<写真>右端、ジャックス水橋氏の写真が昔の10代の頃のものというのが思わせぶり。
早川義夫さんといえば、元ジャックスという伝説のバンドのリードボーカルであり…、何だか、こういう
風に能書きをいちいち書くのもはばかられる−。
レコード会社、事務所が演出したムーブメントであったグループサウンズ全盛の時代に現れたにもかかわ
らず、曲は全曲メンバーによるオリジナル。誰もが持つであろう、心の奥底の暗い世界を覗いてしまった
かのような独白にも似た歌詞の世界、早川さんの怨念のような発声(失礼)。どれもが10代の僕にとって
は衝撃だった。『和製』ドアーズだとかヴェルヴェット・アンダーグラウンド…などと呼ばれてもいたら
しい。つまり彼らの音楽を形容するようなモノが日本にまだ出現していなかったからであろう。
デビューアルバムの「からっぽの世界」で『ぼく唖になっちゃた…』という冒頭の歌詞がレコード会社の
自主規制に引っ掛かり再発のメドはたたず、新宿西口のレコードショップではウン万円という高値がつけ
られていた。音楽活動を引退し、数十年に及ぶ沈黙も伝説を助長するものとなった。早川さんが音楽活動
を再開したのは93年のこと。(復活ライブには江古田のバディまで当日券一番で並んで観に行った。)
先日、5月18日、吉祥寺・スターパインズカフェにてライブがあり足を運んできた。
今回のライブでは驚くことに元ジャックスのリードギターである水橋春夫さんがゲストで参加。
水橋さんが早川さんとステージで演奏するのは約40年ぶり。それを聞き、何が何でもと前売りを購入。
お陰でなんと、前から2列目の席を確保。いつもの佐久間正英さんのリードギター、それに今回参加の
フィッシュマンズのB・Drsのサポートも素晴らしい。
ジャックス時代の曲から『かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』のアルバム、復帰後の最近の曲
まで織り交ぜライブは進む。15年前に観た時とは変わり、早川さんも軽妙にMCを挟む。それが何だか
微笑ましく、嬉しかった。
途中、休憩を挟み、第二部に水橋さんは登場。『割れた鏡の中から』、『マリアンヌ』、それに水橋さん
のオリジナル『時計をとめて』ではボーカルも披露。「あぁ…この人が唄ってたんだ…」とナマで聴く
ジャックス・オリジナルメンバーの唄声に絶句。
情念が噴き出すかのような激しいファズとエコーのかかったリードギターも当時のまま。
「言葉を忘れた俺の…」という歌詞のままのような精神状態の僕はしばし、「唖になっちゃった」のであ
った。
ライブ終了後に歓談している早川さん、水橋さんにおこがましくもサインをねだった。
「本当に素晴らしかったです。またライブやられないんですか?」と訊くと、「うん、やるよ。もうちょ
っとギター練習したらねぇ。」と気さくに受け応えをしてくれた水橋さん。この日のライブは一生忘れま
せん!
「美しいものは人を黙らせる−」と早川さんは唄っているが、僕にとっては様々な10代からの思いが交錯
したライブであり、しばし、その歌の数々を前に沈黙せざるを得なかった訳である。
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