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『塔』2017年12月号 204〜205頁 掲載
『塔』10月号 花山多佳子選歌欄(作品1)の90名分の歌から、次の15首を選び、評をしました。
評のご感想等を、ご連絡くだされば幸いです。 西田和平
紫陽花の清しき青は海の色君が育ちしこの島の色 / ほうり真子
感情の蔓が思わぬ方へ伸び日傘のうちへ収めて歩く / 石井夢津子
回転ドア通りゆくとき一瞬をヒトの標本のやうになりたり/鵜原咲子
売れなかった絵は自らの手でつぶす仕事もあるのだ夜アトリエに/江種泰榮
誰になれば一番しあわせ雑踏のひとりになるとときどき思う/乙部真実
七夕のデイサービスに短冊は「かっぱえびせん食べたい」とあり/紺屋四郎
胸に抱く貝をカモメに奪わるるラッコのこども人の目をせり/ しん子
なにか長い時間だつたと思ひをれど季節ひとつが過ぎゆきしのみ/杉本潤子
夕暮れの端っこすこし混ぜましょう子は前髪をつんと揺らせり/塚本理加
義母の柩にしばらく掛けいし夫の手がかすかに震う声なく震う/土肥朋子
魂をも釘に吊して売っていた横浜(ハマ)の闇市戦後にありき/中村佳代
バケツ持て走りし道に火柱の五重塔を見たると眼上げぬ / 西川啓子
マイデスクなき職場にもいつからか慣れて全てを持ち歩きたり/山内頌子
見るならば海花火より川花火できれば信濃川の花火が見たい/山西直子
あの夏のいくつもありてあの夏と言ふのみにして母と話せり/吉澤ゆう子
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短歌評など
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『塔』2017年11月号 202〜203頁 掲載
『塔』9月号 花山多佳子選歌欄(作品2)の89名分の歌から、次の15首を選び、評をしました。
評のご感想等を、ご連絡くだされば幸いです。 西田和平
枇杷の実は夕暮るる色月の出色 雨の日は雨吸ひあげてをり / 山尾 春美
電線に鳩と鵯とのとまりゐてくぐもる声と透る声する / 守永 慶吾
甘ったるいだけのケーキは母親のビンタのようでどこかさみしい/海老茶ちよ子
十二年暮して決別したる息子( こ)よ 飯 ( いひ )はむとき眼 ( まなこ )がさびし/相澤 豊子
快晴に五月の君の影は濃く先の見えない半年ののち / 岩尾美加子
会いたいと願っていた人前にして喉元にひっかかっている骨 / 黒川しゆう
水の気に満つる雨竜( うりゅう)の高台はあっちに池塘こっちに池塘 / 嵯峨 克彦
おろおろと二歳に満たぬ孫の背を抱き寄せればしばしまかせ居る/佐藤みのる
思い出になりかけていたその腕は九十日分灼かれて黒い / 萩原 璋子
この人と会うためひとりで駅を出て他の誰かと会うため帰る /花麒麟陰朗
離れると僕の知らない君がいることに気付いた電話の向こう / 濱本 凛
夜を明かし手負いのけものはカリカリと熱にたかぶり夫に噛みつく/日夏美砂
ぬきうちの暑さなりけりふり向けば守宮は家族のやうな顔して/福田 恭子
暗いままの台所に行きカレーにソースをかけて戻るとそれは酢でした/双板葉
きみのいない街で暮らすということのこんなに軽かったかなサンダル/安田茜
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『塔』2017年10月号 174〜175頁 掲載
『塔』8月号 月集の73名分の歌から、次の15首を選び、評をしました。
ご感想等を、ご連絡くだされば幸いです。 西田 和平
原稿は忙しい人に頼まねば 及川隆彦言ひてにやりと / 永田 和宏
手も足も汚れて死にし者たちに有明スミレは白を点せり / 栗木 京子
賞味期限切れたるを捨て薄闇にしんせんなゴキブリ団子置きゆく/ 池田 幸子
死んでゐるきみはわれには生きてをり朝霧の中に長き橋うく / 岩野 伸子
成り行きでレーザー施術を諾ひて疲れ切つたるわが身を運ぶ / 小林 信也
手のひらが汗ばんでいたそれだけが祇園祭の夜の記憶で / 貞包 雅文
だれか知らないが背中を削るのはやめろと皿を洗ひつつ思ふ / 澤村 斉美
小さなる五本の指が吾が指を握りてくるる若萌えあかり / 進藤 多紀
供花の菊切りつつ思ふ吾が為に花切らるる日も遠くはあらじ / 田附 昭二
病室の匂いに母はなじみゆきこの頃母の匂いとなりぬ / 土屋 千鶴
胎内のことを語りし日も過ぎてもうしっかりとこちら側なり / 永田 紅
風呂場にて子の体あらうわれの手にしだいに広くなりゆく背中 / 花山 周子
次々とヘッドライトは過ぎてゆくわたしからわたしの影をはがして/久岡貴子
皮と肉とがばらばらになりし餃子でもあんたはエライ残さず食べる/藤田千鶴
ひつきりなしに私が喋るので黙すしかなし父もさくらも / 松木 乃り
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『塔』2017年9月号 170〜171頁 掲載
『塔』7月号 花山多佳子選歌欄(作品1)の93名分の歌から、
次の15首を選び、評をしました。
ご感想等を、ご連絡くだされば幸いです。 西田 和平
ねずみ坂はねずみも転がる急坂と子に教はりしはいつの春のこと/小林 真代
真夜中に金色の目を光らせて過失の如く黒猫が来る / 関口 健一郎
側溝に百円玉が光りおり今夜見えない月の代わりに / 北辻 千展
戦争に末の男の子を逝かしたる祖母は日毎に小さくなりいき / 中澤百合子
音楽はのみもの本は食べるもの光のはいるリビングルーム / 上澄 眠
人降りて我が座ろうとする座席に桜が一片零れていたり / 小川 和恵
こもる孤独をはじくように雨傘を開きて二泊せし妹送り来ぬ / 小畑百合子
どこにでも行けない足で何を思う 夜だけ足は靴下をぬぐ / 片山 楓子
亀甲に桜が入る家紋誉め用地交渉始まり順調 / 後藤 正樹
三十三寺仕上げの朱印 亡き人のたれかれゆっくりわたくしに来る/坂 楓
沈黙は待つという時間音量を大にし受話器を耳から離さず / 佐藤 浩子
死ぬもよし生きるもよしと思( も)ふ夕べ山の稜線霧におほはる / 本嶋美代子
あひみてののちのこころのそのつづき思えば春の月がふくらむ/ 宮地しもん
連れのなきひと多くして静かなり病院脇のスターバックス / 沢田麻佐子
椰子の葉の向こうより来て真夜中に風は一気に秋ですと告ぐ / 滝 友梨香
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『塔』2017年8月号 180〜181頁 掲載
『塔』6月号 花山多佳子選歌欄(作品2)の88名分の歌から、次の15首を選び、評をしました。
ご感想等を、ご連絡くだされば幸いです。 西田 和平
テリーヌに光り照りーぬと言ってみればきみとの食事おだやかだなあ / 阿波野巧也
沈丁花白く香りてああ春だ空は青いし彼岸も近い / 河内 幸子
あかね見る吾にならって空を見るからすのつまらなそうな顔 / 岡崎 五郎
半身を雪化粧せる火の山や踊り場の窓を額縁として / 竹下 俊郎
右膝を軽くたたいて立ちあがり「またね」を膝に残したままで / 田巻 幸生
花の下にて死んでたまるかきさらぎの銀月アパートメントのさくら / 千葉優作
返事来ぬ理由考え見上げればタワーマンション冬風が吹く / 中村真一郎
悟られることを恐れて 咲き終わる菜の花ゆれて車窓に映る / 中山 靖子
強風の度におびえる僕が住む家は神社の裏手でこわい / 廣野 翔一
陽の色はゆふべとなればくれなゐに近づくと識る晩年の吾 / 藤原 學
桃の香よ 祈りつづけた如月を娘は乗り越え産み月になる / 宮内ちさと
還暦の父が黙って窓をふくかつてサンタが通った窓を / 森永 理恵
鏡台に立つ母の見ゆ しやんしやんと帯整へしもうひとりの母 / 向井 和子
タンポポの綿毛をふうと吹くように文句も愚痴も言いたかったが / 大橋 春人
たましひがあるならどれと見上げたる春の夜空は一面の靄 / 阿蘇 礼子
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