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教師と彼に恋をした女子高生の数年間の物語を描くラブストーリー。
今年6月に公開され思わぬサプライズヒットとなった「昼顔」。
芸能人の不倫に対するネット上のバッシングが鳴りやむ気配は一向にないが、その一方で「昼顔」のような映画がヒットするのは、潜在的に不倫を求めている人々が多いことを暗に示しているのかもしれない。
本作は予告の段階では明らかに「昼顔」を彷彿とさせており、不倫映画の勢いを加速させるものだと思っていたが、実際に作品を観てみると、「昼顔」とは似ても似つかない作品であり、決して不倫をテーマにした作品ではないことが分かる。
純粋な愛、幼稚な愛、狂った愛と言った様々な愛の形、そして喪失と再生が描かれている。
物語は時系列を崩して構成されており、ヒロイン工藤泉の社会人時代、大学時代、高校時代を交錯させて描いている。
それぞれの時代を断片的に描き進めることで、徐々に物語の全体像が明らかになってくる構成である。
主な登場人物は松本潤演じる高校教師の葉山、有村架純演じる工藤、坂口健太郎演じる小野の3人で、この3人の関係は「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」をもじって、母性本能くすぐるボーイと出会う男すべてに狂わされるガールであり、坂口健太郎はまさに新井浩文と呼応している。
葉山には複雑な事情があるとは言え結婚相手がいて、本来であれば工藤とあれだけの密な関係を築くべきではない。
しかしこの男、肝心なところでは自分の気持ちも工藤の気持ちもはぐらかしており、まさにナチュラルボーンたらしである(笑)
面白いのはそれを意図してやっているのか、あるいは無意識でやっているのかが分からない点であり、そんなミステリアスで影のある葉山を松潤が上手く演じている。
葉山は非常に含みのあるキャラクターで、自分からすれば態度の煮え切らない面倒な奴としか思えないが(笑)、間違いなく母性本能をくすぐるタイプの男である。
そんな葉山に救われ、そして翻弄される工藤を有村架純が好演しており、台詞回しにはいくつか怪しいところがあったが、表情での演技は実に素晴らしい。
好きな相手とならどこまでも堕ちていきそうなM属性の役柄は普段の有村架純のイメージとは違うが、それが逆に新鮮さにも繋がっていて、キャラクターに合ったキャスティングだったのではないだろうか。
ただし「昼顔」の上戸彩が見るからにエロティシズムを感じさせる演技もといルックスだったのに対し、有村架純はキュートであるのは間違いないが、エロティシズムとは対極の位置にいるような存在であったのは残念なところではある。
そういう意味では終始淫靡な雰囲気を纏った松潤の方が遥かにエロかった(笑)
葉山の幼稚な愛、工藤の純粋な愛、そして狂った愛の持ち主は坂口健太郎演じる小野である。
本作で最も印象的なキャラクターはこの小野であるのは間違いない。
あの爽やか笑顔からの中盤以降の豹変っぷりには多くの観客が驚かされたことであろう。
そして小野は本作において象徴的な名字や敬称での呼び合い(人間関係における距離のメタファー)をぶち壊してくるキャラでもある。
明らかに小野と言うキャラクターは異質な存在であるが、非常に静的で詩的な本作において、物語を動かす貴重な役割を担っており、それを見事に演じてみせた坂口健太郎を称賛したい。
時間軸を交錯させた脚本、これでもかと静寂を強調してくる葉山と工藤のツーショットシーンをはじめとした映像の切り取り方はさすが行定勲監督であり、丁寧に描かれた物語には非常に好感が持てる。
ある意味で純粋なラブストーリーであるが、かと思えば「昼顔」の戦慄ドライブを彷彿とさせるシーンやサスペンスチックな演出が差し込まれていて、ヒリヒリとした雰囲気を味わうことも出来る。
喪失と再生がテーマになっていて、それは懐中時計をメタファーにして移り渡っていく。
登場人物が演劇部所属と言う事で、古典映画が何本か登場するが、それらから引用している展開や演出があるのは間違いなく(残念ながら自分は未見のため引用内容が分からない)、そういった角度から作品の解釈をしていくのも面白いかもしれない。
決して不倫映画と言う話題に乗った作品ではなく、きちんと地に足の着いた秀作である。
評価 80点
2017年10月13日 劇場鑑賞
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