明日の日記

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上海雑想録

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〈写真〉上海大廈(左)とガーデンブリッジ(右)
    この上海大廈の上層階からの眺めが実にすばらしい。(一度宿泊したことがある。)
    浦江飯店はこの橋のたもとにある。

上海の安宿といえば、一昔前は浦江飯店のドミトリーと定番で決まっていた。

僕もご多分に漏れず、第一回目、二回目の中国の旅(89’、94’)ではこの浦江飯店のドミトリーの

お世話になった。89年に泊まった時の値段は一泊朝食付きで20元だったのを記憶している。

(89年のレートだと、約760円) このホテル、実にクラシックなつくりで高い天井にファン、広い廊下

と踊り場、シャンデリアと安宿の割になんて優雅なつくりなんだろう・・・とその当時感心したが、それも

そのはず、かつてのこの浦江飯店は「リチャーズホテル」と呼ばれ、中国で最初の本格的西洋式ホテルだ

ったそうである。宿泊したという著名人はアインシュタイン、チャップリンなどなど・・・。

それが解放後、外国船員のための簡易宿となり、アジア、アフリカ、中南米の船員たちの寝床となり、

その後、改革開放政策の波でパッケージツアーではない、個人の外国人自由旅行者(いわゆるバッグパッ

カー)が集まるようになったという経緯らしい。


朝食をとった1階にあるレストランなど、古い昔の映画で見た、舞踏会が開かれていそうな、それはそれ

は息を飲むような天井の高い、すばらしく瀟洒な洋風のつくりだった。

メニューもトースト、目玉焼き,オレンジジュースなどと、中国上陸一日目にして何だか面食らったのを

記憶している。(宿泊代には朝食が付いていた。)

「こんなメシが喰えるのはこれが最後かも知れへん・・・」と実に思ったものだ。

(実際にその後、そうなった。 香港へ「脱出」するまで洋風なものは全く口にできなかった。)


ホテルの目の前は赤いとんがり屋根のロシア領事館、そしてその隣は上海のシンボル、堂々たるアールデ

コの上海大廈。すぐ脇には黄浦江が悠々と流れ、部屋に居ながらにして、汽笛の音を聴くことが出来た。

この旅情たっぷりのロケーションと何より宿泊代の安さが世界中の若い旅人を惹きつけていたのは言うま

でもないだろう。

ここの相室の「旅のベテラン」の先輩に情報を聞き、「新米旅行者」だった僕は奥地のシルクロードやら

雲南省を目指したのだった。 生ぬるいビールを買い込み、ラッパで飲みながら(その頃、まだ冷蔵庫が

中国では普及していなかった。)旅談義に花を咲かせたあの夜の興奮は今でも忘れることができない。


しかし、そんな我が蒼き思い出の1ページに記憶を残す浦江飯店もいかんせん、中国の経済の発展と時代

の変化と無関係ではおれず、昨年2005年にドミトリーを閉鎖。全面改築してオールドクラシックな雰囲気

を味わえるオシャレホテルに生まれ変わった。 

それを知ったのも実は「トレンディーなオシャレ・シャンハイ」を特集した雑誌からだった。


今回、その情報の確認のため、わざわざホテルへ出向きフロントの服務員(従業員)聞いてみた。

Q:「有没有多人房? (ドミトリーはありますか。)」

A:「没有! メイヨー」(ありません。)

無表情かつ、キッパリと断言した「メイヨー」を久々に聞いた気がした。


※浦江飯店のことを旅人は『プージャン』と皆、親しみを込めて呼ぶ)ドミトリーとは直訳すれば「寮」 とか「宿舎」だが、中国では「多人房」と呼ばれ、読んで字の如く沢山の人が共用で寝泊りする大部屋 のことである。
 泊り客は各々のベッドだけが与えられ、シャワー、トイレ、洗面所は共用。 多国籍な旅人と同室で
 部屋をシェアする。中国を旅するにあたり、一番安い宿泊方法。


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