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1979年公開のSFホラー「エイリアン」のプリクエル(前日譚)を描くシリーズ2作目で、シリーズ通算6作目。
プリクエル第1作「プロメテウス」は、「エイリアン」以来実に33年ぶりにシリーズの生みの親であるリドリー・スコットが監督に復帰した意欲作だったが、人類の起源を解き明かすべく始まったその物語は、数々の謎を残したまま不明瞭な形で幕を閉じた。
冒頭、「プロメテウス」で最後に生き残ったアンドロイドであるデヴィッドと彼の創造者でありウェイランド社社長のピーター・ウェイランドの地球を出発する前の姿が描かれる。
この僅か数分のデヴィッドとウェイランドの会話のやり取りは、「プロメテウス」と言う作品における解釈を根本から覆してしまった。
プロメテウス号におけるデヴィッドの暗躍は全て創造主であるウェイランドによる指示かに思われていたが、本作を観るとそれが何を隠そうデヴィッド自身の意思であったと推察出来る。
さらに言えばウェイランドがエンジニアによって殺されるよう仕組んだ可能性さえある(デヴィッド自身では創造主であるウェイランドは殺せないようプログラムが組んであった可能性も)。
「プロメテウス」、そして本作における物語の全ての始まりは、アンドロイドであるデヴィッドが生みの親であるウェイランドによって完全否定された"創造"と言う名のアイデンティティを求めたことにある。
アンドロイドらしからぬアイデンティティを持ってしまったデヴィッドは先に描かれた「プロメテウス」ではもちろん、本作でも大きな悲劇をもたらす。
そしてデヴィッドのアイデンティティは、不条理たる存在であったエイリアンに条理的な理由付けをすることになる。
ありとあらゆる事象をプログラムされているデヴィッドだが、何かを新しく創造することは出来ない。
そんな彼が辿り着いたのがエイリアンと言う種の創造である。
デヴィッドの陰謀に巻き込まれたプロメテウス号、コヴェナント号の乗組員からすれば堪ったものではないが、デヴィッドからすれば我が子を育もうとしているに過ぎない。
そうして生まれた本作のエイリアンはシリーズ屈指の美しさを誇る。
コヴェナント号の乗組員が主に夫婦で構成されているのもデヴィッドの種としての孤独を強調するためのものであろう。
さて、物語は冒頭の「プロメテウス」の概念を覆した会話を経て、入植者が新たな星を目指し、その途中で未知の惑星へと着陸すると言うお馴染みの展開になるのだが、すでに見慣れた展開とは言え、その恐怖と興奮が無くなることは決してない。
むしろ本作における恐怖演出はシリーズにおいても随一なのではないだろうか。
エイリアンとのファーストコンタクトにおける一連のシークエンスはまさにホラー映画そのものである。
手持ちカメラによる臨場感のある映像もそれを強調している。
前作「プロメテウス」ではお預けを喰らったゼノモーフ(成体のエイリアン)や新種のネオモーフと呼ばれる個体も登場するなどシリーズのファンが楽しめる要素がきちんと盛り込まれている。
恐怖と共に描かれるのは、王道の助っ人展開や作業船上でのバトルなどの興奮である。
恐怖と興奮、共に前作の「プロメテウス」を遥かに凌駕しており、「プロメテウス」における鬱憤を弾き飛ばすには十分すぎるほどの傑作に仕上がっている。
主演のマイケル・ファスベンダーは「プロメテウス」に続き、本作でも圧倒的な存在感を誇っている。
プロメテウス号の生き残りであるデヴィッドとコヴェナント号の乗組員であり改良版であるウォルターの一人二役を見事に演じ分けている。
創造主としてのアイデンティティを求めるデヴィッドと仕える者として本来のアンドロイドの使命を果たそうとするウォルターの対比は本作の肝であり、ファスベンダーはそれを完璧に表現している。
デヴィッドが現れた瞬間と作業船の上で風に吹かれ一瞬ウォルターがデヴィッドに見える瞬間をリンクさせた演出も素晴らしい。
これによりラストの描写がデヴィッドなのかウォルターなのか?、の二択に加えて、あれはウォルターだが、仕える者なのか遣わす者なのか?の二択が生まれるのである。
リドリー・スコットは本作においてアイデンティティの意義をどこまでも浮き彫りにしてきている。
ラストカットの答えが出るのは次回作か、はたまた永遠の謎となるのだろうか。
評価 85点
2017年9月28日 劇場鑑賞
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リドリーが原点回帰の「エイリアン」
どんなSFホラーにするのかと。
思った以上に「プロメテウス」の続編でしたね。
まだ続く「エイリアン」前日譚は結局デヴィット物語なのかな?
それともデヴィットがドバアアア!てなっちゃうのか?
それもまた楽しみです(笑)
TBヨロシクです。
2017/9/29(金) 午後 3:31
どらごんづさん♪
お返事が半月も遅れて非常に申し訳ないです。すみません。
僕も「プロメテウス」はもう放置して、「エイリアン」に寄せていくものかと思ってましたが、完全に続編的な立ち位置の作品でしたね。
リドリーは続編はAIの物語にするとか言ってるようなので、さらに「エイリアン」から離れた作品になるような(笑)
デヴィッドがどうなるか楽しみですね。
TBありがとうございます!!
2017/10/15(日) 午前 10:58