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手押しポンプ
手押しポンプがあり、注ぎ口にはいつもの木綿の布きれが結び付けてあり、汲みあげると、どこまでもどこまでも清らかな水が湧き出てきた。ポンプの足元はモルタルで固められ、その周りには杉苔が生えていた。俺は杉苔に顔を近づけて視界を全部杉苔にしてみた。低い四つん這いの姿勢になりゆっくりと移動した。杉苔がなめらかな速度で視界を通り過ぎる。うわ、きれいだな。この先にはどんな風景が待っているのだろう。小さな昆虫たちが現れた。1ミリにも満たないような蜘蛛、蟷螂、亀虫、その他大勢。みな天空を見上げ俺に挨拶をした。俺も挨拶をした。そのあとはかれらを踏みつぶさないように注意深く移動した。やがてそれも飽きたので、俺は立ち上がり周りを見た。
打ち捨てられた日本庭園だった。玉作りの躑躅は薮枯らしにおおわれ、その向こうに石燈籠が見えた。ふり向くと、古い農家のような日本家屋があり、濡れ縁に昔の友人たちが座っていた。やぁ。これは同窓会だったのかな?そうかもしれない。懐かしい仲間とみんなで旅行に行って。俺は一瞬そのことをすっかり忘れていたのかもしれない。皆が手招きする。だがおかしいな?とうに死んでしまった友人も何人かいる。まぁ、世の中にはそんなこともあるのかもしれない。背中が痒くなった。どうやらさっきの昆虫たちが、背中に張り付いているらしい。気がつくと俺は上半身裸だった。
鏡がないので自分で見ることができないが、俺の背中には何千何万という数の昆虫がたかっているらしかった。俺はそれを感じることができた。濡れ縁に座っていた昔の恋人が、小走りに手押しポンプまで行き、手桶に水を汲み、俺に近づき、背中に水をかけてくれた。それで大半の虫は流れ落ちたが、何匹かは皮膚の中に這入り込んだろう。彼らは鉤爪をもっているからな。
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うーん
夢の中の世界のような独特な、文体ですね、うーん
師匠が休んでいる間に一本、小説書き上げました(リアルを追及しました)
2017/3/10(金) 午後 10:46
その小説は何処で読めますか?
2017/3/16(木) 午後 9:46 [ uexa ]
出版したわけではないので
ブログ書庫に『小説家への軌跡』というのがあるのでそこから入ってください
比較的長いので体調のいい時に読んで見てください
2017/3/17(金) 午前 9:34
上下巻になっています
2017/3/17(金) 午前 9:43