司馬井 太郎

フィリピンと日本に関係する小説を書いております。現在、長編になりますが、フィリピン百感執筆中です。

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「高橋君、今日はごめん。明日も明後日も多分明々後日も大丈夫だから久しぶりにプエルト・ガレラに行かないか」と梶原君が電話して来た。
「ああ、良いねえ。そうしようよ。私の分の釣竿もあるのかな」と聞くと、
「売るほどあるから心配するなって、でも今回はクルージングで無くてショアーからルアーを試すって云うのはどうかな」と云う。
「ルアーか、私は余り岸釣りやルアーが好きじゃないよ、出来ればクルージングの餌釣りが良いけど」と不満を言うと、
「じゃあ、客の意見を尊重するか。明日、いや違った今晩6時に君を迎えに行って飯を喰い、{雅}で一杯やる。その後、ハイウェイでバタンガス港に直行して朝一番にフェリー乗船と云うのはどうかね、OK?、OKだね」と云って一方的に電話を切ってしまった。
「OK、OK」と私は一人事を言いながら、ベージュの綿パン2本と短パン2枚、Tシャツを6枚に大小のタオルと鍔広のキャップを用意して持参のナップザックに入れた。
後は小金があれば何とかなる。
梶原君はクルージングと大げさに云ったが、それは現地の中型のバンカをリザーブしてする単なる掛かり釣りなのだ。
バンカの船頭は梶原君とは長い付き合いの、とても親切な50代半ばの漁師である事を私は覚えていた。
私は、現役時代は仕事の関係で多くの人と良くマニラゴルフを主なグラウンドとして接待ゴルフに行っていたが、引退した今はもうゴルフをしようとは決して思わなかった。
それよりも、気のおけない仲間と潮風に吹かれて日がな一日、バンカで揺られているのが、どれ程心地良いものか。
又釣りの準備をすると云う事は、実はそれ自体が目当ての魚種の大きさや漁獲量や未知の魚との出会いを想像しながらするものであり、鬱陶しい社会から隔絶された世界の中で解放される心地を予感させてくれて、大変楽しいものである。
特に仕掛けを準備する作業は、その作業に没入出来てもうそこからが既に釣りの楽しみなのであるが、ここフィリピンではその楽しみは梶原君の独占作業になっていた。

3章-2へ続く


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