せかんどでぃめーしょーん!

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それは雪の魔法 #8

〜プロローグ〜

 人はなぜ、夢を見るのだろうか。自分の求める理想を少しでも感じたいからなのだろうか。それとも現実世界から逃げたいからなのだろうか。
 どうして桜はピンクや白なのだろうか。それは彼らが望んだ色だからなのだろうか。それとも、人が望んだ色だからだろうか。
 なら、なぜ人はこの世に生きているのだろうか。何のために生きているのだろうか。
―――宿命?使命?
 わからない。
 なら、なぜ自分はここにいるのだろうか。なぜ、生きているのだろうか。
・・・自分の存在意義とはなんだろうか。

 考えていくうちに怖くなってくる。自分というものがこの世界に果たしてどれだけの価値があるものなのだろうか。答えなんてわからなかった。ただ、自分は・・・
「おーい、長谷川。おきてるかぁ」
「あ、はーい」
 突然の教師の言葉に驚きつつも、平然さを保ち、答えた。
「おし。なら、この問題やってみろ」
「・・・わかりました」
 面倒くさいことこの上ない。まぁ、今はあのことを考えなくていいことだけよいことにしよう。

(存在意義・・・)
 彼女は黒板に文字を書き始めた。


第8話 日常

―――きーんこーんかーんこーん・・・
 やる気のなさそーなチャイムと同時に生徒がいっせいにたち始める。皆ようやくかったるいことがひとつ片付いてひと段落しているのだろう。まぁ、それはみんなの話に過ぎないのだが・・・
(それにしても・・・)
 今回の俺はちょーとばかしそんな気にはなれなかった。まぁそれもそのはずで・・・
「燈真、次って何の教科?」
 これが原因だ。なにをかくそう、なんとこの鷺野宮に明里がいるのだ!!
「お、おぉぉ、たしか現代社会だったとおもうぞ」
「じゃぁ、教科書みせてね」
「あ、あぁ」
 なんだ、なんていったらいいのか、動揺しまくっている。それも仕方ないだろ。ここにいるはずもない人がいるのだから。それに何だ、うれしいには変わりないのだが、あんまり人前でカップルだぁと見られることは恥ずかしくてあまり好きではない。特に・・・
「ったく、知り合いだったのかよ!」
 こいつ、蓮二にだけは知られたくない。知られたら最後、冷やかしの対象になっちしまう。いや、1時間もあれば学校中に知れ渡ってしまう。できれば明里とは静かに、そう、静かーに付き合いたい。
「まぁな」
「ええ、少し前に駅であって」
 明里にもそれは朝のHR後速攻で説明した。彼女もできれば茶化されることなくひっそりと付き合いたいということで納得した・・・と思う。
「んだよぉ、燈真ちゃん。それだったら紹介してくれよ、つれないなぁ」
「うるせぇな、お前に教えたら最後だろうが」
「もう、意外と奥手なのよ、燈真ちゃん」
「あっそ」
 そんなたわいもない会話をしている。だが、いつもとは違う。ここに明里がいるんだ。それだけでもまた違った感じだ。
「へーー燈真もなかなかやるじゃないの」
(どこから沸いてきた、綾乃よ)
「余計なお世話だ」
「まぁまぁ、2人とも」
 こんなしょーもない話をしつつ、授業は気がついたら第6限目も終わり、放課後になっていた。
「じゃぁな」
 綾乃はハンド、蓮二は陸上。それぞれ部活があるため帰宅は明里と一緒だった。こういうときに2人のがんばりは役立つ。部活がんばれぇー!
「んじゃ、かえろっか」
「うん、そうね」
 彼女は笑顔でそう答える。
 思えば出会ってから彼女は本当に変わった。まるで中に縛られていた鎖が打ち砕かれたかのように、今はものすごく「今」を強く生きている感じがする。
(俺のおかげかな・・・)
 自意識過剰も激しすぎるな、俺。
 そんなことを考えていると・・・
「あ、朝霧くん」
「長谷川先輩じゃないですか」
 亜子さんだ。彼女もまた今日始めて話したという感じだ。意外と見た目よりも明るく男勝りな一面が印象的なかただ。
 彼女はみつけたぁとばかりにこちらに向かって走ってくる。
「どうしたんですか」
「うん、実はね・・・」
 亜子さんは明里の方を見る。一瞬信じられないというような表情をみせたような気がするのは気のせいだろうか。
「これ、商店街でもらったんだけど、今日までなんだって、ケーキフェア。5個までなら食べ放題だよ!」
「まじっすかぁ、ああでも」
 ここで明里のほうを見る。明里はしまったという顔を一度してから。
「あ、ああ、はじめまして。岡寺明里です」
「岡寺明里・・・明里ちゃんか!わかったよー。あなたもいかが?」
「えっと・・・」
 明里は俺のほうを見る。俺はうなずいてみせる。
「ぜひご一緒にさせてください」
「いいよぉ、ついでにここら辺のことも教えてあげる」
 かくして2人の女子とデートすることになった俺。ふ、ざまあみろ蓮二め。
 といっても、何だろう、亜子さんのあの一瞬みせた表情は・・・
「あーケーキ楽しみね、燈真」
「あ、そうだな」
 明里のいうとおり、ケーキは楽しみだ。この件はひとまず保留にしよう。
 俺たち3人はたわいもない話をしながら丘を降りる。なんだ、今年はやっぱりいい年じゃないか。
(ほんと、人生なにがあるかわからんものだ)
 



 もっともケーキを食い終わった俺たちは、そこら辺のゲーセンをぶらぶらし終わった後、亜子さんとわかれ、いつしか明里と俺は、あの日であった駅のホールにいた。
「そういえばさ、燈真」
「ん?なんだ」
 彼女はすこし考えたふりをしてからくちをひらく」
「なんで燈真は部活やってないの?」
「ああ、それは・・・」
「それは?」
「バイトしてるからだよ」
「そうなんだぁ、てっきりめんどうくさいからだと」
「それも多分正解だ。どうせ動くなら金もらったほうがましだ。」
「ふふ、それもそうね。」
 ああ、青春だな。俺は感動してるよ。
「それより、そんなんだったら日曜日デートしてよ」
 デート・・・いい響きには違いない。ってデート?
「まじか!」
「いや?」
 いやなわけではない。ただどこにつれてけばいいのか検討もつかなかったのだ。
「うんと、どんあところいきたい?」
「燈真に任せる」
 それが人間一番困る答えなんだよ、明里さんよ。
「・・・わかった」
「楽しみにしてるよ」
 はぁ、明里さんよ、そこまで期待しないでくれ。仕方ない。あさってまでの宿題だな、こりゃ。

 いつもと違う日常。こんな日常がまさかじぶんにくるなんて思ってもいなかった。でも、いやな気はしない。
―――さて、明日は何があるんだろうか。



「・・・そう・・・わかったわ」
 携帯を閉じ、ソファに深くもたれる。
「そうか、彼女はもうここにいたんだ」
 彼女の顔がかすかに微笑んだ。
(ただ・・・)
 燈真がいることは以外ではあった。まぁ、同じ学校だから仕方はなくはないが、まさかあれほどまで接触を図っていたなんて。
「さて・・・」
 彼女は必死に頭をめぐらせた。自分の存在意義を見つけるために。自分のすべてを果たすために。


 第8話 終わり

それは雪の魔法 #7

〜プロローグ〜

「ふぅ」
 久しぶり・・・いや、自分の記憶の中では初めてなのかもしれない。こんなにも何かをやり遂げた後の風呂とはこんなにも気持ちいいものだということを実感したのは。ふと天井を見れば、今日磨いたばかりのピカピカの大理石が輝いている。お風呂の中も今日下ろしたばかりの「憩いの森」とか言う温泉のもとだ。結構香りもいい感じだ。
 それにしても今日という日はあっという間だったようなきがする。いや、遅かったようにも感じないこともない。この矛盾した気持ちはきっと明日のことで緊張しているからだろうか。
「燈真はなんて顔するかしらね。」
 彼女はふとしたサプライズを考えていたのだ。燈真に内緒で驚かせたいと思ったのだ。自分がこんな感情になることは本当に不思議で仕方がないのだが、それも昨夜のことで納得できてしまう。
「・・・そういえば、初めてだったのよね・・・」
 昨日の建設中断となった中途半端なビルの屋上で、燈真とキスしたことをふと思い出してしまった。今になって恥ずかしさがこみ上げてきてしまう。というか、あの後燈真とメルアドとかの交換をした後は・・・何も話せないでいた。お互いが余計に話す言葉が見つからないでいたからだ。
「それにしれも・・・」
 本当に今の自分は情けないほど落ち着きがない。明日の遠足が待ちきれない保育園児のように、今の自分も明日のことが気になって仕方がないのだ。油断するとすぐ燈真のことを考えてしまう。そして昨日のことを思い出しては高潮して・・・の繰り返しだ。
(でも・・・)
 これもいいかなと思う。ようやく「自分」と「生きがい」を見つけることが出来たのだ。今は明日がきてほしくて仕方がない。

「ようやく開けたかな。私の扉。」


第7話 混乱

―――「ちゃん・・・ちゃん。」
 小さな男の子は、一人の女の子をひたすらに追い掛け回していた。それはそれは蔓延の笑みで。女の子もまた、男の子の方を振り返ってはにこやかに微笑みかける。
「・・・ちゃんつーかまえたーー」
「ああぁーつかまっちゃったぁ」
 二人は顔を見合わせ、また微笑む。
「まーくんはいっつもすぐあたちのこと捕まえちゃうね」
「そりゃぁ、・・・ちゃんが遅いからだよぉ」
「まーくんは早いもんね」
「へへ、そうでもないよ」
 男の子は少し恥ずかしげにいった。ほめられたことをどう喜んでいいのかわからないのだ。そんな戯れない会話をしているとき・・・
「おーい、2人とも、ご飯だよーー早くおいで。」
 現れたのはとても人妻とは思えないくらいの、足が細く、髪もさらさらで、顔は小さく、かわいいとも美しいともいえるような女性がそこにいた。
「2人とも、楽しかった?」
『うん』
 2人は声をそろえてうんうんとうなずく。
「そう、それはよかったわ」
 お母さんらしき美しい女性は、安心したような、そうでないような、とにかくやわらかい笑みをこぼした。
 ・・・夕日に向かって歩く3人。
 ふと女の子は男の子にまじめな顔して話しかける。
「まーくんは、あたちをずっと守ってくれるの?」
 男の子は迷わず答える。
「僕はずっとそばにいるよ。だって、僕は・・・」


―――「だっはーーーーーーー」
 時計をすぐに確認する。時刻は7時20分、うーん遅刻だな。どうやら寝すぎてしまったようだ。
(それにしても・・・)
 今の夢はなんだったんだろうか。なんか知っているような知らなかったような、そんなあやふやなものだった。というか・・・
「どんな夢だった!?」
 あやふや以前に、どんな夢かも忘れてしまった俺。まぁ、よくあることじゃないか。
 というか、こう和んでいる場合じゃないぞ!俺。
 前にも話したと思うが、俺の行く学校は中途半端に遠い。まず間宮駅から武野まで大体17分、その後は20分は歩いていかなければならない。単純計算しても、今から準備だのしていたらHRに間に合うかどうか。
 それよりもこの時間帯はものすごくイヤだ。もうちょーーと遅れてくれれば諦めがつくものの、この時間だったら間に合わせることを優先しなければなくなる。こまったなものだ、俺の体内時計よ。
 このように自分でボケ&つっこみをしつつ、とりあえず服を着替えた俺は下へ猛ダッシュ!!
「あら、また遅刻なの?」
 つか、母上!なぜ起こしてくださらないの?
「見てのとおりだよ、いってくる」
「はいはい、いってらっしゃい」
 まったく。遅刻は疲れるぜ。
 とりあえず俺は何とか間宮駅に無事到着&電車に乗り込み、きがついたら竹野についていた。
「さーーて」
 ここからが本勝負だ。果たして心臓破りまでいかに体力を消耗せずに走れるかが運命の分かれ道なのだ。
(いちについて、よーい)
 ばっこーーん。さあ、走り始めました。
 第一レースは商店街までのこの桜通り(今決めた)の直進コースだ。加速する、加速しています。
「よし、ここまで順調だ」
 疲れてない。これならいける。
 角を曲がり第2コース、商店街へ。
 さて、とりあえず宏也さんと佐宮さんなんだが・・・今日はあまりかかわりたくないので裏道を通ろう。うん。そうだな。
 俺は裏道を第2コースの本コースと定め、ダッシュをしたのだが・・・

 ドス!
(いってぇ」
 何かにぶつかったらしい。でもそれにしてはぶつかったものがやわらかかったなぁと思いつつ・・・
「いったぁーい」
(あ?)
 声からして女子か?かーーこれは面倒なことになりそうだ。さて、とりあえず謝っとくかと俺が手を伸ばしたそのとき・・・
「あ、ああ!!!」
 なぜかその女子は叫んでいた。いったいなんだっていうんだ?
「あの・・・なにか。」
「き、君、もしかして」
 その女子はずばっとたって俺と顔をあわせる。その顔立ちは本当に人形のように整っていて、正直なかなか俺好みだ・・・て、おいおい、この子見たことあるぞ。ま、まさか・・・
「亜子・・・さんですか?」
「うん。そうだよ。覚えててくれたんだ。」
 長谷川亜子。ちょうど1年前にここで事件の原因をつくった本人だった。というか、なぜ今ここに?いや、その前に・・・
「なんで、うちの制服着てるんですか?」
「え、何言ってるんだよ。私、鷺宮の3年だよ。
「え・・・」
 先輩なんかよ。つか、ぜんぜん知らなかったんですけど。
「朝霧くんだよね?」
「あ、はい」
 とたんに声を引き締める俺。
「そっかぁ、あの時は本当にありがとうね。」
「いえ、たいしたことではないですよ。」
 全然大したことあったけどな。
「ところで亜子さん1年間何やってたんすか?」
 これだ。これが一番引っかかってるところなんだ。俺は責任を取るために出て行ったものだと思っていたんだが。
「実家に帰ってたのよ。ちょっとお母さんの体調がよくないみたいで」
「あ、そうだったんですか」
 長谷川一家の経営するこの商店街の店は、亜子のおじいさんたちがやっているところのそうだ。母親の病気のこともあってここに住んでいたらしい。
「それにしても本当に久しぶりだよ。会いたかったんだよ、朝霧くんに」
「すぐ乗り換えようったって俺は軽くないですよ。」
「そうですかぁぁ。それは残念」
 亜子はイタズラっぽく舌を出して微笑んでみせる。前のヤクザもこれで落ちたんだな。ならば納得だ。
(つか・・・)
 遅刻しかけているってことすっかり忘れていたぜ。
「亜子先輩、遅刻します。急ぎましょう。」
「あ、そうだね。つか、先輩とかって新鮮♪」
 こーんな先輩を無視して俺は何とか心臓破りまで到着。本当に心臓が破れたんじゃないかと思うくらいはして何とか校門までたどりついた。どうやらHRには間に合いそうな雰囲気ではある。よかったよかった。
「じゃぁね朝霧君」
 先輩と別れて俺は教室へ向かう。というか、あんな正確だったろうか。亜子という人は。
 まぁ、考えるだけ仕方ないかと俺は思考を中断し、教室のドアを開ける。
「すんませーん、遅れましたーーー」
 いつものこの一言で俺のいつもははじまるはずだったが・・・今日は違うようだ。
「東京都より参りました、岡寺明里と申します。なれない環境で皆さんにはお世話かけると思いますが、よろしくお願いします。」
 俺は5秒くらい硬直していたのではなかろうか。目も耳も疑っている俺に、体育会系女が声をかけてきた。
「転校生だって、燈真。きれいな子よねーーー」
「あ、、、あぁ」
 綾乃にはなしかけられたおかげで俺は何とか正気を戻す。
「じゃぁ、岡寺は朝霧の隣な。」
 え・・・
「はい。」
 明里がこちらに向けてすたすたと歩いてくる。
「おーい。朝霧もはよすわらんか」
「あ、はい」
 いったいどうなってるんだ。

 帰ってきた亜子、ここにいるわけもない明里。ここは夢世界か?

 第7話 終わり
後3分くらいか?と俺は何度も何度も考える。時間がたつたびにこの微妙な空気はどんどん重たくなってくる。さて、これじゃぁ話しかけにくいじゃぁないか・・・と思ったとき、あることに気がつく。
(つか、駅以降なんか話したっけ?)
 いや、話とらん。なぜ?答えは簡単だ。なにを話していいのかがわからん。いや、それは違うな。何からはなせばいいのかがわからないというのが本当の気持ちだろう。だからとりあえず話しかけてみようと思った。
「なあ、明里」
「何?」
 すこし顔が柔らかくなった気がするのは俺だけか?
「ここに来る前はどこにいたんだ?」
「東京だったように思う」
「へーーー東京かぁ」
 つか、東京から何でこんな田舎に引っ越してきたのだろうか。
「なんでまた?」
「パパの仕事の関係よ」
 それってつまりは転勤だよな。でもわざわざ本社っぽいところからここにくるということは、厄介払いにでもなってしまったのだろうか?と考えていた矢先。
「仕事の出来る人だから、会社の業績が悪いところにまわされていくのよ。本当に大変な人だと思うわ」
 ときた。たまにそういう人を見かけるが、家族のいる人にそういう職務を与えるということは、会社も必死なのだろう。
「そうか・・・なら、引越しもよくするのか?」
「・・・そうね」
 言って後悔した。あまり触れてはいけないようなところに突っ込んでしまったように思う。何やってる!俺。
 すこしあせった俺は会話を変えようと他の事をきこうと思ったが、それは彼女の感嘆した声によってさえぎられた。
「あ・・・」
「どうだ?きれいだろ」
「うん」
 俺たちが歩いてきた坂の横には桜が舞い散っている。夜空を見上げればそこにはベリルにもトパーズにも勝る美しい輝き誇る満月。そして目の前にはカイヤナイトのような海が広がっていた。
「ここが、燈真のお気に入り?」
「いや、こっちだ」
 俺はまだ誰にも教えていない場所に彼女を連れ出す。そこは、海の近くにある、建設が途中で中断された、会社らしきところの屋上だ。工事が途中でおわったといっても、もう人が住めるくらいには中は出来上がっている。
「すごい。」
 彼女はただ目の前の景色をくいるように見ている。美しい海の景色。空には美しい星たちが散っているが、ここからはなぜかレンガ造りの多い商店街や、周りヨーロッパ風の建物、公園・・・町中すべてが見渡せるのだ。
「テンション低いときは、ここでこの景色を見るんだ」
「そうなの」
「ああ。」
 明里の機嫌は戻っていた。
 さて、俺はここにつれてきて何を言おうとしていたのだろうか。俺は頭をめぐらし、考えはじめる。だがそれよりもはやく、明里が先に話しかけてきた。
「驚いているの」
「この景色にか?」
「この景色にも。でも、今日という時間が、1人で過ぎていないことに驚いているの」
「そう・・・か」
 明里だけでなく、正直俺も驚いていた。ちょっとした出会いから、ほんの一瞬の出来事で、それまで他人だった自分たちが、こうして2人で肩を並べあっているのだ。
「そうだな。本当にそうだな」
「でも後悔はないの。怒るかもしれないけど、自殺しようと思ったことも」
 彼は何もいえなかった。明里のその一言が、なんだかものすごく深いことだと思ったからだ。
「あれがなかったら、私たちはこうなることはなかったから」
 確かにそうだった。でも、もっというなら、今日一日が、このことのためにあったことではないかと思えてくる。補修から電車が動かない・・・本当に偶然の重なりあいだ。
「でも、もうあんなことはするなよ」
「しないわ」
 明里は断言した。
「だって、私はもう一人じゃない。燈真がいるでしょ。」
「・・・ふふ、そうだな」
 でも、まだ知り合ったばかりだけど、と出かけた言葉を飲み込んだ。よくわからないけど、時間の問題ではないような気がするのだ。
「この先、何があるかわからない。つか、いろんなことがあると思う。」
 俺は変わりにこう言葉を言っていた。多分、俺が今伝えたいことは、このことだと思ったから。
「うん」
「もしかしたら、明里を悲しませてしまうかも知れない」
「・・・うん」
「でも、俺は、俺は・・・」
 頑張れ、燈真!
「明里を一人にしないから、何があっても」
 確かに出会いは突然だった。しかもその出会い方も、今思えばどんなへたくそな漫画よりもむちゃくちゃで、ありえなかったと思う。でも、俺はそれでも、この出会いは偶然なんかじゃなく、必然だったと信じたい。
 なんでこんな感情になるのかなんてわからなかった。だけど、あのときから、俺は彼女の何かに、明里の何かに惹かれるものがあった。
 今は何かはわからなくても、これから先わかればいいと今は思う。だって、仕方ないじゃないか。俺はだって・・・
「どうして、そんなに・・・」
「だって明里が好きだから」
 いってしまっていた。
「でも私たち、まだ出会ったばかりじゃない。そんなにいうのはおかしいわ」
「おかしくないと思う。人が人を好きになるときなんて、本当に突然だと思うぞ」
「でも私、燈真に何か出来るわけじゃない」
「それは俺も一緒さ。でも、一緒にいるからこそ、何か出来るんじゃないか」
「・・・くす、う、うぅ・・・」
 彼女は泣き始めていた。普段ならここで何をすればいいんだろうとかそんなことを考えていたと思う。だけど、今の俺は考える前に動い

ていた。
―――ん・・・

 ジルコンのような涙を浮かべる彼女に、俺はそっとキスをした。
 町の光は静かに輝き続ける。やさしい月の輝き、心地よい潮風・・・
 俺はそっと目を開く。そこには少し幼く見える、ちいさなちいさな女の子が目を瞑りないている。あんなに年上だと思っていた俺も、今は自分と同い年なのだなぁと実感していた。いや、もしかしたら自分よりも小さいのかもしれない。だって自分の腕の中にいるこの女の子は、つつけば今にも壊れてしまいそうなくらい、消えてしまいそうなくらいの光なのだ。
 だから、俺はこの光が消えてしまわないようにしなければならない、そう思った。だって俺は、明里の彼氏なんだから。
「明里」
 口を離し、つぶやく。彼女はなんだか名残惜しいようなそうでないような複雑な表情を見せていた。
「俺が明里の光になるから」

―――ちりちりちり・・・
 携帯の受信音で目を覚ます。どうやら眠っていたらしい。
 携帯を見れば「燈真」と書かれてある。どうやらほんの少ししか寝ていなかったようだ。
 彼女はふと口に手を当てる。すると、少しからだがほてりと暖かくなる。紅潮しているのもなんとなくわかる。
(さて、燈真はなんて返してきたかな)
 携帯を開き、彼の言葉を見る

・・・彼女は今日を楽しんでいた。

 窓の外にはもう太陽はなく、月が太陽以上に輝いていた。そして、また、長い夜がやってくるのだ。明日、また自分が輝けるように。
 
 
第6話 終わり
第6話 約束

 ふと我に返ると、そこは見馴れ商店街だった。そして一番驚くのは、自分の後ろを歩いているその女性はあの時自分がほれ込んだあの人なのだ。
なぜ自分がこんな状況下にいるのだろうと思い出すことは、そんなに難しいことではなかった。そりゃそうだろう、自分で作り出した状況なのだからな。
(それにしても・・・)
 よくあんなことをしたなぁと今思えば驚くことばかりだ。電車直撃すれすれに飛び込む、彼女を抱きしめてみる、そしてなにより・・・
(俺と付き合ってみないか・・・だと)
 くさいことをいったものだ。後になって恥ずかしさがどっと出てくる。いや、その前から「お前寂しいんだろ」とかそうとうキザな野郎が言いそうなことを口走っていたような気がする。いや、気がするんじゃなく、いったんだな。
 いや、よく考えたらあの後も俺らしくない。なんせ駅員から逃げても来たんだ。つか俺ってこんな性格だっただろうか。
商店街を抜け、本来なら右の心臓破りを登って学校に登校するところを、今日は反対の左の下り坂を歩きだす。なぜなら、今俺は、いや、俺たちはあるところに向かっているからだ。
なぜ?と問われれば、彼女がなんでもここに今日引っ越してきたといことを聞いたからだ。小さいときからここにいる俺だから、当然お気に入りの場所というのもあるわけで・・・
てかそういうところを彼女が発見する前に教えたいと思うのは普通だろ?悪いか?
 とにかくそういうことで、俺たちはある場所に向かっていた。さて、向かうのはいいが、一体何をするべきかなを考えていた矢先・・・
「んんーーー」
 あれ、なにか唸っている声が聞こえたような気がするのだが・・・聞き間違いかとそう思ったのだが、
「んんーーー」
 どうやら違うらしい。
 俺は恐る恐る後ろを振り返れば、そこはあきらかーーーに「不機嫌なんです、あたしーーー」と顔に書いてあるような切れ気味の明里さんがいた。
 つか、何でそんなに不機嫌そうなんですかぁ・・・
 俺はもう一度前を向く。本来ならば見なかったことにする、とかそういうことをする俺なのだが・・・どうやら今回はそんなことは許されないらしい。
(どうしたものかな。)
 今回はまじめに考えてみることにする。さて、なにが原因か。
 「第一回明里がなぜこんなにも怒っているんだろうを考える会」が開かれてからわずかコンマ3秒で、俺はあることに気がついた。
(手・・・つばぎっぱなしではないかぁ)
 おう、と俺は大変なことをしてしまったように思う。あの時はとっさだったからなぁ、とそんなことはどうでもいい。つか、いくらカップルになったとは言っても、そうそうこんな早くから手をつなぐというのは彼女も不機嫌になるのは仕方がないことだなぁ、と少し反省する俺。そうだな、確かにそうだ。人間ならばやはり段階というものがある。
「ああ、何でいつまでも手、つないでるんだろうなぁ。」
 と軽い口調で言って手を離す。これでなんとかこの機嫌はなおってくれるだろうと思ったのだが・・・
「あ、くぅ、んんんーーーー」
 あれ?逆効果?しかもなんか俺のこと睨んでないか?
 俺はとりあえず考えるよりも聞くほうがいいのではないかと思い、
「あの・・・なぜ怒ってらっしゃるのですか?」
「怒ってない。」
「え、でも・・・」
「怒ってない」
「あ、そうっすかぁ・・・」
 あぁ聞かなければよかった。というか、なんで俺こんなにも気が弱くなってしまっているのだろうか。
 はぁ、ぜんぜんだめだな俺。
 そう自分を責めたて、とりあえず彼女のこの怒りのボルテージも、きっとあの場所に着けば落ち着くだろう、いや、落ち着かせて見せると勝手に決意しながら、俺はとりあえず前を向いて歩いた。
 何やってんだ、俺。


―――なんでこんなにも怒っているのだろうか?
 わからないというのがはじめに出てきた言葉だった。でも手を離された瞬間、なんとなく理由がわかった。意外と怒っている理由なんて、簡単なことであった。
(かまってほしいんだな、きっと)
 何も話しかけてくれないことに腹が立っていたのかもしれない。いや、もっといえば、一緒に横になって歩きたかったというのもある。
(そうなの?)
 自分で自問自答する。答えはYESだ。私はただ、燈真にかまってほしかっただけなのだ。というよりも、自分がそう願ったことに驚いた。だって今までそんな感情を持ったことなどなかったから。
 いや、それは違うだろう。本当はさびしくってかまってほしくって仕方がなかったのだ。だけど、傷つくのが怖いとか、どうせ離れ離れになるとかそういうことを言い訳にして逃げていただけなのかも知れない。
 いや、本当に驚いているのはこんなことでなかった。ほんの30分前におきたことだった。
(本当に・・・)
 言葉にはとても表せられなかった。あの一瞬の出来事が、今でも夢のようにしか思えなかった。でもあの時の感情というのはほとんど覚えていなかった。なぜ自殺なんて考えたのか、そして、なぜ彼と、燈真と付き合おうとは思ったのか。でも後悔なんてしてなどいなかった。燈真のあの一言で、自分の中で何かが打ち砕かれたのだ。
(本当に不思議な人。)
 彼のことを考えると、うれしくなる自分がいる。いらだってしまう自分がいる。なぜそうなるかなんて、自分ではわからないことだった。だが、これが人を好きになるということかもしれない、と思った。
 でも本当に不思議な出会いだった。でも、人との出会い、好きになってしまう瞬間なんてものは、実はこんなにも急なことではないかとしみじみ感じる。自分たちは、本当に急だった。
 でもいやな感じはしない。どんなに他人でも、なぜか一緒にいて落ちついてしまう自分、一緒にいたいと思える自分がそこにあるからだ。
 だから今は彼の後ろについていこうと思う。本当は話しかけてほしいのだが、それはちょっと無理なようだ。
(不器用な私たちね)
 本当にそうだなぁと彼女は思った。でも、これは仕方のないことなのかもしれなかった。誰だけ惹かれあっても、自分たちはまだ、40分足らずしか、同じ時間を歩んではいないのだ。春の訪れには、冬の寒さにこらえなければならない。だから自分たちも少しずつ、時間をかけて打ち解けていくしかないのではないかと思った。
 だから、今は何も考えないことにする。ただ、彼の見せたいものを楽しみに待つだけだ。
(さて、何を見せてくれるのかしら)
 ・・・胸が高鳴っていた。

第6話 下へ
〜プロローグ〜

(ふう・・・)
 椅子に腰掛け、何気に窓の外を眺めると、そこには海ならではの地平線に、真っ赤な夕日が今にも沈もうとスタンバイしていた。
(・・・真っ赤な夕日・・・かぁ。)
 よく考えたらこんなにも1日が過ぎることに充実感を覚えることは「あの時」以来だったかもしれないと彼女はふと考えた。しかし、こうして夕日を見て美しいとか、今日も終わるんだなぁということをしみじみと感じることが出来るのは、昨日のような、いや、今日の夜の一件があったかもしれない。今までの自分はこの燃えるような夕日を見て、自分は満たされないのに、夕日ばかりが今日をやり遂げ、明日に向けて休もうとしている感じにただただいらだっていただけだったのだ。
(これも燈真のおかげね。)
 今、彼女はとても満たされている。今までは明日を迎えることすらも意味がないことで、まして今日という一日があった理由でさえも理解が出来ないことだった。しかし、今は明日を迎えるころにわくわくしている自分がある。たった1日の出来事が、こんなにも人を変えてしまうことに、今までの時間は何だったのだろうと戸惑うこともある。だが、人との出会いというのは突然で、自分が変わることもまた突然であるということが本当だったことがわかっただけでもよいことだと今は考えている。

 それにしても、本当に突然だった。でも、あれがなかったら自分という存在はなかっただろう。というか、今思えば自分はものすごくおろかなことをしたと思う。
(結局血は流れている、ってことなのかな)
 ふとそう思った自分に首を横に振った。それはいいわけだ。
 とりあえず、今、自分は生きている。その事実に彼女はただ感謝していた。
―――チリチリチリ・・・
「・・・フフ、燈真からかしら」
 メールが来たらしい。今、自分を満たしてくれる本体だ。さて、なんて来たのだろうか。

 「・・・と」
 笑顔で返信する。きっと燈真はすぐに返信してくるだろう。
 無意識のうちにもう一度窓のほうを眺めてみる。夕日は、もう地平線のかなたに沈もうとしていた。こうして1日は終わっていくのかと思うと、なんだか切なくもなってくる。
 しかし、夜は夜で新しい1日の始まりではないかと思う。だって自分が変わったのは、昨日の夜なのだから。
「・・・そうね。あの夜からなんだなぁ」
 今も忘れるわけがない。昨日のことだからとかそういうことではない。本当に鮮明に刻まれているのだ。
 彼女はそっと目を瞑る。そこには、昨日のあの出来事が水に浸したあとのスポンジを絞りだすかのようにじわりとよみがえってくる。

―――気がついたら、彼女は昨日の時間へタイムスリップしていた。久しぶりの健やかな眠りだった。

第6話 本編に続く

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