近衞第一師團のブログ

側に居て、支えていたい。側に居て、支えてもらいたい。

┣ガンダム-聖ナル契約-(小説)

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「それにしても、近くで見たら意外とコンパクトな機体だな」

立花はシンチレーション検出器(放射線量を計測する機器)を機体に近付け、線量を計る。けたましくアラームが鳴り続けている。

「立花整備長、防護服着ないんですか?」
「んな長時間当たるものじゃないからな。それにあれは動きづらい」


しばらく機体を洗浄すると、けたましいアラームは鳴らなくなり、安全値まで線量が低下した。

「よぅし、サヤ。コックピットから出て良いぞ」

サヤが「了解」と言ったのと同時にコックピットが開いた。

「立花整備長、お久しぶりです」
「サヤか、立派になったな。五年前は餓鬼だったがいつの間にか大人に…」

待ってろ、今ステップを持ってくるから、と立花が言い終わったと同時に、サヤがコックピットから飛び降りた。

優に5m以上ある高さから飛び降りてきたサヤは、なにもなかったかのように平然と歩く。


「とりあえず、もう一機降りてくるからこの機体は格納庫へお願いします。立花整備長」
「わ、わかった。サ…金沢中尉の機体を格納庫へ収納!急げよ!」


――



#7―地球降下作戦―




「如月、30分後再び地球降下作戦を行う。用意はいいか?」

「はい。あと今回はミサイルコンテナ付きでの降下ですよね?」

深山艦長が頷く。

「ミサイル弾頭はMS用だ。種類は対空ミサイルだがな。あと対艦ミサイルもあるが」
「60発中20発を対艦ミサイルに。ハープーンにしてください」

深山は首をかしげたが、考える前に整備士達に命令した。

「あと今回は複座だ。後部には―」
「私が乗ります、如月中尉」

深山艦長の後ろからナギ准尉がぴょこんと出た。

「ナギ准尉…?なぜ?」
「ミサイルを射つならレーダー要員が必要ですよね?それに、この機体たちのオペレータは私ですから」

深山に[長門]へ連絡しているのかと聞いたら、しているみたいだから良いと許可した。


「とりあえず、30分前だからコックピットへ。では艦長、いつか会うときにまた」
「ああ、如月。貴様は面白い奴だ。またいつか会おう。今は貴様を下へ降ろすこと。それが俺たちのミッションだ」


敬礼をし、コックピットへ潜り込む。





「MSは初めてか?」
「訓練では一応乗りました。[一応]ですよ?」
「加速Gは半端ないからな。耐えてくれ」
「分かってます。…ん、第601隊が出ます」

[如月中尉。601隊隊長[大石(オオイシ)タツミ]大尉だ。これより我が部隊は貴様の援護に回る]

無線から大石大尉の渋い声が聞こえてきた。

「大石大尉、敵は一機だけです。しかし気を付けて下さい、相手は―」
[赤い吸血鬼(レッドヴァンパイア)、だろ?分かっている。だからこそ貴様を下へ送らないとダメなんだ]

任せろと言って無線が切れた。

「大石大尉、吸血鬼は生と死を超えたものだ。奴は凶悪だ」







[レッドヴァンパイア…アンダーソン。ここは無事だったわ]
「レイ、よく無事だった。例の物は?」

衛星軌道上のデブリ中に密かにある米軍基地。そこに一人の女性―レイと名乗る女性が居た。

[ええ。ゼネラルエレクトロニクス社から例の物は来たわ]

MS用の簡易ハンガーが目の前にある。そのハンガーに、白い盾みたいなものが一つと、ライフルが一挺ある。

「GE社はなんと?」
[耐熱シールドは入射角3.5度で効果があるわ。浅いと大気に弾かれ、深いとシールドが燃え尽きる、とね]

ヴァンパイアは、そうかと言葉にするとシールドを赤い[ファントム]に持たせる。

[ライフルはエネルギーパック式だから連射可能よ。パックの予備は残念ながら…]
「1パックで10発撃てるんだったか?」
[ええ、10発よ。威力を上げれば弾数が減るけどね]

レイと言う女性の話を聞き終わる前に、ライフルを手に持つ。

[くれぐれも無理しないように…無事に帰ってきて]
「さあな。ガンダムは強いからな」


ピピピッとレーダーに光点が7つ映る。

「敵が来た。レイ、俺が戦っている間に離脱しろ」

[わかったわ…無事で]


無線が切れた。
ヴァンパイアは機体を180度回転させ、入口側に機体を向ける。右手にビームライフル、左手に耐熱シールドを持つ。

「獲物は7つ。全て喰らうまでだ」


スロットルを全開にし、一気に目標へと向う。









[601配置完了。敵見えません]
[ヴァンパイアは怖じ気付いたんじゃない?]

十津川(トツカワ)リュウが笑いながら話す。

「私語を慎め、十津川曹長。ヴァンパイアは傷を負っている。冷静に詰めれば殺れる」
[…了解、隊長]

味方の配置は非常にシンプル。ヴァンパイアが来る方向に、如月を守るように配置している。これを抜けるには、上から回るしかない。しかし紀伊の対空防御もある。

「これじゃ手も足もでないだろう?ヴァンパイア―」
一筋の赤い光が友軍機を貫いた。同時に機体が爆散するのが見えた。

「!?渡辺!…くそっ、どこだ!!」

辺りを見渡しても見つからない。どこにも居ない。映らない。

「全機散開(ブレイク)!動け!」

再び赤い光が友軍の、部隊の機体を貫く。

「与良!田中!」
[隊長、敵を詰めます!]
「十津川!待て―」


前に出た十津川が撃たれる。正確無比にコックピットだけを狙っている。


目の前で十津川のReGMが爆発する。


「有馬(アリマ)ユウ…如月の護衛に入れ!」
[隊長は!?]

「ヴァンパイアを引き付ける」


スロットルを踏み、前進する。見えた。赤いファントムが。


このままじゃ勝てない。

「…リミッター解除。ヴァンパイア…!」


ライフルを放つ。ヴァンパイアの赤いファントムは白い尾を引きながら螺旋回避する。
予測して撃ってもデブリを上手く使い、回避する。

「…っ!ちぃ!」

距離5000。近すぎる。

大石はビームサーベルを抜刀する。ヴァンパイアもビームサーベルを引き抜き、近距離戦闘をする。
左には青い地球が見える。これ以上地球に近付けば重力に引かれ、機体は燃え尽きてしまう。

ビームサーベルが激しくぶつかる。リミッターを解除したReGMは、一世代前のガンダム並の性能を引き出すことができる。それは同時に、機体の負荷が大きいと言うことにもなる。


[大石大尉!これ以上機体は持たないぞ!]
「立花…すまない。お前が手掛けた機体を…」
[まだ間に合う…!今すぐ引け!]
「それはできない!」

アラートが鳴り響くコックピット内で、叫んだ。

「今引けば…如月や有馬や紀伊に迷惑を…作戦が…!」
[だから]

立花の無線を切る。

「有馬…」
[…隊長!今すぐ援護に―]
「馬鹿野郎!お前は紀伊を、如月を守れ!いいか、俺が居なくなったら、あとは頼んだぞ…」
[隊長!!]

無線を切る。同時に、核融合炉の出力をマニュアルで上げる。

「ふっ…ヴァンパイア、道連れだ…」

核融合炉が出力に耐えきれず、軋む音が聞こえる。それと同時に、機体が一気にヴァンパイアを道連れにし爆発した。









[大石隊長ぉぉぉぉ!!!!]

無線から有馬少尉の叫び声が聞こえる。目の前で大石の機体が爆発したからだ。
きっと、大石大尉は意図的に融合炉を暴走させ、爆発させたのだろう。

しかし、道連れにしたかのように見えた爆発に、ファントムは耐えていた。

「嘘…でしょ…あの爆発に耐えれる機体があるなんて」
「きっと、あのシールドだ。ゼネラルエレクトロニクス社の特注耐熱シールドだ。しかも戦闘用だ」

確かにヴァンパイアを見たとき、見慣れないシールドを持っていた。このシールドで爆発から逃げたとしか考えられない。


[隊長の敵(かたき)は俺が―]
「有馬少尉。紀伊の護衛に付け」
[如月中尉!しかし!]
「今お前が行けば、大石大尉は何故自ら散った?お前には紀伊を守らなければならないんだ!だから守れ。紀伊を」
[如月中尉…]

有馬少尉のReGMが徐々に後退していく。

ファントムとの距離はかなりある。沈黙しているうちに、牽制する。

「対MSミサイル10、2秒間隔で撃て」
「り、了解!対MSミサイル2秒間隔で発射します」

後部コンテナからミサイルが2秒間隔で垂直発射される。

「…っ!ヴァンパイアはまだ動くか!」

ミサイルを次々と迎撃しながら距離を詰めてくる。

「こっちは逃げれないからなぁ。けど甘いよ、ヴァンパイア」

機体下部から2発のミサイルを発射。
ガンダムとファントムの間で爆発し、高濃度のビーム撹乱幕を展開する。

「ビーム兵器は使えない。実弾で戦うしかない」

距離10000で紀伊からの援護射撃。レールガンの雨を潜り抜け、ヴァンパイアが近付く。


しかしガンダムはその間に軌道から離脱し、大気圏へ突入体勢をし、大気圏へ突入する。
それに続くようにしてファントムもシールドを前に構え、突入する。






――
「猪浦艦長、高高度対空レーダーに反応あり。衛星軌道上にて戦闘が行われています」

「総員、第一種戦闘配備」

長門の艦内が慌ただしくなる。

「艦長…どうしますか」

榎本カナが覗き込むように尋ねた。
猪浦は深く帽子を被る。

「…どうしようもこうしようも、[あれ]がまだ来てないから対処できんよ」

深く被った帽子の隙間から、蒼く澄んだソラを見た。




#6―Low Orbit―





高度2500km。中軌道(medium earth orbit; MEO)と呼ばれるポイント。

この中軌道からさらに地球へ接近―低軌道―し地球へと再突入する。
秒速8km、時速28800kmで向かえばあっという間に大気圏突入ポイントへと着く。

突入ポイントは非常に危険であり、戦闘を誤れば重力に飲み込まれ塵となる。MSや戦闘艦の装甲が融け、フレームがへし曲がり、紙を燃やしてしまうかの如く消え去る。地上からはまるで流星のように見える。


危険なポイントであれば、絶好の攻撃ポイントでもある。
突入機体に対して攻撃し、損傷を与えれば機体は再突入することはできない。

そんな危険なポイントで戦闘が行われている。





「あと80秒。敵も速いがここからは間違えれば死ぬ…」

モニターには多数の発砲炎が見える。
戦艦[紀伊]の対空防御は凄まじく、来るミサイルを迎撃し、ビームを無力化する。
母艦の落ちる心配はない。その為、敵は攻撃パターンを変えてくる。
母艦を撃沈せず、大気圏へと突入体勢を整えている機体―サヤのガンダムをターゲットにしている。


「…!くっそっ!!」

敵とサヤの間に我が機体をねじ入れる。ビームサーベル、ライフルを使い敵を引き剥がす。
しかし一機に構っていると、他の機体が別から来る。


ビームライフルを単発から連射に切り替え、トリガーを引く。


「…一機やったか!」


敵が墜ちて行く。気を抜いたら自分も墜ちるのだ。


「…ヴァンパイアは?ナギ准尉、情報―」
[直上!!!]

見上げた先には赤い機体。

―見える!

寸前で躱し、ライフルを撃つ。
ヴァンパイアも躱しながら再度接近する。


ビームサーベルを振り下げ、奴の機体の腕をもぎ取った。


「あと何秒!?」
[10秒です!]


サヤの機体が減速を始め、高度が落ちる。
敵が食らい付く。

「さぁせるかぁぁぁぁぁ!!」

近付く敵を切り裂き、一気に離脱する。

「くっ…!」

バーニアを最大まで吹かし、重力を振り切る。

サヤの機体は完全に突入体勢に入った。

[金沢サヤ中尉は大気圏へと突入しました。通信途絶えます]
[あとは無事に着けば良いがな…如月、帰投せよ]

「了解」

紀伊は船体を立て直し、加速する。
それに合わせてコウのガンダムも加速。後方のヴァンパイアは何かの影へと消えた。




――





「大気圏外から降下する物体1、高速接近中」
「対空防御用意。レールガン、ミサイルリンク」


長門のCICは情報処理に追われていた。
慣熟航行したばかり、新しいシステムに慣れてないから余計大変だ。
三次元空間レーダーも新装したばかり。それで高速で降下してくる機体を追うのは非常に難しい。まあ、いい訓練ではあるが。


「IFF(敵味方識別装置)を切ってるのか。日本軍機のデータと照合して」

CICの中央にいる、一人の女性が言う。

「識別します。…ありません、日本軍では無いよ、カナ」

銀縁眼鏡を掛けた女性が、中央にいる榎本カナに報告した。

「3Dで形状出せない?ナツミ」

榎本はモニターにしがみつくように見ている藤堂ナツミに提案した。

「3D…できるわ。ちょっと待って」

キーボードを叩く音がCICに響く。
その音を割き、一人の女性が口を開けた。

「副長、一応ですが攻撃の準備はします」

「分かった、リサ。ただしミサイルではなく、レールガンしか許可は出さない」

織音リサはサッと敬礼し、リコメンをした。それと同時にCICが喧騒に包まれる。


「まだか?」

「今出力します」


タンっとキーボードを叩く音が、かき消されながら耳に聞こえた。
同時にメインモニターに降下してくる不明機(アンノン)が写し出される。


「…MS?」
「いや、こんな形状は初めてだよ。スペースプレーン(宇宙往復機)の間違いじゃ…」

ざわつく。初めて見る機体。敵の新型だ。そんなことを口に出すものも居る。

「…IFF反応あり!友軍です!」

オペレータの朝霧サナエが言う。

「IFF…ってあれが友軍?!」
「通信入ります」

[ザザッ…こちら、コード12(トゥエルブ)、金沢です。長門へ着艦許可を願います]

『金沢』と聞いてCICがざわつく。あの、金沢サヤか、と。
榎本は冷静にマイクを取る。

「こちら日本海軍航空機動戦艦『長門』、副長の榎本カナだ。貴官の所属を答えよ」

[…宇宙開発局MS開発テスト担当です]

「了解した。左舷デッキに誘導する」

[了解]

金沢がいると言うことは、もう一人、あの男がいるはず。

「…もう一人は?」

[後で来ます。大丈夫ですよ]

サヤとの無線が切れた。







コックピットのモニターは360度全方位モニターとなり、また非透過型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の為、自分自身が空に浮いている感覚になっている。

「これ、スカート履いてたらパンツ見えてるよね…って見えないか」

少し冗談を吐きながら減速している。

マッハ6まで機体は減速し高度を下げる。
久々の地上。今回はちょっと大きい『戦闘機』に乗っているが。

レーダーには敵影は見えない。天気も穏やかで非常に落ち着いている。

「…コウは無事だったのかな」

きっと大丈夫、と自分に言い聞かせる。
とにかく今は減速と着艦を確実に決めなければならない。







「また、まぁーでかい甲板にようやく飛行形態のMSが着艦するのか」

「立花整備長、そんなこと言わないでください」

航海長の坂本リョウと整備長の立花が、第一甲板艦橋横で話している。
第一甲板―左舷飛行甲板―上は着艦準備で忙しい。第一甲板は0時の方向から左9度にアングルド・デッキが設けられ、その上では調整されたアレスティング・ワイヤーが張られている。

「降りてくる機体は何トン級なんですか?」
「正確には伏せられてるが、60トン超級だな。燃料は限りなく消費されてるから更に軽いはずだが」

金沢から無線が飛んできて、機体の重量を計算。
それに合わせてアレスティング・ワイヤーの張力(テンション)を変更。


「まもなく着艦します!!」

着艦要員の怒号が流れ飛んできたと思えば、艦尾から[大きい戦闘機]が着艦体勢に入っている。

ランディング・ギアを出し、主翼はエアブレーキとフラップを展開している。両脚からはアレスティング・フックが出ている。


次の瞬間、ドンと音を立て着艦した機体は[一番最後のワイヤー]を捉え、機体が少し浮き上がる。再びドンと音を立てて落ちると、機体は完全に停止した。


「でかい…な」
「直ちに放射線残留量を確認し機体洗浄をすれ!」


立花の命令で甲板作業員が取りかかる。





――
[宇宙開発局支部L3-100]の格納庫内は慌ただしかった。
今日、日本標準時1月31日0時00分、一隻の艦が出港しようとしている。




#5―吸血鬼―




準備をとしていた艦の艦名は[紀伊(キイ)]。艦種は宇宙戦艦に分類されている。大気圏突入能力はない。

艦体は太陽光、レーダー波を吸収する新型ステルス装甲に、MSを6機格納できる格納庫と両舷甲板上に二つのカタパルトデッキを備えてあり、いわば航空戦艦。主砲は三連装陽電子ビーム兼レールガン砲を4基搭載。陽電子ビーム砲は地上では大型になり、艦に搭載することはほぼ不可能。宇宙空間ならコンパクトにまとまり、ビームの減退も少ない。
その他の武装は地上にいる[長門]型戦艦と同じだ。


その戦艦[紀伊]が何故出港しようとしているのか。それは数日前に戻る。




――




遡ること13日前の1月18日。[日本国]から特例が来た。
内容は簡単。


長門への合流をせよ。


「―とのことだとよ」
「ずいぶん簡単に言ったわね。もっと書いてないものかな」

コウの台詞に素早く突っ込みを入れるサヤ。

「一応、私達の新型なら大気圏を突入することはできるが、そこまで行く術は?」

ブリーフィングルームが静まり返る。
そこで一人の男が口を開く。

「一つはMSにブースターを付けて単独で向かう方法がある」
「久留嶋(クルシマ)大佐、それだと長期間になると思われます」
「まぁまて、如月。もう一つ方法がある」

宙域図(チャート)にはラグランジュ3日本国のコロニー群、ここ宇宙開発局支部L3-100、各ラグランジュ点のコロニー群、月、そして地球が記されている。
そのチャートの上に、一つの模型が置かれた。

「大佐、それは?」

サヤが久留嶋大佐に尋ねる。

「これはつい先日完成した宇宙航空戦艦[紀伊]の1/250模型だ。紀伊を使えば安全かつ迅速に地球まで送ることができる」
「35万キロ離れているけど?」
「何の、5日とあれば行けるよ。紀伊ならな」
「それにしても、こいつ目立ちません?」
「なぁに、新型のステルス装甲を使っているからゴキブリ程度にしか映らんよ」

久留嶋大佐は腰に手を当て笑った。
確かに紀伊なら安全に地球の衛星軌道上まで運べるし、行く道の敵にも対応できる。

「後はMSですが、技術長。新しいコックピットの開発状況はどうなってますか?」

コウが技術長の宇佐美に聞く。

「新型コックピットは開発が終了し、後は実装のみだ。先日のテストと実戦から各部の調整をしている最中だよ」

わかった、とコウが言い、ブリーフィングを解散した。




――




そんなこんなで戦艦[紀伊]が9番格納庫(ドック)に入っている。
大半の物は入れ終わり、後はMSのみ。


「今回のコックピット周辺の説明をします」

搬入中の機体を横目に、技術長の宇佐美が説明を始めた。


―コックピット内部は基本的なMSと同じで、全方位モニターが実装されている。操作もほぼ同じだが、新たに大気圏内部にも対応したバインダー(飛行形態時で翼となるパーツ)に変更したため、高揚力装置(フラップ)や方向舵(ラダー)、昇降舵(エレベーター)を動かす為の装置が新たに追加された。
一番の変更点はヘルメット。今までは前面がバイザーでモニターを直視(2D映像)して飛行していたが、新型はヘルメット上部―人の顔で言う[額]―から非透過型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を下ろして3D映像でモニタリング出来るようになった。また、ヘルメットは今までよりも更に軽量化され150gまで減り、今まではパイロットとシートを6点式ベルトで固定していたが、新型パイロットスーツからはシートとパイロットを[磁力]により固定する方式に変更された―


「っとまぁ、中尉達なら直ぐ慣れますよ」

宇佐美は肩を叩き、二人を見送る。

コウとサヤは艦に乗った。




そして、日本標準時1月31日00:00。
[宇宙開発局支部L3-100]を、戦艦[紀伊]が出港した。





――






「深山艦長、[島風]とはやはり勝手が違いますか?」

副長の[田嶌ユキ]少佐が、艦長の[深山ダイスケ]大佐に聞いた。

「艦はでかい。武装も違う。そりゃ勝手は違うよ。だがな、その艦に見合った戦術をすれば何事もない」

深山はそう言い、笑った。

「艦長、間もなく地球衛星軌道に乗ります」
「よし。降下隊、準備せよ」
艦長の一声で、艦橋(ブリッジ)内が慌ただしくなる。
目の前に広がるのは、蒼い地球。だが地上に降りるには、特殊な性能がなければならない。それほど宇宙(ソラ)と地上(した)の世界は違う。


「―?艦長、レーダーに反応あり。小型艇…でしょうか」


CICの大型ディスプレイには、近付く一個の光点が映っている。


「巡視艇にしては速すぎる…まさかMSか!?」


「艦長!不明機(アンノン)急速接近します!」


一機だけではない。三機一個小隊が接近してきた。真ん中の一機は明らかに他とは違う速度で接近してくる。


「対空戦闘よーい!」
「VLS1、2、3マルチミサイル発射!」

カチカチっとデータを入力し、発射ボタンを押す。

発射時の微かな振動がCICに伝わる。

「MS部隊、出撃―」
[深山艦長、私が出ます]

スピーカーからコウの声が流れる。

「如月、貴様は降下作戦に―」
[ここの機体は高機動戦闘が不可能だ。機動力に優るX-11なら艦速を落とさず戦える]

しばらく沈黙が続いたが、深山は渋々許可を出した。




「コウ!私も戦うわ!」

格納庫内にサヤの声が響き渡る。

「サヤ、あんたも戦えば地上への降下タイミングがずれて作戦に支障が出る」

愛機―ガンダム―の前でコウが言い放つ。

「大丈夫だ。俺は死なない。終わったら地上へ降りる」

「…わかった。長門で待つ。だから無事に帰ってきて」

一言交わし、サヤは自分の機体へと向かった。





[如月中尉、セッティングが―]
「変更している暇はない。後部デッキから発艦する。飛行形態へ変形後、直ちに発艦する」
[り、了解しました!]

降下準備をしていたから、発艦する準備は整っている。
機体は格納庫内で飛行形態へと変形中。その間にも無線で情報が入ってくる。

[如月中尉、一機は明らかに違う機体ですが他二機は既存機です。はっきり言って余裕です]
「ナギ准尉、戦場において余裕などないよ。それより宙域のデータをくれ」

今回は敵機を倒すのが目的じゃない。あくまでも『サヤを地上へ降ろす』為の時間稼ぎだ。
欲しいデータは宙域のデブリ量。

[データ渡します]
「ありがとう」

衛星のデブリが多数。それもかなりの速度で流れている。我々はデブリ群を艦で突破し、艦も地球の引力に引かれるか否かという際どい場所まで来た。

[12(トゥエルブ)が地球降下軌道に入るまでの時間、およそ120秒間の防衛です]
「了解した」

二分間の防衛戦。長く、一瞬で終わる戦いだ。


[ハッチオープン。12、射出まで20秒前。19、18、]
間もなくだ。後部デッキのハッチも開け放たれ、射出されるのを待つのみ。

[コウ]

秒読みと共に、聞きなれた声が無線から聞こえた。

「サヤ」
[生きて、長門へ]
「ああ、心配すんな」

[3、2、…射出]
「如月、行きます」


艦首、艦尾に向けて蒼い光の緒が伸びる。





「敵機との距離2000!近距離戦に!」

発艦直後に敵機との距離が詰まる。直ちに変形し、ビームサーベルを構え近距離戦に持ち込む。
敵機は真っ赤な、深紅と言っても良いぐらいの赤に染まった機体。肩の部分には吸血鬼のエンブレム。

[宇宙(ソラ)に来てまで再び会えるとはな…コウ!]
「レッドヴァンパイア…いや、クリストファー・アンダーソン!」


蒼いビームと黄色いビームが激しくぶつかり合う。


――
「艦長、宇宙(ソラ)の方で一悶着があったみたいですよ」

「まぁ、如月の奴がいるなら問題無いだろう」


艦橋の艦長席―キャプテンシートに座りながら、副長の榎本カナの話を受け流した。

「あと、本艦は間も無く出港予定です」
「ああ、分かった。出港後、MSの離発着訓練を行う。用意させておけ」

右手でさっと敬礼をし、副長は艦橋を後にした。


「まさか、本当に帰ってくる気か…?」




#4―ナガト、カドデ、ス―




空白の5年間、地上も同じ様に静けさを保っていた。
とは言え、散発的な戦闘はちらほらあり、平和とは程遠い。

そんな5年間、日本海軍が極秘に造船した『MS対応型航空戦艦』通称、長門型一番艦『長門』。

特徴的なのは、空母が横に並んでくっついている―すなわち双胴艦である。
双胴艦の中央には、格納型レールガンや甲板埋め込み型ミサイル―VLSミサイル―が見える。
武装だけではなく、サイズもさらに大きい。滑走路の長さは630m、アングルドデッキ、舷側エレベーター、通常の空母では珍しい艦橋一体型エレベーター(MSを格納庫から垂直に出し、横にスライドさせカタパルトに固定させるタイプ)が備わっている。
機関は『熱核融合炉』、通常の空母の原子炉よりも遥かに高出力である。


今や長門型航空戦艦は二番艦まで建造されている。

5年間、長門はドイツのとある港の船渠(ドック)で近代改修(フラム)を受けていた。二番艦『陸奥(むつ)』は日本で最終調整中だ。



「んで、随分変わっちまったもんだ」

猪浦がボソッと独り言を呟いた。


近代化で手が加わったのは艦橋回りと武装。

艦橋は今までの旧日本海軍「長門」を模倣する艦橋だったが、ステルス性の向上のため凹凸がない、スッとした側に白い四角い物が四面に貼ってある。
また武装は、格納型レールガンから固定砲塔型三連装レールガン四基に変わった。
VLSミサイルも対空ミサイル、対艦ミサイル、対潜ミサイルと巡航ミサイルを備えていたが、対空・艦・潜ミサイルを統一化し多弾頭化した『マルチミサイル(MAL-M)』と高速巡航ミサイル『天之返矢(てんのかえしや)』(但し弾頭は対地・艦)の二種類に変更。
近接防御火器も新型へと更新された。


「艦長、総員乗船確認しました」

副長の榎本が報告をしに来た。

「1955(ひときゅうごうごう)、か。よし、有線放送を繋げろ」

猪浦は艦長席から立ち、マイクを持つ。


《今日1月20日、長門は死地に赴く。この先の戦い、熾烈な戦禍を掻い潜ることになる。5年前の、あの出来事を再び繰り返さぬ為に我々、国家独立遊撃隊は、長門は門出す。総員、気を引き締め戦え。以上》


「出航用意。ドック内注水開始」
「ドック内注水開始。舷側接触に気を付け」
「ドック内注水率30。長門、バラスト注水開始」

「よし、艦が浮くぞ。ゲート全開、機関微速前進」
「ゲート全開確認、機関微速前進よーし。」
「ドック内注水率90、バラスト注水完了」
「よし、機関黒2、ドックから出るぞ」





「艦長、αポイントに到達しました」
「付近に航行する船舶は?」
「レーダーには映っていません」

ふう、と少し息を吐き、マイクを取る。

「MS離発着訓練を開始する。101部隊、102部隊は発艦準備に掛かれ」



「ほぅら、お声が掛かった!」

島津はヘルメットを取り、急いで格納庫まで向かう。
島津ヨシタカ。5年前は35歳だったが、今は初老と呼ばれる40歳になった。
鬼のような強さ(と恐さ)から『鬼島津』の愛称で呼ばれている。

「大尉、良い歳なんですから無茶しないでくださいよー」

長瀬タクヤ。島津と長く戦っている。30歳。

「長瀬、あんたも歳だろう!」
「いやいやいや、大尉に比べたら10も違いますから!」

格納庫までの数十メートルでのやり取り。
左舷格納庫にはMSが6機。その内の1機が、大尉の機体である『ガンダムX-0』だ。
以前のパイロットはキサラギと呼ばれる、民間人上がりのパイロットだ。今は島津がパイロット、そして島津のパーソナルカラーである、蒼白に染められている。
残りの5機は新型『ReGM-3型』である。

「よし、101部隊発艦準備よし。エレベーター上げ!」

[大尉、発艦後模擬戦を行います。敵2、接近中]

「サナエ、分かった。長瀬、緒方(オガタ)、安居(ヤスイ)、森口(モリグチ)、七瀬(ナナセ)、今の聴いたな?」

[大尉、敵2とはナメられたものですね]
[緒方、敵さんは威力偵察かもしれないさ。気ぃ抜くなよ]
[長瀬中尉も、ね]
「無駄口叩く暇がありゃさっさと落とせよ。敵は今までで一番強いからな」

機体の脚を甲板上のカタパルトに固定する。
武装はビームライフルとシールド、ビームサーベルの通常パターン。オーソドックスだ。


「鬼島津、X-0(ゼロ)出撃する」


グッとフットペダルを踏み込む。機体が加速し、甲板から離れる。
しばらくすると、レーダーに敵(アグレッサー)が映る。

「全機発艦出来たな。全機散開、包囲せよ」

アグレッサーとの戦いが今始まる。





[やっぱアグレッサーってのは気が乗らないなぁ…]

無線から溜め息混じりの、ラインハルトの声が聞こえる。

「仕方無いんだって。あのくそジジイ(アドルフ)と猪浦が決めたんだからさ」

[でもエミ、味方を撃つのは―]
「つべこべ言わない。やれ」

―今度はこっちが面倒臭くなるっつーの。

そんなことを思いつつ、仮想敵を考える。


「ラインハルト、長距離援護宜しく」
[エミは?]
「前線突破」

フットペダルを深く踏み込み、近代改修を加えたガンダムX-7B(ズィーベンリッター)を島津率いる101部隊に突っ込ませた。

「敵が散開している。アルトアイゼン、対空援護、ラインハルトは『ゼクスカノーネ』での援護。Erfassen?(いい?)」

[Erfassen...(良いよ…)]
[アルトアイゼン、了解した。あとエミ中尉、くそジジイとはなんだ?通信丸聞こえだから]


げっ、と思いながら機体を敵中央に突っ込ませる。


―中央…は長瀬か。島津は…いない?


「そういえば、発艦されたときは機数が足りなかったような…何か仕掛けてくるのか?」


前のReGMから擬似ビームが飛んでくる。バーニアを吹かし回避。すかさず近距離戦に持って行く。

数機のReGMが更に来るが、ラインハルトが弾幕を張っているためこちらまでは来ない。
アルトアイゼンからの海中援護もあり、101部隊は陣形が崩れてきた。

「やっぱりコウがいないと長門は強くないのかな?」
長瀬のReGMに最後の一撃を加える直前、何かを感じ一気に離れた。

「…っ!島津はやるな!ガンダムにセラミック装甲を付けたのか!」

レーダーには何も写らず、いきなり視界に現れた。
二対一、今度はこちらが不利になる。

「先に長瀬をやるか」

ズィーベンデーゲンで攻撃する。左側はズィーベンシルトで防御。

長瀬のReGMに一撃入れようとしたその時、アラートがけたましく鳴った。


[訓練中止!レーダー索敵範囲内に敵が現れた。直ちに帰投せよ!繰り返す―]

「ラインハルト、長門へ帰投する。アルトアイゼンは急速潜航開始」

[間に合うか?迎撃した方が]
「長門のレーダーは格段に強化されているから回避できる」


訓練機は全機長門へ帰投体勢に入った。








「敵まで凡そ500km。敵の索敵範囲外」

CICが少し慌ただしくなる。いくら索敵が強化されたからといって、会敵を避けることが出来るとは限らない。

「MS収容まで残り三分」

「敵は?」
「接近が遅いため、艦かと」

猪浦が頷き、館内放送を繋げた。


「MSを収容出来次第、直ちに進路変更。同盟国、南アフリカの『ポートエリザベス』港へと向かう。最終目的は日本海軍への帰投だ。出来るだけ戦闘は避ける。無駄な血を流さず、この戦争を終わらす。以上」


MSの収容作業もほとんど終わり、報告がCICに響く。


「よし、進路反転。ポートエリザベス港を目指す」













――
「『島風』艦長深山(ミヤマ)より、本部へ。これより該当宙域へと進軍する」

[了解。注意し進行せよ]



本部からの無線がCICに鳴り響く。

これは訓練ではない、実戦の匂いを漂わせている。




#3―電撃戦―




「初期加速はカタパルトのみ。以降惰性進行せよ」

敵の熱探に見付からないようにするためだ。
船体には太陽の光を反射させないように、そしてステルスの為の黒塗装が施されている。
格納庫から出た島風は、艦橋の灯りを消し、宇宙の闇に溶け込んだ。

「速度300m/s、ポイントαまで惰性航行開始します」

暗い艦橋で、銀縁の眼鏡を掛けた女性がそう言った。

「ユキ少佐、島風での実戦だが気分はどうだ?」

「深山…いえ、艦長。島風は日本軍初の機動駆逐艦です。ある程度の期待はあります。あとは我々の腕次第、ではないでしょうか」

暗くて見えない深山の顔を見ながら話した。

「そうだな。まあ後は運だ。運が悪けりゃデブリで大破。運が良けりゃ生きて帰ってこれる。戦場は博打だ」

笑いながら答える。

「CICより通達。敵艦捕捉とのこと」
「まあ慌てるな、戦いはまだ始まったばかりだ」

そう言いながら腕時計を見た。

「敵部隊はこの島風には気付いていない。MSは如月達の陽動に綺麗に乗っている」
「見た感じ、ですがね」





「目標補足。4機確認」
「12(トゥエルブ)は目標a、bを叩け」
[11(イレブン)は残り、だね。気を付けて]

敵との距離、およそ8000m。このままで行けば大体10秒程で射程圏内に入る。

(敵が少なすぎる…な)

「ターゲットロックオン…」

ターゲットサイトが敵を捕らえる。ゆっくりとトリガーを引く。


―ビシュュン

ビームライフルのビームが敵のコックピットを貫いた。
目標で言えば、a、dの機体が爆発した。と同時にフットペダルを深く踏み込み敵に一気に近づく。

「新米、か」

ビームサーベルで残りを斬った。

フットペダルを引き上げ、逆噴射を掛けてターンをする。後方では敵機が火の玉となり爆散した。


「非情だな」
[ええ。でも仕方がない事よ?]
「解ってるが、やはり後味は悪いな」
[まあ―]

―ビィィ、ビィィ


「回避!!」


ピンク色をしたビームが真横を通り過ぎる。


「へぇ…やっぱりガンダムの技術が流用されていたのか…」


ファントムが目の前を過ぎる。
ビームライフルをすかさず敵に向け、撃ち抜く。

「機体の反応速度も上々…だな」

機体を飛行形態に変形し、敵母艦を目指す。

「あとは…島風が導いてくれるさ」







「艦長、九時の方角より爆発光多数。中尉の部隊がやりました」
「索敵。敵母艦はまだ見つからんか」
「目下全力で…ん、レーダーに若干の反応」
「熱探に切り替えろ」

しばらく間が空いたが、直ぐに音声が流れた。

「見つかりました!本艦より艦首右32、+15、距離30000に大型艦船のスラスター光あり。付近には友軍船籍なし」

深山は直ぐに複合双眼鏡で見た。

「大型船…重巡か、それ以上だな」
「艦長、どうしますか?」
「ユキ少佐、戦闘を開始する」

深山はマイクを取り、総員第1種戦闘用意と言った。

「機関黒4、雷撃戦よーい。雷管1番から4番までよーい」
「雷撃戦よーい!1番から4番まで重魚雷装填よーし!」

グッと速度が上がり、少し後ろに引っ張られる。

「距離25000、射程まで残り15秒。敵砲塔旋回確認」
「取り舵15、ロール角-3」

操舵士が復唱する。船体が左に舵を切り、船体が半時計回りに傾く。

「敵撃ってきます!着弾まで10秒!」
「ビーム撹乱粒子展開」

右舷方向に薄ら青い粒子を展開する。

「射程入りました!」
「重魚雷撃ち方始め!」
「撃ち方ぁー始め!」

ズゥゥンと艦内に魚雷の発射音が響いた。
直後に、ビーム撹乱粒子に敵のビームが捕まり拡散された。拡散されたビームの霧を切り裂くように、重魚雷―対艦用重ミサイルの総称―が目標へ向け発射された。
ビームの霧を抜ける前に、初期加速用ブースターを切り離し、船速と初期加速の合成速度が慣性速度となり、敵艦へ重魚雷が向かう。


「敵、第2波まで凡そ40秒」
「レールガン用意」
「レールガンよーい!」


艦橋に居ても、単装レールガンが回頭する音が聞こえる。

「時間だ」

艦長の一声で距離10000の敵艦が爆発した。音は聞こえないが、目の前の光景で感じることができる。

「単装レールガン、撃ち方始め」
「撃ち方ぁー始め!」

目の前の闇が蒼く染まり、ズン、と反動が後から来た。
直後、敵艦に更なる火柱が上がる。


「あの艦は沈む。総員、敵艦に対し黙祷」


火柱が上がる敵艦が島風の横を過ぎる。その後、誘爆をし始めたのか敵艦が爆散する。その破片の一部が艦に当たる。


「キサラギ、カナザワを収容する。後部ハッチ開け」

副長のユキ少佐が復唱すると、直ぐに二人から無線が入る。

[こちら11、12。アイランド(島風のネーム)に上陸する]

「こちらアイランド。了解」

オペレーターが手慣れた手付きで着艦指示をする。







[一瞬、だね]


静かになったコックピットの中に、サヤの声が響く。


「ああ。五年たった今、まだ戦争は終わらない。だから、俺達は戦うんじゃないか?」


[ええ。確かにそう。私達のこの機体が戦争を終わらす切札]


切札―か。


ふと、そんなことを思い、島風の後部甲板デッキに着艦する。


「こちら11、アイランドの陸(おか)に着陸したよ」
[お疲れ様です。あとはこちらが誘導します]
「了解。あ、リーダーの新米ちゃんに無線繋げてくれるかい?」
[新米ちゃん?ああ、了解です]

ふう、と溜め息を吐く。機体が格納庫内に収納されていくのがモニターに見える。

[如月中尉、お疲れさまでした]
「ナギ准尉、的確な指示だった。流石首席で卒業しただけあるな」
[いえ。私はただ、OHの適性があるだけ。ただ―]

バタンと無線の奥から聞こえ、誰かがメディックと叫んでいる。

「ナギ准尉…大丈夫か!」

[すみません、ナギ准尉が倒れて―]
「とにかく、ナギ准尉はゆっくり休ませてあげろ。上がった直後に戦闘だからな」


―きっと、彼女も疲れたのだろう。


ヘルメットを外し、ハッチを開ける。
格納庫内の整備士やパイロット達の拍手が鳴り響く。
心地好くはない。俺は、英雄何かじゃない。


無重力の格納庫内。一番近くにある扉から船内に入った。

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