dunubの窓

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裏山に住む鬼退治の話
 
▼ 昔々、ある村の裏山に鬼が住んでいた。時折村に下りてきては食い物や女子を連れ去るので村人は困り果てていた。
 そこで村人は皆で相談してその村の街道を通りかかる武士や力自慢の人々に鬼退治を頼むことにした。
 まず、旅のお侍さんが通りかかった。村人は酒と馳走を振る舞い願い事を伝えた。
「裏山に住む鬼を退治して欲しいんじゃ、お礼はたんまりと」
「拙者に任せておけ、鬼といえどもなんのことはない」と自信満々。
次の日、山に入るも鬼の足跡を見て下りてきた。
「鬼があんなに大きいとは知らなかった、自分も力を尽くしたがまだまだ道は遠い」
お侍は村に残り、村人に食事と酒の提供という暮らしを始めた。
 
 次に現れたのは槍使いの大男。
「裏山に住む鬼を退治して欲しいんじゃ、お礼はたんまりと」
「任せておけ、この槍ならひと突きじゃ」
山に入ると鬼の声を聞くだけで逃げ出してしまった。
村に帰り言った。
「この鬼は恐ろしい、時期が来るまで待つことにする」
そして村人の金で飲み食いを始めた。
 
 次は背だけが高い剣士。
「裏山に住む鬼を退治して欲しいんじゃ、お礼はたんまりと」
「自分はまだ病み上がり、湯治を兼ねて来たもので健康なれば鬼など人ひねりじゃが、まず酒と馳走をいただこう」
 この人はいつまでたっても山に入ろうともしない、ただ村人の金で酒をのみ馳走を食べるだけ。
「鬼とは非常に力の強いもの、自分が力をつけるためにも良い食事を所望する」
 
 次に現れたのはお坊さん
 村人は今までの顛末を話した。
「なぜ、何人ものお侍さんに鬼退治を頼んだが皆退治出来ないのか、鬼を退治してもらうことを頼むことは間違っているのだろうか」
 お坊さんが言った。
「鬼を退治してもらいたいという難儀は分かる、しかしその退治する者が本当に命をかけてでもやる気があるか、見定めてからでは遅いかもしれない。少なくとも山に入り鬼と戦わずして弁解がましい言い訳をいうような人物なら食い扶持がもったいない。彼らは鬼退治をすると言って皆から歓待してもらうことが職業なのだ。」
 
議論が尽くされていないと言う、時期尚早と言う、問題を先送りする、問題をすり替える、仲間割れをする、素人には出来ないという。
 
出来ない原因ばかりを言いながら、自分たちの贅沢はやめようとしない。
まるで、鬼退治をする準備をするのが仕事のようだ。鬼退治をする方法を相談するのが仕事のようだ。
 
村人が「鬼退治をする」という人物に期待するのは間違っていない。
問題は期待された人物にやる気があるかどうかだ。
鬼とは戦わない限り退治することは出来ない。
 

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