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今回はクイズから入ります。
この扇の絵は朝日でしょうか、夕日でしょうか?
ヒントはありません。感性でお答えください。
答えは、この後の文中にあります。
修羅(しゅら)とは、「醜い争いや果てしない戦い」の意味です。
私は 仏教についてはあまり知りませんが、当時の仏教では、
闘いに明け暮れる者は死後も永遠に闘いの無限の苦しみから脱する ことができない「修羅道に落ちるとされていました。
能では敗れた平家の武将の霊が現れて、源氏との戦いの様子、 修羅道での苦しみを訴え、
それが読経によって救われるという設定のものが多くあります。
これらをまとめて「修羅もの」と呼ばれています。
上の写真は修羅扇(しゅらおおぎ)です。
クイズの答えはお分かりですね、平家の運命を美しい日没で暗示しています。
能 清経(きよつね)
あらすじ
平家一門が都落ちした後、都でひっそり暮らしていた平清経の妻のもとへ、家臣が訪ねて来て、
清経が入水したという悲報を伝え、清経の遺髪を渡しました。
妻は、再会の約束を果たさなかった夫を恨みますが、悲しみが増すからと、遺髪を宇佐八幡宮に納めてしまいます。
しかし、夫への想いは募り、せめて夢で会えたらと願う妻の夢枕に、
清経の霊が戦姿で現れました。
再会を喜ぶものの、妻は再会の約束を果たさなかった夫を責め、
夫は遺髪を返納してしまった妻の薄情をと、互いを恨んで涙します。
やがて、清経の霊は、死に至るまでの様子を語りながら見せ、
はかなく、苦しみの続く現世よりは極楽往生を願おうと入水したことを示し、
さらに死後の修羅道の惨状を現します。
そして最後に、念仏によって救われるのでした。
構成
登場人物
シテ:平清経の霊
ツレ:清経の妻
ワキ:淡津三郎(家臣) 場所:清経邸 動画
これも薪能です。単に撮ってきて流すだけではなくて、うまく編集した珍しい動画です。
家臣から遺髪を受ける。妻の夢枕に現れる。そしてキリの舞。
キリの舞は修羅道に落ちても闘いに苦しみ悶える様子、と仏法によって救われるという内容です。
この部分はなかなかの名文ですので、そのまま載せておきます。
さて修羅道におちこちの、立つ木は敵、雨は矢先、月は清剣、山は鉄城。
雲の旗手をついて。驕慢の剣をそろえて。じゃけんのまなこの光。愛欲とんいちつうげん道場。
無明も法性も。乱るるかたき。打つは波、引くはうしお。
これまでなりや。まことは最後の十念乱れぬみ法の舟に。頼みしままに疑いもなく。
げにも心は清経が。げにも心は清経が。仏果を得しこそ有難けれ。
能の扇
上の写真は負けた武将の持つ扇で、逆に勝った武将(勝ち修羅)のお話の能「田村」、「箙(えびら)」などでは「勝ち修羅扇」というのを使います。少し似ていますが、松と旭日を描いています。
ちなみに能で使う扇は骨が黒いです。黒骨(くろぼね)の扇は能のシテを演じるときだけで、
お稽古のときや仕舞を演じるときは、普通の骨の扇です。
能は日本が世界に誇る仮面劇です。
日本文化よ、永遠にあれ!
(能へのお誘い シリーズは「伝統芸能」書庫にあります) |
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安徳天皇の生母、建礼門院徳子は、清経の死が平家一門の「心憂きことのはじめ」として語られています。
世阿弥の素晴らしい感性に感服します。
傑作
2012/6/11(月) 午後 9:26
私は、能の感性がないのかもしれません。朝日と感じてしまいました。それにしても美しい扇子ですね。
黒骨にもちゃんと意味がある。
日本文化、大事にしたいです。傑作。
2012/6/11(月) 午後 10:51
カマちゃん様、こんばんわ、
おっしゃる通り、清経は笛が大好きな優しい武将ですね。
世阿弥は能を語るとき、とても大きい存在です。
当時の色々な芸能を積極的に取り入れるガッツもあり、
また脚色について父の観阿弥と真剣に議論したようなことも
伝わっています。
傑作ありがとうございます。
2012/6/12(火) 午前 3:06
Saraさん、こんばんわ、
ちょっと意地悪なクイズだったかな、失礼しました。
これはね、滅びの美なんですよ。
三島由紀夫氏は金閣寺の火事(放火だった)にヒントを得て小説の「金閣寺」を書きました。価値ある立派な物だから、炎上する姿はきっと美しかっただろうという気持ちですね。
また氏はいろんな意味(肉体も含め)で自分を高め、そして亡くなりました。政治的主張は勿論ですが、氏の持っておられた感性を実践する物凄い意志の持ち主でもありました。
傑作ありがとうございます。
2012/6/12(火) 午前 3:22