ヤマダ電機がビックカメラからベスト電器を奪取。
ついにガリバーも動き出した。家電量販店首位のヤマダ電機は、同業のベスト電器を買
収する。8月20日〜12月31日の払込期間にベストの第三者割当増資を引き受け、4
7%超の株を取得。買収額は121億円となる見通しで、ヤマダが従来から保有していた
持ち株を合算すると、ベストに対する議決権の51%を保有する親会社となる。ベストを
連結子会社化した後のヤマダの売り上げ規模は2兆円を超え、2位以下のライバルたちを
引き離す格好になる。
ベストはこれまで、持ち株比率15%の筆頭株主であるビックカメラの持ち分法適用会
社だった。が、今回の第三者割当増資により、ビックカメラによる持ち株比率は7.95
%に低下する。現在、ベストからビックカメラに資本提携解消を持ちかけているという。
ヤマダの創業者である山田昇会長は数年前まで、「同業を買収するよりも、自社で出店
した方が効率がいい」とのスタンスだった。日本全国に店舗網を構築するヤマダにとって
、同業の買収は商圏が重複する店舗を多数抱えることになり非効率だ。だからこそ近年は
、住宅メーカーのエス・バイ・エルなど異業種をM&Aすることで事業領域の拡大を進め
てきた。
しかし、様子が変わったのは今年5月。5位のビックカメラが6位のコジマを買収し、
業界2位にのし上がってから。このとき山田会長は、「再編の動きはこれからもある。シ
ェアを拡大する買収なら意味がある」と前向きな姿勢をのぞかせていた。
一方のベストは、ここ数年間、成長戦略を描けずにいた。本社のある九州を地盤に全国
出店に乗り出して一時は業界首位に上り詰めたが、1998年に安売り攻勢を仕掛けてき
たコジマが首位を奪取。その後もヤマダやヨドバシカメラといった全国チェーンに次々と
抜き去られていった。
2007年には、業界首位に上り詰めたヤマダが、ベストの筆頭株主に浮上。“奇襲攻
撃”に面食らったベストは、ビックカメラと急きょ資本提携を結び、第三者割当増資を実
施。“ホワイトナイト”に名乗りを上げたビックカメラが持ち株比率15%の筆頭株主と
なっていた。
しかし、ビックカメラとの距離がそれ以上に縮まることはなかった。提携した当初はビ
ックカメラとの共同仕入れやフランチャイズ店の出店を進めたものの、店舗は山口と小倉
南の2店どまり。ビックカメラ側ではここ数年、ベストとの関係について、「自社の業績
立て直しが最優先課題」(宮嶋宏幸・ビックカメラ社長)と語るにとどまっていた。そし
て今年5月、ビックカメラはコジマを買収して子会社化し、持ち分法適用会社にすぎない
ベストとの溝は一段と深まることとなった。
だからといって、ベストは単独で生き残る体力を持ち合わせていない。全国チェーンの
道をあきらめ、次々と不採算店を閉鎖したが改善の兆しは見えなかった。店舗網を縮小し
てリストラを繰り返す様子を見て、あるライバル会社幹部は「出店したくてもおカネがな
い。メインバンクの西日本シティ銀行に首根っこをつかまれている」と指摘していた。
その言葉どおり、今回のヤマダによる買収は銀行主導だったようだ。13日の会見の場
でベストの小野浩司社長は、「2年前から複数社と提携交渉を進めてきたが、最も財務基
盤が強固で信用力の高いヤマダさんと組むメリットは大きい」と苦しげに説明した。
ベストは今回の増資で得た121億円で既存店改装や不採算店閉鎖を進め、経営改善を
目指す。しかし、九州エリアでもヤマダのシェアは高く、ベストとの競合店は数多い。効
率経営に定評のあるヤマダの売上高経常利益率が直近で5%を超えているのに対し、ベス
トは1%にも満たない。ベストは上場を維持して独立性を維持する方針だが、経営改革が
遅れたら格差解消に向けて“ヤマダ色”に染められる日も遠くないかもしれない。
「売上高を増やす以上に、シェア拡大の意味が大きい」と会見で語った山田会長の言葉
どおり、今回の買収は業界にも波紋を広げそうだ。エディオンやケーズホールディングス
といった、ライバルたちの成長戦略にも大きく影響を及ぼす可能性がある。家電量販店業
界の再編は待ったなしだ。
〜sbi参考
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