真っ暗な瓦礫の街でやっと彼女を見つけた
あたりには焦げ臭い匂いは充満していて遠くにに小さな火が見えた
『本当に来てくれたの…』
髪の毛ボーボー
化粧っ気全くなしの彼女
『こちとらレッドゾーン絶滅危惧種に指定されてるもんでね
こんな時じゃないと存在を忘れさられちゃうもんで…』
『あなたって…変よ!』
『うん!でもきみだってなんでこんなとこに好き好んでいるの?』
そう言うやいなや
彼女は僕の腕の中に飛び込んできた
『生きててくれてうれしよ…またドライヴ出来るね』
彼女からSOSの連絡を貰ったのは地震から1週間後だった
ぼくのまわりの現地関係者は全員無事と確認が取れた後に
なんと彼女が仕事で現地に行ってて被災し…
そのまま避難所に残ってボランティア活動…
まいった!
そのうちそろそろ都内での仕事の締め切りが
近くなったんで帰りたいって
『まだ高速が特殊車両のみの通行なんで日本海側のルートでイイよね?』
『大丈夫よ!それよりあたし臭くない?』
『臭い匂い大歓迎!
きみの濃い匂いなんてなかなか嗅げないからね
さっきかなりの至近距離で充分楽しませてもらったよ』
『やだぁ変態!』
『とりあえず夜中でもやってる温泉施設はピックアップしてる
そこにまずは行こう』
『でも着替えなんてないわ…』
『大丈夫!ユニクロで買ってきたスウェット上下と
百均で買ってきた女性用パンツ
生憎セクシーなやつは売ってなかったぁ
ごめん!
かなり興味ある方なんだけどサイズを聞いてる暇なかったから
小学生高学年用のスポーツブラ!
これも百均ね』
『イイ選択ねぇ!あなた店員さんに変な顔されたでしょう…』
『うん!たぶん購入後警察に通報されたと思ったから大急ぎで飛ばしてきたよ』
県境の峠道も幸い雪はなく凍結もしていなかった
温泉施設に寄って彼女を風呂に入れた
その後休む間もなく
車を走らせた
湯上りの綺麗な肌でに化粧水やら乳液やらをはたきながら
ぼくが持参したバナナ・伊予カン・ビスケットをモグモグと
彼女は食べ始めた
髪の毛が完全に乾いていないためか
車内のガラスが曇り始める
それでも夜空には沢山の星が
ぼくらを照らしてくれた
『いろいろあって頭がぶっ飛んでるの
でも体はかなり疲れてて気持ちいい
なにか
ガツ―ンってくる音楽聴かせて!』
『ガツ―ンって…
普通はしっとりした癒しもの聴きたがるんじゃないの?』
『うぅーーん、ガツ―ンっと
アーシーなパワーを感じるバラードが聴きたい』
『オーケー!』
ぼくは迷わずかつてPファンクの一派というか
ファンカデリックの一番近くにいた
ロジャーとそのファミリー
ザップの
『I wanna be your man』
を流した
イントロのシンセのアルペジオは真っ暗な道を走る
ぼくらの車に降り注ぐ星の瞬きのようだった
ゆっくりなテンポ
重いリズム
切なく美しいメロディにのった
ストレートな歌詞
トークボックスと生のコーラスとの絶妙なバランス
アーシーなサウンドで
これ以上のガツ―ンとした選曲は
おそらくない
サイドシートを倒し
リラックスしてた彼女がほほ笑む
『エムザ有明行ったよね88年だっけ?
覚えてる?』
『もちろん!前座はシェリー・マードックだったぁ』
『ちょっと 寝るね
スポーツブラもよかったけど
ロジャーが聴けてよかったぁ』
彼女が眠りについた後も何度もリピートして
ぼくは
サビを歌ってたんだ
『I wanna be your man』
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