数日前にYahooのニュースのトピックス欄でドイツの遊園地が取り上げられていました。オランダ との国境近くのカルカーという場所にあるその遊園地は高速増殖炉だったところです。この遊園地に ついては先日掲載した「原子力帝国」という記事でも触れています。テレビでも取り上げられたそう なので、6月6日にシュピーゲル誌に載っていた記事を訳してみました。現在建設中の原発はこんな 利用方法もあるのではないでしょうか。出典:AKW als Freizeitpark - Das Kernkompetenzzentrum, Spiegel Online カルカーの高速増殖炉は世界で最新の原子力発電所になるはずでした。それが数十億ユーロのお墓 となってしまいました。その後、一人のオランダ人の農家の息子がやって来て、そこを遊園地に改装 しました。導管、ポンプ、タービンは、メリーゴーランドやゴーカート、飲み屋に変わりました。 「今から原子炉に行きましょう」とその男性は言い、早足で歩き始めました。造花が植えてあるところを過ぎ、 男性用トイレの方向を右に、左には煙草の自動販売機と電動体重計が設置されていました。絨毯は青くて 分厚く、足音は聞こえません。その男性はかばんから鍵を取り出し、茶色い防火扉を開けました。「私が先に 行きます」と彼は言い、入ってからこちらを向いて言いました。「気をつけてください!」 上も下も、右も左も、薄暗い光とむき出しの鉄筋コンクリートで、壁は人間3人分の厚さがありました。「原子炉は この先まっすぐ行ったところです」と通路の向こう側を指して男性が言いました。どこかで溶接をやっているのか、 焼けたような臭いがしました。 施設の心臓部は鋼鉄でできた巨大な球体で、その薄暗く錆付いた金属には天窓が取り付けられていました。 かつてカルカー高速増殖炉と呼ばれた、世界で最新の原子力発電所になるはずだった複合施設の中心である その場所には、ドイツ最高技術の栄光の名残はほとんどありません。そこはまるで第二次世界大戦時の貯蔵庫 のように見えました。 ホテルは完成 50歳のハン・グルート・オビンク氏は、小さくてすばしっこそうなオランダ人です。彼は別の現実の世界に引き 戻します。ドアを開け、閉める、それはまるで2ステップで行う時間旅行のようです。突然スピーカーから流れる がちゃがちゃした音楽が聞こえ、子供たちが騒ぐ声がして、食べ物の匂いも漂ってきます。「ほんのちょっと壁に 色を塗ってほんのちょっと飾りをつけたら」とオビンク氏は言います。「ホテルは完成さ。」 そんなに簡単だったかというと、当然そうではありません。現在、ヴンダーラント・カルカーと呼ばれている 施設で、15年間働いているマネージャー以上にそのことを知っている人はほとんどいません。それはお手本の ない産業的変容、本当のところは空想物語でした。少なくともドイツ人は確信していました。原子力発電所を 買って、それを遊園地に造り変えるなんて、オランダ人だけが実現できる空想物語だと。 カルカーの高速増殖炉は一度も発電所として使われたことはなく、何十億ユーロの複合施設という国のシンボル でした。それは、まずドイツ産業界の能力を、それから若者の反対意思を、最後は馬鹿げた政治的決定を物語 っています。建設費36億ユーロもかけて一度も運転されませんでした。結局、チェルノブイリの後、その 「増殖」炉はその名前とは反対に何年も空っぽのままでした。巨大なコンクリートの城を欲しがる人は誰も いませんでした。 へニーがやるさ。 同僚で集まって一緒に座っていたんだよ、と従業員のカール-ハインツ・ロットマン氏(57)は語ります。気分が 落ち込み、がっかりした顔をしていたところに、黒いベンツから大きな白髪の男が降りてきました。「こんにちは。 私はヘニーです。私がここを全部買い取ります。」とその男は言いました。ロットマン氏はただこう思ったそう です。「ほう、それならやってみろ!」と。 そしてヘニーはやりました。オランダの田舎出身の農家の息子でくず鉄商の彼は、産業化時代の永久運動 装置とも考えられていたこの原子力発電所のために数百万マルクを借りました。もし原子炉が使われていたら 核燃料のウランがそれより多いプルトニウムを作り出していたでしょう。それはこう言われていました。永遠で 素晴らしくて、クリーンで、可能な限り安全なエネルギーと。 しかし、ヘニーはむしり取りました。導管、ポンプ、タービン、何十万マルクもの費用がかかった技術はゴミと 化しました。近所に営業所を構えていたエンジニアたちは、彼の破壊的な仕事を嫌悪感いっぱいでじっと 見つめていました。非常時用にいくつもの代替システムを備えておくために、一つの原子力発電所にはこれらの 部品が3つ、あるいは5つもあるので、15年経った今、やっと原子炉の3分の1の改築が終わり、そこで市民が 楽しんでいます。 437室、合計2000席の4つのレストラン、7つの飲み屋、ボーリング、ゴーカート、ジェットコースター、ミニ ゴルフ、テニス、トランポリン、メリーゴーランド、観覧車そして、ジェニファーやジャクリーネ、ケビン (*1) が 飲食できるたくさんのコーラやソフトクリーム。「料金すべて込み」と、娯楽社会で想定される最大級の暴飲 暴食 (*2)の決まり文句が書かれています。 世界一のフライドポテトスタンド ここを好きになる必要はありません。多くの人は「世界で一番大きなフライドポテトスタンドが建った」と言います。 南ドイツ新聞は「貧乏人のディズニーランド」と名づけました。でもこのヴンダーラント・カルカーはもっと 意味があるかもしれません。馬鹿騒ぎする若者や年金受給者のための楽園、居酒屋が並ぶ通りやお散歩 ルート、シュラーガー(ドイツの演歌)パーティー、トラクターの綱引き大会など。「なんでも欲しいんです」と 支配人オビンク氏は言います。そして年に60万人の人が来ます。そこには以前は誰も入ってこなかったの ですから、いわば逆の世界です。彼は軽く笑いました。 ところで、ドイツの脱原発論争はここでは話題になっていますか? 「いやぁ、それはないねぇ」とマネージャーは言いました。 「え、なんだすか?」ゴッホ出身のペータース女史は聞き返しました。「あ、原子力発電所は終わりにするって 話だすね。さぁ、私にはよぐわがりません。(*3)」彼女は続けました。 脱却後の脱却 施設内の博物館には人影はなく、オビンク氏だけが、ヨーロッパの原子力発電所の場所を赤い点で示した展示 版の上を叩いています。フランスは真っ赤に見えます。「見てください。」とマネージャーは言います。「オランダも 今一つ建設中です。」彼はドイツの脱原発を大げさだと思っているのでしょうか?「どっちでもいいです。私はただ 停電すると、困るということしかわかりません。あと電気代が上がれば、それも良くないですな。」 元増殖炉のエネルギー消費は今日すでに莫大です。年間3百万キロワット時と、ガスは55万平方メートルです。 そのため、カルカーでは将来的に発電が行われなければならなくなるでしょう。風力発電と、恐らくバイオガス 施設も建設するでしょう、とオビンク氏は言います。そうなれば、脱原発後のさらなる脱却が実現されるだけで なく、ドイツの原子力を最終的に打ち負かすことになるでしょう。生まれ故郷とも言うべきその場所で。 *1 : ジェニファーやジャクリーネ、ケビン と言った英語風の名前は、あまり教養の高くない親が好んでつける
名前とされています。 *2 : 想定される最大級の=größter anzunehmender ドイツ語で原子力発電所の事故のことを GAU = größter anzunehmender Unfall と言います。 ガウと発音し、想定される最大級の事故の意味。チェルノブイリやフクシマは Super GAU。 *3 : オランダ人なのでドイツ語に訛りがありますw。 写真はWunderland KalkarのHPよりお借りしました。
オランダ語の名前の読み方がわからなかったので、ドイツ語読みのカタカナ表記にしてあります。 |
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2011年06月28日
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