司馬井 太郎

フィリピンと日本に関係する小説を書いております。現在、長編になりますが、フィリピン百感執筆中です。

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バランガイの語源はマレー語の船を意味するバラガイである。
その昔、海洋民族であった古代マレーシアンがそのバラガイに乗って漂着した所が今のバランガイと呼ばれる集落の原型となり、自然とそのバランガイでは同族達や親しい者達による原始共同社会が出来上がっていった。
時間の経過と共にバランガイは合併と交流を重ね、次第に大きな物に成長して行ったがその途上、スペインの統治が始まって以後スペイン風にバランガイはバリオと呼称を強制的に変更されたもののバランガイの呼称はそのまま残って、現代ではバリオは町並みがある所、バランガイは該当地域全体を指す様にざくっと区別されて使われている。
又バランガイは行政の最小単位でもあるのだ。
このバランガイの成立の歴史とそこから生まれ今でも残る共同体意識と高位者への依存意識が、現代でもフィリピン社会を動かす根幹の一つとなっている。
従って、仮にあるバランガイから出世した者が出たとすると、その出世した者が一族や親しい者の面倒を見るのは当然であり、又面倒を見られた者は出世頭に帰属する事になるのである。
こうした人間関係とそれによって出来上がった社会関係を維持する為に、「ウータン・ナ・ローブ」と言う言葉と社会規範が出来た。
つまりは、「義理と恩」である。
時代の変遷と共にそのウータン・ナ・ローブは次第に死語となりつつあるが、それでも社会関係維持の為に又一族内での位置確認の為に、あらゆる機会を捉えたパーティーやリユニオンと云う方法によって、不要と思われる程の行事が頻繁に行われている。
そこでは相互に贈り物がされるが、時には貢ぎ物として出世頭や面倒見の良い人に上納がなされ敬意が示されるのである。
それに別の伝統である年長者への訪問や各種の記念日への招待が加わったりすると、一年中何かしらの不可避支出に人々は振り回される事になるのだが、それに出席しなければ自身の社会的アイデンテイティーは失われて村八分になってしまうから事は厄介なのだ。
私の知人に言わせれば、こうしたケースに費やされる不可避的支出はエンゲル係数を遙かに上回ってしまう事もあるそうである。
簡単に言えば、食べなくても一族や帰属社会との付き合いをするのか、付き合いを止めて食べる事を選ぶのかの選択を、庶民は常に伝統と慣習によって迫られているのだ。
私の知るルソン島太平洋岸やタルラック、ウルダネタ等北部の田舎町の人々やルソン島の離島の人々の平均所得は、月計算で3000ペソから4000ペソ程度である。
それは私が日常的に交流している現地NGOのC財団の資料によっても明らかであるが、それは円に換算すればたった6000円から8000円くらいにしかならない月収なのだ。
日に換算すれば、一日当たり200円から270円程度の支出しか出来ないのである。
又他の大きな島、例えばミンダナオ島やパナイ島、ボホール島又太平洋沿岸等の農業や漁業従事者の所得は流通費用や仲買などによる中間搾取や借金の金利などが加わって更に低くなる。
総人口の40%を占める彼等第一次産業従事者はその低い所得をやりくりして、これらの不可避的な支出に耐えているのだろう。
 
続く・・・

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