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「倒壊する巨塔」(下) ようやく読み終わった。
大文字で書かれていないことがこの本の最大の魅力。


 9.11世界同時多発テロ
  防ぐことが出来たのではないか、妨げた壁とは何だったのか、
  ビン・ラディンがいなかったら類似したテロは起きていなかったか、
  考える手掛りを与えてくれる一冊。 
 真実と信じるものの儚さ
  著者、ローレンス・ライトが語っている。
 
   証明は不可能 − をすべて報道したくても、それなりの妥協を強いられてしまう。
   グレーゾーンはどこまでも付きまとう。
 
  真実と信じる目の前の情報も、いったん得た情報に過ぎないと。
 訳者、平賀秀明が上手く纏めてくれている。 
(訳者 後がきより抜粋)
  政治/宗教をとりまく人間行動は、文化の違いに拠るニュアンスに差異はあっても、
  根本的なところはやはり共通している・・・相手を異化するようなことはしない。
 
  特定の宗教/人種にレッテルを貼ることなく、歴史上どこにであるごく普通の現象として、
  そいうした本質の現れ方のみを、ただ示すのみである。 
  彼らの主旋律はルサンチマンであり、通奏低奏は近代化/西洋化への違和感・葛藤・格闘であると。
  そうした心情は、別にアラブ人だけのものではない。
  イスラム教だから、一神教だから、アラブ人だから、あんなことをした訳ではない。
 
  それゆえ本書は、登場する人々すべてが人間であり、
  人間とはそういう風になれるものだと個別具体的エピソードと証言をただ重ね、
  それにより心の遍歴を物語っているだけである。
  五年後、著者が到達した境地であり、共感した。 
 (上)では、各章ごとに留めおきたい言葉を抽出したが、切りが無いので途中で止めた。
 以下、それまでの抽出。
13章 逃亡/聖都
 アフガニスタンにおいてタリバン勢力拡大の頃の様子として
 
 P47
 道路脇に虚しく並ぶその柱たちは、アフガニスタンにもかつて近代化に向けて
 一歩を踏み出した時代があったこを伝える縁といえよう。
 何百万個とあるのか、もはや数えきれない程の地雷が、アフガニスタンの大地を汚染していた。
 ・・国民のじつに四パーセントが身体障害者であり、耕作可能地のかなりの部分は、
 地雷のせいで手付かずの状態にあった。

 P48
 アフガニスタンは広大な面積をほこる、起伏の激しい国で、
 各地区は東から西にかけてヒンドゥークシ山脈にによってそれぞれ分断されていた。
 国民は四つの主要人種グループに分かれており、部族と方言の数は途方もなく多かった。
 たとえ平時であっても、統治の難しい国柄だが、平和なんて状態はここでは遠い記憶でしかなく、
 多くのアフガン人は平和というものを体験したことがなかった。
 だからこそ、秩序への欲求がきわめて強く、実力をもち安定をもたらす勢力なら、
 ほとんどどんなものでも歓迎された。
18章 同時多発テロへの道
 P188
 ジハードに参加した大半の者は、自分たちが育ったのとは違う国に定住しており、茫漠たる気分をかかえていた。
 彼らはフランスの外国人居住区に暮らすナイジェリア人であり、
 スペインのモロッコ人であり、サウジアラビアのイエメン人だった。
 今住んでいる土地でどれほど実績をあげようと、彼らはそのホスト社会に本当の足場を築けなかった。
 かつてのサイイド・クトップと同じように、彼らは西洋社会に暮らしながら、
 みずからを「急進的イスラム主義者」という形で規定していく。

 ロンドン在住のパキスタン人は、自分が本物のイギリス人でもなければ、
 本物のパキスタン人でもないことを知っていた。
 そして、この境界線上でいきているという感覚は、クウェートのレバノン人にとっても、
 ブルックリンのエジプト人にとっても、同じくらい切実だったのだ。
 
 一人ぽっちで、阻害され、しばしば家族とも遠く離れた、彼ら国外生活者は、ごく自然にモスクへと向かった。
 そこでなら、同じ宗教を信じる者どうしの同胞意識と安らぎを得られるから。
 イスラムは彼らに、人の輪の一部になったような感覚を与えてくれた。
 それはたんなる信仰以上のもの、存在の核となるような大切なものだった。
 


 FBI、当時WTC保安主任ジョン・オニールと同僚が、離婚に費やされるコストについて語るシーンがある。
 
  「結婚とは、それだけ価値があるものだからだよ。」
 
 家族、故郷、人間にとっての拠り所、居場所
 当たり前であることが、人間にとって大切(必要)なのだと思った。
 
 9.11はなぜ起きたのか
 9.11に至る中東史を膨大な資料を元に記述している。
 
 アメリカだけの問題ではない。近代社会を生きる私たちとイスラムの問題なのだと思った。
 
 以下、心に留めて置きたい抜粋&まとめ(上巻)


■プロローグ − ビンラディンの世界
 9.11以前、ビンラディン担当のFBI捜査官曰く
 
  時の経過が千年前で停止している。
  現在があり、千年前の過去がある。しかし、その中間には何もない。
  ビンラディンの世界では、あながち十字軍がいまもまだ続いているようだった。
 
■1章.殉教者 クトゥブ 
 P19.クトゥブは後に書いている。
 
  人種差別主義はアメリカを山の頂から麓まで引きずりおろしている。
  人道にまつわるその他のお題目も道連れにして。
 
■2章.スポーツクラブ
 P69.「六日戦争」は、現代中東史における心理的分岐点
    エジプトなどアラブ各国で、
   イスラム原理主義が強い訴求力を持つようになったのは、
  この衝撃的な敗北があったらばこそだ。
 
 P70.反ユダヤ  
    第二次世界大戦が終わるまでイスラムの世界にはほとんど存在しなかった。
  1930年、この地域のキリスト教伝道団による虚偽宣伝、
   アラビア語短波放送を使ったナチス・ドイツの宣伝工作、
  西洋人が昔から抱いていた反ユダヤの偏見に、この地も汚染されるようになる。
  いわゆる「9.11」同時多発テロは、じつはエジプトの刑務所で生まれたという説がある。
  ・・拷問は復讐への渇望を生み出す、矛先はエジプト政府、背後に西洋・・
 
 P156.まっ平らな社会
  1950年代
  大半のサウジ国民は、自動車や外国人をそれまで一度も見たことがなかった。
  アラビア半島で生きていくという本質的経験には、変化などどこにもなかった。
  永遠も現在も、まったく同じひとつのことだったのだ。
  そんな砂漠に・・変化が洪水のように押し寄せてきた。
  道路や都市、学校や外国人労働者、米ドル紙幣
  思想や価値観のグローバル・マーケットにいきなり放りこまれたようなものだ。
 
■7章.ヒーローの帰還 
 P274.ビンラディン、憎悪の起点
  1982年
  アメリカがイスラエルにおける大量殺戮について許可を与え、アメリカ第六艦隊がそれを支援した時
 
  「流血、引きちぎれた手足、女や子供が至るところで倒れている
  ・・無力な子供、泣き叫ぶ以外に何もできない力なきものたちが、
  まるでクロコダイルに出会ったような状況だった。」
 
  こうした場面を目にして、この抑圧者と戦いたいという強い意志、
  彼らに復讐してやりたいという気持ちが、ごく自然にわき上がった。
 
 P275.米サウジ
  世界にあまた国があるけれど、互いにかくも異なりながら、
  かくも深い相互依存にある二国間関係はほとんど例がない。
 
  サウジにとって、
  アメリカを近代のガイド役で投資や管理方法、技術や教育を必要としていた。
 
  アメリカにとって、
  サウジからの石油輸入、1970年に10位、10年後に1位
  その経済的、軍事的優位を保つため、サウジ石油に対する依存度を増していった。
  
  サダム、クェート侵攻後 − 
  クェートを軽く一呑みした後、サダムが欲をかいてサウジ東部州まで貪り食らおうとしたら、
  世界の利用可能な石油供給のかなりの部分がサダムひとりに支配されてしまう。
  そうしたら事態は、サウジ王国だけではなく、アメリカ合衆国にとっても容認できない驚異である。
 
  チェイニー国防長官は、ジェッタに飛び、サウジを守るため、米軍を受け入れるよう国王を説得した。
 
■8章.楽園、10章.失楽園
 P296.飛び火
  アフガン戦争という大火の燃えかすは、地球全体に飛び火していき、
  やがてムスリム世界の大半で火の手を上げる。

 P310.砂漠の雪
  米軍の拡大を勢いずけているもの、実は”われわれの”石油なのだと。
  より問題なのは、石油そのものではなく、それを外国に売り渡す過程のどこかで失われてしまった
  文化的に大切な何かなのだという共通感覚
 
  自分たちの暮らしている、悲しくなるほど非生産的な社会では、
  一時のあぶく銭は砂漠の雪のように溶けてしまう。
  あとに残ったのは、裏切られたという漠たる思いだけである。
 
  もちろん、石油は一部のアラブ人に富をもたらしたけれど、
  豊かになる過程で、彼らはより西洋化してしまったではないか。
  消費中心主義、不道徳、個人主義などなど。
 
 P353.ビンラディン、サウジ戸籍剥奪に際してパスポート返却を迫られ
   「さあ、受け取るがいい。こんなもので、私の何が決まるというのだ!」
 
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 ピューリッツァー賞
 Newsweek世界を読み解く為の3rd/50冊
 
概要:インド・デリーよりイギリス・ロンドンまで、路線バスを乗り継ぎ旅した著者自身の自伝
 
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 10年以上昔に読んだ本、
 スペイン旅行をすることを決めて、欧州偏をもう一度、読み直してみようと思った。
 
  主人公が岬を求めてポーランド・サグレスに到着する。
   夜道に犬の遠吠
   頭上に広がる星の瞬き
   耳を澄ませばかすかに波の音
 
  焦がれて辿り着いた初めての町、せめて日中にに到着するべきだった。
  旅する者であれば必ず覚えがあるであろう期待と不安。
 
   建物の中に足を踏み入れた瞬間、これは失敗したかなと思った。
   内部の調度品が素晴らしすぎたのだ。
 
  深夜に泊まるところを探す主人公、日本から来たと告げると「あなたのための特別料金」
  九十エクスド(1980年代当時日本円で九百円程度)でバスタブ付きの部屋に泊まることになる。
 
   だが、そのペンションに泊まっての本当の幸せは、翌朝になってみなければわからないことだった。
   朝、私は窓からうっすらと洩れ入ってくる光で目が覚めた。
   時計を見ると八時だ・・・ベッドから飛び起きた私は、カーテンを引き開け、ガラスとの留め金をはずし、
   木の鎧戸を開け放って、驚いた。
 
   窓の真下に青い海があり、水平線上には今まさに昇ろうとする太陽が輝いていたのだ・・・
   このホテルは、山間部の斜面に建てられており、しかもここは、海を望む最上の部屋だったのだ。
   目の前には大西洋が迫り、ということは、その遙か彼方にはアフリカ大陸があるはずだった。
 
  翌日、主人公は岬を訪れる。
 
   一艘、漁船が海に漂うように浮かんでいる。
   陽が傾き、海が輝きはじめる・・・サグレスの海は細やかな金箔を引き詰めたように黄金色に輝いていた。
   ふと、私はここに来るために長い旅と続けて来たのではないだろうか、と思った。
   ・・・
   いくつもの偶然が私をここに連れてきてくれた。
   その偶然を神などという言葉で置き換える必要はない。
   それは、風であり、水であり、そう、バスなのだ。
 
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Pyrenees,Madrid-Zurich In the sky of the swiss Swiss Intl AirLines
 
  ロンドン経由、いよいよ旅も終焉、電報を打とうとして主人公が思う。
 
   Being on the road --- ひとつの旅の終わりは、新しい旅の始まりなのかも知れない。
 


 
  旅の終わりに登場する青い海のイメージが今も鮮明に頭の中に残っていて、
  ピレネー山脈を超えていつかアフリカを間近とする欧州南端まで下ってみたい思っていた。
 
  ●色付き文字部分は小説「深夜特急」より抜粋

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 ダンアリエリー「予想通りに不合理」より

 多く扉が開かれているというよりは、そのことに気を取られ自分にとって大切な、
 もしかすると二度と開くことがない扉が、あるということを忘れるなかれ。 
    
 moobell編みぐるみ劇場

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真夜中の子供たち

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マジックリアリズム、マギッシャーレアリスムス(魔術的現実主義 Magischer Realismus)
 日常にあるものが日常にないものと融合した作品に対して使われる芸術表現技法で、
 主に小説や美術に見られる。幻想的リアリズムと呼ばれることもある。
 MAGICの非日常、非現実とREALISMの日常、現実という相反した状態が同時に表わすこの技法は
 しばしばシュルレアリスム(超現実主義)と同義とされることがあるが、魔術的現実主義は、
 超現実主義と異なり、ジークムント・フロイトの精神分析や無意識とは関わらず、
 伝承や神話、非合理などといったあくまで非現実的なものとの融合を取っている手法である。
 (Wikipediayより)

 この小説のバックボーンをなしているのは、社会科学的な歴史観ではなく、
 人間と世界を突き動かす暗い情念の精神分析であり、回帰と反復の思想であり、
 隠喩的世界解釈であり、土俗的風習と多様な宗教への賛歌であり、真珠的思考の快楽であり、
 そして何より物語という人類の歴史と共に古い芸術に対するゆるぎない確信である。
 (訳者後書きより)

 G・G・マルケス「百年の孤独」と並び称さる・・だけはあったかな。

 母なるインド、5億の民を擁する大国インド、近くて遠いアジア・・
 印パ分離独立・・とかく難しくなりがちな近代史を気づかぬうちに、
 映画『スラムドッグ$ミリオネア』で知ったそれよりずっと、
 マジックリアリズムに魅了されつつ、酔しれながらながら、時に主人公に同化し、
 インド深層をきっと感じる。

 インド地図を眺めつつ、チャツネの味を思い出しながら読みたい。


 MIDNIGHT'S CHILDREN by Salman Rushdie

"To understand just one life, you have to swallow the world,"
says the protagonist of Rushdie's freewheeling, fanciful allegory of modern India.

 Published in 1981, Midnight's Children delivers just the opposite
 : the world through the life of a young man.(NewsWeek 20)

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