日々是好日 〜ひびこれこうじつ・にちにちこれこうにち〜
日々是好日、慣れ親しみのある言葉ですが、改めて見直してみますと何とも赴きの深い言葉だと気が付かされます。「ひびこれこうじつ」とお読み上げ頂いても、禅の言葉らしく「にちにちこれこうにち」と読みくだいて頂いてもどちらでも結構だと思います。
お煎茶の味は人生と一緒で、甘苦渋と申しましてその複雑な味わいは、何度淹れても一度として同じにはならないと言う事です。美味しく出る時もあれば、そうでない時も多々有る訳でして、それが難しくも楽しい一時となります。勿論、一向に上達せずに、辞めていかれる方もおいでですが、長くお稽古を続けられてらっしゃる方に共通するのは、「お茶だけではなく人生を楽しんでいる。」と言う事に尽きます。楽しいだけではなく辛いのも人生、良い時があれば悪い時があるのも人生。これらを全て呑み込んで過ごしていらっしゃいます様にお見受け致しております。
お煎茶を美味しく淹れられた時には満面の笑みで、失敗してしまった時には「今度は、上手に淹れましょう」と照れ笑い。お客様も一緒に笑顔で挨拶を返します。いつの時にも、笑顔を絶やさない素敵な人柄こそが煎茶人と呼ばれるに相応しい方と信じて居ります。
そして、本当に悲しい時には涙を流せばいいんです。涙の後に、また新しい人生を歩み出して参りましょう。一杯のお茶には、心が籠もります。嬉しい時には嬉しい味が、悲しい時には悲しい味が沁み出します。その人の人柄、その時々の心を頂戴するのが、本当のお茶です。美味い・不味いがお茶の味ではありません。酸いも甘いも総て汲み取って心と心が触れ合う瞬間、そんな「お茶」を楽しんで頂きたいのが、私の願いです。
その為には、真の優しさと強さが必要です。ここを養ってこそ人の道であり、茶道・煎茶道の「道」の行き着く先です。相手を思いやる優しい気持ち、その気持ちに応える感謝の心を育ててこそ素晴らしい人生と呼べます。稽古は、人を作ります。「形を学んで、心に至る。」古来よりの日本の伝統です。頭で考える事も重要ですが、心で感じてこそ日本人に生まれた甲斐があると言うものです。
昨日の風は今日の風、今日の風は明日に繫がる風です。歴史に途切れる事が無いように、人生も然りです。また、この風は、私達一人に吹いている訳ではありません。沢山の人の流れの中を吹いているのが世の流れです。歴史に学び、人に学ぶ。歴史の繋がり、先人祖先との繋がり、新しい繋がりが生まれ沢山の「絆」の中でこそ人は強く成れるものです。ご承知の通り一見何の関係も無さそうな事柄も、全てのものは須らく繫がっています。
だからこそ、いつの日も笑顔を絶やさず参りましょう。どんなに辛い時であっても、この笑顔に繫がっています。この好き日は、思い出の中に仕舞わずに、未来に取っておく必要もありません。だって、今この瞬間だからです。
今日も明日も明後日も、この好き日と為ります様に・・・
茶禅一味と申しますが、日々是精進との思いでお過ごし下さいませ。
平成辛卯 十一月吉日 煎茶道松月流 家元 渡 辺 宗 敬
今回から、新しくスタート致します「一煎一話集」。写真や画に、私の拙い思いをのせて茶話を綴っていこうと思っています。日本人の心、お茶の心、様々な角度からお話を進めて参りたいと存じます。第一回目は「日々是好日」から始めさせて頂きます。豪そうな事を沢山並べましたが、私も厄年・大殺界・天中殺・八方塞の最悪の雲気の中、グチグチと過ごしておりますが、笑って過ごしても一日・泣いて過ごしても一日!同じ一日なら元気一杯に過ごして行きたいなぁと、思いの丈を綴ってみました。
捨てる神ありゃ拾う神在りとも申します。厄年云々と宣伝しておりましたら、京都でご活躍の清川吉兆先生が、厄除けのお茶碗を贈って下さいました。何でも、御目出度い吉祥文様を茶碗の外にも中にも是でもか!と書き清め下さった一品だそうです。これでお茶を飲めば勇気100倍ですね!題字は、拙者so-kei♪によります筆汚しで御座いますが、皆さんの所にも幸せと元気が届きますように祈っております!!!