ドイツの生活 Mein Leben in Deutschland

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Vaca!

友達の車でメキシコ第二の都市グアダラハラからメキシコシティに
向かっていた時のことです。真夜中のハイウェイを時速150kmくらいの
スピードで走っていました。日本で滅多に車に乗ることがなかった
私はそのスピードにビビッていました(ドイツではかなり普通です)。
友達は、日本ではこんなスピードはなかなか出せない(んですか?)
とかなり興奮していたようでした。

前方にも後方にも車はなく、何もないだだっ広い平原を車はどんどん
走っていきました。目の前に広がるのは果てしない道、のはずだった
のですが、あっと思った瞬間前方に車が見えました。その車が急に
左にハンドルをきったので、衝突を避けるために友達は右にハンドルを
きりました。するとそこには牛が...。

助手席に座っていた私の目の前に牛が降ってきました。その衝撃で
フロントガラスは粉々に割れ、牛の目はうらめしそうに私を見つめ、
その巨体はスローモーションで後方にぶっ飛んでいきました。車は野原の
真ん中でようやく止まりました。しばらく何が起きたかわからずに友達と
私が呆然としていると、前方を走っていた車に乗っていた人たちが
駆け寄ってきました。「大丈夫か、怪我はないか」と言っているようでした。

慌てて自分の身体を見ると血だらけになっていました。でもどこも痛くは
ないし、くらくらしたりもしません。どうやら牛の血を浴びたようでした。
砕けたフロントガラスが身体に当たってところどころ血がにじんでは
いましたが、深い傷はなさそうでした。一番大きいガラス片は私の身体を
支えてくれた友達の手に刺さっていました。あれが私の首にでも刺さって
いたら大変なことになっていたでしょう。

私たちの乗っていた車は動かなくなってしまったので、前方を走っていた
人たちが次の料金所に事故のことを連絡し、救急車と警察を呼んでくれる
ことになりました。私たちは何もない平原のど真ん中で助けを待ちました。
牛は子牛でした。私たちの車にはねられ、ほぼ即死で道路に横たわって
いました。これが大牛だったら横たわっていたのは私たちだったかも
しれません。

どのくらい時間が経ったでしょうか。あたりはまだ真っ暗なのにどこから
ともなく鉈(なた)のようなものを持った男の人が3人現われ、あれよ
あれよという間に死んだ子牛を仰向けにして、お腹をきれいにくり貫いて
いました。道路にはペッチョっとレバーらしき部分だけが残されていました。
え?何ごと?この人たち、どこから来たの?レバーは嫌いなの?
私たちが不思議そうな顔をしていると彼らは「それは君たちにあげるよ、
よかったら持っていきな」と言って、どこへともなく去って行きました。

ようやく救急車と警察の車が到着しました。事情聴取され、応急手当を受け、
パトカーで近くの村まで連れて行ってもらいました。そこからメキシコシティ
行きの2等バスが出ていたので、とりあえず私の家に向かうことになりました。
まだ暗いうちにシティへと向かうバスには乗客だけでなく、鶏も数羽乗って
いました。何故だかみんなが私たちのことをジロジロ見ていました。

朝方、ようやくシティに到着しタクシーで私の家に辿り着きました。家に
ついて明るい光の下で自分の姿を見てみると、なんと浴びていたのは
血だけではありませんでした。上半身になんだか緑色っぽいものがべったり。
よく見ると草のようでもありました。もしかしてこれは牛の「ウ○コ」では...。
これでバスの乗客にジロジロ見られていたわけがわかりました。ぶつかったのが
草食動物だったのが不幸中の幸いです。これが肉食動物だったらきっと
すごい臭いだったでしょうから。「牛は草食。草しか食べない、草しか。」と
自分に言い聞かせ、シャワーを浴びたのでした。

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