|
昨日も記した、原子炉圧力容器の元設計技術者である田中三彦氏の著した「原発はなぜ危険か」について、もう一つの記憶に残る記述のことを追記として書き留めてみます。
金属の破壊区分として、延性破壊と脆性破壊があります。延性破壊とは破壊断面に伸びが生じた結果として引きちぎれる様に破壊することです。一方、脆性破壊とは破壊断面に伸びが生じないで、ガラスや陶器の様に、割れるように破壊することを指します。
さて、今回のテーマとなるのは脆性破壊、つまり材料の脆さを表す特性のことです。この特性は、素材中の成分だとか熱処理よって変わってきますが、もう一つの要素として素材の温度があるそうです。この素材の温度と脆性破壊の関係を評価する試験があるそうが、素材の温度を低下させていったとき伸びを伴わない破壊、すなわち脆性破壊が何度で生じるかを見定めるものです。この温度のことをNDT温度と云うそうです。
例えば、ある船舶における鋼材のNDT温度が0度Cだとすれば、北極海における氷山との衝突が、素材の粘り強さがないがために、船腹が割れ裂けて沈没に至ることもある訳です。これが、処女航海において悲劇の沈没を起こしたタイタニックの原因との説もあるようです。
さて、本論の原子炉圧力容器の厚板鋼板のことに戻ります。原子炉圧力容器の場合、NDT温度に大きな影響を及ぼす要因として、核分裂の際に生じる中性子線の照射があるそうです。この中性子線による素材の脆性劣化のことを中性子脆化と呼ぶそうですが、原子炉の運転時間に応じ、先のNDT温度は上昇していくのだそうです。
原子炉圧力容器内には、予め素材と同一の試験片(テストピース)が用意されており、核燃棒の交換などの際に、NDT温度の評価を行うそうです。すると、新作時のNDT温度がマイナスだったものが、100度Cを超えるという場合すらが出てきているのだそうです。
NDT温度を下回る温度下においては、地震動による加振など物理的なショックだけでなく、急激な温度変化などの熱ショックにおいても、致命的な破壊を起こす恐れがあるそうです。怖い話です。
|
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
2011年04月14日
全1ページ
[1]
|
最近、数十年ぶりに再読した[日本沈没](小松左京著)のことです。このエピローグは、故郷たる国土を失うという未曾有の災害から当座の避難を果たした国民が、流浪の民と化しこれから迎えるであろう種々の困難を暗示させつつ終わります。
驚天動地たる今次の原発事故ですが、最初の水素爆発の時に、これはチェルノブイリみたいになるかもしれないと誰もが思ったことでしょう。でも、なんとか、食い止められるかもと思いつつ、1、2、3、4号炉と深刻度は増し、とうとうチェルノブイリと同一のレベル7(あくまでも現時点)と聞くと、これは悪い夢だと思いたくなります。
政府、官僚、関係各部門は、一生懸命頑張っているのでしょう。しかし、事態がここまで至る以前において、政府の、大手マスコミおよび解説者の先生と云われる方々の、安全だ、安心だ、危険はないという言葉は、なんだったのかと怒りの感情を持つのは私だけでしょうか・・・。
さて、日本沈没は小説の世界ですけど、チェルノブイリでは事故から25年を経て立ち入り禁止の管理区域は、依然そのままです。それと同じことが、狭い国土の我が国で現実化するとは思いもしませんでした。物理的な故郷はあっても、そこは人の住めない地、人々が営々と暮らしてきた文化というものも大半は失われてしまうのでしょう。まったく、悲しい事態に声も出ません。
|
全1ページ
[1]




