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1ヶ月くらい前にうちに入院してきた患者様にYさんという男性の患者様がいらっしゃいます。 彼は、紅茶が大好きで、毎日欠かさず飲んでたそうです。 そんな彼が入院してきたのは、奥様が彼の足の異常な冷え方、その進行の速さに普通じゃないと感じられて受診したのがきっかけでした。 勿論、即入院となったのですが、検査の結果、彼の右足にはもうほとんど血が通っておらず、動脈閉塞という状態でした。彼の足は、日を追うごとに冷たさを増し、暗赤色に変わっていきました。 呼吸状態も日に日に悪化し、痰も自分では出せなくなり、吸引(管で陰圧をかけて痰を吸い上げる)という処置が2〜3時間おきに必要になりました。こういう状態では、食事は勿論、水分を摂ることも命取りとなります。しかし、何も口にしないというのは、口腔内の自浄作用が機能せず、菌の増殖を助長してしまうので、こういう患者様に私達はマウスケアといって、吸引の度ごとに口の中を湿らせたガーゼで拭いて清潔にします。 ある日、私がY様を受け持った時、彼は吸引を強く拒みました。普通、嫌ですよね、苦しい思いして、ゲホゲホさせられて、痰ズルズル〜って引かれて・・・。 その時、奥様が言ったのは、 「こうやって嫌がるんですよ、最近。そんなんより紅茶飲ませろって。看護婦さんには言わないんですけどね、わたしと2人になったら言うんです」と。 先ほどのマウスケアですが、本来ならばイソジンガーグルで湿らせたガーゼを使用してるのですが、私は彼にこんな提案をしてみました。 「Yさん。紅茶飲もうか?飲むって言っても今は前みたいに飲めないから、口をきれいにしてるガーゼ紅茶味になら出来るよ」 早速奥さんに紅茶のティーバックを売店で購入してもらい、吸引させてもらうのを約束に、紅茶で湿らせたガーゼでYさんの口の中を何度となくキレイに拭いてあげました。 その時の奥さんの表情とYさんのかすかに笑った顔は今でも忘れられません。 しかし結局彼は、右下肢の腐敗が進行し、主治医から本人と家族に“切るしかない”と、苦渋の選択を迫られ、1晩考えさせてくださいと返事をし、翌々日、全身麻酔下で右下肢の切除術が施行されました。 全身状態は術前からお世辞にも良いとは言えず、人工呼吸器を装着したままの帰室となりました。 そして現在。彼はまだ人工呼吸器の力を借りて呼吸していて、意識もあまりはっきりしてない状態ですが、スタッフの何人かが「Yさん、紅茶でマウスケアした時ちょっと笑ってるよね」っていう声をちらほら耳にします。 1ヶ月前は自宅で毎日紅茶を飲んで、普通の生活をしていたYさん。彼にとってこの1ヶ月は激動の1ヶ月だったに違いありません。 今の状態が続けば、最悪の事態も大いに考えられます。 でもやっぱり私達の思いは出来る限りで患者さんや、家族の希望を叶えてあげたい、こんな苦しい状態の下でも、出来るだけ患者さんの生活の質〜QOL〜を高めてあげたい。そう願っています。 今も続けている紅茶でのマウスケアは周りの人や、先生たちから見たらほんの些細なこと、下らないことに映るかもしれません。でも、私達はやっぱり患者さんやご家族に喜んでいただける限り、紅茶でのマウスケアは続けるだろうし、その先にはYさんが思いっきり紅茶を飲める日が来ることを願っています。
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紅茶でのマウスケア・・・毎日現場で1番患者さんと接しているちょこ子さんだから考えついた事であってとっても素敵な事ですよねぇ><上の人から見たら下らないことかもしれないけど、患者さんにしたら『自分を思って考えてくれた事だ』って思うと絶対嬉しいハズですっ!!読んでてそぉ思いました!
2006/9/7(木) 午前 8:11 [ - ]
ふたばさん。ありがとう。患者さんや家族が嬉しいと思ってくれる時、笑顔で「ありがとう」と言ってくれる時が、本当にこの仕事やっててやりがいを感じる時です。患者さんは一人一人、して欲しいことも十人十色。そんな一人一人の個性や、希望に添える看護をこれからも考えていきたいと思ってます。
2006/9/7(木) 午後 6:32
紅茶か。うちもお茶でのマウスケア、やってたことがあるよ。
2006/9/7(木) 午後 8:46
れもんさん。お茶でのマウスケアは時々ありますよね。あたしは紅茶でマウスケアするのに、除菌効果がどうなのか、ちょっと気になってたんです。でも、調べてみると、除菌効果もあるってことだったから、良かったなって思ってます♪
2006/9/10(日) 午前 11:11
いい看護婦さんじゃん。看護婦さんって忙しいから、案外流れ作業的になって患者さんの立場に立てない人が多いって言うけど、世の中捨てたもんじゃないなって思ったよ。病気になって入院することがあったら、ちょこ子ちゃんみたいな看護婦さんにケアしてほしいなーと思ったよ。
2006/9/11(月) 午前 1:17
rickyちゃん。確かに流れ作業的になってるところも正直あると思うんだ。でも、時々ふっと立ち止まってみると、普段なら気付けなかったことに気付けたりする時があるよ。そのきっかけは、患者さんの些細な言動だったり、家族とのやりとりだったり・・・。ちょっとしたことだけど、色んなこと感じて、色々もっとしてあげられることあるんじゃないかって考えられる余裕が働き始めて約8年目で、やっと出てきた気がするよ。
2006/9/11(月) 午後 6:24
うちの介護施設もQOLを高めてあげたい一心でひとつひとつやってますね。。私は事務員だから特になにもしてあげれないけど、事務所隣の喫茶室に来たときには、フロアでは話せない分、お話しを聞いてあげます(^▽^)
2006/9/14(木) 午後 5:20
ゆーこちゃん。それも1つのQOLの向上だよね。QOLを高めるのって何も大掛かりなことをするだけじゃないしね。ゆーこちゃんのお話も入所者のみんなにはすごく嬉しいと思うよ♪実際、本当にQOLを高めてあげられる場所って、あたしは病院より、施設の方がポイントはたくさんある気がします。
2006/9/15(金) 午後 0:06