キャタピラー

 
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言葉にはならない・・・ただ「理不尽」
 
「普通の人の戦時下の日常」がいかにむごたらしいものか、
「戦争」がいかに「異常」であるかが、重くずっしりとのしかかってくる。
テレビに写しだされ、次の瞬間には終わってしまう断片的な他国の「戦争」しか知らない私には、
「大義」のために隠蔽され、美談としてしか語ることを許されなかった、
「戦争のもたらすむごたらしい日常」の異常さ恐ろしさに身震いしてしまう。
 
もともと,
妻には暴力を振るい、戦地では女性を強姦火を放ち死に至らしめ、
たまたま事故で四肢を失っただけで、三つも勲章をもらうような勇猛果敢な「軍神」などではない夫。
四肢、聴力・言葉を失い帰還、本来的な生き物の欲望のみで行き続ける。
「芋虫」となった夫と共に生きるしかない「軍神の妻」、美談を強要する世間・国家。
彼女一人に、思いも寄らぬ悲惨の後始末を押付ける。
妻の手を借りる排尿・排便と同様、
妻の感情を無視した夫の性欲も、彼女の身体を借りての排出の一つでしかない。
 
だが次第に変化が起きて来る。
欲望に押し流されるように行き続けて来た「芋虫」はトラウマに苦しみ始める。
ランプの炎に慄き、甦る怖ろしい記憶や自責の念に四肢の無い身体でのたうち回る。
勲章や武勲を讃える新聞を見ては納得していた彼が、無表情にそれらを見つめるようになる。
 
一方、
妻のなかには夫に対する違う感情が育ち、いやそう生きるしかなかったせいかも知れないが、
淡々とこの生活を受け容れていこうというやわらかさが生まれてくる。
 
そして「玉音放送」
「芋虫」は壮絶な決意で入水する。
農業用池に浮かぶ一匹の「毛虫」
隣に写る彼の顔に、一瞬、国家にとってはただの「虫けら」にすぎなかった自分を悟った深い悲しみが浮かぶ。
 
そのことを知らず「終戦」に安堵する妻。
時代、という運命に必死に立ち向かい、受容し、次の瞬間また次の運命になぎ倒されるような二人の人生。
「私」は誰のものなのか!という憤りがこみ上がる。
 
寺島しのぶは、同世代・同時代を演じた作品に比べて、「健気に演技している」いじらしさが伝わって来た。
もちろん、顔半分だけの演技で見事に感情を映し出して見せた大西信満の素晴らしさは言うまでも無く。
昔、教科書で読んで衝撃を受けた詩「死んだ女の子」の元ちとせの歌も良かった。
すっかり忘れていたけれど、こんな風に甦らせ後世に伝えることもできる。
 間に挟まれる実写、原爆投下直後の広島・戦犯の死刑のシーンなど・・・すさまじい。
 
       『戦争は絶対イヤだ!』
こんな映画を撮った若松監督、スタッフ、制作関係者は本当に凄い。
 
 
 
 

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