『INDIGNEZ-VOUS! 怒れ! 憤れ!』ステファン・エセル、村井章子訳、日経BPマーケティング、2011 人はみな、それぞれ異なった行動原理をもっている。それが、政治的な行動であればなおさらのことだ。「原理」は理性である場合、感情である場合、もっと得体の知れない無意識的なものである場合、さまざまである。その人が所属する集団や文化、歴史に強く拘束されもする(というのはコミュニタリアンの人々も指摘している)。
翻って、いまの僕はどうだろうか? あなたは?
ステファン・エセルが93歳で著した本書に強く共感する者は、彼と行動原理をともにしていることになるだろう。いまの僕もそうだ。彼は1939年にエコール・ノルマル(国立高等師範学校)に入学するも、戦争に巻き込まれ、ドゴールのもとでレジスタンスの活動(自由フランス軍)に参加する。何度も投獄され、脱走し、戦後は外交官として世界人権宣言の起草(最年少で)にも参加している。
「レジスタンス運動を支えてきたのは、怒りだった。レジスタンス運動の活動家であり自由フランス軍の兵士だった私たちは、いま若い世代に呼びかける―レジルタンスの遺産を、レジスタンスの理想を、よみがえらせ、伝承せよ。若者たちよ、松明を受け取れ。憤れ。」 グローバルにひろがる経済格差、メディアの退廃、貧困、人権への抑圧、パレスチナ問題に、彼はいまでも静かに憤る。サルトルに影響を受け主体的に生きることを説き、ベンヤミンが悲観的に描いた歴史像(ベンヤミンはパウル・クレーの『新しい天使』に「進歩」の行く末をみた)を克服しようと試みる。そして、世界に絶望してはいけない、希望をもたなければいけないと言葉をつなぐ。
「創造は抵抗であり、抵抗は創造である。」 お爺さん、すごいな。僕はある昼どき、「かつや」でカツ丼を食べながらこの本を読み、感動にうち震えた。非暴力な抵抗の戦線は、これからも拡がりつづけるだろう。その日のカツは妙に美味であった。
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