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プレイバック08年⇔ラドミル・エリシュカの札響「首席客演指揮者」就任記念公演、第508回定期演奏会(キタラで11、12日)は、圧倒的な名演奏が聴衆を魅了し記憶に残る2日間となった。
1931年生まれのチェコの指揮者。ロシアや東欧諸国が「鉄のカーテン」の向こう側だった頃は「知られざる巨匠」が突然西側に現れることがあった。しかし「21世紀になってからはもうないだろう」と思っていたところに、登場したのがエリシュカである。2006年12月に札響定期演奏会を指揮、その名演が大評判となりいち早く実力を認めた札響は、首席客演指揮者としてエリシュカを迎えることになった。 一曲目からヤナーチェクの狂詩曲「タラス・ブーリバ」という意欲的な選曲。さすがに難曲だけあって初日は硬さがあったが、二日目は完璧に仕上げたあたりは、札響との相性が抜群であることがうかがえる。 ソリストに伊藤恵を迎えてのモーツァルトのピアノ協奏曲第24番では、積極的な伊藤のソロに流れをまかせているようで、要所はピシリと手綱を締める。サバリッシュなど巨匠との共演経験が豊富な伊藤も面目躍如、こちらも指揮者に逆らわずに、随所に「短調のモーツァルト」特有の暗い音色を響かせ、強烈な存在感をアピールした。 そして圧巻は後半のドボルザーク・交響曲第6番。音楽の若々しさは年齢を感じさせず、テンポや音量の変化を巧みな指揮で表現する。メロディーの歌わせ方は息が長いが、それでいて弛緩する部分は全く無いのが特徴で、小気味良くフレーズを刻んでいく。弦楽器を中心とする音色の重なりにも、隅々にまで神経が行き届いている。 それら全てがドボルザークの作品を生かすことにのみ奉仕し、聴き手は「なんて美しい音楽だろう」と思わずにはいられないのだ。これ以上、何を求めることがあろうか。
練習も見たが団員への要求レベルはかなり高く、各奏者のパート譜に直接指示を書き込むことも。それだけに本番で期待に見事に応えた札響には、エリシュカも心底感動したようであった。終演後には指揮台から離れ各奏者のもとに歩み寄り、健闘を称えていた。 ※当コラムは新聞掲載記事をもとに、筆者自身がリライトしております。オリジナルの著作権は写真(筆者撮影)も含め毎日新聞社にあります。無断転載は固くお断りします。
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