ドイツの生活 Mein Leben in Deutschland

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原発ジプシーたち
原子力発電所での仕事を請け負うホームレスたちは「原発ジプシー」として知られています。この名前は、
病気で倒れるまで、もっとひどい場合には見捨てられて死ぬまで原発から原発へと仕事を探す放浪生活を
表しています。「貧困者の雇用は政府の黙認があるから可能なのです」と人権に関するいくつもの賞を受賞した
樋口健二氏は嘆きます。

日本の当局は50ミリシーベルトを一年間の許容放射線量と定めています。他の国の多くが5年間に100ミリ
シーベルトとしているのをだいぶ上回っています。理論上は原子力発電所を管理する会社が上限の放射線を
浴びるまで浮浪者たちと契約します。その後「健康のため」に解雇し、また路上に送り返します。現実は何日か
あるいは何ヶ月か後に、同じ労働者が別の名前で雇われます。このような方法でのみ、たくさんの雇用者が
ほぼ10年の間に許容量の何百倍も多い放射線量に曝されたということが説明つきます。

長尾光明氏は職場で撮影された写真をまだ持っています。いつもは着ていなかった防護服を着て、病気になる
まで5年間働いた(福島)原発の除染作業を始める数分前に撮られたものです。現在78歳で、原発ジプシーたち
の間で最もよくある病気、骨の癌を克服するために5年間の治療を受けた後、長尾氏は原発管理会社と日本
政府を訴える決意をしました。奇妙なことに彼は日雇いのホームレスではなく、現場監督として彼らに指示を
していた人なのです。「大企業の仕事の背後に悪いことなんて起こるはずないと思っていました。でもこれらの
会社はその名声を人を騙すために使い、健康を害するとても危険な仕事のための人材集めをする。」と長尾氏は
悲嘆します。長尾氏は許容量を超えた放射線に曝されたせいで半身が付随になってしまいました。(注3)

30年以上の間、樋口健二氏は何十人もの原発の被害者にインタービューをし、彼らの病気を記録し、彼らの
多くがどう最期を迎えるか、死を前にしてどうベッドの中で衰弱していくのを見つめてきました。不幸な人たち
の苦しみを間近に見てきて、調査もするようになったこの写真家は、恐らくそれだからこそ間接的にホームレス
と契約をする多国籍企業名を挙げることに抵抗がありません。東京の自宅にある事務所に座って、白い紙を
取り出して書き始めました。「パナソニック、日立、東芝…

ヒロシマとナガサキ
労働者の出身や健康状態などの管理をする責任を持たないシステム内で、企業は他の会社を通じてホームレス
と下請けの契約をします。日本で起きている一番の矛盾は、核エネルギーの誤った利用がもたらす結果を世界
で一番知っている社会であるのに、このような悪習がほとんど抗議もなく行われているということです。1945年
8月6日、米国はそれまで無名だった町ヒロシマに原爆を投下し、一瞬にして50000人の命が奪われました。
続く5年の間に150000人が放射線の影響で亡くなりました。歴史は数日後にナガサキに2つ目の原爆が投下
されることで繰り返されました。

あの原爆の影響と原発ホームレスたちが受ける放射線量をもとにして、ある研究報告が日本の原発に雇われた
ホームレスの労働者10000人ごとに17人が「癌で亡くなる可能性100%」であることを明らかにしました。さらに
多くの数の労働者が同じ運命をたどる「可能性が大」で、何百人もが癌になるだろうということです。70年代から
300000人以上の臨時労働者が日本の原発に雇われてきたことを考えると、藤田教授と樋口氏は同じ質問を
せざるを得ません。「何人の犠牲者がこの間に亡くなっただろう?何人が抗議することなく死を迎えただろう?」
「貧しい人たちの犠牲にして、日本の裕福な社会が消費しているエネルギーをいつまで容認するのだろう?」

政府と企業は、誰も原発で働くことを強いられていない、そして雇用者は誰でもその気があれば辞められるという
ことを確言し、自分たちを守ります。日本の労働省のスポークスマンは「人々を放射線に曝す仕事があるが、それ
は電気供給維持のために必要である」とまで言いました。

ホームレスたちは間違いなく、そのような職に就く覚悟ができています。原子炉の清掃、あるいは漏出があった
場所の除染といった仕事は一日で、建築現場の日雇いの仕事の倍額が支払われます。それにどちらにしても、
建築現場に彼らの仕事はありません。多くは新しい雇用によって、再び社会との結びつきを持つことや家族の
元に戻ることを夢に見ます。一度原発に行けば、彼らの運命が数日後に捨てられる人になることであると気付く
のにそう時間はかかりません。

さまざまな犠牲者の証言によると、危険区域に入る際に放射線量測定器を持って入ることが普通ですが、現場
監督に操作されていることがよくあるそうです。もし大量の放射線を浴びたことを知られ、他の人に替えられる
のを恐れて、自分で状況を隠すホームレスがいても不思議ではありません。「放射線量が高くても、働けなく
なるのを恐れて誰も何も言わないよ。」と東京・上野公園にいたホームレスの一人である斉藤氏は言います。
彼は‘原発のいろいろな仕事’をしてきたことを認めています。

原発で働くための訓練と知識が不足しているせいで、もし従業員たちが適切な指示を受けていたら避けられる
事故が頻繁に起こります。「誰も気にしない。もし誰かがある日仕事に来なくなっても、そのことを尋ねる人が
いないから、彼らが使われるんだ。」と樋口氏は言います。労働者が病気になり、原発内の医療センターあるい
は近所の病院に行くと、医者は組織的にその患者が受けた放射線量を隠し、「適性」と書かれた証明書つきで
再び仕事場に送り返します。希望を失ったホームレスたちは、日中はある原発で働き、そして夜は他の原発へ
と到着します。

この2年間、藤田教授と樋口氏のおかげで、病気になった人たちの何人かは説明を求め始めました。しかし
ながら大半の人にとって抗議することは選択肢ではありません。二人の原発奴隷、村居国雄氏と梅田隆亮氏
は、いろいろな機会に日雇いとして働いた後で大きな病気にかかりました。下請け契約会社を操るヤクザの
グループの一つが彼らを殺すと脅してきたため、訴訟を取り下げなければなりませんでした。

毎日の輸血
大内久さんは、1999年に日本に警告を放った放射能漏れ事故が起きた時、東海村の原子力発電所の燃料
処理施設内にいた3人の従業員のうちの1人です。彼は許容量の17000倍もの放射線量を浴びてしまい
ました。病院で、毎日輸血、皮膚移植を受け83日後に亡くなりました。

労働省は国内の原子力発電所すべてを大々的に検査しましたが、発電所の責任者は24時間前に警告を受けて
おり、そのためにたくさんの不正を隠すことができました。それなのに、発電所17か所のうち、たった2か所しか
検査に通りませんでした。それ以外のところでは、従業員の知識不足、従業員を放射線に曝すことへの管理
体制の欠如、そして法的な最低限の医療検査の不履行といった違反が最大25個も見つかりました。それでも、
ホームレスの人材募集は続いています。

松下氏と他の10人のホームレスが案内された福島原発は路上の労働者と契約するその組織的なやり方を
何度か告発されています。慶応大学の科学者藤田祐幸助教授は、1999年に原発責任者が原子炉の一つを
包囲する石棺を再開するために1000人ほどの人材を募集したことを確認しています。福島で働いて2、3
年後、松下氏は「さらに2、3の仕事をした」ことを認めています。それと引き替えに、彼は唯一残っていたもの
を失いました。健康です。髪の毛が抜け始めて数カ月になり、その後倦怠感に襲われ、さらに退行性疾患の
症状が出てきます。「ゆっくりとした死が俺を待っているそうだ」と彼は言います。

注3: 原文では「タハツセ」原発の除染作業と書かれている。
  (長尾氏が多発性骨髄腫を罹患したことを原発名称と勘違い?)
    美浜の会の和訳では、半身付随ではなく「歩行が困難」となっている。

  

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先日、私のブログに載せた「原子力帝国」という記事に寄せていただいたコメントで、この
「原発奴隷」という記事の存在を知りました。2003年にスペインのエル・ムンド紙の別冊
クロニカに掲載された記事です。
美浜の会のHPにすでに和訳が掲載されていますが、自分で内容を確かめてみたかったので訳して
みました。一部取材間違いと思われるところがあったので、注を入れてあります。
出典:Mendigos, esclavos nucleares en Japon, Cronica - Un suplemento de EL MUNDO

調査報告/原子力発電所の秘密
日本の原発乞食、原発奴隷
日本の企業は原発の清掃員として貧しい人を集めます。その多くは癌で亡くなっています。エル・ムンド別冊
クロニカ紙はこの信じられないスキャンダルの主人公たちに話を伺いました。

東京特派員 ダビ・ヒメネス

何も失うものがない人のために、福島第一原発にはいつも仕事があります。都内のある公園で、二人の男が
仕事を斡旋するために近寄ってきた時、松下氏は段ボール箱4つで作った住処で眠っていました。特別な能力
は何も要らない、前職の建設現場での日雇いの倍の賃金を払ってくれる、48時間で終わる。二日後、この破産
した元重役だった男と他の10人のホームレスは、首都から北へ200kmのところにある発電所に連れて行かれ
ました。そして清掃員として登録されました。

「何を清掃するんですか?」監督者が防護服を配布し、彼らをシリンダーの形をした巨大な金属の部屋に案内
した時、誰かが尋ねました。部屋の内部の温度は30〜50度の間で変化し、湿度もあって、清掃員たちは息を
吸うために3分おきに外に出なければなりませんでした。放射線量測定器はあまりにも上限を超えすぎるので、
壊れているに違いないと思いました。一人、一人と男たちは顔を保護していたマスクを外しました。「ゴーグル
のガラスが曇って見えなかったんだ。仕事を時間通りに終わらせないと、一銭も払ってもらえないんだ。」
53歳の松下氏はそう回顧します。「仲間の一人が近づいてきて言った、俺たちは原子炉の中にいるんだって。」

福島原発で働いてから3年後、東京、新宿の公園に、日本語が書かれた黄色い張り紙が張られ、ホームレス
たちに原発に行くなと注意を呼びかけました。「仕事を請け負うな、殺されるぞ」と書いてありました。多くの
人たちにはこの忠告は遅すぎました。日本の原発での最も危険な仕事を遂行するために、ホームレスや非行
少年、外国人や貧乏人を募集することは30年以上も習慣的に行われてきました。それは今日も続いています。
慶応大学の物理学教室の藤田祐幸助教授によれば、この30年の間に700から1000人のホームレスが
亡くなり、何千人もが癌に侵されているということです。

完全なる秘密
原発奴隷は日本で厳重に守られている機密の一つです。この国の主要な企業のいくつかが関与していること、
電力会社のために浮浪者を探し、選び、契約する役目を担っている恐るべきヤクザのことを知っている人は
少ないのです。「ヤクザが仲介しているんです。会社はこの仕事1日につき30000円を払う。でも請け負った人
は20000円しかもらえない。ヤクザの手元にその差額が入る。」と樋口健二氏は説明します。彼は、この日本
のホームレスたちのドラマを30年間調査し、写真で報道している日本のジャーナリストです。(注1)

樋口氏と藤田教授は毎週浮浪者たちのたまり場を訪ね回り、起こりうる危険に彼らが遭わないよう、そして彼ら
の事例を裁判所に訴えるよう薦めています。樋口氏はカメラで、−彼はこの写真レポルタージュの作者です −
藤田助教授は放射能の影響の研究で、日本政府に、多国籍エネルギー企業に、そして人材募集のネットワーク
に挑んでいます。その意図は、70年代に静かに始まり、原子力発電所の操業のために貧しい人の雇用に依存
しているところにまで拡大している悪習を止めることにあります。「日本は現代的な国であり、日のいずる国
です。でもこういう人たちにとっては地獄であるということも世界に知ってほしい。」と樋口氏は語ります。

日本は、第二次世界大戦で廃墟となった国から世界でもっとも進んだ技術大国として、20世紀にもっとも見事な
変化を遂げた国です。その変化は電力の需要を高め、日本という国を世界で最も核エネルギーに依存する国の
一つにしました。

70000人以上が日本全国にある17の発電所、52の原子炉で常時働いています。より技術的なポジションには
電力会社の正規雇用者がいますが、従業員の80%以上が特別な教育を受けていない労働者や、社会の最も
恵まれない層の臨時雇用者です。ホームレスたちは、原子炉の清掃から漏洩が起きた時の除染、あるいは技術
者が決して近づこうとしない場所での修理作業などの最も危険な仕事のために予約されているのです。

嶋橋伸之氏は、1994年に亡くなるまで、約8年間このような仕事のために使われてきました。この若者は、大阪
の貧しい家庭の出身で、高校を卒業すると、日本で2番目に大きな静岡県の浜岡原発での仕事の話を持ちかけ
られました。「何年も気づきませんでした。私の息子がどこで働いているかも知りませんでした。今、息子の死は
殺人だということがわかりました。」母親の美智子さんは嘆いています。(注2)

嶋橋夫妻は、伸行さんを苦しめた血液と骨の癌が原子力発電所の責任であると訴え裁判で勝訴した最初の
家族です。伸行さんは2年間も病床につき、耐え難い痛みの中でその生涯を閉じました。29歳でした。

原子力産業における最初の悪習が発見されても、貧しい人の人材募集はなくなりませんでした。誰の代理なのか
わからない男たちが、起こりうる危険を隠してホームレスを騙し、仕事を斡旋するために東京や横浜や他の町の
公園を訪ね歩きます。原子力発電所は毎年少なくとも5000人の臨時雇用者が必要で、藤田助教授は少なくとも
その半数がホームレスだと考えています。

日本の街角で、貧しい人が珍しかったのはそう昔のことではありません。今日、そのような人に出くわすことは
難しくありません。原子力発電所は余剰労働力を当てにしています。日本は12年間の経済停滞にあり、何千人
もの給与所得者を路上に送り出しています。経済の奇跡の模範として、また一人当たりの所得で世界で三番目
に裕福な国であるというその地位に疑問が投げかけられています。多くの失業者は、家族を養うことができない
という屈辱から、毎年30000人にも及ぶ自殺者の群れの一員となります。それ以外の人はホームレスとなって、
公園を徘徊し自分たちを追い払った社会との接触を失います。

注1: 美浜の会の和訳ではヤクザが取るのが20000円、請け負った人の手元に残るのは10000円。
注2: 嶋橋信行さんは大阪ではなく横須賀の出身。貧しい家庭の出身でもない。

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