Wecker papa の独り言

papaの独り言です。[[embed(,0,500,400)]]

小説もどき(?)!のコーナー

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全28ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]

私は、アパートに戻り・・・連絡を待ったが、何処からも連絡は無かった。

間に合わなかったのか・・・私がもっと早く、彼女と向かい合っていたなら・・・

もっと時間もあったし・・・別の事も何か? 出来たかも知れなかったのに・・・

「私が悪い・・・」、本当に 心から反省していた・・・悔んでいた。

まんじりとも出来ない時間が・・・刻々と過ぎて行く・・・。

悔やんでも悔やみきれない時間でした・・・しかし、時間は残酷にも・・・その時を告げた。

「出かけなくちゃ・・・時間だ」・・・今日は、朝一から・・・解剖学教室・・・。


結局、何処からも連絡を貰えぬまま・・・私は実習室の前に到着していた・・・・・。

この期に及んでも・・・まだ・・・私は、今までの事全てが「幻」「妄想」であって欲しいと 心から願っていた・・・。

間に合わなかったら・・・悔やみきれない・・・私のせいで、普通なら とっくに成仏しているはずの魂を・・・もう一度、傷つける事になる・・・私のせいで・・・。

この時間・・・すでに実習の準備は済んでいるだろう・・・。

彼女は・・・解剖台の上に 乗らずに済んだのだろうか・・・私には、もう知るすべは無かった。

時間が刻々と迫ってくる・・・学生が三々五々・・・実習室へと消えて行く・・・。

私も・・・入らなくちゃ・・・しかし・・・怖い・・・彼女の安否(?)が、未だ確認出来ないから・・・。

後悔の思いで 一杯だった・・・それは・・・自分が、あの水槽へ入れられるという結果を恐れてでは無い・・・彼女への 憐憫(れんびん)の情と 自分の対応への後悔・・・それが全てであった・・・。


ついに・・・人体解剖の実習が始まった・・・私は グリーン・シートの前にいる・・・。

彼女は昨夜・・・「解剖台へ乗る事になったら・・・私はあなたの前に出る・・・それが せめてものお礼・・・それしか、出来ないから・・・」と、消えるように言った・・・。


辛かった・・・もっと真摯に、魂と向き合っていれば・・・更なる苦しみから・・・彼女の魂を救ってあげられたかも・・・知れない・・・。

もし・・・彼女の解剖をする事になったなら・・・それは・・・私にとっては 正に「地獄」。


未熟であると言う事・・・人間として未熟であると言う事を思い知らされていた・・・救えなかった 彼女が居るかも知れない グリーン・シート の前に立ち・・・涙が出そうだった・・・申し訳ないと・・・心から思っていた・・・。

今更ではあったが・・・この時の あの重圧に・・・私は気を失わんばかりに、押し潰されていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ついに・・・始まった・・・グリーン・シートは取り払われ・・・御遺体の全てが、私達の視界に飛び込んできた・・・・。

「黙祷・・・」の声・・・私は・・・その場に倒れんばかりの心境であった・・・・・。

彼女が・・・彼女が、目の前に・・・。

間にあわなかったんだ・・・・目がかすんだ・・・。

涙であろうか、目がかすむ・・・その私の瞳を捉え・・・彼女が微笑んだように見えた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


私には微笑み返す事も、彼女の瞳を直視する事も出来なかった・・・・・。

ただ・・・皆に合わせて・・・最敬礼の黙祷をする事・・・それしか出来なかった。



「黙祷終わり・・・」の合図で、私は頭を上げたが・・・私の前には・・・違う光景が広がっていた・・・。


まだ、比較的新しかった彼女の御遺体では無く・・・茶褐色に変色している、老婆の御遺体が、私の視界に入ってきた・・・。

私には・・・狐に鼻をつままれたような、理解に苦しむ展開であった・・・。

私は 又も・・・幻を見たのだろうか・・・・。

彼女は、ここでは無い 何処かの解剖台に 乗せられたのかも知れない・・・。

私は、そう思い・・・各解剖台を巡った・・・しかし、彼女を発見する事は出来なかった。


間に合ったのか?・・・彼女の魂を救えたのか?・・・私には分からなかったが、少なくとも、今回の実習には・・・献体されずに済んだようだ・・・良かった・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


この日の実習が終了したのは、昼食を挟んで・・・午後の4時であった・・・。

私は、解剖学の教授から・・・呼び出しを受けていた・・・。

内容については、大よそ見当はついていたが・・・私は叱られようが、彼女の事が知りたかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


教授の話は・・・私の予想を上回る・・・意外な展開であった・・・。

彼女の御遺体は、先程・・・御両親が迎えに来て・・・無事に故郷へと旅立ったそう・・・。

行くえ知れずになっていた彼女の身元が・・・私の通報で判明し・・・すぐに御両親の元にも知らせられたとか・・・・・

御両親、立会いの下・・・彼女の身元が確認されたが・・・それは・・・無事を祈っていた、御両親の一縷の望みも断たれた瞬間だったそうだ・・・

しかし、一人寂しく、知人の誰にも知られる事無く、他の御遺体と一緒に献体される直前に・・・身元が判明した事、又、それを知らせてくれた私にも・・・感謝の意を伝えてほしいと 教授に託し・・・両親と彼女は・・・帰って行ったとの事・・・。

私は・・・奇跡的に間にあった事・・・それだけが嬉しくて、他の事は耳に入っていなかった・・・。


肩の荷が下りたような・・・背負わされていた十字架が・・・下ろされたような・・・何とも言えない清々しい気分だった・・・。

その後、警察からの聴取も受けたが・・・私の話は、誰にも受け入れて貰えなかった・・・

それは、当然なことだろう・・・誰も霊の事など・・・信じては居ないのだから・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


数日後・・・彼女の御両親から、一通の手紙が私の元に届いた・・・。

そこには、彼女を見つけてくれて感謝している旨、そして彼女の葬儀も滞りなく済んだ事が・・・書かれてあった・・・。


しかし・・・私は知っていた・・・この手紙を頂く前に・・・これ等全ての事は・・・

彼女の報告を受けて・・・知っていた・・・。

だって・・・今、私の部屋には・・・彼女が同居しているのだから・・・。

間近に迫った 彼女の一周忌の法要まで と言う、限定ではあったが・・・

彼女は今・・・私の傍にいる・・・。

あの時とは一変した、穏やかな顔で・・・いつも私を見守ってくれている・・・。

私も今は・・・以前のように、怯える事も無く・・・彼女との同居を、むしろ歓迎していた・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あれから・・・30年余りの月日が過ぎ・・・未だ 私は元気に生きています・・・。

彼女の事は・・・今でも、忘れる事が出来ません・・・

あれ以来、私の前に 現れる事はありませんが・・・

私は、あの出来事が・・・私の妄想では無く・・・本当にあった出来事だと・・・固く信じています。

今は・・・目の前で起こる 全ての事、それが例え 夢の中の出来事であったとしても・・・

自分の事ばかりを考えるのでは無く・・・他の人に起こった事象にでも、恐れずに視野を広げ・・・温かく見守る努力をしています・・・。

求められれば・・・出来る範囲のお手伝いも・・・厭わない覚悟も出来ました・・・。

思えば・・・あの出来事のお陰かも知れません・・・。

今では・・・彼女に・・・感謝しています・・・・・。

                               
あの年の梅雨は、いつもより早く終わったように記憶している・・・。

ついに、明日から・・・人体解剖の実習が始まる・・・。

私の脳裏には、微かにではあったが・・・春先の・・・あの出来事の傷が残っていた。

忘れようにも忘れられない・・・あの解剖実習室・・・そこへ再び足を踏み入れる時が・・・ついに来た・・・。

しかし、今日に至るまで・・・特に変わったことも起こらず・・・「祟られた」私には・・・拍子抜けな日々であった。

と、強がって見たが・・・実際はヒヤヒヤの日々が続いていたのだった・・・。

改めて考えると・・・彼女が口にした言葉・・・

「迎えに来たよ・・・」 「ゴメンナサイ・・・」 「答えられない・・・」 「助けて・・・」 「帰りたい・・・」

どれをとっても悪意のある言葉では無かったのに・・・一人怯えて、彼女から逃げたのは私だった・・・。


彼女が怒るのも・・・今なら、分かる様な気がする・・・。

祟られたとしても・・・それは当然の報い・・・最近は、そう考える事が多かった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


明日の支度を終え・・・ベッドに入って・・・すぐに、それは始まった・・・。

部屋の振動・・・春と同じ・・・キッチンでは冷蔵庫の扉が開いたり、閉まったりを繰り返し・・・私のベッドの足元には・・・再び、彼女が現れた・・・。

相変わらず、小さくうずくまり・・・顔を伏せて・・・ただ ジッと 静かに そこに存在していた・・・。

彼女はまだ・・・私を怨んでいるのだろうか・・・今度こそ、今度こそ・・・私は彼女と 真正面から真摯に向き合わなければならない事・・・分かっていた。

私は 一つ 深呼吸をしてから おもむろに切り出した・・・。

「この前は、真剣に考えて上げられなくてゴメン・・・反省してる・・・本当に・・・」

そう言って、彼女の反応を待った・・・。

彼女は 何も語らなかったが、部屋の振動も冷蔵庫の扉も、元に治まった・・・。

これで許されたとは思わなかったが・・・・・その通りであった・・・。


彼女は突然、立ち上がり・・・乱れた髪の合間から、冷たい眼差しで私を見下ろし・・・

「許さない・・・お前だけは・・・絶対に許さない・・・」と、小さく呟くと・・・

私に馬乗りになり・・・その冷たい両手で、私の首を絞めあげた・・・・。

私は、こうなる事も覚悟していた・・・。

彼女の好きにすればいい・・・折角、助けを求められたのに、私は彼女から逃げ出した。

私が、あの時、水槽を覗き見しなければ・・・こんな事にはなっていなかった・・・。

「僕が悪い・・・」そう心の中で呟いた瞬間・・・彼女は私の首を絞めるのを止めた・・・。


私は 気道が開き、急に吸い込んだ空気に 咽(む)せた・・・。

彼女は、いつの間にか 私の横に移動していた・・・。

彼女は泣いていた・・・涙を流して泣いていた・・・私は、それが不思議な事であるとは思わなかった。

今の私は・・・しっかりと彼女を認めていた・・・同じ人間として、彼女を認めていた・・・・・。

「何故、泣くの?・・・」私は尋ねた・・・・返事は期待しては居なかったが・・・彼女は答えた・・・「助けて・・・帰りたい・・・」と・・・・・・


まだ、私に 彼女の望みを賭けてくれるのか・・・もう一度、チャンスをくれるのか・・・

彼女は続けた「明日、私は解剖の実習で切り開かれる・・・怖いの・・・」と・・・

私は再度、尋ねた「僕は、どうすればいい?・・・」


すると彼女は「明日、実習が始まる前までに、私の家族と連絡を取って欲しい・・・私は行方不明、身元不明・・・家族が捜している・・・だから、帰りたい・・・」・・・

私は「名前は言えないんだったね・・・君の故郷と、あの吊り橋の場所・・・教えてくれるかな?・・・時間が無いから・・・言える事は全部教えて・・・」・・・



私は彼女が話してくれた事を基に、各方面に連絡を取ってみた・・・夜だったが、警察関係には十分に伝わったと思った・・・

問題は、我が校の解剖学教室であった・・・研究室には、すでに誰も居らず・・・困った。

一人で思案していた私に、彼女が声をかけて来た・・・

「ありがとう・・・でも・・・・・私が家族の元へ帰る事が出来なければ・・・出来なければ・・・あなたも あの水槽に沈む事になるの・・・一時でも わたしが あなたを 怨んだから・・・ゴメンナサイ・・・」

それを聞いても、今の私は動揺する事など無かった・・・それより、絶対に彼女を家族の元へ返してあげたいと・・・それだけを願っていた・・・。


そうこうするうちに・・・夜は明け始めた・・・。

彼女は「私、水槽に帰らなくちゃ・・・ありがとう・・・」と告げると、私の視界から霞のように消えてしまった・・・。

急がなくては!!・・・私は、急いで着替え、部屋を飛び出し・・・タクシーを拾い・・・大学へと向かった・・・。

誰もいない事・・・分かっていたが、守衛さんに職員名簿を見せて貰い・・・実習助手の先生に連絡を取るしか無かった・・・。

大学に着き、学生証を守衛さんに提示して、緊急である旨、必死に訴え・・・何とか、実習助手の先生と連絡が取れた・・・。

連絡は取れたが、教授の了解が出ないと・・・無理だとの事・・・。

先生の方から、教授には連絡を取ってくれる事になったが・・・どうなるか 保証は出来ないとのことだった・・・。

私みたいな学生の分際で、こんな時間に、教授に電話をすることなど・・・無礼極まりない行為である・・・。


後は・・・運を天に任せるしか・・・無かった・・・。

時間との勝負でもあった・・・・御遺体が、解剖台に乗せられるまでに・・・間にあってくれる事を、祈るしか無かった・・・。


私は一度、アパートに戻るより・・・なす術が無かった・・・。

つづく
その後の私は・・・人の目にも衰弱して行った・・・。

大学へは何とか行けていたが・・・ラグビーはとても無理な状態であった・・・。

何しろ・・・ここ数日、眠っていなかったから・・・と言うより、眠れなかったから・・・。

何時、彼女が現れるか・・・期待半分、恐怖半分・・・そんな精神状態の日々を送っていたのだから無理もない・・・。

友人達も、先生も・・・私の顔色を見て心配してくれ・・・

「何処か、悪いんじゃないか?・・・至急、精密検査の要あり・・だな・・・」と、言葉は悪いが、気にかけてくれていた・・・。


この幻とも、現実とも判断のつかない日々の中で・・・唯一、救われる瞬間であった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



数日が過ぎ・・・未だ、私の周りには変化が無い・・・彼女が現れないのだ・・・。

もう、とうに限界を超えていた私の体と精神に油断が生じたのは・・・そんな時でした。


不覚にも?と言うか・・・自室に戻り・・・私は、意識を失った・・・。

多分、眠りに落ちたのだと思う・・・。

私は夢を見た・・・きっと、夢・・・私は白い雲の中にいた・・・足の裏には感触がある・・・地面はあるのであろうが、目には見えない・・・。

ただただ、まっ白い空間に入り込んでいた・・・。

声が聞こえた・・・どこからとも無く・・・声が聞こえた・・・。

「何故・・・逃げた・・・何故・・・聴こうとしない・・・許せない・・・」

唸るような、その声は・・・とぐろを巻くように、私の体を締めつけて来た・・・。

言葉が体を締めつけていた・・・血圧計の腕帯の中で締めつけられているような感覚・・・息が苦しい・・・

言葉は続き・・・その言葉が、又、私の体を締めつけた・・・・・。

「許さない・・・お前だけは、絶対に許さない・・・・」

何処かで聞き覚えのある女性の声・・・・・・そう思いながら、身動きの取れない私は、締めつけられる苦しさで・・・意識を失った・・・と言うより、夢から覚めて目を覚ました。

息が荒く・・・大きく息を吸った・・・閉めだされていた空気を、取り戻すように・・・私は息を吸った・・・。

目覚めた私が・・・一つだけ 確信出来た事・・・それは 「私は祟られた」・・・と 言う事・・・それだけであった。



あの時、逃げなかったら・・・勇気を持って、彼女に向かい合っていたならば・・・

「後悔 先に立たず・・・」

この期に及んで、先人の言葉を思い出しても・・・もう、遅い・・・。

後は、何が起こるのか・・・ハラハラしながら、毎日を送らなければならないのだろうか・・・。

いずれにしても・・・私は、とんでも無い状況に追い込まれたみたいだ・・・

しかし、私は・・・そんなに悪い事をしたのであろうか・・・・・

水槽の彼女を、勝手に見た事・・・これは罪に(?)値するだろう・・・。

それだけで・・・それだけで・・・こんな思いをしなくてはならない理由が、私には分からなかった・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



それ以来・・・私は開き直った・・・夜も良く寝た・・・。

むしろ、彼女と会って・・・もう一度話し合いたい気持であった・・・。

誤解も解きたかった・・・その前に、何が誤解なのかも?ハッキリさせたかった・・・。

しかし・・・彼女は現れなかった・・・いつまでも現れず、私は良く寝て・・・

体調も回復していた・・・。


ある日、講義室で友人が私に再び耳打ちをした・・・

「例の解剖実習室の御遺体の件・・・あれさぁ、いつの間にか、戻ってたって話・・・聞いた?・・・きっと、最初から誰かの見間違いだったんじゃない?・・・」


それを聞き・・・私は内心、安心していた・・・が・・・私の問題が解決したわけでは無かった。



その後も・・・不思議と何事も起こらず・・・ひと月、ふた月と、季節も変わった・・・。


もう・・・季節外れ・・・では、無くなっていた・・・・・。


                                 つづく
気が付くと、私はクラブハウスにいた・・・クラブハウスと言うのは、グランドの横に併設されている、ラグビー部のロッカールーム、シャワー、ミーティングルームのある建物で・・・大学以外で、毎日通う所であった・・・。

誰もいない午前中のクラブハウス・・・今の私が逃げ込むには・・・誰にも合わないで済む、ここしか無かった・・・。

まだ・・・練習には早い・・・今はここで時間を潰し・・・時間がきたら練習して・・・その後は・・・何処に帰れば良いのだろう・・・。

友人の所への居候も考えていた・・・しかし・・・それで、今の事態を乗り切れるのか?・・・。

いずれは・・・帰らなければならない・・・彼女の居る・・・あの部屋へ・・・・・。

でも、今は 帰る勇気も 覚悟も無い・・・戸惑いと恐怖・・・誰にも話せない焦燥感。

どうすればいいんだ・・・一体、どうすれば・・・・・。


考えた所で、結論の出ない事・・・私には分かっていた・・・。

真摯に彼女と向き合わない限り・・・答えは見つからないって事・・・ 私には分かっていた・・・。

分かってはいたのだが・・・私は逃げ出して来た・・・今が、幻であって欲しいと願いながら・・・。

幻だろうが、現実だろうが・・・覚悟を決めなくっては、解決はあり得ない・・・そう思い込まなければ・・・何時までもこの状況は続くだろう、私の精神が崩壊するまで・・・。

いや、すでに崩壊しているのかも知れなかった・・・私は幻覚に惑わされているのかも・・・。


外は天気も良く、暖かい風が爽やかに吹いていた・・・なのに私は、時期的にまだ早い・・・季節外れの、オカルト騒ぎに 一人巻き込まれている・・・。


到底あり得ない話・・・そう信じたかった・・・。


講義はサボり・・・ラグビーの練習だけは、しっかりとこなした。

後は・・・帰宅して・・・彼女をどうにかしなくては・・・。

気持ち的には やっと吹っ切れた気分であったが・・・自室を前にして、私の決心は鈍っていた・・・やはり、夜は怖い・・・。

日中考えた事・・・それは、あくまで明るい時に考えた事・・・暗闇を目の前にして、現実は甘く無かった・・・。

これから 彼女と向き合うと言う現実・・・本当に、心の底から、怖いと思った・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


私は今、覚悟を決めてアパートへ戻って来た・・・。

ドアノブに手をかけ・・・まだ、躊躇している自分に、戸惑っている・・・。

しかし、決着をつけなければ・・・この苦悩の終着駅にはたどり着けない。



あの時は・・・そう信じていた・・・愚かにも、そうであると 信じて疑わなかった・・・。

だが・・・すでに 私の地獄は 始まっていたんだ・・・その時の私には 考え及ばぬ事であったが・・・。


私は意を決してドアを開け、スイッチに手を伸ばし・・・電気をつけた・・・。

一瞬にして明るくなった部屋は、まるで暗転後の舞台のように、その全容を露わにしたが・・・肝心の 主人公の姿は無かった・・・。

急いで靴を脱ぎ・・・居間の蛍光灯にも明かりをつけたが、彼女の姿は何処にも無かった・・・。

それ以上、私には探せなかった・・・怖かった・・・いつも勝手に現れる彼女の事、今後も何時?現れるのか・・・私には予想も出来ない・・・。

その夜は一睡もせず、夜明けを迎えた・・・しかし、彼女が現れる事は無かった・・・・・。

次の晩も・・・その次の晩も・・・私は必死に待った・・・しかし、それ以降 彼女が現れる事は無かった・・・・・・・・あの日までは・・・・・。



つづく
彼女の痕跡を 改めて目の当たりにして・・・私は 茫然自失であった・・・。

昨夜の事は、夢では無かったんだ・・・そう思うと、体に震えが走った・・・。

もうこれは尋状では無い・・・今も この部屋の何処かに、彼女が居るとしたら・・・

私の精神も、何時まで正常でいられるのだろう・・・もう限界かも知れない・・・。

しかし・・・周りを見廻しても、彼女の存在を感じない・・・やはり、夢での出来事だったのだろうか。

頭が重い・・・頭痛では無いのだが、頭の芯が重たかった・・・。

何か、重たい十字架を 頭に埋め込まれたかの様な気分だった・・・・・。


その日、大学へ行くと友人が近寄ってきて・・・・・

「解剖用の御遺体が一体、何者かに盗まれたと言って、解剖学の研究室は騒いでいるみたい・・・。表沙汰には出来ない事だから、口外しないように!!・・・だって」 と、私に耳打ちをした・・・。


それは身元不明者の御遺体で・・・女性だと言う・・・。

私は益々頭が重く・・・心まで重たくなって行くのを感じていた・・・。


これも夢なのか?・・・私は一体、何処を生きているのだろう・・・つい先日までの日常と、余りにもかけ離れた所を歩いているのでは無いのか・・・そんな妄想に捕らわれていた・・・。

講義室のいつもの席に腰を下ろした 私の耳に「どうしたの?顔色悪いよ・・・」と、隣にいた女子学生の言葉が滑り込んできて、我に返った・・・。

「あぁ・・・何でも無い・・・有り難う・・・」と答えるのが精一杯の状態に、私は追い込まれていた。

これ以上・・・ここにいるのは無理・・・そう思って、私は帰宅を決めていた・・・。



部屋に戻っても、私の気分は優れない・・・当たり前だ、さっき大学で聞いた話の、当事者が・・・今、私の目の前に立っているのだから・・・・・・。

一体、どうしたと言うのだろう・・・何が?現実なのか・・・今、私が目にし、耳にする全てが・・・幻??・・・。



現状を説明すると・・・私が帰宅すると、キッチンに彼女が立っていた・・・その長い髪で表情までは分からなかったが、足元に拡がる水溜りを見て・・・私は彼女だと思った・・・。

朝は気配が無かったのに・・・何処に隠れていたのだろう・・・。

又、襲いかかってくるつもりなのだろうか・・・私はたった今、閉めたドアを背に、逃げ出す用意をしていた・・・。

変な人と、同居する事になったものだ・・・だが、これって?同居と言えるのだろうか・・・。

しかし私は あえて「同居」と言う言葉を選びたかった・・・「祟られた」なんて考えたら、途端に私の精神は崩れ去ってしまいそうだったから・・・・・。

「同居」と言う言葉も、適当では無いように思えた・・・きっと、選ばれたんだ・・・。

私は 彼女と対峙したまま・・・昨夜の 彼女の言葉を 反すうしていた・・・。

「迎えに来たよ・・・一緒に行こう・・・」
「私を許して・・・ゴメンナサイ・・・」
「答えられない・・・それが、ルール・・・」
「助けて・・・」
「帰りたい・・・」

これが、彼女の口から・・・彼女の意志として語られた 言葉のすべてだ・・・

この言葉の 意味する所が分からない・・・これ等の言葉の 意味が分かったなら、彼女が私に 何を望んでいるのか・・・何故、選ばれたのかが、分かる様な気がした・・・・・。


しかし・・・今、私と向かい合い 立ち尽くす彼女は・・・不気味以外の 何ものでも無かった。

私はと言えば・・・理性が勝つか、衝動が優先するかの瀬戸際にいた・・・。


もし今、彼女にほんのちょっとでも変化があったなら、指一本でも動いたなら・・・私の理性は、吹っ飛ぶだろう・・・。

実際の所・・・怖くってしょうが無かった・・・・・。

この無言の時間が・・・私の心臓を 握りつぶしそうに感じていた・・・もう、限界・・・。



気が付くと、私は走っていた・・・駅へと続く路を・・・必死に走っていた。

逃げ出しても、何の解決にもならない事・・・十分に承知しながらも・・・私は あの場面から逃げる事を・・・無意識に選択していた・・・これも、幻であって欲しいと願いながら・・・。

                       つづく

全28ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]


.
weckerpapa
weckerpapa
男性 / B型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

過去の記事一覧

Yahoo!からのお知らせ

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事