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2008年から真面目に写真の勉強を始めました。もっともっといい写真、撮りたいです!

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以下の文章はブログ管理者が作家井上靖氏の作品や関連書物を読み、その記憶に基づいて書き記したものであります。記憶に頼る部分が多い以上、作品の内容や井上氏個人について事実と異なる事象が含まれて可能性は否めません。ブログを読まれる方はこのことを充分ご理解頂きたく切にお願い申し上げます。井上作品はすばらしいものばかりです。実際に手に取りお読み頂くことをお勧め致します。
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敬愛して止まない作家がある。

井上靖(1907-1991)。北海道旭川生まれであるが、五歳から十三歳まで伊豆は天城の山村湯ヶ島で暮らし、その後、十五歳から十九歳までの中学時代を伊豆半島の基部にある三島と沼津で過している。

私が井上靖の小説と初めて出合ったのは、中学一年のときではなかったかと思う。国語の教科書に「わな」というタイトルで小説「しろばんば」の一部が取り上げられており、それが井上文学から受けた初めての洗礼であった。「わな」は主人公の洪作少年とその友がわなによって捕らえた小鳥の死骸を少女の一団に見せるのであるが、その小鳥の死骸を見た少女の一人が両手で顔を被い泣いてしまう、という話であったと記憶している。それまでは単なる子供であった少年が、少女という“異性”のどうしようもない弱さをはじめて感じる、思春期への目覚めを描いた物語である。しかし、当時十二歳であった私にはこの小説内の出来事を頭のなかで整理して理解することなどできず、「女性というものは、そういうものなのだぞ、男子諸君!」という女性教師の、男子生徒に対する一種のからかいを含んだ忠告だけがただただいつまでも脳裏から離れないばかりであった。その女性教師の忠告のとおり、それ以降の私の学生生活のなかで少女達はますます女性となるばかりであり、私を含めた少年達はますます男性となっていった。今から思えば「わな」はそれまで“こども”としてひと括りにされていた女子と男子が、これ以降は、女性として、また、男性として、扱わるべきであるとする分岐点に置かれた道標のような存在であった気がする。

同じく伊豆半島の基部の町の出身である私にとって、井上靖という“同郷”の作家の存在は年を経るごとにますます大きくなるばかりであった。高校受験や社会人となってからの面接で、内容が好きな本などのことに及ぶと、必ず井上作品を持ち上げ、その度に井上作品に助けられる形となった。しかしながら、実際のところ、私が「しろばんば」をしっかりと読んだのは三十を過ぎたつい最近のことであった。私は元来読書というものはまったくと言って良いほどしない人間であったが、二十八歳の春の出来事を機会として、半ばむしゃぶり付くかのように小説を漁りだし、三十を過ぎてからようやく「しろばんば」に手を伸ばしたのであった。この「しろばんば」を読んだ頃の私は、おそらくこれまでの人生のなかでも最低の時期にあったはずである。しかしながら、この小説の形容し難い清清しさが、私の心の暗雲を知らぬ間に取り除いてくれたのであった。「しろばんば」に続き、その続編の「夏草冬濤」、そしてその続編の「北の海」を読み、三部作とは異なりながらもやはり自伝的要素を多分に含んだ小説である「あすなろ物語」も一気に読み貫いた。どの作品を読んでも、その本が終りに近づくにつれて、物語が終わることをとても惜しく感じるのであるが、再び「しろばんば」から手をつけて読み始めると、主人公の洪作少年をはじめとする登場人物はやはり小説のなかで生き続けており、その新鮮さが失われることは決してなかった。

私は昨年末から再び「しろばんば」を手に取り、「夏草冬濤」を一気に読み貫き、今は「北の海」を読んでいる。この話に対する私の欲望は底知らずで、今に至っては小説ばかりではなく、井上靖氏個人についての本も数冊手に入れ、机の隣に積んである次第である。我慢できずにこれらの本の内容の“つまみ食い”を始めてしまっているが、「北の海」を読み終われば、改めて最初から一冊一冊読んでいくことになるだろう。

改めてこの「しろばんば」から始まる洪作少年の話を読んで、私はその舞台に実際立って、趣味である写真に収めてみたい、という気持ちに駆られた。この連作の舞台は伊豆半島の基部にあり、私自身が育った土地と重なるところが極めて多いわけである。正月休みという機会を利用して、私はこの小説の舞台に立ってみようと決意した。時間は僅かで限られているが、私自身も少年に戻り、洪作や木部、藤尾、金枝らとともに三島や沼津の街を闊歩してみようではないか。そんな気持ちで私は帰省の電車に乗り込んだ。

<つづく>

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おはようございます。
以前から井上靖氏の紹介をされてた中で、いよいよ小説の舞台に立たれるのですね。私も今読んでいる本を読み終えたら、wildbirdschaseさんのブログに合わせて読破してみたくなりました。期待してます。

2008/1/4(金) 午前 9:24 takeppe 返信する

おぉ。。これが新しい企画ですね♪ 本離れしている私も興味津々です。
wilrbirdschaseさんの文章は読みやすいし(^^)応援します☆ミ
そして私も久しぶりに井上靖作品を読みたくなってきました!

2008/1/4(金) 午後 6:35 cheko 返信する

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私もはじめて読んだのは中一の時でした。
中高一貫の学校だったのですが、高校生の書いた感想文で
本を知って自分でも読んでみようと。
最近はめっきり本を読んでませんね。。

2008/1/6(日) 午前 0:26 momotamaa 返信する

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