてきた。街並みのちょっと手前のこじんまりしたレストランでランチを取る。陽射しがあり暖かい。といってもマイナスの気温だろうが、外のテーブルでランチを取っていても寒さを感じない。メニューオーダーは全員ミートスパゲティ。スパゲティに限らないが、我々高年の日本人にとってはてんこ盛りすぎて食べきれないことが多い。その恐怖におののいていると、このレストランは適量だった。後でホテルに戻ってから耳にしたことだが、この日スネガに行ったFさん夫婦は1人前の料理を注文し、分け合って丁度いい分量だったという。
 そのスパゲティの値段はスイス側に比べればかなり安い。恐らくチェルビニアのホテルも安いはずだ。チェルビニアで泊まり、ランチもイタリア側で取り、国境を越えてツェルマット側に滑り込むプランを立てたらきっと安上がりになるのではないか、ツアー会社もこういう商品を売り出すべきではないかと、いやツェルマットの知名度が抜群だから果たして客は集まるだろうか、と議論が盛り上がる。さて清算だが現金はスイスフランは使えず、ユーロのみ。ユーロを持ち合わせていないメンバーはクレジットカード決済となった。

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こじんまりしたチェルジニアの街

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このレストランで日向ぼっこをしながらランチ

 しばらくチェルビニア側で滑降した後、国境のテスタグリージアへ戻り、ツェルマット側でひと滑り。トロッケナー・シュテイクからロープウェイで下山した。ツルマットへ滑降の下山コースがあるのにロープウェイで下山なんてもったいないが 今日はあくまでチェルビニアへの再訪が目的。欲張って事故ってはならない。メンバーはガンガン飛ばし屋であってもガツガツはしない。レディ&ゼントルマンばかりだ。あっさりロープウェイで下山した。
 マッターホルンはガスに煙っているが、空は晴れている。今日は晴れの予報だからマッターホルンのガスも間もなく取れるだろう。今日の滑降はツェルマットの近場のスネガエリア。ここはマッターホルンが最も美しく見えるところといわれる。
 いつものように循環バスに乗り、地下ケーブルカー乗り場へ。地下ケーブルカーというのは珍しい。かなりの傾斜を高速で登っていく。スネガパラダイスでゴンドラに乗り替えて驚いた。7〜8人乗りのキャビンとチェア搬器が交互に繋がれているのだ。こんなのは始めてみた。なぜこういうつなぎ方をしているのだろうかーメンバーの中で話題になった。多分板を脱ぎたくない人のためにチェア搬器を繋ぐようにしたのではないか、という結論に落ち着いた。

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スネガ地下ケーブルカー乗り場

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地下ケーブルカー。かなり急傾斜を高速で走る

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キャビンとチェア搬器が交互に運ばれてくる。珍しい

 次のブラウベルトでロープウェイに乗り継ぐ際に「パラグライダータクシーフライト」の看板を見つけた。何のことはない、観光用にパラグライダーの遊覧飛行をやっているのだ。ロープウェイに乗り込んでロートホルンの岩峰を見上げていたら、白い点のようなものが見える。パラグライダーだ。このあとロートホルンに立つと、谷間を飛ぶカラフルなパラグライダーがうようよ漂っていた。

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パラグライダータクシーフライト場

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ロープウェイから。中央右下にハンググライダー(白い点)が飛んでいる

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タクシーハンググライダーがうようよ飛んでいる

  ロープウェイで一気にロートホルン・パラダイス(3103メートル)に着く。ここは初日に行った隣のゴルナーグラードより標高が高い。お目当てのマッターホルンのガスが取れてきた。中腹にちょっぴりガスをまとっている。目の前にちょっと斜度のある幅広の魅惑的なバーンが延びていたが、滑降など忘れて撮影に忙しい。

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北壁と東壁の均整が取れ、高度感がある

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これはさらに左寄りの位置で撮った画像なので東壁が目だつ。手前左寄りの高みがゴルゴグラード駅

  スネガエリアが「マッターホルンが最も美しく見えるところ」というのがウソ偽りない。何が美しいのだろうか。スネガから見るマッターホルンが北壁と東壁のバランスがよく均整が取れているといわれる。むろんそれはある。それだけではないと思う。北壁と東壁を挟むのがウィンパーが初登頂したヘルンリ陵だ。そのヘルンリ陵が明瞭になるのは、マッターホルンの登山基地・ヘルンリ小屋があるところ付近だ。標高差にして1200メートル。そこから上のマッターホルンだけを評すなら高度感がない。2日目にチェルビニアに滑り込むために通過したトロッケナー・シュテイクからは、まさにヘルンリ陵レベルからのマッターホルンだった。北壁が隠れ東壁だけの正三角形のマッターホルンに魅惑など感じなかった。その手前のシュヴァルツジェーからは、その台座から見上げるようなマッターホルンだった。山容というのは姿も大事だが、高度感が重要なファクターである。
 富士山が秀麗なのは山頂部にあるだけではない。両翼にしなやかにどこまでも伸びるスカイラインにこそある。美しさを支えるのはその裾にあるといっていい。マッターホルンの裾の全容が望めるのがスネガだ。ツェルマットの谷間から腰の張った裾と中腹部。その上に乗っかるヘルンリ陵からの上体。ツェルマットの高度は1600メートルだから、2800メートルの高度差がある。それらが一体となってマッターホルンの美しさがかもしだされているのだと思う。それに加えて今立つ3103メートルのロートホルンの高さが絶妙なのだ。対山の3分の2の位置からが最も高度感が出るという、その高さなのだ。
 ガイドブックに目を通していたら、「周囲の者を寄せ付けず、ちょっとうつむきがちに村を見下ろす姿は、思春期の苦悩する少年のよう」という記述が目に留まった。実にいい得て妙な表現だ。苦悩する少年ー山を人間に例えるのは深田久弥の真骨頂だった。山に人間のように人格があるといって「山格」という言葉を造語したほどだ。山の「山格」は山の腰、裾野が重要なファクターを占めると思う。
 マッターホルンのことを書きすぎた。マッターホルンにもう酔いしれてしまったのだ。数年前までマッターホルンに登ろうと文献を読み、トレーニングに励んできた。マッターホルンはウィンパーの時代と違って、要所に固定ザイルが設置され、天候に恵まれ、高度障害にならなければロッククライミングの素養がなくても登れる山なのだ。しかし様々な事情で断念した。いったんほれ込んだ山に飽かず眺め続けた。
 ロートホルンからこの近辺の最高峰・モンテローザ、その右にリスカム、ブライトホルン。眼下にゴルナートグラード氷河を見下ろす。雪をかぶっていても、クレバス群がしっかり見える。振り返ればツェルマットの谷を挟んで4000メートル級のピーク群が軒を連ねている。

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左からモンテローザ、リスカム、ブライトホルン

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ゴルナー氷河

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ゴルナー氷河の左側の山並み

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マッターホルンの右寄りの山並み

 このあとスネガ地域のほとんどのゲレンデを滑降したが、絶えずマッターホルンを望みながらの滑降。マッターホルン漬けの一日になった。
 ガイドさんが「ちょっと面白いところを滑ります」と謎めいたことを言った。ゲレンデマップをよく読み込んでいるMさんが「8番でしょう」と図星。それはブラックと呼ばれる上級者コースだ。ガイドさんはこれまでの我々の滑りを観察していて大丈夫だと思ったのだろう。かなりの急斜面が長く続く。アイスバーン化しているところもある。一度ならず態勢を崩しながらも転倒せずに何とか滑り降りた。
 ガイドさんが「初日は悪天でゴルナグラードは堪能できなかったでしょう」と、隣のエリアまでミニ遠征し、再びスネガエリアに戻ってきた。
 これでゴルナグラード(1日目)、チェルビニア(2日目)、ヴァルトナンシュ(3日目)、スネガ(4日目)という、スイスとイタリアをまたぐ4つの、それぞれ特徴あるエリアを滑降することができた。ゴルナグラードはマッターホルンの腰から続く高原状の、チェルビニアとヴァルトナンシュはそれぞれ2つの山並みに挟まれた広い谷間のロングコースを、そしてスネガは抜群のプロポーションのマッターホルンを眺めながら明るい尾根を天候に恵まれ快適に滑降。
 明日と明後日は自由滑降。熱が下がるかどうか分からないFさん夫婦を除き、明日は再度二つの山並みに挟まれた開放的なチェルビニアのロングコースを滑降することで話がまとまった。

 早朝目覚めて空を見上げても星が見えない。昨日のように好天とはいかないようだ。しかし建物の灯りはよく見えている。今日もイタリア側のヴァルトナンシュへ滑降だ。標高差が2300メートルもあり、日本では味わえない醍醐味にわくわくしてしまう。雪さえ降り出してきた。今日は展望を諦めた。
 昨日と同じゴンドラとロープウェイを乗り継いでマッターホルン・グレシャー・パラダイスへ。乗り場の電光掲示板には気温と風速が表示されている。初日に行ったゴルナーグラートはマイナス13度。初日はマイナス21度だったからかなり暖かい。これから向かうマッターホルン・グレシャー・パラダイスはマイナス18度。風は時速47キロ。こちらでは風速は時速で示されているのでどれぐらいの強さか見当がつかない。秒速に換算してみると秒速13メートルだからかなり強い。体感温度はかなり低くなるだろう。寒さと強風に要注意だ。時おり天空に青空がのぞく。
 昨日4000メートル近いマッターホルン・グレシャー・パラダイスを越えた影響だろうか、「空気が薄い」と愁訴していたFさんが発熱し、今日は大事を取ることになり奥さんだけが参加。それに体調を崩した関東からの夫婦連れと3人が抜けることになり、今日のメンバーは5人だけ。
 昨日待たされたトロッケナー・シュテイクからへのロープウェイは待たされずに乗り込み、最短でマッターホルン・グレシャー・パラダイスに着く。
 さあ、滑降だ。滑り出すと意外と風があり、ゲレンデに雪煙が舞い上がり、ブリザート模様。ガイドさんが登り返しがある所の直前は直滑降を指示するが、新雪が風紋を作り、スピードを出しすぎると飛ばされそうになる。力量に応じたスピードコントロールが求められる。あまりの強風にシーマビアンテという岩峰の手前のレストランにしけ込むことになった。雨宿りならぬ風宿りだ。

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風強く雪煙を巻き上げブリザード模様

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しかし空は明るい

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稜線にまとわりついているガスのようだ

 珍しいことに誰もが認める最上級の滑りをみせるSさんの姿が待てど現れない。常に殿に付き僕らを見守ってくれている人だ。分岐を間違え、昨日滑り込んだチェルビニア側へ入り込んでしまったらしい。彼は真っ赤のウエヤーを着込み、雪煙が舞い上がるなかでも見つけやすい。ガイドさんがその姿を見つけて手で合図を送り、彼も気づいたようだ。僕らは彼が復帰するまでしばしレストハウスに待機する。戻ってきた彼は「急な斜面の登り返しに疲れた」と漏らした。彼は登り返しでもすいすいスケーティングでこなしていく。それが苦手な僕にはよだれが出るような存在だ。そんな彼でも疲れたという。
 レストランの先にもチェルビニア側への分岐があるので要注意だ。短い連絡リフト前にドロミテで見かけたような奇妙な岩峰が待ち構えている。ガイドさんはシーマビアンテ(小さな城の意)という、ヴァルトナンシュを象徴する岩峰だと説明。ヴァルトナンシュ側から眺めるとヨーロッパの古城を思わせ、「小さな城の意」の命名通りだ。連絡リフトを上がるとヴァルトナンシュ側の谷が一気に広がった。ガイドさんは「あそこに見える門を潜らないとヴァルトナンシュ側に入ったことにはなりません。分岐を左に取ってください。右に入るとチェルビニア側に入ってしまいます」と注意を呼び掛ける。Sさんの件があったので真剣に聞き入る。この門さえ潜れば、その先は一本道の説明に安堵する。

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シーマビアンテの岩峰(中央左寄り奥)

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戻るときリフトから撮ったシーマビアンテ。こういう岩峰はドロミテでよく見られる

 稜線にはまだガスがかかっているが、青空が広がり、風も収まってきた。ホテルを出た頃には展望は諦めていたというのに、何というラッキーなことか。F女さんが「私は晴れ女」とのたまう。「どこにも晴れ女がいるなあ」と笑いが起きる。

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 広々とした谷間に延びる一本道を、滑降に飽きれば写真を撮りながら大クルージングを楽しんだ。標高2200メートル付近から樹林帯に入ると広々とした快適さは失なわれ、狭く、時おり急斜面が現れるコースに手こずりながら、ヴァルトナンシュへ滑り込んだ。標高差2300メートルを、風宿りした以外大した休憩も取らず、滑り込めたことに大満足だ。ヴァルトナンシュは小さな村という感じ。ゴンドラ乗り場にさほど広くない駐車場があり、車で乗り付けてきてすぐにゲレンデに向かうことができる。

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 ゴンドラに乗り、リフトに乗り継いで国境のテスタグリージアに向かう。乗り物ばかりでは面白くないので、途中ひと滑り入れる。緩斜面ではワイヤーに吊るされた円盤を股に挟んで緩い斜面を引っ張ってもらうジェィバーリフトを利用。結構長い。

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すっかり晴れ上がった

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シーマビアンテをバックに

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ジェイバーリフトは引っ張られるという感覚と中腰姿勢が必要

 イタリア側に滑り込む際に、風宿りしたシーマビァンチェのレソトランで遅いランチを取る。窓ガラス越しに腰にガスをまとったマッターホルンを眺めながら、野菜たっぷりのスープをいただく。ここでも野菜補給だ。

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窓ガラス越しのマッターホルン

 ロープウェイを乗り継いだテスタフリージア駅構内に国境の黄色いラインが引かれている。ラインをまたいで記念撮影。そこから写真を撮りながら撮りながらツェルマットへ下った。

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ワンダーフォーゲル
ワンダーフォーゲル
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