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日本国憲法第9条は、『日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。』と唱っている。
民主党・小沢代表は国連決議があれば、武力行使を含んだ活動に日本の自衛隊は参加できるとして、それは憲法の理念にかなうと主張している。具体的には、アフガンでのNATO中心の地上軍である国際治安支援部隊(ISAF)やスーダンでの国連平和維持活動(PKO)などの危険な活動も、国連決議があれば参加できるとの立場を鮮明にしている。
一方で小沢代表は、インド洋での給油活動はその活動自体を直接明確に承認している国連決議が無く、給油活動も戦闘行為に結びつき、集団的自衛権の行使となり、憲法違反であると主張する。
以上が小沢理論であるが、普通の日本人が以上の憲法第9条を読んで、小沢理論を受け入れる人は極めて限られた数になるのではないか?自民党、公明党、共産党、社民党等や、民主党の小沢氏やその取り巻きグループ以外のかなりの数の民主党議員も、小沢理論を素直に受け入れる人はあまりいないのではないか?
以上の小沢理論に関して、次の点を指摘しておきたい。
1)小沢理論は、国連決議に基づく活動は『国権の発動』ではなく、武力行使を禁じた憲法第9条には縛られないという考え方で成り立っている。しかし、自衛隊を武力衝突のある地帯に送り込むという行為が『国権の発動』にはあたらないとする解釈には無理があるし、誤りであると考える。
日本国内の何らかの法律に基づき、国会承認や閣議決定等の国の政治意志決定のプロセスを経て、自衛隊の派遣を決めることになるのであるから、自衛隊を送り込むという行為は『国権の発動』とみるのが普通であろう。
従って、国連決議さえあれば、自衛隊が海外の武力行使活動に参加することは憲法違反ではないとするのは誤った考え方であると思う。国連決議があろうが無かろうが、自衛隊の海外での武力行使については憲法違反であると考えるのが大多数の普通の日本人の憲法解釈である。
2)小沢理論は、米国同時テロ直後の国連安保理決議1368において『テロ活動によって引き起こされた国際の平和及び安全に対する脅威に対してあらゆる手段を用いて闘うことを決意』と明記している事実や、先の国連の『インド洋での給油活動に対する謝意決議』に見られるように、給油活動を明記して直接的に承認している国連決議は無いものの、インド洋での給油活動は以上の安保理決議等により、国連が事実上給油活動を認めているという事実を無視している。
給油活動には国連決議が無いという論理は小沢氏一流の一種の詭弁である。国連が給油活動を認めていなければ、『給油活動の謝意決議』など有り得ないことは言うまでもない。確かに、ロシアはその決議に棄権はしたが、反対をしたり、拒否権を行使したりしているわけではなく、『謝意決議』は安保理として正式に採択した国連決議である。
3)小沢理論は、給油活動を、アメリカの起こした戦争における集団的自衛権の行使と決め付けているが、第一に、アフガン戦争がアメリカの戦争であると決め付ける根拠は無く、小沢氏の主観的考え方に過ぎない。
911テロでは、日本人も24名殺害されており、上記2)で言及した通り、国連決議に基づき37カ国が参加している戦争がアフガン戦争である。また、給油という行為自体は、武力行使ではなく、武力行使を前提にした集団的自衛権という論議は給油活動に言及されるべきことでは無いと考えるのが自然である。また、給油活動という行為自体は憲法第9条で言及する武力行使にはあたらないことは明確であり、憲法の枠内の行為であると考えられる。
以上が小沢理論に言う国連決議や憲法上の解釈に対する常識的な反論となるが、上記の小沢理論でいうところの活動が、給油活動に比して、日本の国益にはならない理由を以下に挙げる。
4)今迄日本が行ってきた給油活動止めて、インド洋から引上げてくれば、アフガンでのテロとの戦いに参加している世界の主要国を含む37カ国側から見れば『日本はテロとの戦いから逃げた。』ように見えるであろう。国際協調の観点から、国際社会からの日本に対する眼は厳しいものとなるであろう。
5)小沢氏の主張する国際治安支援部隊(ISAF)という地上軍への日本の自衛隊と参加という行為と、インド洋での給油活動という行為自体を比べた場合は、ISAFにおいて各国は数多くの死者を出している現実を見れば、ISAFへの参加ははるかに危険であるし、給油活動の方が自衛隊員個々人にとってははるかに安全であることは明らかである。
また、給油活動は月に16億円程度で済むと言われているが、自衛隊の地上軍への参加ということになればそんな金額では済まない可能性の方が大きい。湾岸戦争の際に日本は130億ドル(=1兆4,000〜5,000億円)も出しながら、クウェートからも世界からも感謝されなかった。今回の給油活動に要する金額ははるかに少額で済み、世界から期待され、かつ感謝されるのである。その意味でも、給油活動の方がはるかに日本の国益に適うのである。
6)日本の安全保障という観点から考えた場合は、例えば、仮に北朝鮮が日本に攻撃を仕掛けてきた場合、現実的に日本を守れるのは、日本の自衛隊と日米安保条約に基づく、アメリカ軍の軍事行動ぐらいしか現実的には有り得ない。アメリカは日本にとっての唯一の同盟国である。
しかしながら、アメリカ側や国際社会からの給油活動継続という強い要請を、結果として日本が断れば、日米安保条約という保険証書はあっても、給油という保険料を支払わなくなれば、アメリカが保険料の支払を停止した国を手助けするというようなことは無いと思った方が良い。アメリカへの憲法の範囲内で行える給油活動という援助を止めて、日本が困った時に手助けしてくれと言ったところで、アメリカという国は、そのようなお人好しの国では無い。
一方、国連至上主義の小沢理論の行き着くところは、事が起った場合は、アメリカではなく、国連頼みということにならざるを得ないが、国連安保理の論議において、中国もロシアも日本を手助けするなどという夢想はしない方が良い。中国やロシアは拒否権を行使するであろう。つまり、国連軍による日本の安全保障などは実質上有り得ないのである。
以上述べて来た理由により、小沢理論は暴論でもあり空論でもある。そして日本の国益という観点からも、現時点においては給油活動に優るものではない。
日本の国益や、日本の安全よりも、自らの政治的野心に基づく党利党略を優先させる小沢民主党代表のやり方に、多くの国民は再び“小沢アレルギー”を起こすことになるであろう。
今週の月曜日のテレビ番組テレビタックルの中で、ビート・タケシ氏は『給油活動に関して、民主党はとにかく反対ということばかりを主張しているが、思い切って与党側に抱きついてしまった方が、結果として民主党が有利になってゆくのではないか?』という趣旨のコメントを言っていたが、私も同感である。
安倍前首相は確かにKY(=空気が読めない)であったが、現在の小沢民主党代表とその取り巻きも、形成されつつある世論の大勢という空気が読めていないのではないかと思う。
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