<写真>日本と台湾を隔てる海、台湾南部ののどかな海…、「海」が作中、無言で物語る役割は大きい。
新年明け早々、以前から公開を待ちわびていた台湾映画『海角七号 君想う、国境の南』を観て来た。
何しろ、公開前の話題の方がかなり騒がしかったので、そちらの方の先入観が先に入ってしまっていた。
いかんせん、意外にも恋愛ラブストーリーとして楽しめた。「恋愛ラブストーリー」と書くと軽薄な感じ
も否めないが、あえてそういう風にしておきたい。歴史と国境を越えたラブストーリー、若者の青春の
苦悩と挫折…、とよくあるテーマではあるが、そこに日本統治時代の記憶がクロスオーバーする。
劇中のセリフは台湾語、北京語、日本語。これだけでも台湾という国(島)が内包する複雑な歴史を見る
側に想起させる。キリスト教徒の先住民族、唱歌「野ばら」を日本語で口ずさむ老人、若者は都会へと
出、老人だけが取り残される南部の寂れた田舎町。主人公の阿嘉(アガ)は台北でバンドミュージシャン
として成功することを夢みて、そしてそれを果たせることなく一人、生まれ故郷に帰って来る。都会に夢
破れ実家に戻った、半ニート状態の抜け殻のような若者がこの映画の主人公。これもどこにでもいそうな
設定。そんな様々な人間模様を台湾人が身近な日常の心の風景として、自らを重ねるのは無理もないこと
だろう。
「台湾映画史上歴代一位、興行収入14億円を記録」というご当地・台湾では「海角七号、もう観た?」が
一時期、合言葉になったほどだという。また韓流映画のそれ同様、この映画の舞台となったロケ地を巡る
ツアーも大盛況らしい。そして大陸メディアでは「皇民化思想が感じられ、民族感情を刺激する」と公開
が危ぶまれたが、結局、本編を30分も当局にカットされた後、公開になったとか…。
いかんせん、映画公開よりずっと前にコピーDVDが大量に出回り、映画館への客足はそれほど多くはな
いとのこと。(さすが、大陸!!)
映画を観終わって、以前、台湾を訪れた際に出会った日本語を流暢に話すご老人たちのことをフト思い出
した。劇中の「友子」は今もどこかに生きているに違いない−。
●海角七号 君想う、国境の南
監督・脚本:魏徳聖
2008年/台湾/台湾語・北京語・日本語
http://www.kaikaku7.jp/
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