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私は、例の解剖実習室の 彼女の事が忘れられないまま・・・これから半年にも及ぶ、人体解剖実習の初日を迎えていた・・・・・。 あの日の朝の事は・・・今も良く覚えている・・・。 臆病な訳では無かったが・・・自らの手で、実習室の鉄の扉を 押し開く事が出来なかった。 あの・・・整然と2列に並んだ解剖台の上には、献体された御遺体が・・・ どのような形で、安置されているのだろう・・・。 確か、解剖台は・・・全部で・・・10台。 学生を頭割りすると・・・1台に8名・・・。 8名で1体の御遺体と・・・これから半年のお付き合い・・・。 定刻が近づくと・・・三々五々、学生は・・・実習室の中へと消えて行く・・・。 しかし私は・・・私だけは・・・どうしても 肝心な1歩が、進まない・・・。 定刻が迫り・・・最後の学生のグループが、小走りに近づいてきて・・・私を見止め、声をかけて来た・・・。 そう・・・彼女達、女子学生は、普段と変わる事無く・・・明るく、甲高い声で、ふざけ合いながら・・・何の躊躇いも無く・・・鉄の扉を押し開け・・・中へと駆け込んで行った・・・。 何が私を躊躇わせているのかを・・・私は十分に分かっていた・・・。 しかし・・・今しがたの女子学生達の軽さに・・・男として、負ける訳にはいかない・・・。 私は男の意地だけの為に・・・解剖実習室への鉄の扉をくぐっていた・・・。 これから起こるであろう・・・私の運命・・・もう避けて通る事が出来ない・・と・・・ 私は、覚悟を決めるしか無かった・・・。 実習室前の薄暗さとは一変して・・・解剖室内は、明るく輝いていた・・・。 この特殊な空間・・・勿論、窓など無い・・・。 煌々(こうこう)と、照明がつけられた室内・・・。 整然と並んだ解剖台の上には、それぞれ御遺体が載せられ・・・グリーンのシートが掛けられていた・・・。 10枚の異様なほどに膨らみを持った・・・グリーン・シート・・・シートの中が見えないだけに・・・現状に違和感を覚えていた、私の名を・・・同じスタディーグループの仲間が呼んでいた・・・。 すでに、私の場所は・・・決められているらしい・・・私は促されるままに、仲間と一緒に・・・ある御遺体が安置されている解剖台を取り囲んだ・・・。 私には・・・こうなる事が分かっていた・・・そして、これから起こる事も・・・何もかも・・・分かっていた・・・・信じたくは無かったが・・・。 あの時、目が合った・・・あの・・・彼女が・・・いる・・・。 もし本当に彼女がそこにいたとしたら・・・私の地獄は、本当に幕を開ける・・・。 私は必死に・・・彼女では無い事を・・・祈った・・・。 しかし・・・無情にも・・・ついに、その時は来た・・・。 教授による、解剖実習開始の合図と共に・・・助手の先生から、シートを巻き取る指示が出た・・・。 真面目な学生は・・・時間を惜しむかの様に・・・手際良くシートを巻き取って行く・・・。 どの御遺体も・・・うつ伏せの体勢で安置されていた・・・。 私は、少しだけ安堵した・・・。彼女の眼差しを再び直視しなくても済む・・・。 目の前に、うつ伏せに置かれている御遺体・・・髪の毛で表情までは確認できない・・・。 しかし・・・私には分かっていた・・・彼女である事が・・・私だけには分かっていた・・・。 誰も気付かなかっただろうが・・・うつ伏せにされ、乱れた髪の毛の隙間から・・・ つづく
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