核汚染防御を実施する核汚染対策の手引き
核防御は直接の核攻撃を受けた場合を除いては、放射件物質に対する防御が中心となります。そして放射性物質に対する防御は「強度汚染地域からの避難」・「除染」・「生活空間のシェルター化」・「予防治療」・「避難後・シェルター後の生活」の四つに分かれます。
核汚染源からどのくらい範囲まで避難する必要があるかは、核汚染源の規模によって異なります。チェルノブイリ規模の核汚染源では、半径40キロメートル以内と、風下100キロメートルに広がる扇状の地域は強度の汚染地域です。汚染規模を汚染発覚初期から正確に把握する事は不可能です。したがって核汚染源が確認された段階で、半径40キロメートル・風100キロメートルの範囲は、避難の準備を開始します。そして、避難行動と平行して、汚染規模の情報を収集します。 「強度核汚染地域からの避難」を決定した時点で、速やかな避難を開始します。風下の地域の判断は、風下のデータがない場合は汚染源から東側約30度の扇状とします。これは夏は若干弱まりますが、日本の上空は偏西風(西から東に吹く風)が常に吹いているからです。 しかし、これはあくまでも原則です。この上空の偏西風とは別に、時と場所によって風向きの異なった地上風が吹いている事が多くあります。例えば福島第一・第二原発などは、真には「やませ」と呼ばれる北東の風の多く吹く地域にあります。また海と陸との温度差によって生じる海陸風は、日本の平野部のほとんどで見られます。 したがって自分の居住地域から、最低100キロメートル以内の核施設や戦術目標(軍施設など)・戦略目標(首都など)の位置を確認します。そして核汚染源予想位置と自分の居住地域の地理的・気象的条件に応じた避難計画を作成します。 a.ヨウ素剤の必要件 呼吸や飲食で取り込まれた放射性物質によって、体内から被爆することを「内部被爆」と言います。原発事故により汚染された地域では、放射性同位元素の「ヨウ素131」による内部被爆の対策が重要です。体内に取り込まれた「ヨウ素131」は血液を循環し約80%が1〜2日で尿中で排泄され、約20%が甲状腺ホルモンの原料としてのどの甲状腺に取り込まれます。 この取り込みは日常の食事に含まれているヨウ素の量に大きく影響されます。平均的日本人の食事で甲状腺に取り込まれるヨウ素は15%くらいになります。ヨウ素を大量に含んだ食事(コンブなどの海藻を多量にとる)では数%になる場合もあります。この取り込率は年齢も大きく影響し、乳児期で約40%で小学生くらいから大人と同じ程度になります。 b.ヨウ素剤の使用 ヨウ素剤は効果を高めるために、事故発生後できるだけ早く使用します。ヨウ素剤とはヨウ化カリウム50mgを1錠中に含んでいる錠剤です。具体的使用方法は以下のようになります。 乳児は初回1錠をすり潰し、ミルクなどに混ぜて飲ませます。牛乳は牧草の汚染が牛の体内でさらに濃縮されており、母乳も母親の汚染を反映します。したがって授乳は缶入り粉ミルクに切り替えます。 1歳以上は初回2錠を水と共に使用します。その後24時間ごとに2錠使用します。使用期間は4〜7日間を目安とします。 副作用は非常に稀ですが、発熱・かゆみ・発疹などの副作用がでた場合は使用を中止します。ヨウ素剤が入手できない場合は、ヨウ化カリウムを正確に計量して、1日1gを越えない量を使用します。ヨウ化カリウムは大きな薬局などで手に入ります。 c.注意 大事な事は、ヨウ素剤は甲状腺にヨウ素131が取り込まれるのを抑えますが、甲状腺に取り込まれたヨウ素を131を排泄するにはヨウ素剤だけでは効果が無いということです。 a.朝鮮人参の服用 朝鮮人参を放射線に被爆する数日前から服用すると、放射線障害を強く押さえる効果があります。1日の用量はO.5〜3.Ogで、用法は粉末で頓服するか煎じて使用します。 エキス製剤を使用してもかまいません。 b.グルタミンの服用 アミノ酸の1種であるグルタミンを服用すると、腸の放射線障害をほぼ完璧に抑える事が出来ます。1日の用量は1.5〜4.0gです。用法は1日数回に分けて、水に溶かし1時間以内に服用します。 c.体内に取り込まれたセシウム137の除去 セシウム137は体内に取り込まれた後も、体内で循環します。そのため胃で吸着剤と結合させ体外に除去する事が可能です。 使用される吸着剤は、フェロシアン化鉄で一般にはPB(プルシアンブルー)として知られています。 使用法は1g/1回で、3回/1日。水と共に服用し、3週間以上継続します。高度内部被爆者には10g/1日を8〜10日間投与し、小児には3gを3日間投与した例もあります。副作用は特にありませんが、大量投与で便秘がみられます。 a.除染の重要性 放射性物質に汚染された身体から、汚染物質を取り除くことを「除染」と言います。放射性物質が身体や持ち物に付着している間、被爆は続きます。したがって除染はできるだけ早く行う必要があります。また除染前に雨に濡れるなどすると付着した放射性物質が溶解し、内部に沈着するので除染できなくなります。汚染されていない水でも濡れないよう注意します。具体的なやり方は以下のようになります。 b.衣服・所持品の除染 汚染地域で着ていた衣服を取り替えます。上着や靴・靴下などは、降下してくるチリや歩く時に舞い上げたチリに強く汚染されます。必ず取り替え廃棄します。基本的に汚染地域で着ていた衣服・持ち物はできる限り廃棄します。廃棄できないものは、少なくとも「ヨウ素131」の半減期間の4倍以上(8日×4=32日)は、隔離保管して使用しないようにします。 c.体表の除染 頭髪や皮膚の露出している部分は大量のぬるま湯で流水洗浄します。シャンプーや2〜3%の中性洗剤を使いスポンジで軽く流し洗いを繰り返します。各部位を3分くらいは洗浄します。外傷があれば3%過酸化水素水(商品名オキシドール)で洗浄します。除染前に漏らした髪の毛などは除染しきれないので、剃髪して出来るだけ除去します。 d.体内腔の除染 鼻腔洗浄(ネーティ)・胃洗浄(ガージャカラニー)・腸管洗浄(サンカプラクサーラクリヤ)なども必要に応じておこないます。 避難できない状況や、避難までする必要があるかどうか判断しかねる場合は、できる限りシェルター化した空間で過します。そしてシェルター外では標準防護服セットのような防塵装備を着装しできるだけ被爆を防ぎます。 この生活空間のシェルター化は標準で2〜4週間行います。これはこの2〜4週間で半減期の短い放射性物質がある程度減少するからです。そしてその後は、半減期が数十年と長い放射性物質の対策が中心となるため、シェルターが実用的でなくなるからです。 生活空間のシェルター化の実施項目は以下のようになります。 0.2〜4週間分の水と食料は常に用意しておきます。 a.扉や窓を閉めます。閉めた窓は布ガムテープなどで目張りやコーキングガンでパテ埋めをします。出入り口の扉も上下の隙間から外気が流入しない様に、出来るだけ狭くします。核攻撃や放射能雲が直撃するようなコースに位置する場合は、鉄筋コンクリートの住居でなければ十分な気密性がありません。 b.エアコン・換気扇・郵便受け・換気口などの外気流入口を塞ぎます。そして目張りやパテ埋めなどをします。換気の必要が生じるので火は使いません。建物内の密閉度が高くなると、温度変化などにより外気との気圧差が生じ、わずかな隙間から外気を吸い込みます。したがって外気から微粒子を除けるフィルター(ヘパフィルターなど)を換気口に取付けることがベストです。 c.ありとあらゆる容器に飲用水を貯めます。ただし放射能雲が到達している可能性がある場合は水道水も汚染されていると考えます。したがって汚染源から近く、情報の入手が遅かった場合は備蓄していた水だけで過すか、ある程度の被爆覚悟でミネラルウォーターなどを買い出しに行くことになります。標準核防護服セットはこのような場合に必須となります。 d.家の中でも、窓や入り口から最も遠い部屋をシェルタールームとして、そこを中心に生活します。出入り口はシェルタールームから一番遠い所以外は、窓と同様に塞ぎ、出入り口は1ケ所にします。 e.空気清浄機を何台か買っておき、シェルターとした部局と玄関までの部屋に空気清浄機を置きます。 f.室内でも防塵マスクなどを着用し、できるだけ空気中の塵を吸い込まないようにします。 a.出来るだけ外に出ないようにし、雨や風のある日は外出しないことを守ります。特に強度核汚染地域の風下になるような気象条件では、外出を避け決して雨に当たらないようにします。またマスク・帽子・手袋は必ず着用します。そして数回の着用の後は廃棄することを勧めます。 b.飲水や調理用の水は、水道水を出来るだけ使わないようにします。使う場合はRO浄水器やシーガルフォー浄水器を通したものを使います。可能であれば、飲水は核汚染前製造の備蓄水・ミネラルウォーター・各種飲料などにします。 c.食品を購入する時は日付や賞味期限を確認し、核汚染前の製造のものを選びます。また生産地も、強度核汚染地域から遠い産地のものを選びます。 |
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