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金庫から大金を盗み出して一攫千金を狙うローガン一家の奮闘を描く人間ドラマ。
2013年公開の「サイド・エフェクト」を最後に映画界から退き、TV界に活躍の場を移していたスティーヴン・ソダーバーグの監督復帰作。
すでに多くの才能あるクリエイターが映画界を離れ、自由な作風を求めTV界へと進出しているが、当然ながらソダーバーグもその内の1人である。
そのソダーバーグが脚本に惚れ込み、4年ぶりに映画界復帰を決断した本作が、自身の代表作である「オーシャンズ」シリーズを彷彿とさせるのは実に面白い。
彷彿とさせるどころか、本作は紛れもなく「オーシャンズ」シリーズのセルフリメイクに他ならない。
しかしながら、犯罪者とは言え華やかな世界で生きていた「オーシャンズ」シリーズの面々とは違い、本作が描きだすのは怪我で輝かしい将来を失った者、戦争で痛手を負った者と言った華やかな世界とは無縁のブルーカラーの人々である。
本作の舞台はメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)に行われるモーターレース、コカ・コーラ600なのだが、富裕層がそのレースに多くの金を落としていく一方で、本作で描かれる人々はその金を強奪して生きていくしかない様が描かれている。
メモリアルデーと言う舞台を選んでいることから考えても、ソダーバーグが本作の中に戦争の光と影を描いているのは間違いないのではないだろうか。
それが「オーシャンズ」シリーズのリメイクとも言える作品をわざわざ映画界に復帰してまでソダーバーグが監督した理由なのかもしれない。
もっとも、「オーシャンズ」シリーズを3作も監督していることから考えれば、単純にこういったクライムコメディが好きなだけなのかもしれないが(笑)
さて、それでは本作が「オーシャンズ」シリーズのようなエンターテインメント性に欠けるのかと言えば、無論そんなことはない。
豪華キャストが個性溢れるキャラクターを実に魅力的に演じており、そこにソダーバーグのケレン味たっぷりの演出が加わり、一級品のエンターテインメントとして仕上がっている。
やはりこういったチームによるクライムコメディでは登場キャラクターが魅力的なことが非常に重要である。
武骨な兄を演じたチャニング・テイタムはまさに適役であるし、カイロ・レンことアダム・ドライバーが演じた珍妙な雰囲気を纏った弟の存在は実に愉快だ。
さらに金庫破りのジョーを演じたダニエル・クレイグはどこからどう見てもジェームズ・ボンドの面影のない完璧な役作りをしており、これまでのクールなダニエル像を良い意味で壊している。
この三者は存在自体がすでにコメディあり、改めてソダーバーグのキャスティングの上手さを証明したと言える。
他にもそこかしこに豪華キャストを散りばめてあるが、その中でもライリー・キーオの存在感は素晴らしい。
ライリー・キーオに由来する「マッドマックス 怒りのデス・ロード」ネタは笑ってしまった。
ストーリーに話を移すと、序盤の人物紹介に明らかに時間を割きすぎてテンポが悪いのは残念ではあるが、その後の強奪シークエンスはソダーバーグの腕の見せ所である。
それまでの登場人物が一斉に入り乱れて、テンポ良く鮮やかに進んでいく強奪シークエンスは観ていて非常に楽しい。
その後の後日譚もオチまで含めしっかりと構成されていて、ソダーバーグが稀代の映像作家であることを再認識させられた。
劇中音楽と物語の相性も抜群。
テーマ性まで含め一級の娯楽作品であり、多くの観客を魅了する快作であった。
評価 80点
2017年11月21日 劇場鑑賞
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