くにしおもほゆ

羅針盤を見誤ることなかれ

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尖閣問題で中国に対し強硬な態度を示そうとする人々は、多くがこう思っているはずだ。「いざというときは米国が守ってくれる」と。だが、果たしてそれは本当なのか。元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、「それは従米派の人々の一方的な思い込みでしかない」と指摘する。以下、孫崎氏が語った。


米国は尖閣問題について、2つのポジションを巧妙に使い分けている。

 1つ目は、「尖閣諸島は安保条約の対象になっている」という考え方で、2010年9月に起きた尖閣沖の漁船衝突事件の際も、ヒラリー・クリントン国務長官はこのように述べている。

 確かに、日米安保条約第5条には、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」とあり、尖閣が攻撃された場合、米軍が出動するのは自明なことのように思える。
 だが、そうではない。

 この条文の「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」という表現に注目してほしい。米国の憲法では、交戦権は議会で承認されなければ行使できない。つまり、日本領土が攻撃されたとしても、米議会の承認が得られない限り、米軍は出動しないのである。

 米国のもう一つのポジションは、「領土問題については、日中どちらの立場にも与しない」というものだ。

 2005年に日米政府が署名して規定した『日米同盟 未来のための変革と再編』では、「島嶼防衛は日本の責任である」ことが明確化された。尖閣諸島も、もちろんこの対象である。米国は、中国が対台湾向けに沿岸部へ配備した強大な軍事力と、在日米軍だけで相対することを嫌がっている。だからこそ日本に責任を押しつけたのだ。

 そうはいっても、実際に尖閣が中国に奪われれば米国も黙っていないのではないか、という考えも甘い。

 アーミテージ元国務副長官は、著書『日米同盟vs.中国・北朝鮮』(文春新書)のなかで、「日本が自ら尖閣を守らなければ、我々も尖閣を守ることができなくなるのですよ」といってのけた。

 どういうことか。尖閣諸島が中国に実効支配された場合、尖閣諸島は日本の施政下から外れる。すると、尖閣諸島は日米安保条約の対象外になり、米軍の出る幕はなくなるのである。

 つまり、米国は尖閣を「安保の対象」といいながら、実際に中国が攻めてきた場合にも、さらに実効支配されたときですら、米軍が出動する義務を負わないよう、巧妙にルール作りをしてきたのである。

 1996年には、モンデール駐日大使(当時)がニューヨーク・タイムズ紙で、「米国は(尖閣)諸島の領有問題にいずれの側にもつかない。米軍は(日米安保)条約によって介入を強制されるものではない」と明言した。

 多くの日本人は「在日米軍は日本領土を守るために日本にいる」と信じている。モンデールの発言は、その日本人の思い込みと、実際の米国側の認識とのギャップ、つまり不都合な真実を明らかにしてしまった。

 いま、尖閣問題で勇ましい発言を繰り広げている親米保守の方々は、こうした米国側の認識を踏まえているのか、私にははなはだ疑問である。

【プロフィール】
まごさき・うける●1943年生まれ。外務省に入省後、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を経て、2009年まで防衛大学校教授。近著『戦後史の正体 1945−2012』(創元社)が大きな話題を呼んでいる。

※週刊ポスト2012年9月7日号
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以上が転載部分です。
「堕ちた天使」様から転載させて頂きました。
 
私の好きな雑誌『世界の艦船』の今月号に「尖閣衝突 問われる日本の覚悟」という記事があり著者(読売新聞主任研究員の勝俣透通氏)も以下のように書いています。
 
クリントン国務長官らは「尖閣は日米安全保障条約第5条の対象である」と明言しているが、尖閣そのものの主権や領有権については言及していない。今年5月、東京で開かれた米大使館主催のシンポジウムで、米海軍分析センター上級研究員のマイケル・マクデビッド氏(元海軍少将)は、「クリントン国務長官の発言は、日本に行政権がある以上、安保条約の対象だと言ったのであって、それを失えば安保条約の対象から外れる」と言い切った。

閉じる コメント(2)

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米国の尖閣防衛については、専門家の間にいろんな意見がありますね。
いくつものシナリオが出来上がっており、どの時点で介入するか?
「特防秘」で決定していると考えるのですが、また軍が議会の承認を得てから動くというあり方は、時間的なものを最優先する軍では考えにくいのですが、自衛隊の防衛出動は待機命令があって、すぐ動けるように「即応体制」ということでできあがっていりと思われます。
いずれにしましても「疑心暗鬼」の状態は最悪です。

2012/9/1(土) 午前 9:35 [ tearface ]

tearfaceさん、こんにちわ、
いえ、米軍は即応の対処については大統領の承認で動ける筈です。
ただその後で議会の承認が得られなければ撤兵しなければなりません。
そうなると大統領にとっては大きな汚点になるので、議会の風は十分に読む筈です。

また米軍としても、日本政府の要請を受けないと「正義の戦い」という位置づけができません。
自民党政府なら問題ありませんが、今の民主党政府が即座に動けるとは思いません。
マスコミは「話し合いで解決するべきだ」などと主張するでしょうし、かなりゴタゴタして重要な時機を失する恐れが強いでしょう。

自衛隊と米軍の制服同士では強固な連帯がありますが、それとは別の話だと思います。

一日も早くオスプレイを普天間に入れて「米軍が控えているぞ」という姿勢を対外的に示し、われわれはまず自国を守ることの意識を高めることが重要で、この両者は一見矛盾するようで、矛盾のない防衛論なのです。

2012/9/1(土) 午後 3:46 watch_compass


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