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北京五輪の聖火リレーが、パリに於いて、チベット問題に抗議する市民による妨害で打切られたり、これから聖火リレーの行われるサンフランシスコの象徴であるゴールデン・ゲートブリッジで、中国によるチベット人弾圧の抗議の垂れ幕が下がったりしているが、自由と民主主義を自らの手で勝ち取った国々の市民はさすがに筋金入りであると感心した。

かつては、アメリカはイギリスの植民地であったが、イギリスの植民地主義政策により、アメリカはイギリス本国から課せられる重税に苦しみ、イギリスに対して独立戦争を開始し、1年後の1776年にアメリカ東部13州がイギリスからの独立を宣言した。

アメリカの独立宣言には、イギリス人のジョン=ロックの政治思想が背景にあり、自然権(人間は生まれながらにして自由かつ平等な権利をもっているという考え方)・社会契約(国家の最高権力は人民にあり、国家はその受託者にすぎない)・革命権(国家の代表者が信託に反して自然権を侵害した場合は、人民がこれに抵抗する権利)が内容に含まれている。この独立宣言は民主主義の基本原理となるもので、後のフランス革命におけるフランス人権宣言の手本ともなった。

同じ18世紀後半のフランスにおいては、絶対王政による重税に反発した平民は国民会議をつくり反発の度合いを深めたが、ルイ16世はこれを武力で弾圧したため、民衆が武器を持って立上がったのがフランス革命であり、1789年にフランスの国民議会が議決したのが、フランス人権宣言である。

自由・平等・博愛の精神を明白にし、国民主権・基本的人権の尊重・所有権の確立などが盛り込まれ、近代市民社会の基本原理を確立したフランスの人権宣言は、直ぐにヨーロッパ全土に広がり、各国憲法や資本主義経済の発展および市民階級の興隆に大きく寄与した。日本でも明治時代の自由民権運動に大きな影響を与える。

以上の歴史的背景からも、アメリカ人やフランス人は、人権や自由や民主主義については、それらを自らの手で、樹立・形成したというお国柄もあり、自由や民主主義とは一線を画した中国共産党独裁政権によるチベット人やウイグル人弾圧については、特に反発が激しいのであると思う。

一方、日本は、戦後の民主主義というアメリカ中心の連合国の敷いたレールの上で民主主義が形成されてゆき『市民の力により』というニュアンスはあまり無い。そんな日本では『聖火ランナーを暴力で妨害するのは良くない』などという通り一片の薄ぺらな談話を官房長官が発しているが、『聖火ランナーを暴力で妨害するのは良くないが、中国政府のチベット人やウイグル人の人権を無視した弾圧は良くない』という程度のことくらいは、民主国家の一員として、明確なメッセージを発した方が良いのではないかと思う。

胡錦濤中国国家主席の来日が5月に決まりつつあり、中国を刺激するような発言はしたくないという事情もあるのかもしれないが………

米下院議長のみならず、米民主党大統領候補の一人であるヒラリー・クリントン氏も、米大統領は北京五輪の開会式には参加すべきでは無いと主張し始め、欧米各国での中国への反発は高まるばかりである。しかしながら、中国のやり方に文句はあるものの、オリンピック・ボイコットというところまでには発展しないところに、中国側にせめてもの救いはある。

中国政府は、市場経済の導入や一定程度の私有財産の保有を認める等して、共産主義の中にも、資本主義的なものをかなり取り入れ始めてはいるものの、共産党独裁政権という考え方と、自由と民主主義という考え方の隔たりは、かなり大きなものがある。

中国側も、これを機に、人権とは何か?自由と民主主義とは何か?ということを真摯に考えてゆき、将来は民主国家として存在してゆくのだというビジョンを描き、それに向けての努力をしてゆかないと、世界の大国としての仲間入りは、実際にはなかなかできないのではないかと思う。

中国に、人権と自由と民主主義ということを真剣に考えさせるという意味での、北京オリンピックは、それなりの歴史的な意義を持つと思う。

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