|
いつだったか、近所の市民大学でスペイン語講座を受講したことがあります。レベルは 中級で、会話を中心に文法、ヒアリング、文章力などを総合的に強化する、とかなんとか パンフレットには書かれていました。先生はチリ人のオバさんで、その昔ドイツに留学し ドイツ人と結婚し、ドイツに永住、というパターンの人でした。恐らく専攻していたのは、 ドイツ語学か、あるいは法学か何かでしょう。スペイン語教師歴はそれなりに長いよう でしたが、外国語教授法を専門的に勉強していないということはすぐにわかりました。 というのも、シラバスなどは考えられていなくて授業はいつも行き当たりばったりだったし、 何かというとやたら強いアクセントのあるドイツ語で説明していましたから。また毎回 「来週は○○をやります」と言っておいて、次の週には忘れて全く違うことをしていました。 その先生の「とにかく話しましょう。話さないと上達しません。」という主義も気に 入りませんでした。受講者の大半が、「休暇のたびにスペインのマヨルカ島やカナリア 諸島に行くのが大好き!」そうなドイツ人でしたが、彼らはとにかく喋りたがります。喋る のはいいのですが、大体が単文オンパレード。それでとりあえず意味は通じるし、旅行 などでは十分でしょう。でも中級からのレベルはいかにサバイバルスパニッシュから抜け 出すか、が大切なポイントです。そうやってただ喋らせているだけでは、上達するどころか、 かえって上達を妨げる結果になりかねません。誤用が定着してしまう恐ろしい「化石化」 を促進することになるからです。 そんなわけで、そのクラスには途中から行かなくなりました。ケチな私のことですから、 支払った受講料がもったいない、とはもちろん思いましたが、ドイツ人のオバさん達の サバイバルスパニッシュばかり聞かされるのはたまりませんでした…。 私は、このとにかく発話させようという会話重点主義の教え方が好きではありません。 ドイツ語を習っていた時も、やたらと話させようとする先生が少なからずいましたが、日本 人は人前で発言するという行為に慣れていないというのもあって、私はディスカッション 等の練習課題が嫌いでした。そういう練習となると東欧出身の人などは黙らせるのが 大変なくらい、ベラベラとよく喋りますが、発音や文法はひどいものだったりします。 ティーンエイジャーなのに強いアクセントが抜けない人が意外と多いのにもびっくりでした。 若くて、しかもドイツに居住しているのだからもっと発音などが洗練されるはずなのに…。 これはもしかしたら「話す」ことに重点を置きすぎる外国語教育の弊害ではないか、と 思うようになりました。外国語の習得には4技能、つまり「聴く、話す、読む、書く」があり、 どの技能も万遍なくマスターする必要があります。しかし最近の日本の英語教育に してもそうですが、なにかというと「話す」ことだけを重要視しているように思います。 上記の若い子たちなどは、しっかり聴く訓練をせずに話し始めてしまうから、アクセント や発音が直らずに定着してしまっているのではないでしょうか。 4技能について「聴く、話す、読む、書く」と書きましたが、母語では、まずは聴いて、 それから少しずつ話せるようになる、文字が少しずつ読めるようになり、それから書ける ようになります。外国語の習得はもちろん母語のようにはいきませんが、基本は同じ だと思います。つまり、まずきちんと聴かなければ話せるようになんかならないのです。 この4技能の中で聴く、読むはいわば受動のインプット作業で、話す、書くは能動の アウトプット作業です。十分なインプットがされて初めてアウトプットが可能になる と私は思っています。インプット量が少ないのに無理矢理アウトプットしようとしたら、 「ストーブの空焚き」状態と同じで危険です。 皆さん、外国語がしっかりできるようになりたかったら、無理に話そうとしないほうがいいですよ〜。
|
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
2010年02月27日
全1ページ
[1]
全1ページ
[1]



