|
雲一つ無い青空の広がる日曜日に目的一つ無く近所の川沿いの土手を私はトボトボと歩いていた。河川敷のグラウンドでは少年野球の試合が行われていた。サード側ベンチから
「思いっきり三回振ってこいっ!!」
と監督からの激励を背中に受けながらバッターボックスに向かう少年。背中から感じられる自信からすると、おそらく最終回になりこのまま試合に出ないで終わるのも可哀想なので監督のお情けで代打の機会をあたられたのであろう。そんな少年に私はすっかり目を奪われていた。実を言うと私も少年時代に少年のような状況に立たされた経験が何度もある。おそらく少年はお情け代打ということはわかっているのだ。誰も自分のホームランなんて期待していない、ヒットですら期待されていないのだ。だからこそ少年には頑張って欲しかった。私が打つことができなかったヒットを打って欲しいと思った。
右のバッターボックスにちょこんと立つ少年。小学六年生にしてはだいぶ小柄だ。少年用のバットが一際長く感じる。まるで体育館の天井に挟まったバレーボールを長い棒で突っつく教頭先生と間違えてしまいそうだ。そんな物干し竿のようなバットを思いっきり振り抜く。
カキーン!!
快音と共に電光石火のような打球がサード側ベンチに突き刺さる。
パコーン!!
監督の顔面を直撃する。監督は痛みに堪えながら
「オッケー!!ナイスカット!ナイスカット!!」
と激励する。ベンチに並んでいたチームメイトの一人が笑いを堪えきれずに吹き出してしまった。監督に当たってしまったのが可笑しかったのだろう。監督からのゲンコツで静かになる。バッターボックスの少年は、あと二回バットを振るだけだというのに監督のサインを待ちベンチを見続けていた。
「振るだけ!振るだけ!!」
と監督からの激励をうけ少年はピッチャーに視線を向ける。相変わらず物干し竿のようなバットを思いっきり振り抜く。
カキーン!!
快音と共に電光石火のような打球が又してもサード側ベンチに突き刺さる。
パチーン!!
監督の顔面を直撃する。現場の空気が凍り付く。その空気を察してかバッターボックスの少年はもうピッチャーに視線を移していた。監督は何も言わずに少年を見つめていた。
監督は確かに「思いっきり三回振ってこい!!」と言った。その結果がこの有り様だ。しかし、まだあと一回残っている。どんな結末が待ち受けているのかという想像を繰り広げているところを快音が現実に引き戻す。
カキーン!!
又しても快音と共に電光石火のような打球がサード側ベンチに突き刺さる。
グチャッ!!
監督の顔面を直撃する。監督がうなだれる。チームメイトはもう見るという行為をやめてしまったらしい。それはそうだ。部外者の私でさえ目を覆いたくなる光景だ。バッターボックスの少年は何も悪くない。監督の指示通りに思いっきりバットを三回振った。その結果ベンチの空気が凍り付いてしまっただけだ。しかし、まだ少年の打席が終わった訳ではない。すべてファールなのだからまだツーストライク。少年はここからどうするのだろうか。打席に入ったまでの少年の状況はわかっていたつもりだが、今となっては全くわからないものになってしまった。正直に言うと二球目以降の状況からわかっていない。むしろ分かりたくない気持ちで一杯である。そんな大人でも嫌がる状況を少年はどう対処するというのか。最初は応援していた。しかしもうやめてくれっと言ってやりたい。君は監督の指示を全うしたのだからもう大人しく三振しておくれ。バッターボックスの少年も、もううんざりしたのだろうか。力無くバットを振った。
ポコーン!!
間の抜けた音と共にフラフラと上がった打球はバックネット裏へと飛んでいった。
ペチーン!!
まさかっ!!
三球目の打球で鼻血が出てしまいバックネット裏の水道で鼻を洗っていた監督の脳天に直撃した。誰に同情すればいいのだ。この後、少年はあっさりと三振した。見ていられなくなった私は電光石火の打球よりも早く逃げるようにその場を後にした。体育館の天井に挟まったバレーボールを長い棒で突っつく教頭先生の平和な光景を思い浮かべながら………。
《告知》
<よしプリスペシャルライブ> イタツキ’09
日程:11/8(日)
開場:19:00 / 開演:19:30
会場:よしもとプリンスシアター
[コントライブ]ペナルティヒデ/千原せいじ/ハリセンボン 春菜/チャドマレーン チャド/かたつむり 林/フルーツポンチ/他
前売:2800円 / 当日:3000円
お問い合わせ先:チケットよしもとインフォメーション:0570-036-912
自動応答:0570-041-489
オペレーター対応:0570-041-356
Pコード:597790
是非見に来て下さい。
|