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			<title>Aqua Folium～アクア・フォリウム～</title>
			<description>騎士と翼竜と風の精霊。
新米社会人リンディアと謎の美少年(!)キャリドールの
仕事っぷりを見てやってください(^.^)</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/waterleaf27</link>
			<language>ja</language>
			<copyright>Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.</copyright>
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			<title>Aqua Folium～アクア・フォリウム～</title>
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			<description>騎士と翼竜と風の精霊。
新米社会人リンディアと謎の美少年(!)キャリドールの
仕事っぷりを見てやってください(^.^)</description>
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		<item>
			<title>ブラン・オール―白き乙女と金の竜―４８</title>
			<description>&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　双竜山からトラロック王国の地へ足を一歩踏み入れた途端、初夏のなまぬるい空気を肌で感じたルーガであったが、目の前の青年の、冷気を誘う冴えた青色の瞳に見つめられると、体感温度が下がったような気がした。&lt;br /&gt;
　それは恐怖といった感情ではなく、心の内をさらりと撫でられたような妙な感触がし、自然と背筋が伸びてしまう、まるで故郷のユルグ老を思い出させるものだった。&lt;br /&gt;
「どうかされたか」&lt;br /&gt;
　訝（いぶか）る言葉とは思えないほど単調な口調で問われ我に返ったルーガは、首を横に振った。&lt;br /&gt;
「いや、失礼。確かに俺はルーガ・レクス、黒竜族長だ。――しかし、迎えにきたとは？」&lt;br /&gt;
　言外にその素性を疑った黒竜族長のもっともな質問に、ジェイスと名乗った青年は気分を害した様子もなく答えた。&lt;br /&gt;
「王立図書館薬草学部長補佐、セルジュ・ディローヌから話しは全て聞き及んでいる。ルシフェルカが随分と世話になり、感謝している。別宅ではあるが、ぜひ当家へお寄りいただきたいのだが、いかがか」&lt;br /&gt;
　嘘のつきようもない内容に、ルーガは青年が確かにアニス伯爵家現当主であると確信し、明るい声音で率直に胸の内を明かした。&lt;br /&gt;
「まさかアニス伯爵御自ら迎えに来てもらえるとは思わなかった。それに、どうやって俺たちが到着する日が分かったのか教えてもらいたいな」&lt;br /&gt;
　相手が貴族であろうと、その素性を知ったルーガの口調はくだけたものになる。隣でギルウスが困ったような表情をしたが、若き黒竜族長のそれが相手に対する好意の高さを推し量る材料であることを知っていたため、あえて何も言わないようだった。&lt;br /&gt;
　ジェイスもルーガの口調のことは気にならなかったようだが、彼の太陽のような明るさには少々驚いたらしく、冷たい色をした瞳に温度が生まれた。&lt;br /&gt;
「ルーガ、あなたはセルジュとリノンから聞いた通りの人のようだ。それから質問の答えだが――まず、義妹の恩人だ。私が迎えに行くことは当然であるといえるだろう。そして、今日という日が何故分かったかというと」&lt;br /&gt;
　ジェイスは瞳だけでなく、今度はうっすらと表情に温かさを乗せた。&lt;br /&gt;
「ヴァロアルスという聖名（せいめい）で気づくかと思うが、私の先祖には有翼人（ゆうよくじん）がいる。したがって、その血筋から受け継いだ異能力であなた方が来ることを感知できた」&lt;br /&gt;
　つまり精霊が報せてくれたのだ、とジェイスは最後に言い加えた。&lt;br /&gt;
　事情を知ったルーガはすっかり感心顔だ。ジェイスに心の距離も含めて一歩近づく。&lt;br /&gt;
「トラロック王国の伯爵にウォルド王国の血筋とは驚きだ。ルシカの存在を受け入れたことも頷ける。それで、別宅へ行くという話だが、ルシカには会えるだろうか」&lt;br /&gt;
　ルシフェルカに対する好意を隠そうともしないルーガであったが、ジェイスは快く首肯した。&lt;br /&gt;
「旅の疲れが取れないので寝かせているが、面会はできるだろう。それよりも、少々気がかりがあって急いでいる。できればあちらで待たせている馬車の中で続きを話したい」&lt;br /&gt;
「何かあるのか」&lt;br /&gt;
　無表情に近いジェイスは淡々としていたが、急ぎと聞いたルーガが真剣な面持ちになった。&lt;br /&gt;
　馬車に乗るべく後ろを振り向きかけていたジェイスは歩を止めると、首を縦に振った。&lt;br /&gt;
「王立図書館からルシフェルカに会いに来る人物がいる」&lt;br /&gt;
「それは……」&lt;br /&gt;
「――ルシフェルカを被検体にしていた、医術学部長だ」&lt;br /&gt;
　その後、アニス家別宅までの道のりには、馬に幾度も鞭打つ音と、激しく回り続ける車輪の音が鳴り響いたのは言うまでもなかった。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/waterleaf27/51222354.html</link>
			<pubDate>Sun, 05 Dec 2010 17:32:58 +0900</pubDate>
			<category>その他文学</category>
		</item>
		<item>
			<title>ブラン・オール―白き乙女と金の竜―４７</title>
			<description>&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　国境線の意味合いを持つ連山・双竜山は、各山々に出入り口を設けている。これには、お互いの国々を安心して往来できることと、他国の情報をいち早く知ることができる利点があった。しかし、中にはその出入り口を利用せず、秘密裏もしくは緊急事態のため山を越えようとする者たちもいる。そんな輩を取り締まっているのが、白竜族と黒竜族なのである。そして、彼らが誇りをかけて守る山々は今日も何事もなく、多くの旅人たちが山道を行き交っていた。&lt;br /&gt;
　その人々に混ざり、双竜山を西側、つまりはトラロック王国側へと下山するひときわ目立つ二人組があった。&lt;br /&gt;
　若き黒竜族長ルーガと、左竜ギルウスである。&lt;br /&gt;
　二人とも長身で、特にルーガなどはその輝く金色の髪と端正な容貌が人目をひいたが、やはり何といっても、両者からあふれる力強い気力と自信が並々ならぬ存在感を示し、すれ違う人々の視線をくぎ付けにした。&lt;br /&gt;
「ああ、白竜族長の説教は長かったな。あんなに誰かにしぼられたのは何年振りだろうな」&lt;br /&gt;
　もうすぐ山裾に到着するという時に、様様なことを思い出したルーガは、辟易した様子でため息をついた。&lt;br /&gt;
　すっかりいつもの調子を取り戻している黒竜族長に、ギルウスが小さく笑った。&lt;br /&gt;
「お前を本気で反省させることができるのは、白竜族長様しかおられないだろうな。たまにはいいだろう、落ち込んでみるのも」&lt;br /&gt;
「そのたまにが、あんな雷を食らうことだなんてごめんだね。同じ失敗はしないと肝に銘じたよ」&lt;br /&gt;
「良い心がけだ。やはり今回の件はお前にとって悪いことばかりではなかったようだな」&lt;br /&gt;
「……まぁね。これでルシカにも堂々と会えるんだ。さぁ、急ごうか、アニス伯爵家の別宅へ」&lt;br /&gt;
　気を取り直したルーガが歩く速度を上げた。それに余裕の表情で続くギルウス。&lt;br /&gt;
　そんな二人が双竜山を下り、トラロック王国へ一歩足を踏み入れると、そこで一人の青年が待っていた。&lt;br /&gt;
　青年は仕立ての良い服装から高貴な家柄の者であることがわかる。さらに、物静かな佇（たたず）まいが良く似合い、やや感情表現に乏しいが堅実そうな光を宿した切れ長の目が見るものの心を捉え、只者ではない印象を与えた。&lt;br /&gt;
　青年は、ルーガたちの姿を見ると、迷いなく悠然とした足取りで近寄り声をかけてきた。&lt;br /&gt;
「不仕付けで申し訳ない。あなたは黒竜族長、ルーガ・レクスで間違いないだろうか」&lt;br /&gt;
　見た目の印象を裏切らず、抑揚が少ない口調が一瞬、ルーガの中で王立図書館員のセルジュ・ディローヌの面影と重なる。青年からは危険な気配を感じることはなく、それは傍らのギルウスが態勢を変えていないことで確信が持てた。&lt;br /&gt;
　何も言わないルーガの心を読み取ったかのように青年が淡々と続けた。&lt;br /&gt;
「私はジェイス。――ジェイス・ヴァロアルス・アニス。ルシフェルカの義兄だ。あなたを迎えに来た」&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/waterleaf27/51222352.html</link>
			<pubDate>Sun, 05 Dec 2010 17:31:35 +0900</pubDate>
			<category>小説</category>
		</item>
		<item>
			<title>ブラン・オール―白き乙女と金の竜―４６</title>
			<description>&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　昼食後ルシフェルカは発熱がみられ、イオンが処方した薬湯を飲み眠りに落ちていた。&lt;br /&gt;
　熱で顔を赤くした少女の呼吸が落ち着いてくると、傍で見守っていたリノンは安堵し、腰掛けから立ち上がった。&lt;br /&gt;
「ルーガ、遅いわね」&lt;br /&gt;
　空気の入れ替えにと部屋の窓を開け放ち、昼食時の温かな風を取り込んで呟く。女性にしては長身で、きらめく生命力にあふれたリノンが窓辺に立つと、初夏の午後のぬるい風までもが活気を取り戻すようであった。&lt;br /&gt;
　独り言に思えたその呟きには答える者があった。金髪の美少年・イオンだ。いつもルーガにからかわれてばかりの立場である彼は、ふんと鼻を鳴らした。&lt;br /&gt;
「きっと、白竜族長にしぼられているんだよ。双竜山に不法侵入した輩を勝手に逃がしたんだから。それより、伯母さんは里に戻らなくていいの？　ギルウスさんもルーガに同行していて、館は主人不在でしょう」&lt;br /&gt;
　イオンはルシフェルカの額に触れ、薬湯がきちんと効いていることに、よし、と小さくうなずいた。&lt;br /&gt;
　見た目は普通の美少年、しかしながらその真剣な表情は一人前の医者である甥っ子に、リノンはあらためて感心していた。しかも、このアニス家別宅に来て、トラロック王国王立図書館に就学することが決まってからは、なおさら大人びてきたように思える。&lt;br /&gt;
「ルシカの傍にいることは、ルーガの指示でもあるわ。事態が完全に落ち着くまでは、ここにいるつもり。ジェイス様も了承済みよ」&lt;br /&gt;
「なるほど。王立図書館の連中が簡単にルシカさんを諦めるとは思えないしね」&lt;br /&gt;
　難しい顔をしながら頷くイオンがあまりにも少年らしくないので、頭が良すぎるのも考えものだ、と伯母として苦笑したリノンである。&lt;br /&gt;
　と、そこへ、ルシフェルカの義兄であるレスリィが顔を出した。いつもの明るい笑顔ではなく、警戒心をあらわにした硬い表情だ。&lt;br /&gt;
　レスリィは眠っているルシフェルカを起こさぬよう声をひそめた。&lt;br /&gt;
「王立図書館の医術学部長が来ている。ルシフェルカに直接会うといって聞かない」&lt;br /&gt;
「そんな……突然、しかもジェイス様がいないときに来るなんて！　ルーガたちと話し合って、ルシカを解放すると決めたはずでは」&lt;br /&gt;
　眉間にしわを寄せて怒りの声を上げたリノンは、慌ててルシフェルカが眠っていることを確かめた。幸い、少女が目を覚ました様子はない。&lt;br /&gt;
　親友である少女のこととなると、つい熱くなってしまうリノンに、彼女の甥が静かに声をかけた。&lt;br /&gt;
「落ち着いて、伯母さん。とにかく、今のルシカさんに面会は無理なのだから、会わせるわけにはいかないよ。レスリィ様、ジェイス様はいつ戻られるのですか」&lt;br /&gt;
　十二歳という年齢を超えた菫色の理知的な瞳を受けたレスリィは、自身もリノンと同じく焦燥感に駆られていたことを内心で認め、ふと上着の襟を正し背筋を伸ばした。&lt;br /&gt;
「兄さんは双竜山の入山口に人を迎えに行ったんだ。予定では今日の昼過ぎ――つまり、そろそろ戻ってもいいはずだ」&lt;br /&gt;
「そうですか。では、医術学部長には待っていただくようお願いしましょう。あの、レスリィ様、ひとつお願いがあるんですが……」&lt;br /&gt;
　イオンはルシフェルカの傍を離れ、すらりと背の高い青年の前に立つと、その柔和な表情の顔を見上げた。しかし、いつもの自信家の彼らしくなく、少々発言を躊躇している。&lt;br /&gt;
「どうしたんだい、イオン。言ってごらん」&lt;br /&gt;
　そのレスリィの声音が、どんな時も優しいルシフェルカを彷彿させたことに勇気をもらったのか、イオンは再び口を開いた。&lt;br /&gt;
「実は、医術学部長に俺を会わせていただきたいんです」&lt;br /&gt;
　この発言に驚くかと思われたリノンは意外にも静かな面持ちをしており、それを見たレスリィは即座に少年が次に言わんとすることを予測したのだが、念のため問うてみた。&lt;br /&gt;
「イオン……。何故なのか訊いてもいいかい？」&lt;br /&gt;
　もちろん、と、イオンは金色の髪を揺らして肯いた。&lt;br /&gt;
「ご存じだと思いますが、俺は王立図書館の医術学部に就学することが決まっています。でも、昼食前にルシカさんと話していて自分の気持ちに気づいたんです。俺が探究したいのは薬草学だということに」&lt;br /&gt;
　偽りない素直な気持ちを打ち明けたのであろうイオンは瞳を輝かせていた。そこには大人に強要されているといった悲愴な色は微塵もなく、完全に己の意思を以って決断しているということが伝わってくる。&lt;br /&gt;
「そうか。では、イオンは薬草学部に入るため、医術学部長に断りに行きたいというわけだね」&lt;br /&gt;
「はい、お願いします。その……やはり許してもらえないでしょうか？」&lt;br /&gt;
　最後は幼さを見せたイオンに、子どもが大好きなレスリィは嬉しそうに口角を引き上げた。&lt;br /&gt;
「まさか。学ぶのはきみだ。子どもだからといって医術学部長に面会してはいけないということはないよ。おそらく兄さんでも同じことを言うと思う。では早速――」&lt;br /&gt;
　レスリィがそう言いかけた時であった。寝台から、か細い声が途切れ途切れに聞こえてきた。&lt;br /&gt;
「わ……たし、も、行く」&lt;br /&gt;
「ルシカ。起こしてしまってごめんなさい。だめよ、寝ていないと」&lt;br /&gt;
　起き上がろうとしたルシフェルカの傍にリノンが慌てて駆け寄り、寝かしつけようとしたが、熱で顔を赤くした少女の懇願するような視線にいつものごとく負けてしまった。&lt;br /&gt;
「ルシカ、無理をしてはいけないよ。もうお前は王立図書館とは関係なくなったのだからね。何も心配することはない、あとは兄さんたちに任せておくれ」&lt;br /&gt;
　リノンに半身を起してもらった妹をレスリィがさとそうとしたのだが、存外頑固な少女は譲らなかった。&lt;br /&gt;
「私も自分のことは自分で決着をつけるべきでしょう。お願い、レスリィ兄様」&lt;br /&gt;
「ルシカ……」&lt;br /&gt;
　優しい水色の瞳が潤んでいるのを見て、誰がその願いを拒むことができるであろうか。&lt;br /&gt;
　答えはすでに決まっていた――。&lt;br /&gt;
「忘れていたよ、アニス家の誰一人としてお前に敵わないんだった」&lt;br /&gt;
　レスリィの大きなため息がこぼれたが、温かな陽光に満たされた部屋には久方ぶりに笑い声が戻ってきたのであった。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/waterleaf27/51197647.html</link>
			<pubDate>Sun, 28 Nov 2010 17:53:42 +0900</pubDate>
			<category>小説</category>
		</item>
		<item>
			<title>ブラン・オール―白き乙女と金の竜―４５</title>
			<description>&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　懐かしい我が家に戻ってから、早くも十日が過ぎていた。&lt;br /&gt;
　双竜山の山裾に建てられたアニス伯爵家別宅は、事実上ルシフェルカのための館であった。北の大国ウォルド王国にある『神々の森』で拾われた少女は、言葉を解さぬ赤子の自己防衛本能とも言うべき異能力を当時より発揮していた。少しずつ言葉を話すようになってからは、さらにその力が増幅され、本宅では暮らすことができなかったのである。&lt;br /&gt;
　だが、周囲の生気をもらい受けるという力は本人にすら上手く制御できず、ルシフェルカの命を救うために人里離れた別宅で暮らすようにしたものの、それでも異能力はとどまることを知らず、前アニス家当主が、王立図書館に協力を求めるという苦渋の決断を下したのであった。&lt;br /&gt;
　ルシフェルカは、出て行った時と変わらない自室の寝台で安心して体を休めている間中、今は亡き義父であるアニス伯爵や、二人の義兄らとの思い出、そして王立図書館でセルジュと過ごした日々に思いを馳せては、そのあとにルーガを思い出してため息をついていた。&lt;br /&gt;
　と、昼前の投薬時間であると、イオンが部屋に訪れた。&lt;br /&gt;
「ルシカさん、やっぱり自宅が一番のようですね。顔色が良いです」&lt;br /&gt;
　寝台脇に設けられた物置台に投薬のための道具と液体の入った瓶を手際よく並べ、白い右腕を自ら出したルシフェルカに美しい笑みを見せた。そして、縫い針よりも細く短い投薬用の針を薬液で消毒すると、すまなそうに少女の白い細腕に差し入れた。針にはブラン・オールから作られた薬を入れた瓶が繋がれており、瓶を斜めに傾けると、体に薬が入っていくようになっていた。&lt;br /&gt;
「針を刺したところが痛くないですか？　腕を交互に替えてはいますが……」&lt;br /&gt;
　イオンらしい気づかいに、ルシフェルカは大丈夫、と微笑んだ。&lt;br /&gt;
「王立図書館にいた時、セルジュもよくそうやって訊いてくれたわ。でも、あの頃使っていた薬は炎症止めで副作用が強かったけれど、今は元気になる薬だから平気よ」&lt;br /&gt;
「そう言ってもらえると嬉しいです」&lt;br /&gt;
　ルシフェルカがセルジュについて気さくに話すので、当初、王立図書館員だと警戒心をあらわにしていたイオンも、その印象が変化したようであった。&lt;br /&gt;
「ねぇ、イオン」&lt;br /&gt;
　投薬はやや時間がかかるため、その間イオンは付ききりである。いつもは眠ってしまうルシフェルカだが、今日は珍しく話を続けた。二人きりの今しか訊くことのできないことだ。&lt;br /&gt;
　イオンの菫色の宝石のような瞳が、優しくルシフェルカに向けられた。それを眩しそうに見つめると、少女は静かに切り出した。&lt;br /&gt;
「あのね、昨日、ジェイス兄様が報せてくれたのだけれど、王立図書館は、もう私を被検体として扱うことはないんですって」&lt;br /&gt;
　大声は上げなかったものの、イオンの表情が寝耳に水とばかりに驚愕のそれになっていった。&lt;br /&gt;
「あの、それって」&lt;br /&gt;
「私が王立図書館に出向いて、きちんと話さなければいけなかったのだけれど、お兄様やセルジュ、それにここにはいないけれど、ルーガが、私の体の負担になるからって……」&lt;br /&gt;
　また皆に迷惑をかけてしまった、とルシフェルカが付け加えると、驚いていたイオンは慌てて頭を横に振って力強く否定した。今のルシフェルカには、歩いて五日以上かかる王立図書館に行って、気難しい学者相手に説得することなど無茶なのだ。それに、誰ひとりとして負担に感じながら行動した者はいないことは分かりきっている。&lt;br /&gt;
「条件は、双竜山に王立図書館員が不法侵入した今回の件を穏便に収めること。それから、セルジュが、私の能力について無害であることを証言してくれたことも大きいわ。あとはね……」&lt;br /&gt;
　そこで、ルシフェルカは突然涙ぐんで声を詰まらせた。&lt;br /&gt;
「どっ、どうしたんですか、あの、俺、何か悪いことでも――」&lt;br /&gt;
　普段は大人顔負けの知識と弁舌を披露するイオンも、少女の涙には慌てざるを得なかった。しかも投薬中であるため、動くこともできず、助け船を求めて無意味であるが周囲を見回すその様は、まさに見ものであった。&lt;br /&gt;
「ちがうの。イオン、あなた、王立図書館に就学するのでしょう」&lt;br /&gt;
　今のルシフェルカに、笑う余裕はなく、怯えたようなまなざしでイオンを凝視している。&lt;br /&gt;
　そうして、切れてしまいそうな声で問うた。&lt;br /&gt;
「あなたが就学することも条件に入っている――違う？」&lt;br /&gt;
　イオンが絶句していたのは、瞬きを数回する程度で、その場の緊張感はすぐに笑いにとって代わられた。&lt;br /&gt;
「ルシカさん！　何を言い出すのかと思いましたよ」&lt;br /&gt;
　繊細な針を扱っている少年は、笑いで手元に震えが伝わらぬよう、必死になっている。&lt;br /&gt;
「笑い事じゃないわ。もし本当なら、それだけはやめて。私はきちんと自分で話しをしに行くから。あなたは黒竜族の里にとってだけではなくて、双竜山に必要な人だわ。私なんかのために未来を決めてはいけない」&lt;br /&gt;
　本気でイオンを案じているルシフェルカに、少年はようやく笑いをおさめ、一息ついたあとなぜか嬉しそうな表情になった。と同時にブラン・オールの薬液が入った瓶も空になったので、針を抜きながら話しだした。&lt;br /&gt;
「ルシカさん。たしかに、この間、セルジュ・ディローヌから就学の勧誘を受けましたし、それに応じることにしました。でも、俺、今初めてルシカさんが王立図書館から解放されたことを聞きました。あのセルジュって人、ひと言もあなたのことを引き合いに出したりしませんでしたよ」&lt;br /&gt;
　少年の言葉を信用しきっていないのか、ルシフェルカはまだ不安そうにしている。&lt;br /&gt;
「嘘なんてついていませんよ。俺、薬草学を極めたいんです。今、すごく注目しているものがあって、それを探し出して研究します。それがうまくいけば、黒竜族の里の皆の役にも立つし」&lt;br /&gt;
「本当に本当？」&lt;br /&gt;
「本当に本当です。俺、自慢じゃないですけど、お世辞と嘘は言えないんですよ」&lt;br /&gt;
　イオンが腕をそっと掴んで掛け布団の下に入れてやると、ルシフェルカはやっとひと心地ついて呟いた。&lt;br /&gt;
「決心して出てきたのに、結局何もできなかった。なんだか自分が情けないわ」&lt;br /&gt;
「何を言っているんですか。ルシカさんには目に見えないものをたくさんもらっているんですよ。元気に動けないルシカさんは、元気に動ける俺たちが欲しくても手に入れられなかったものをくれたんです。――感謝しています」&lt;br /&gt;
「イオン……あなたは命の恩人だわ。私のほうこそ、感謝しきれないのに」&lt;br /&gt;
　ルシフェルカの春の泉色の瞳に吸い込まれそうになったイオンは、ふいに泣きそうになって慌てて目をそらした。&lt;br /&gt;
　目の前の優しい少女を心から想っていたから、必死になって薬草について学んだ。生まれながらに恵まれた才能を持てあましていた少年に、学ぶ意義を与えてくれたのだ。&lt;br /&gt;
　それが、今後の彼の人生にとってどれだけ有用な宝になったことか。&lt;br /&gt;
　声が震えそうになっていたイオンは、言葉の代りに心をこめた笑顔を向けた。&lt;br /&gt;
　すると、ルシフェルカは再び命の恩人である少年に礼を言った。&lt;br /&gt;
「本当にありがとう、イオン」&lt;br /&gt;
　少年の真意はともかく、真心だけは十分に受け取ったルシフェルカの、偽りない言葉であった。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/waterleaf27/51170716.html</link>
			<pubDate>Sun, 21 Nov 2010 21:03:06 +0900</pubDate>
			<category>小説</category>
		</item>
		<item>
			<title>薔薇とわんこ</title>
			<description>&lt;p class=&quot;img&quot;&gt;&lt;img src=&quot;https://blog-001.west.edge.storage-yahoo.jp/res/blog-1d-c1/waterleaf27/folder/1585966/58/51142358/img_0?1290004893&quot; width=&quot;560&quot; alt=&quot;&amp;#x0030a4;&amp;#x0030e1;&amp;#x0030fc;&amp;#x0030b8; 1&quot; class=&quot;popup_img_800_800&quot;&gt;&lt;/p&gt;&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　さて、そろそろ現在連載中の「ブラン・オール」が終盤に差し掛かっております。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;&lt;br /&gt;
&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　本編はもちろんですが、ちらほらと短編を書きたいとも思っております（*^_^*）&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;&lt;br /&gt;
&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　一つは、「ブラン・オール」の後日談(のような？)を、そしてもう一つは、本編にも登場する公爵令嬢・ロシーヌの短編です。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;&lt;br /&gt;
&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　本編ではリンディアたちが中心となってしまいますので、ロシーヌという女性についても触れたいと思って、書くことにしました。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;&lt;br /&gt;
&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　彼女も本編を進めていくうえで大事な人物ですが、単に美少女を書きたくなっただけということも無きにしも非ず(笑)。書く方は楽しんで書くつもりです(^^ゞ&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;&lt;br /&gt;
&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　最近は、38℃くらいの熱の耐え方も体が覚えたらしく、ぼ～っとしながら物事をこなす器用さが身につきました(笑)。&lt;br /&gt;
　なるようになるもんです。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;&lt;br /&gt;
&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　短編のタイトルは「薔薇とわんこ」ではありません、さすがに(笑)。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;&lt;br /&gt;
&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　イメージイラストだけ描いてみました(^。^)&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/waterleaf27/51142358.html</link>
			<pubDate>Sun, 14 Nov 2010 00:46:02 +0900</pubDate>
			<category>小説</category>
		</item>
		<item>
			<title>ブラン・オール―白き乙女と金の竜―４４</title>
			<description>&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　双竜山を西側へ下山すると、初夏本来の温かさを肌で実感することができた。&lt;br /&gt;
　大気はやや乾いているが、風が吹けば額の汗が冷やされ、爽快な気分だ。&lt;br /&gt;
　同じ時間が流れているはずの世界でも、やや涼しい双竜山と比較し、リノンに背負われたルシフェルカはそっと息をついた。&lt;br /&gt;
　体力の回復を待たずにトラロック王国に戻ることになったルシフェルカは、発熱で火照った額と頬を撫でてくれる風にうっとりと目を閉じた。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;&lt;br /&gt;
&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　西の大国トラロック王国。その中枢である王立図書館へ向かい、自分はもう被検体にはならないことを自らの口で宣言するため、ルシフェルカは居心地の良い黒竜族の里を出てきたのだった。&lt;br /&gt;
　同行してくれたのは、ルシフェルカを背負うリノン、そして体調管理をしてくれるイオンの二人だ。セルジュは先に出発し、ルシフェルカの義兄二人に事の次第を報告しているはずであった。&lt;br /&gt;
　ルシフェルカたち一行は、大幅な遅れもなく第一の目的地である山裾のアニス家別宅へ到着した。今はまだ緑の葉をつけた銀杏の木が玄関へと導く小道は、トラロック王国らしく整然と敷き詰められた石畳となっており、その両脇にはよく手入れされた花壇が初夏の花々を色とりどりに咲かせていた。&lt;br /&gt;
「ルシカ、そんなに長く離れていたわけではないけれど、懐かしいわね」&lt;br /&gt;
　ルシフェルカを背負ったリノンが優しく笑った。&lt;br /&gt;
「お兄様たちは元気かしら……」&lt;br /&gt;
　強い倦怠感でぐったりとしながら呟くルシフェルカを元気づけるように、イオンが前方を指差しながら声を弾ませた。&lt;br /&gt;
「ルシカさん、顔を上げてみてください。決心して下山したかいがあったみたいですよ」&lt;br /&gt;
　イオンの言葉にリノンも頷いたので、ルシフェルカはのろのろと顔を上げた。&lt;br /&gt;
　そうして見えたのは、穏やかな土色に近い石を敷き詰めた小道を走ってくる青年であった。&lt;br /&gt;
　青年はすらりと背が高く均整のとれた体型をしており、こざっぱりと短くした柔らかな栗色の髪が、ルシフェルカとまるで本当の兄妹のように似ていた。服装は伯爵家子息らしく真白い絹の中着の上に深みのある葡萄酒色をした襟付きの上着を着ており、革の長靴を履いた長い脚が駿馬を彷彿させる、申し分のない外見であった。&lt;br /&gt;
　その青年を見たルシフェルカは、大きく見開いた目にみるみるうちに大粒の涙を湛えたのだった。&lt;br /&gt;
「レスリィ兄様……！」&lt;br /&gt;
「ルシカ！」&lt;br /&gt;
　リノンの背中から覗く小顔のルシフェルカを認識した青年も、大きな声で少女の名を呼んだ。&lt;br /&gt;
　青年――ルシフェルカの義兄のうちの一人であるレスリィ・アニスは俊足で、さほど待たずにルシフェルカ達のもとへ駆け寄ってきていた。そして、息も切らせていない爽やかさと輝く笑顔でリノンとイオンに礼を述べると、待ちきれないといったていで、背負われたルシフェルカに手を伸ばした。&lt;br /&gt;
「声……声が出せるようになったんだね。ああ、事情はセルジュから聞いたよ。僕は待ちきれなくて、ジェイス兄さんよりひと足先に早駆けしてきたんだ。どれ、ここから先は僕がルシカを連れて行こう」&lt;br /&gt;
　本当の肉親のように可愛がってきた義妹との再会に興奮を隠しもしない、おおらかな性格のアニス家の次男は、柔らかな栗色の髪を弾ませてルシフェルカをリノンの背中から譲り受けた。&lt;br /&gt;
　レスリィは口の端を目一杯に引き上げて破願一笑すると、腕の中のルシフェルカに頬ずりし、歩きだした。傍から見れば驚く大仰な可愛がりぶりも、リノンとイオンにとっては以前から見慣れたもので、ほほえましいものであった。&lt;br /&gt;
　ルシフェルカは、七つ年の離れた兄の顔を見上げながら、嬉しくてその胸にしがみついた。&lt;br /&gt;
　優しいレスリィ、懐かしい別宅、そして今となっては心地好ささえ感じる空気。&lt;br /&gt;
「おかえり、ルシフェルカ」&lt;br /&gt;
　レスリィの囁き声に、ルシフェルカは目じりから涙がこぼれ落ちるのを感じながら頷いた。&lt;br /&gt;
　辛い現実から逃げだしたが、やはり、帰ってきてよかったのだ――と。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/waterleaf27/51141682.html</link>
			<pubDate>Sat, 13 Nov 2010 21:17:39 +0900</pubDate>
			<category>小説</category>
		</item>
		<item>
			<title>ブラン・オール―白き乙女と金の竜―４３</title>
			<description>&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　大陸を東西に分断する国境線のように峰を連ねる連山、双竜山。名前の由来どおり、広大な連山を守り治めるのは、二つの竜族――黒竜族と白竜族である。&lt;br /&gt;
　現在、黒竜族を束ねているのは、若干二十五歳にして『竜聖（りゅうせい）』の異名をとる青年・ルーガだ。&lt;br /&gt;
　その黒竜族長・ルーガは、双竜山でも北部の領域に住む白竜族の長に会うため、左竜・ギルウスを伴い、緑ざわめく山道を歩き続けていた。&lt;br /&gt;
　白竜族の里は、黒竜族の里から山を歩き慣れた足で歩いて一日半から二日ほどのところにある。&lt;br /&gt;
　もう間もなく目的地に到着する距離になったところで、すらりとした体型のルーガの隣を歩いている戦士のような体躯をした大きな男――左竜・ギルウスが、口を開いた。&lt;br /&gt;
　いつもならば陽気な面持ちで、公務など面倒くさいと文句を言いながら歩くルーガであるが、黒竜族の里を出てからのこの二日間ほど、あまりにも静かなため、見かねたのだ。&lt;br /&gt;
「なぁ、ルーガ。ルシフェルカに声をかけずに出てきたことを後悔しているのか」&lt;br /&gt;
　落ち着いた低い声でゆっくりと話すギルウスの口調は、兄が弟を心配するそれに似ており、いつもと変わらぬものであった。&lt;br /&gt;
　ルーガは、またギルウスにいらぬ心配をかけたと苦笑いすると、質問に対して首肯した。&lt;br /&gt;
「白竜族長に『白い悪魔』の一件について呼び出しをくらって、急用だから、といえばそれまでだけどな。でも、正直いうと、お前の言うとおり後悔しているよ」&lt;br /&gt;
「ならば、声をかければよかっただろう。お前らしくもない」&lt;br /&gt;
　正論で反論の余地もないことを指摘するギルウスを、恨めしそうに横目で睨んだルーガは前を向き直り、本当に彼らしくもなく俯き加減になったかと思うと、そのまま口をつぐんでしまった。そんな青年の口元は、自嘲の笑みともつかない複雑な形に歪められていたのだった。&lt;br /&gt;
　さすがに、近しいギルウスにも言えるはずはなかったのだ。&lt;br /&gt;
『ルシフェルカが、あのセルジュとかいう男と王立図書館に戻ると決めたから気まずくなった、なんてさ』&lt;br /&gt;
　稚拙すぎる理由だ。いつも、リノンから子どもではないのだから、と、小言を言われるが、今回ばかりはくだらない嫉妬だと、心の中で自らの頭を抱えてうずくまるしかなかった。&lt;br /&gt;
　あの日――あの王立図書館から公用で赴いたセルジュが館の扉を叩いた日、彼は三つの用件を携えていた。&lt;br /&gt;
　一つ目は、もちろん、若い王立図書館員たちの双竜山への不法侵入について。&lt;br /&gt;
　二つ目は、以前から耳にはしていた、イオン少年の正式な王立図書館への就学依頼だ。&lt;br /&gt;
　そして三つ目は、やはり、王立図書館から逃亡したルシフェルカの処遇についてであった。&lt;br /&gt;
　一つ目の用件については、あの聖域で対峙した二人の若い王立図書館員をルーガの独断で逃がした形になったため、そのことで白竜族長に話しをしに行くところである。おそらく、白竜族の『雷光』ことカミナリおやじに大目玉を食らうことであろう。セルジュとはその後で正式に話をすることになっていた。&lt;br /&gt;
　二つ目のイオンの就学依頼にしても、結局は本人の意思次第であると、ルーガは思っている。&lt;br /&gt;
　だが、三つ目のルシフェルカに関しては、彼女の意思を尊重するなどと、きれい事だけを言える心境ではなかった。&lt;br /&gt;
　王立図書館に戻れば、再び被検体として命を削るような辛い目に遭う可能性が高い。もちろん、そんな目に遭わせたくなどない。しかし本音は、純粋に、ルーガ自身がルシフェルカに傍にいてもらいたいだけなのだ。&lt;br /&gt;
　やっと見つけたのだ――心のよりどころを。&lt;br /&gt;
　風のように気まぐれで奔放なルーガは『黒竜族』という大きな枷に意味を見出せなかったが、守る『意味』をルシフェルカが教えてくれてから、ルーガは変わった。&lt;br /&gt;
　黒竜族長ではないルーガ自身が存在することを知り、それを受け入れる喜びも知った。&lt;br /&gt;
　生まれてから風の精霊を友にし、家族と離れ、長となるべく育った彼に、今まで本人ですら認識していなかった愛情を知らしめてくれたルシフェルカ。&lt;br /&gt;
　そうだ、そうなのだ。くだらない嫉妬をするくらい、ルシフェルカが好きなのだ。たった二日ほどしか経っていないというのに、彼女の顔を見たくてしかたない。&lt;br /&gt;
　だが、館を出る前に一目会わなかったことは後悔しているものの、ルーガがすべきことは決まっており、それは愛する少女にもつながっていることだった。&lt;br /&gt;
　とにかく前進あるのみ。&lt;br /&gt;
「ギルウス」&lt;br /&gt;
　ルーガは小さく呟いた。やがて、俯き加減だった顔が上がり、まっすぐ前を見据えたかと思うと、真夏の蒼天を写し取った青い瞳に輝きが戻っていた。&lt;br /&gt;
　そうして、迷いなど一掃してしまう張りのある声音で言った。&lt;br /&gt;
「大切なものは絶対に守る」&lt;br /&gt;
　いつも通りの不敵な笑みをあっという間に取り戻したルーガに、ギルウスは穏やかな表情で肯いてくれたのだった。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/waterleaf27/51141678.html</link>
			<pubDate>Sat, 13 Nov 2010 21:16:35 +0900</pubDate>
			<category>小説</category>
		</item>
		<item>
			<title>ブラン・オール―白き乙女と金の竜―４２</title>
			<description>&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　ルシフェルカは綿入りの背当てを支えに寝台の上で上半身を起こし、西の大国からの来訪者たる青年と対面を果たした。思えば軟禁状態にされていた王立図書館を逃げ出して以来で、もうすぐ季節がひとめぐりするかという月日が流れていた。&lt;br /&gt;
　リノンに導かれて部屋へ入った青年は、最後に見たときと変わらず長身で背筋が伸びており、邪魔だと言って常に短くしている栗色の髪や、感情の読めない灰色がかった水色の瞳も、何もかもが懐かしさを感じさせた。&lt;br /&gt;
「セルジュ、逃げたりしてごめんなさい」&lt;br /&gt;
　開口一番、ルシフェルカはずっと伝えたかった言葉を口にした。それ以外にどう話しかけたらよいか思い浮かばなかったというのが正しいだろうか。&lt;br /&gt;
　セルジュは一瞬沈黙し、ルシフェルカに近づく前に歩を止めてしまった。&lt;br /&gt;
　その様子に、付き合いが短いとは言い難い少女が何かを察し、笑みを浮かべて言った。&lt;br /&gt;
「驚いたでしょう。声を出しても大丈夫なの。ここにいるイオンのお陰なのよ」&lt;br /&gt;
　ルシフェルカは、寝台の左側に控えていた少年を紹介した。&lt;br /&gt;
　すると、気を取り直した青年は、無表情のままルシフェルカの傍らまで近付いたかと思うと、少し低めの、しかしながらさらりとした聴き心地の声で、イオンを知っている、と言ったのだった。&lt;br /&gt;
「イオン・カエルラ。君については黒竜族長に話しをしてある」&lt;br /&gt;
　今ここで詳細を語る気はないのか、はたまた背中に異様な気を感じたからか、少年の伯母であるリノンのやきもきした表情を一瞥し、セルジュはイオンに関してはそれ以上何も言わなかった。&lt;br /&gt;
　ルシフェルカは何とは無しに察してはいたが、先に自身の身の振りに方に決断を下すべく、右側に立ち尽くす青年の制服の袖を掴んだ。そして、優しい水色の瞳に強い意志を込め、セルジュの熱をも吸い込むような、温度を感じさせない瞳を見上げた。&lt;br /&gt;
「セルジュ、私は王立図書館に戻るわ」&lt;br /&gt;
　迷いなく発せられたその言葉に、わずかに青年の瞳が揺れた。彫像のような印象はあるが、彫像そのものではないのだ。憎からず思う少女が望まぬ場所へ戻るというのに、無情ではいられなかったようであった。&lt;br /&gt;
　だから、彼はルシフェルカの未だ白さが残る髪を撫でて静かに返した。&lt;br /&gt;
「確かに、王立図書館は未だ君を欲している。しかし、今、こうして呪具なしで声を発しているのだから、能力が消えたとでも言って、戻らない手もある。無理はするな」&lt;br /&gt;
　存外優しい言葉をかける鉄面皮の青年に、彼の数歩後ろに控えたリノンと、寝台の反対側に立つイオンは少なからず驚いた。&lt;br /&gt;
「変わっていないのね、セルジュ。あなたはこんなに優しいのに、私は裏切ってしまった。だから、一度戻って、今度はきちんと出て行くのよ。そうしないと、あなたに顔向けできないし、それに、ルーガにも会えなくなりそうだもの」&lt;br /&gt;
「黒竜族長に、か」&lt;br /&gt;
　セルジュが呟くと、ルシフェルカは微笑んで頷いた。&lt;br /&gt;
「そうか……。ならば止める理由はないだろう。王立図書館へ君を連れて行こう」&lt;br /&gt;
　そう静かに告げるセルジュの口調は淡々としており、事務的にも感じられたのだが、少女を見下ろす瞳には、彼女を想う温もりとせつなさが同時に揺れていたのであった。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/waterleaf27/51119794.html</link>
			<pubDate>Sun, 07 Nov 2010 22:51:11 +0900</pubDate>
			<category>小説</category>
		</item>
		<item>
			<title>ブラン・オール―白き乙女と金の竜―４１</title>
			<description>&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　黒竜族長の館内で、ルシフェルカにあてがわれた部屋は二階にあり、日当たりのよい窓が大きく作られた、広すぎない居心地の良いものであった。&lt;br /&gt;
　初夏の涼風が床に臥したルシフェルカの前髪を撫でていくと、少女はふと目を覚ました。&lt;br /&gt;
「ルシカさん」&lt;br /&gt;
　そう静かに呼びかけてくれた声の主は探さずともすぐに顔を見ることができた。&lt;br /&gt;
　金色の絹糸のような髪を揺らしてルシフェルカの顔を覗き込んだのは、イオンであった。&lt;br /&gt;
　菫色の瞳がわずかに潤んでおり、それがさらに少年の美しさを引き立てている――などと考えたのか、横たわったままの少女は弱弱しくはあったが笑みをこぼした。&lt;br /&gt;
「私、生きているのね……。ルーエは大丈夫？　それからルーガも」&lt;br /&gt;
　相変わらず、自分のことよりもまず他人を気遣う優しい水色の瞳の少女に、イオンの表情も和やかなものになった。&lt;br /&gt;
「はい。ルーエは大量に失血したので、体力が戻るのは少し先になると思いますが、もう目を覚ましているばかりか、ありえないくらいに食欲旺盛ですよ。今朝は、野イチゴの砂糖漬けが欲しいと駄々をこねていました」&lt;br /&gt;
　イオンは苦笑を交えてはいたが、表情に安堵の色を浮かべてそう語った。そして、羽毛入りの掛布をルシフェルカの肩まで引き上げてやりながら、ルーガも怪我ひとつなく普段通りにしていると、なぜか不服そうに唇を尖らせた。イオン自身も、ルシフェルカを直接助けたかったとは悔しくて口に出せないのだ。&lt;br /&gt;
「よかった……。そういえば、私、目が見えているわね。それに声を出しても平気みたい。以前、同じ状態になった時は、しばらく回復しなかったのに」&lt;br /&gt;
「ブラン・オールのお陰です。あの聖域でルーガがブラン・オールを発見して、事件のあと、ルシカさんをもう一度その群生地に横たわらせたと言っていましたから、回復が早かったんだと思います。声も、たぶんもう、呪具を使わなくても大丈夫だと思います。現に、会話している俺はまったく何ともありませんよ。それから……」&lt;br /&gt;
　意気揚々と説明をしていたイオンであったが、やがて言いづらそうにしだしたので、ルシフェルカは微笑んで先を促した。&lt;br /&gt;
「その、ここに来てからの治療ですが、俺が調合したブラン・オールの内服薬を血管に直接投与させてもらいました」&lt;br /&gt;
　イオンが明かした治療法に、ルシフェルカは目を大きくして問うた。&lt;br /&gt;
「血管に……って、その技術はトラロックのものでしょう」&lt;br /&gt;
　顔色を青くして驚くルシフェルカに、イオンが慌てて弁解しようとした時だった。&lt;br /&gt;
　部屋の扉を軽く叩く音がし、続いてリノンが顔を出したのだった。&lt;br /&gt;
「ルシカ。よかった、目が覚めたのね」&lt;br /&gt;
　結い上げた褐色の髪を元気よく揺らしながら、大股で歩み寄ってきた長身のリノンは、寝具から両腕を差し出したルシフェルカに応え、実の姉のようにしっかりと少女を抱きしめた。&lt;br /&gt;
「無茶してくれたわね。あなたがここに運び込まれてきた時には、本当に生きた心地がしなかったわよ」&lt;br /&gt;
「リノン、いつもありがとう。イオンにも感謝しきれないわ。生きていることがこんなに嬉しいなんて、双竜山にきて本当によかった」&lt;br /&gt;
　全身の倦怠感が強いためか、ルシフェルカはリノンに体を支えてもらわなければ半身さえ起こしていられないのだが、姉とも慕う頼もしい右竜たる女性は、力強く少女を抱きしめてくれた。それがたいそう心地よく、ルシフェルカはほっと息をついたのだった。&lt;br /&gt;
「あのね、リノン」&lt;br /&gt;
　ルシフェルカは、さきほどイオンに聞くはずであった問いをリノンに投げかけた。&lt;br /&gt;
「王立図書館から誰か来ているのでしょう」&lt;br /&gt;
　ルシフェルカの問いに、案の定、リノンの体が強張った。少女を抱きしめる腕が戸惑いを隠せず一瞬大きく震えたのだ。&lt;br /&gt;
「さっき、イオンに聞いたの。血管に直接投薬したって……」&lt;br /&gt;
　リノンは顔を上げ、すまなそうにしているイオンに大丈夫だ、と、微笑んだ。こればかりは隠せるものでも、また、隠すものでもない。ルシフェルカの命を救うために最善かつ最高の方法であったのだから。&lt;br /&gt;
　リノンは凛とした声音で言った。&lt;br /&gt;
「ルシカ。セルジュが来ているのよ。その投薬の方法は、セルジュが提供してくれたの」&lt;br /&gt;
　ルシフェルカは、知った名前を聞いたとたん、重い体に鞭打つように、リノンから体を離した。&lt;br /&gt;
「私……」&lt;br /&gt;
　ルシカの瞳は動揺していた。悲しみとも切なさともつかない複雑な表情になり、次の言葉を探して唇が震えていた。&lt;br /&gt;
「ルシカさん」&lt;br /&gt;
　ルシフェルカが今にも卒倒してしまうのではないかと心配したイオンが、小さな背中をそっと支えた。そんな心優しい少年にひきつった笑顔で礼を言い、少女はいったん深呼吸した。&lt;br /&gt;
　そうして、心を決めたとばかりに唇を引き結んだあと、リノンとイオンの顔を交互に見た。&lt;br /&gt;
「逃げるのはおしまい。私は、私の気持ちをきちんと伝えるために、王立図書館に戻るわ。そのために――セルジュに会いたい」&lt;br /&gt;
　ルシフェルカの決心を聞いた二人は、驚きよりも、とうとうこの日が来てしまったと落胆の面持ちになった。泣くことも怒ることもできず、少女の身がどうか自由になるようにと、黙して強く願うことしかできなかったのである。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/waterleaf27/51105593.html</link>
			<pubDate>Wed, 03 Nov 2010 22:21:15 +0900</pubDate>
			<category>小説</category>
		</item>
		<item>
			<title>ブラン・オール―白き乙女と金の竜―４０</title>
			<description>&lt;div class=&#039;wiki&#039;&gt;　西の大国からの招かれざる客である王立図書館員と共に侵入した黒い獅子により引き起こされた大騒動から数日が過ぎていた。&lt;br /&gt;
　毒物監査係長・ユルグの孫・ルーエが重傷を負うも一命を取り留めた事件は、瞬く間に黒竜族の里中に広がったが、リノンとギルウスの迅速な働きにより、里人たちが過剰な反応を示すことなく穏やかな日常が戻っていたのだった。&lt;br /&gt;
　いつもと変わらぬ青い空、澄んだ空気、そして小鳥たちのさえずりが軽やかに聞こえる明るい朝、黒竜族長の館を訪問する者があった。&lt;br /&gt;
　来訪者の名はセルジュ・ディローヌ。瀕死のルシフェルカに青い外套をかけた、謎の王立図書館員であった。&lt;br /&gt;
　セルジュは長身痩躯の青年だが、不健康な印象はなかった。背筋が伸びた美しい姿勢は毅然としており、笑みひとつこぼさない、彫像のように整った顔立ちや灰色がかった水色の瞳が彼の人となりを冷たくも冴えた冬の空気のように感じさせた。&lt;br /&gt;
　玄関の扉を開け、初めにセルジュの姿を見たのはリノンで、たいそう驚いた彼女は束の間、開いた口がふさがらなかった。それもそのはずで、リノンはルシフェルカが王立図書館に軟禁されていた頃のことを知っており、当時ルシフェルカの異能力について研究を進めていた中心人物が誰あろう、このセルジュ・ディローヌに他ならなかったのだ。&lt;br /&gt;
　我を取り戻したリノンは、いつもはおおらかさを象徴している大きな瞳を疑心で細め、見事なまでの鉄面皮ぶりを披露する青年を睨んだ。&lt;br /&gt;
「何か御用でしょうか。その装いから察するに、公用でいらしたようですが」&lt;br /&gt;
　わざと慇懃（いんぎん）な物言いでけん制する右竜・リノンに、しかし、セルジュは淡々と返した。&lt;br /&gt;
「黒竜族長に目通り願いたい。今回生じた、王立図書館員の不法侵入についてと、ルシフェルカ・アニスの処遇、そしてイオン・カエルラについて話しがある」&lt;br /&gt;
「イオン？」&lt;br /&gt;
　想定外の名前に思わず聞き返したリノンであったが、そうだ、と逆に一言短く返してきたセルジュの声にあまりにも温度がないので、不覚にも怯みそうになってしまった。&lt;br /&gt;
「ルーガ……黒竜族長は、少々取り込み中ですので、お待ちください」&lt;br /&gt;
　とりあえず咳払いでごまかし、渋々ではあるが、青年を客間に通したのであった。&lt;br /&gt;
&lt;/div&gt;</description>
			<link>https://blogs.yahoo.co.jp/waterleaf27/51090842.html</link>
			<pubDate>Sat, 30 Oct 2010 21:51:53 +0900</pubDate>
			<category>小説</category>
		</item>
		</channel>
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