博客新人

中国と日本の経済社会事情を知る。さらにもう少し視野を広めて隣国、そしてアジア、また遠いところまで見詰めて行きたい。

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 GDP成長率を、供給の側面から考える場合、人口、特に生産年齢人口(15〜64歳)の増減が重要になる。
 1990年代半ばまでは、総人口、生産年齢人口ともに増加し、人口要因は実質GDP成長率に常にプラスの寄与をしてきた。
 それが2000年代に入るとじわじわとマイナス方向に変化し、2020年頃までを視野に入れると、人口減と高齢化(=生産年齢人口割合の低下)によって、年率でマイナス1%近く成長率が引き下げられる計算になる。
 こうした人口構造をすぐに変えるのは不可能に近い。
 したがって、日本のGDPを増やすには、生産年齢人口の1人当たりの実質GDPを増やすこと、つまり労働生産性を上げるしかない。
 労働生産性は、技術革新や労働者の教育、スキルの向上などに依存するが、「生産年齢人口当たり実質GDP」の伸び率は、景気が良い時期に高く、悪い時期に低い。
 つまり、景気の持続的な回復力を強めることこそが、経済成長には欠かせないのである。
 では、どうしたら、景気に持続性が備わるか。
 いくつかの要因があるが、大切なのはGDPの6割近くを占める個人消費の持続性である。
 そのためには、家計において賃金収入が安定的に確保されていることが重要になる。しかし、人口減少時代の企業と家計の関係、つまり雇用のあり方には大きな問題がある。
 日本の雇用システムは、年功賃金と終身雇用に特徴がある。
 年功賃金のもとでは、若年労働者は、生産性が高くても低年齢を理由に賃金は抑制される。つまり、優秀な若年労働者にとっては、会社への貢献に対して見返りが少ないことになる。これを取り戻すには、長期間、その会社で働く必要がある。これが、終身雇用につながっていく。
 これを世代間の問題として考えると、年功賃金は若年労働者から高齢労働者への企業内所得移転ととらえることができる。しかし、少子高齢化によって、高齢労働者の割合が高まると、このシステムを維持することは難しくなる。高齢労働者を厚遇し続けようとすると、若年労働者への負担が大きくなりすぎるからだ。
 一方で、人口動態とは関係ないところでも、企業の行動様式は大きく変化している。
 90年代はROE(株主資本利益率=株主資本に対する利益の割合)が下がる一方で、労働分配率(企業の付加価値=粗利益に対する人件費の割合)が上昇している。
 すなわち、この時期の企業の経営者は、いわば株主を犠牲にしながら、従業員への分配を維持しようとしていた。
 ところが、2000年代に入ると、労働分配率を下げて、ROEは上げるという顕著な動きが出てきた。これは日本の経営者にとって、従業員もしくは労働組合よりも、株主の位置付けがより重要になってきたことを示している。
 その背景には、外国人株主が、日本の上場株式の約3割を所有するようになり、物言う株主が存在感を増してきた事情がある。
 いまの経営者は、人件費を抑制してでも、株主に分配する利益を確保しようとする。そのため、かつては安定的に維持されていた企業の利益と家計の所得との結び付きは弱まり、家計不在の景気回復という現象まで起きている。

変わる住宅市場
 このように企業から家計への資金の流れが細くなっているなかで、家計はどのように対応すべきなのだろうか。
 ここで、人口減の影響を別の側面からとらえてみたい。注目すべきは住宅市場である。
 これまで日本の住宅市場は、新築住宅を中心にした市場だった。
 しかし、少子化で若い世帯が減っていることによって、住宅需要は伸び悩み、すでに日本の空き家率は、03年の時点で12%に達している。これは中古住宅市場の先進国である米国の空き家率10%を上回っており、質的な面はともかく、量的な面では、住宅市場が中古市場に移行する環境は整いつつある。
 住宅の耐用年数の向上などを通じて、中古住宅市場が今後、順調に成熟していけば、10年後には、住宅市場は大きく様変わりしているはずだ。
 一般的に、日本の家計は20〜30代は主に預貯金で住宅取得資金を貯める。その後、30代後半から40代で住宅を購入し、50〜60代でそのローンを返済する。そのため株式などのリスク資産に投資できるのは60〜70代になってからというケースが多かった。
 だが、住宅市場が、米国のように中古住宅を中心にした市場に移行すればどうなるだろうか。より安価な住宅の取得機会が増えるので、新築物件を取得するための高額な預貯金から解放される。そこで若い世代にも、金融資産を多様化するための資金的な余裕が生まれるはずだ。
 株式市場に投資して企業の株主になれば、たとえ貸金が減少しても、配当やキャピタルゲインという別の経路で、企業から家計へ資金が流れる。これまで預貯金に偏っていた金融資産を多様化することで、家計の収入減を補うことができる。そうなれば消費支出が増えて、GDPを下支えすることも可能だろう。
 ところが、そのためには、雇用や金融資産に対する考え方が変わり、住宅市場も変化しなければならない。それにはまだ時間がかかるだろう。したがって日本経済は当面、人口減少のマイナス要因を大きく受けることになる。

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