徒然草
苦悩 ショパン ノクターン 第二番 変ホ長調
サリナスで農場を経営しているアダムとキャルとアロンの家族。
広大な畑で、メキシコ人の労働者を雇い、野菜を作り平穏な暮らしを続けていた。
少なくともアメリカが欧州で勃発した、戦争に参戦するまでは。
参戦当初、戦意高揚ムードだったサリナスのみならずアメリカ全土の人心には次第に厭戦の意識が芽生えつつあった。
血気盛んで、将来への夢と希望に満ちた前途有為な若者が、一片の召集令状で戦地に駆り出されて行く。
そのなかには、時折、星条旗に包まれて、無言の帰郷を果たす者も少なくなかった。
それを迎える家族、両親、妻、恋人の悲嘆はいかばかりだろうか・・・・・・・。
常に、人間は、己の犯した、罪を、贖罪し、懺悔すべきを説いたバイブルを傍らに置き、信仰心篤い、アダムにはそんな光景を見るのは、痛恨の極みであった。
なぜ、一時期、モンロー主義を掲げたアメリカが、大義なき不毛な戦争に加担しなければならないのだろうか・・・・。
アダムは、ウィルソン大統領が参戦の是非を議会に諮り、結果的に若者に不幸な運命を強いた真意を測りかねていた。
また、自分が徴兵委員になったことで、尊い若者が死んでいく・・・・・・。
アダムは自責と反省の念にさいなまされ、苦悶の日々を送らざるを得なかった。
1914年勃発した大戦は、普仏戦争以来ヨーロッパでは約40年ぶりの大規模戦争。
当初、参戦した若者たちは戦争の興奮で想像力を掻き立てられ「この戦争は短期決戦で終わるだろう」。「クリスマスまでには家族や恋人と会えるだろう」。と楽観視していた。
フランスの若者たちは、国歌「ラ・マルセィーズ」を高らかに歌い高揚感に包まれて戦場へ向かった。
しかし、現実に第一次世界大戦 は泥沼化し、戦争終結まで四年を要し、実に500万人の尊い命が戦場の露と消えたのである。
何故、人類はこうも争いを好むのだろうか・・・・・・。
苦悩の表情を浮かべたアダムの脳裏にはそんな疑問が支配していた。
ケイトは今、どんな日々を過ごしているだろうか・・・。元気だろうか・・・・。
およそ30年前に別れた妻に想いを巡らせていた。
フランス共和国 国歌 ラ・マルセィーズ
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