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第4級翼竜隊の敷地内に建築された、雌雄各翼竜専用の厩舎では、異変が起こっていた。 いや、雌の翼竜の厩舎を中心とした敷地内全域というべきか。 一瞬、すべての大気が消え失せ、呼吸ができなくなった。それは本当に一瞬のことで、すぐに異変は治まった。皆、息を詰まらせて咳き込む程度で済んだのだが。 しかし、雌の翼竜の厩舎内は違っていた。 暴れる雌の翼竜ベルを必死に抑えようとしていた隊員たちは気絶し、かろうじて堪えた第四級翼竜隊兵士長トール・ラントと、同じく翼竜飼育長シェリス・フィールドは、喉から異常な呼吸音をさせながら大きく肩を上下し、地面に跪いているありさまだった。 人間に不可欠な呼吸の源である空気を奪われ、酸欠状態で激痛がする肺。トールは顔面に脂汗を滲ませ、十数歩先でこちらに背中を向けている新米隊員ユーリィ・フリューゲルを苦しみながらも呆然と見ていた。 少年が確かにエル・ヴィントと言うと、彼の右手には見えない「何か」が凝縮されて集まっていた。それが「ある」と認識できたのは、右手の真下にあたる厩舎の地面から激しく土埃が舞い上がり、さらに少年を今にも踏みつけようとしていたベルの前足が跳ね返されたからだった。 そして、直後に大気が奪われたのだ。 殺人的な苦しみは、一瞬にして周囲に猛威を振るった。 しかしながら、乳白色の髪の謎の少年ユーリィ――今ではその名も本物かどうか疑わしいのだが、その少年は淡々と呟いた。 「エル・ヴィント。裡(うち)なる炎に束縛されし我が同胞を鎮めてやっておくれ」 右手に凝縮されしものが、その手が上に押し上げられたことから更に膨らんだように思われた。 「ユ……?」 トールが声にならない声を発すると、その頑強な肩に縋(すが)るように、顔面蒼白のシェリスが手をかけた。 そんな二人の気配を感じたのか、背を向けていたキャリドールがほんの少し横顔を見せた。若葉色の瞳からは感情までは読み取れなかったが、まるで謝罪するかのように少年はそっと目を伏せた。 「さぁ、エル・ヴィント。五大竜が一、キャリドールの願いを聞き届けておくれ」 キャリドールが自ら名乗ると、エル・ヴィントと呼ばれた右手の「何か」が完全に動きを見せた。 虚をつかれたベルの、恐らくは口の中に消えたのだろう。ベルがこじ開けられるように大きく口を開き、喉を鳴らしたのだ。 そうして、ベルは長い首をゆらゆらと揺らし、やがては白目をむいてその場に崩れ落ちた。 |
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リーフ様の作品は本当に勉強になります!。
これまでとは文章のテイストが異なってきましたね。
ファンタジックな事象の描写が、田中芳樹さんに近いものを感じます
アカデミックな超自然表現に、リーフ様の持つ透明感が加わった
珠玉の文章だと思います!。
〜五大竜が一〜・・・?、キャリドールの正体とは!?、
そして「エルヴィント」という存在とは!?、続きが超楽しみです!
2008/4/7(月) 午前 1:40 [ 〜SENSE〜 ]
ありがとうございます(^O^)/
文章でまず気をつけていることは文法です(^_^;)推敲が足りていないので、結構間違えていますが。次に、分かり易く、そして自分の言葉で書くと。こんな感じです。でも、やはり好きな作家さんの風味は出てしまうのでしょうかね。今回はテンポを出したかったので、このような文章になったのだと思います。
ついにキャリドールが本当の名前を言ってしまいましたね〜(笑)。5大竜はこの章では詳しく語れませんが、間違いなくウォルド王国にとって重要な存在です。次は主人公リンディアを出してあげなくては!引き続き、読んでやって下さい〜!
2008/4/7(月) 午後 9:12
キャリドールがついにその力を発揮しましたね!
リンディアの方も気になるし〜!
目が離せない展開になってきました!!
2008/4/8(火) 午前 9:36 [ いずみ由羽 ]
一瞬にして大気を奪うなんて。
5大竜、あきらかにすごさ、大爆発な感じの名称が出てきました。
こういうのってファンタジーには大事ですよね。って私は勝手に思っています。
リンディア、どこ行ったの(笑)
2008/4/8(火) 午後 9:19
いずみ由羽さん キャリドールがやっとこさ力を見せてくれましたね〜(^o^;)
彼は五大竜の中でもちょっとクセのあるひとでして。まずはリンディアと合流させねば、この章を終われないので、急展開に乗って頑張ります!
2008/4/8(火) 午後 9:51
タヌキさん>有り得ない壮大な設定もまたファンタジー(笑)。特にウォルド王国は大陸唯一の魔法王国ですから、すごさ爆発です(^O^)
リンディアがいなくなる(笑)前に、早く合流させたいです(^_^;)
エル・ヴィントの力はまだまだこれからですので、ゆるく(←え?)期待していて下さい〜!
2008/4/8(火) 午後 9:59
キャリドールすげー!
今回はすごい迫力のある回で楽しめました!
2008/6/22(日) 午後 8:49
ありがとうございます(^O^)
キャリドールもいよいよ正体を自ら明かし始めました。あとはリンディアと合流させなければいけません!
頑張りますo(^-^)o
2008/6/22(日) 午後 10:29
うーん!w
唸るしかないです♪
やっぱり
文学部出身同士だから
なのかなあw
美意識がすごく
似てるんですよ☆
素朴さのなかに
毒気と美学を
放り込むと急に
文章が暴れだして
独特のリズム感を
生み出すんですよね♪
リーフさんのなかに
潜む地熱が
沸々と物語を
引っ張っていきますw
キャリドール
ハンパないですねw
2008/9/20(土) 午後 7:25 [ 苺姫 ]
タカハシさん>いつもありがとうございます!
学部は文学部、そして好みのジャンルが似通っているように私も思えます(笑)。
まだまだ自分の文章がどのようなものなのか、すべてを把握したわけではありませんが、ご推察のとおり、「暴れ」ることがありますね。
そこには私の真実があるのだと思いますし、それを読み取っていただけることは非常に嬉しいことです(*^_^*)
キャリドールはもちろん、リンディアも、まだまだ自分自身について驚くことが出るよう、書いていきたいと思います!
2008/9/21(日) 午前 0:26
翼竜は飼育されていなければ、普通に出産出来るんでしたよね。
今回の騒動も人間が自分たちの支配下に置いているからなのでしょうか。
彼らの立場になって考えたら、無理もないと思えます。
具体的に何があったかまでは判りませんけれども・・・
2010/10/4(月) 午前 0:20 [ しょうちゃん ]
しょうちゃんさん>人間を含め、どんな生き物でもそうだと思いますが、その種各々に「自然体」というものがあるんだと思います。
自然体へ戻ろうとしているだけ――と、翼竜は思っているかもしれませんね(*^_^*)
その点、人間はある意味損ですね。規則や周囲の目を気にする気持ちなど、壁がいっぱいありますから〜(笑)。
2010/10/5(火) 午後 9:59