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いよいよスタートだ。数え切れない人がスタート地点、というかスタート地点の近くにいる。
参加者が多すぎてスタートが見えない。ブラスバンドの音楽が終わるとカウントダウンが始まった。
自分の腕時計を見ながらスタートを待つ僕。
遠くで号砲が聞こえた。そろそろっとすぐに走るわけでもなく、最初の出だしは前が詰まって
歩くだけだった。しかし、少しずつ前が空いてきたころ地面にタイムチェックのセンサーのついた
帯が見えた。ここがスタートだ!
自分でタイムを確認しながら走り始めた。周りのペースは気にしない。ただ自分のペースで完走を
目指すのみだ。
スタートから300メートルほど、念入りにアップをしていたせいか妙に体が軽く、なんだか10キロ
なんて簡単に走れるのではないかという幻想を抱いてしまった。しかし、1キロ手前くらいだろうか、
当初の楽観がすぐに悲観に変わった。あれ?ふくらはぎがつりそうだ。土踏まずが伸びて張る感じだ。
ちょっとウォーミングアップがんばりすぎたかな?普段あまりトレーニングしていないのに・・・。
まだぜんぜん走っていないのにこんなことで未知の10キロ走りきれるのかなー?
とにかく自分が走れるペースを守れ!そう言い聞かせて我慢の走りに徹した。するとつりそうな気配の
あったふくらはぎは体温まるにつれておさまってきた。今日は風は強いが天気はよく、日なたに出れば
体はあったまったし、とても走るのに気持ちが良かった。
ペースを守るためにずるずる順位を落としてIHIの工場の特設コースの折り返し地点を過ぎた。
どれだけ自分より後ろのランナーがいるのだろう、と思ったがほとんどいない。限り無くびりに近い。
10キロマラソンn時間制限は70分なので、どんなに遅くてもこれに間に合うように走らなくては、
完走することはできない。僕は時間を確認し、考えた末に今のペースを守ることにした。今のペースなら
ぎりぎり70分はクリアできそうだ。
折り返して再びスタート地点に戻ってきた時、妻と子が沿道で声を掛けてくれた。これは何より元気が出
る。しかしこの辺が半分くらいかなと思っていたら、全然違っていた。
スタート地点を過ぎてちょっと行ったところで、あれ?ここで5キロの標識が!えっ、ここからまだ
5キロあるの?無理かもなー、と思ったが、ふと周りを見るとみんな苦しそうだ。それにジャージの
ズボンを腰ではいているギャルっぽい女の子も走っている。こんな若いのには負けられない!
よしもういけるところまで行くぞ、と開き直ってペースを維持して続けた。
今度は左手に優雅なヨットハーバーを眺め、少し行くと東京ガスの給水センターが見えてきた。
給水ポイントでは一口二口軽く水を飲んで潤すと後は捨てた。そんなに脱水していない感じだった。
足の筋肉がそろそろきついなというとこでようやく2回目にして最後の折り返し。ここからは来た道
を返すだけなので、もう距離感覚もわかっている。何とか走れそうだという気になった。
今走っている僕は大変だけど、健康だから走れるその幸せを感じた。子どもの手術はがんばれと
いっても、我慢するしかなく、積極的な喜びは何も無いのだ。それを思うとへこたれて居られない。
妻も子もゴールで待っていてくれているはずだ。そう思うとなぜかあと2キロぐらいのところで、
ペースアップができた。やればできるじゃないか、と思った。
ゴール目前、妻と子が道路わきで大きな声援を掛けてくれた。あともう少しだ、お父さんがんばるぞ!
と最後の力を振り絞った。そして安堵と喜びのゴール!!!!掲示板のタイムでは1時間3分過ぎで
あったが、最初のロスがある分もしかすると1時間を切れていたかも知れない。お楽しみは後日送られて
くる公式タイムを楽しみにしていよう。
何だかんだで完走することができたが、ひとつのことを為し遂げたという達成感を感じることができた。
妻も喜んでくれたし、何よりだ。あとは僕の願かけがかなうことを心から祈るばかりだ。
息子よ、次はお前の番だよ。今度はお父さんが応援するからな!
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