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私の苗字は漢字1文字です。仮に「武」とでもしておきましょう。 中学生の頃、同じクラスに「武者小路(仮名)」という苗字の女の子 がいました。この武者小路さんの下の名前は、漢字こそ違いますが 私と同じ名前でした。それを仮にそれぞれ「登代美」と「豊美」と しておきます。 当時、武者小路登代美(仮名)は学年で一番美人だと言われていま した。私から言わせればただの色黒のチビ女でしたが、彼女に思い を寄せる男子は少なくありませんでした。それに比べて私、武豊美 (仮名)は誰にも相手にされないような地味な女子でした。そんな 私でしたが、密かにクラスのアイドル的存在だったI君のことが好き でした。 ある日の休み時間、I君が私のところにやってきて、ノートに書いた 字を見せてこう言いました。これが俺の好きな子の名前だよ、と。 そのノートにはなんと武[ ]美と書かれていました。[ ]の 部分はI君が手で隠していました。えっ?I君、もしかして私のことが 好きだったの。そんな〜。じゃぁ私たち、両想い〜。私は一瞬にして 舞い上がってしまいました。しかし、I君がノートからパッと手を 離すとそこには「武 [者小路登代] 美」と書かれていました。 へっへー、ばーか、騙されてやんの〜。I君は笑いながら去って いきました。その時から私は武者小路登代美が大嫌いになりました (って彼女は何も悪くありません。) 中学を卒業して以来、武者小路登代美やI君がどうしているかは全く 知りませんでした。ところが先日、フランクフルトで偶然、登代美に ばったり会ってしまったのです。親しかったわけではありませんが、 久しぶりの再会だったので、一緒にお茶をすることにしました。 昔話に花が咲き、まるでずっと仲良しだったかのごとくいろいろな ことを話しました。彼女はバツ3で、もうすぐ4回目の結婚をする 予定だと話してくれました。しかも今度の相手はドイツ人で、結婚 してドイツに住むことになるんだとか。 日本で離婚するたびに戸籍や銀行口座の名前を変えなくてはならず とても面倒だったと登代美はうんざりしたように言いました。しかも 離婚するたびに苗字の漢字が一文字ずつ減らされ、今では「武者小路」 ではなく、ただの「武」になってしまったというではありませんか。 つまり現在の彼女はもはや武者小路登代美ではなく、武登代美(たけ とよみ・仮名)。そういう私も武豊美(たけとよみ・仮名)。下の名前 の漢字こそ違いますが、ウン十年後に再会した私たちはとうとう同姓 同名になってしまったというわけです。しかも婚約者であるドイツ人 の彼はトビさんと言う名前だというからもうびっくり仰天。 でも離婚のたびに苗字の漢字が減らされるなんて聞いたことがありません。 それで私と同じ名前になったなんて言われてもなんだか納得いきません。 トビという人と結婚するというのもどうも許せません。あんたにはI君が いるでしょーが。私からI君を取ったくせに、いまさらなんなのよ。 どうして世の中に「たけとよみ」が二人も存在するわけ?そんなのダメ〜。 「たけとよみ」は世界に私一人。私だけが「たけとよみ」なんだってば〜。 自分の声に驚いて目を覚ますと、トビが不思議そうに私の顔を覗き込んで
いました。「ダイジョーブ?」。なんだ、夢だったのか。あー、びっくりした。 |

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